メインコンテンツへスキップ
見出し画像
Photo byaya_ashiato

冬の色【#シロクマ文芸部】

    ひろいてん

    『冬の色』

    目印になるものは何かと尋ねたところ返ってきた答えだ。さっぱりわからないが行ってみればわかるのだろう。

    ファミレスの十二月田店は最寄りの駅から10分ほど歩いたところにあった。店内に入ると入口付近のテーブルに座っていた男と目があった。茶色のズボンを履き、赤いパーカーの上に緑地に赤い線が入ったチェック柄のダウンベストを着ていた。まるでクリスマスツリーのようだ。

    「あんたか?」
    「そう…みたいですね…」

    「どや、『冬の色』やろ」
    「そう…ですね…」

    「サンタみたいやろ」
    「あっ、そっちでしたか」

    胡散臭い関西弁を話すサンタ男の前に座った。

    「で、持ってきた?」
    「はい」

    封筒を渡そうとして、一旦引っ込めた。本当にこのサンタ男なのか?いかにも胡散臭く、年齢はタクヤと同じくらいに見えた。相手は金持ちのお年寄りを想像していたので疑いが生じたのだ。

    「なんや。疑ってんのかいな?」

    サンタ男はタクヤの顔の前にスマホの画面を突き出した。そこにはこれまでのSNSのやりとりが表示されていた。どうやらこのサンタ男で間違いないようだった。タクヤは現金が入った封筒を手渡すとサンタ男は中身を確認していた。

    「まいどおおきに。ドリンクバーは俺のおごりや。メリーくりきんとん!」

    それだけ言うとサンタ男は足早に店を出て行ってしまった。

    一体なんだったんだ?まあ、これで二十万円が手に入ったのだからよしとしよう。おっと、もうこんな時間か。母親に夕飯は外で食べて帰るとメッセージを送信すると、その店で一番高いステーキを注文した。


    (数日後)

    大学の食堂で昼飯を済ませて、午後の授業が始まるまで自販機の隣のベンチに座って動画を見ていた。

    『ポンッ』

    SNSの通知音が鳴った。振込完了の通知が届いていた。銀行口座アプリを開いて確認すると、またしても百万円が振り込まれていた。

    『タンタン タタタン タタンタン』

    非通知設定の電話が着信している。

    (つづく)



    (ひとつ前の話はこちらをクリック)

    (【登場人物と目次】はこちらをクリック)

    小牧幸助さんの企画に参加しています。
    毎週ありがとうございます。

    #シロクマ文芸部
    #ショートショート
    #連載


     
     
     
    ショートストーリー(というよりは端的に物事を伝える練習)を主に投稿してます。ドイツを一人旅しました。阪神タイガース、埼玉ワイルドナイツ、越谷アルファーズ、浦和レッズのファンです。ラジオを聴きながら、あちこち食べ歩き回ってます。たまに演劇を鑑賞します。21~24時頃に現れます。

    あなたへのおすすめ