メインコンテンツへスキップ
見出し画像
Photo byarayan12

【家族のこと】オッサンの晩酌

    「おれが死んだら盛大な葬式をあげてくれ」


    そんなことを言うと、嫁さんはいつも鼻で笑うのです。


    「いやいやお前さん。死んだってことは死んでるんだから、葬式が盛大だろうがなんだろうが関係ないじゃん」


    正論をぶつけてくるのは、嫁さんの良いところでもある。


    「いやいや、そんな悲しいこと言うなよ。なら、どんな葬式にするってんだい?」


    まあ、まだまだ死なないのだけど。


    「そりゃあ盛大な葬式にするよ。親族みんな呼んでさ。お前さんは友達いないから、エキストラも雇わないとね」


    オッサンは愛されてる。でも、友達がいないことはほっといくれ。なんだよ、エキストラって。


    「おれにだって友達の1人や2人くらいおるわ。サクラなんて雇わんでよろしい」


    すこし強がってみる。友達は……確かにいない。家族がいたら、それでいいではないか。


    「そんなことより。今日はなんで晩酌に付き合ってくれてるん?おれが恋しかったのかい?」


    嫁さんが晩酌に付き合うのはかなり珍しい。


    「さっきまで友だちと電話してたんだけど、久しく会ってない子だったから盛り上がってね。電話のあと、お前さんがまだ起きてたから」


    なるほど。理由はなんであれ、晩酌に付き合ってくれてオッサンは嬉しいのです。


    「そんなことよりさ、世界って広いよなあ。そんな世界で嫁ちゃんに出会ったおれは、世界一の幸せ者やね」


    クチにした後で、このセリフは少しキモチ悪いなと思う。まあ、嫁さんにくらいカッコつけても良いだろう。酔っているのだ。


    「うん、だいぶキモチ悪いね。もう酔ってるん?ほら、見た目もだいぶキモチ悪いよ?」


    たしかに酔っている。でもさ、嫁ちゃん。いま見た目は関係なくないか?


    「そんなことよりさ、お前さんに1つ聞きたいことあるんだよね」


    こんな時の嫁さんは、大抵とんでもない質問をしてくる。気をつけて答えよう。


    「うん?なんでも聞いておくれ。スリーサイズ以外ならなんでも答えるよ」


    さあ、どんな質問が飛んでくるやら。



    「きのうは楽しいお酒だったの?」


    そういえば昨日は呑みに出た。


    「まあ楽しかったよ。いつもの飲み会さ」


    「咲良ちゃんとは仲良くなれた?」



    ……よしっ!考えろ俺!さくらちゃんって誰だ?いや、知ってる!昨夜のお店の子だ!どこでバレた?いや、考えろ俺。
    たしかに昨夜はさくらちゃんと呑んだ。いや、正確にはスナックで呑んだ。
    河島英五さんも歌ってるではないか。男の嘆きはほろ酔いで酒場の隅に置いていくって。そんな日が、男にはあるんだ。
    でも昨日はウソをついて呑みに行った。イヤな言い方をすれば、嫁さんにウソをついてひとりで女の子と呑みに行った。クソッ!ヤバイッ!
    大丈夫!まだ間に合う!おれならできる!完璧ないいわけをっ!


    「昨日呑みに出たやん?その後ちょっと付き合いでスナックにね。先輩がスナック好きでさ」


    「誰と行ったの?職場の人はみんな仕事じゃん?」


    いつ勤務表を確認したんだ?マズイな……


    「昨日はシフトが少し変わってね。先輩とたまたま休みが合ったから呑みに行こうってなってね」


    人はウソをつく時、少しおしゃべりになる。


    「そっか。ならいいんだけどね」


    なんとか逃げれそうだ。


    「そういえば、葬式の時のエキストラってどうやって頼むのかな?咲良に聞いたらわかるかな?さっき電話してた友だちの……」


    サクラかあ……
    オッサンの頭の中で、すべてが繋がった。


    ふたりの夜はつづく。



    ここまで読んでいただきありがとうございます。
    世界は広いが世間は狭い。


    それでは、佐世保の隅っこからウバでした。




    この記事が参加している募集

     
     
     
    佐世保の隅っこからウバログという本紹介ブログを書いています。 宜しかったらお訪ねください。 https://ubablog.com/ noteでは日記を書いていきます。 オッサンの日々に興味を持ってください。

    あなたへのおすすめ