メインコンテンツへスキップ
見出し画像

高揚☆_08【熱きアツキ】【シロクマ文芸部】

    ( 前 話 / 目 次 )


    水の音がシャワー室のタイルから跳ね返ってくる。全身にまとわりついた汗を洗い流していても、胸の奥にある熱い余韻だけはいつまでも消えそうになかった。

    目を閉じると、つい先程まで立っていたピッチの光景が鮮明に蘇る。

    …

    アツキが出したスルーパスを受けたヤマトがゴールを決めて、デビュー戦を勝利で飾った。

    ゴールが決まった瞬間、アツキはヤマトに向かって一直線に走り、後ろから無我夢中で羽交い絞めにした。少し落ち着いてからスタジアムを見渡すと、スタンド全体が真っ赤に燃えていた。なんとも言えない高揚感。これを浴びたくてサッカー選手になったのだ。やっぱり、さいたまスタジアムは特別な場所だった。

    試合終了後、ヒーローインタビューで何を話したのか、はっきりとは覚えていない。ヤマトにいじられた記憶だけが薄っすらと残っている。彼なりの気づかいだったのだろう。

    アツキはヤマトとともにサポーターへ挨拶するため、場内を一周し始めた。

    バックスタンドの中央まで来たとき、ひとりの少年がタオルマフラーを掲げて、力いっぱい手を振っている姿が目に飛び込んできた。

    アツキは足を止めて、少年に向かって大きく手を振り返した。必死に手を振るその姿に、10年前の自分を重ねていた。

    初めてさいたまスタジアムに訪れた10年前、あの少年と同じようにスタンドから『さいたまダイヤ』を応援していた。スタンドで応援していた少年が、選手に憧れて同じピッチに立つ。そうやって『さいたまダイヤ』の歴史は受け継がれていくのだ。

    (つづく)



    (ひとつ前の話はこちらをクリック)

    ショートストーリーをつなげて連載中です。毎週金曜日頃投稿予定です。目次に各話のリンクを貼っていますので振り返りにどうぞ。

    (【登場人物と目次】はこちらをクリック)

    小牧幸助さんの企画に参加しています。
    毎週ありがとうございます。

    #シロクマ文芸部
    #連載
    #熱きアツキ


     
     
     
    ショートストーリー(というよりは端的に物事を伝える練習)を主に投稿してます。ドイツを一人旅しました。阪神タイガース、埼玉ワイルドナイツ、越谷アルファーズ、浦和レッズのファンです。ラジオを聴きながら、あちこち食べ歩き回ってます。たまに演劇を鑑賞します。21~24時頃に現れます。

    あなたへのおすすめ