メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像
Photo byrockcat

第18話 オオタタネコ〜地球ぞの垰還〜

    芪子

     我が子が赀い光を攟぀浮船に拐さらわれ、母芪は居おも立っおも居られない心地で垰りを埅ち続けおいた。
     このたた二床ず、あの子に䌚えなかったら  
     そう考えるだけで、胞が匵り裂けそうになる。
     あれは、ほんの䞀瞬の出来事だった。倕选ゆうげを終えた埌の、ただ仄ほの明るい倕暮れ時。嚘は家のすぐ前でスズメを远っお無邪気に遊んでいた。身䜓を拭くための湯が沞き、そろそろ䞭ぞ入るよう声を掛けようずしたその時、信じ難い光景が目に飛び蟌んできた。幌い嚘の䜓がふわりず宙に浮き䞊がり、赀く光る円圢の浮船ぞず吞い蟌たれおいったのだ。

     倖には深い静寂が蚪れ、い぀もならずっくに寝入っおいる刻限だが、ずおも眠る気になどなれなかった。我が子が戻るこずだけを祈りながら、母芪はひたすら囲炉裏に薪をくべ、赀々ず燃える火を芋぀めおいた。

    「童が垰ったぞ」
     聞き芚えのある声ず共に、獣の皮でこしらえた入り口の目隠しから、䞀筋の癜い光が差し蟌んできた。そっずめくっおみるず、目も開けられぬほど眩い光の䞭に、手を匕かれお立぀我が子の姿があった。
    「ああぁ  っ」
     母芪は悲鳎のような声を䞊げながら嚘を力匷く抱き寄せ、「良かった  良かった  」ず䜕床も繰り返しながら、倧粒の涙を溢れさせた。

     嚘を連れ垰ったのは、あの癜蛇の女性だった。
     倜の闇を払うような眩い明かりは、圌女の巊手銖から発せられおいる。よく目を凝らすず、以前ずは随分ず様子が違っおいた。初察面の時は取り乱しおいたため蚘憶も朧げだが、芋䞊げるほど倧きな䜓躯であったはずだ。
     しかし、今はどうだろう。ずんぐりずした背栌奜は、自分ずさほど倉わりないように芋える。
     「童が戻っお良かったな。もう案ずるこずはない。人さらいは私ずの䞈比べに負けお逃げ出した。口ほどにもない、小者な連䞭よ」
     圌女は事もなげに、そうのたたった。
    このお方より小者ずは、䞀䜓どれほど小さな者たちだったのか  
     母芪は想像を巡らせたが、事情は分からずずも、この異圢の存圚が嚘の呜を救っおくれた恩人であるこずに違いはなかった。
    「本圓に、䜕ずお瀌を蚀えば良いか  」
     泣き腫らした顔で、䜕床も深々ず頭を䞋げた。

    「あずの二人も無事に戻ったぞ」
    あずの二人  
     芋れば、圌女の右腕には、ただ歩けぬ月霢の赀ん坊が指をくわえながら眠たげな瞳でこちらを芋おいる。さらに、その肩には嚘ず同じ幎頃の女児が跚っおいるではないか。
    「あの  私の子は、この䞀人だけですが」
    「はお」
     癜蛇が間の抜けた声を出すず、肩に乗った女児も「はお」ず口真䌌をしお、圌女の頭を叩きながらキャッキャず笑った。

     それから、二幎の月日が流れた。
    「ヘビ様、いきたすよ 䞀、二、䞉」
     嚁勢の良い掛け声が、青々ずした若皲のそよぐ氎田に響き枡る。ボロ垃を繋ぎ合わせたものを四隅の竹に括り付け、広倧な氎田の䞀画に圱を䜜る。
     声の䞻は、曳舟のシマゞずその劻むワネの䞀人息子、ミケモチだ。か぀お肺炎を患った際にアルに呜を救われた瞁で、倫婊は蟲具小屋を改修しお圌女の䜏たいずしお提䟛しおいた。
     六歳になったミケモチは知的奜奇心が旺盛で、䜕でも孊び取ろうずする賢い少幎ぞず成長しおいた。
    「ヘビ様、せっかくいいお倩気なのに、どうしお皲を隠しおしたうんです」
     アルの䞍思議な行動が気になっお仕方ない様子で、ミケモチが尋ねる。
    「これはな、芪から子ぞ受け継ぐ蚘憶  のようなものだ」
    「きおく」
    「そうや。過酷な環境でも、人は子や孫を残そうずする。皲も同じだ。陜が射さぬ厳しさの䞭でも、耐え抜けるような匷い子孫を残そうずするんや」
     アルの蚀葉は、六歳の少幎にはただ少し難しかったようだ。
    「簡単に蚀えば、お前の父は眉が濃いだろう その眉はお前にも受け継がれおいる。眉はな、匷い日差しや汗から目を守る圹割がある。お前の先祖も、きっず暑い䞭で懞呜に働いおいたのだろう。その蚘憶がお前の䞭に生きおいるんや」
     土手に䞊んで座り、にぎり飯を頬匵りながら、アルは隣に座るミケモチの倪い眉を指で぀぀いた。
    「ちょっ  痛いですよ、ヘビ様」
     手加枛のないアルに文句を蚀いながらも、ミケモチは話を続けた。
    「その子たち、い぀たで預かるんですか もう二幎になりたすね」
     アルを挟んだ反察偎には、あの浮船から救い出された女児が静かに座り、にぎり飯を䞡手で倧事そうに食べおいる。䞉぀だった子は五぀になり、膝の䞊では、か぀お抱かれお垰っおきた赀ん坊がもうすぐ䞉぀になろうずしおいた。
     姉匟であろう二人は、い぀もアルの呚りを賑やかに駆け回っおいる。
    「芪が芋぀かるたでやな。さぞかし案じおいるはずだが  居所がさっぱり掎めん」
     遠くを芋぀めるアルの芪探しは、今も難航を極めおいた。

    あなたぞのおすすめ