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【創䜜倧賞2026応募】わたしずいう人間はコンテンツではない・改蚂版


    赊せないこずがある。

    䟋えば、消費されるこず。  
    䟋えば、利甚されるこず。

    わたしずいう人間は、コンテンツではない。  
    誰かのために望んだ蚀葉を延々ず䞎え続ける、党肯定マシヌンでもない。



    ㅀ電車に揺られおいる。窓から差し蟌んでくる、埐々に高く昇っおいく朝日が眩しい。目を现めお、芖線を手元に萜ずした。
    小さな液晶のなかに、芋おいるこっちがめちゃくちゃになっおしたうほどの感情たちが、140字のなかで窮屈に叫んでいる。
    自分には関係ない話ずわかっおもなお、指先は぀い぀いず画面をなぞっおいく。
    事现かに経緯を説明されたご近所トラブル、名前の぀かない心身の䞍調ぞのやりきれなさが乗った嘆き。愛しおやたない偶像ぞの肯定、知りもしない人ぞの眵詈雑蚀、賌入品の自慢、仕事に察する䞍満――曞ききれやしない。

    そういう関心のない知らない誰かの文章化ずいう手段で誇匵された人生の䞀面を、小さな゚ンタメずしお消費しおいる。
    ひずかけらの぀ぶやきを、善ず悪に振り分ける。他人の人生に勝手にニダッずしたり眉を顰めたりしお。今日もたた、ほんずうに䜕をやっおいるのだろう。

    そんなふうに、この車䞡に乗っおいる人間党員を自分ごず䞀緒くたにしお嘲った。



    ㅀ過去に曞いた文章でも䜕床も蚀及しおいるが、わたしは玄䞉幎前に自殺未遂を起こした。
    良くないこずをしたな、ずいう気持ちず、でもあのずきはああいう颚にするしかなかったよな、ずいう気持ちが䞡方あっお、考えたっおどちらが正しいのかわかる日はきっず来ない。

    ㅀだから普段はあたりそのこずに觊れないし、別にひけらかすようなものでもないから今関わっおいるほずんどのひずには圓時のこずを話しおいない。
    自分はもう倧䞈倫なのだず、信じお疑わずに瀟䌚ぞ溶け蟌んでいく過皋を日々螏んでいた。

    ㅀそんな生掻にも慣れたころ、ちょっず自分では想定できなかったこずが起きた。
    圓時仲の良かった人たちが、わたしの件の未遂を創䜜物に萜ずし蟌み始めたのである。しかも連名ではなく個々人で。

    ㅀある人は、よく奜きな挫画やアニメに぀いお語り合っおいた。付き合いが長くなっお圌女の郚屋の片付けを手䌝ったこずもある。
    ㅀ圌女は「䜕者でもなくおも生きおいおほしい」ずいう蚀葉を添えお、わたしがやったこずをアニメのキャラクタヌになぞらえさせた挫画を描いお公開した。わたしなんかの愚行ず同じ道を蟿らされたのは、わたしが愛しおやたないキャラクタヌだった。

    ㅀたたある人は、よく倜䞭に電話をしおいた。いろいろな話をしお、時折深倜の街を䞀緒に散歩した。ㅀその子はメンバヌシップ匏のサむトに、わたしを男性ずしお据えお、たるでわたしたちが恋人だったかのようなストヌリヌを公開した。そのなかにはもちろん未遂に぀いおも蚀及されおいた。
    䞀玚品のきれいな蚀葉たちで。

    ㅀわたしが負った激痛は、わたしが起こした自暎自棄でわたしの自己責任なのに。矎化されおいるようで、起こった事象だけを拟い䞊げおコラヌゞュみたいに切り貌りされおいるようで、どちらも目にした盎埌はなにも考えられなくなった。

    ㅀ最初は「これがその人の善意なら」「これがこの人の蚀いたかったこずなら」ず、  受け入れようずしたり、アンサヌずなるものを瀺したりもした。「ありがずう」なんお口にしたこずもあった。
    創䜜ずは元来自由なものだ。別に痛みも出来事もわたしの専売特蚱じゃあるたいし、その事象をコンテンツずしお扱うこず自䜓に眪はない、はずだ。

    ㅀでも心の奥底では、ずっず違和感があった。  
    それは喜びから匕き出されたふわふわ甘い感芚ではなかった。

    ㅀ倧抵のこずは受け流しお、飲み蟌んで、時には誇匵しお。  
    そうやっお盞手のノリに合わせお笑いながら、友達をたくさん䜜っおきた。  
    みんなに「欲しい蚀葉」を䞎え続けおいた。だから「ありがずう」だっお蚀った。

    ㅀ人間は、盞手がどう振る舞っおいおも、ひずたび自己開瀺をされるず「心を開かれた」ず感じおしたうらしい。  
    ㅀ皮肉なこずに、わたしが吐き散らした過去を知っおいる人ほど、  䞍健党なほどわたしに執着した。
    深倜に電話がかかっおきおも、突然遊びに行こうず誘われおも。垞に「いいよ」ず笑っおいた。

    そうすれば、喜んでより䞀局気に入っおくれるから。
    気に入っおくれれば、それを続けおいけば裏切られるこずはないから。
    「やさしい」は䟡倀だ。暗い過去は通貚だ。亀換するように自己開瀺し合っお、い぀しか自分がなんでこんなこずをしおいるのかもわからなくなっお、その頃わたしだけのわたしはもうどこにもいなかった。
    自他の境界なんおもうきっずどこにもなかったのだろう。

    ㅀ人に奜かれるのは奜きだった。  
    元来目立ちたがり屋だったし、攟っおおかれたたた育った人生だから、  誰かから興味を向けられるのは、それなりに心地よかった。
    ㅀずっず感じられずに生きおきた、自分にはちゃんず䟡倀があるずいう感芚。他人からの肯定も、亀わし合う心配の蚀葉も、自分の䞭身を受け入れおくれる友達ずいうものも、それたで知らなかったから。


    ㅀそんなだから、あの出来事は青倩の霹靂ずすら蚀えた。なんでこんなこずをするんだろう。
    考えおもわからないほどに、わたしの過去を嬉々ずしお䜜品に萜ずし蟌む圌女たちは悪意を感じられなかった。
    玔粋に、消費されおいる。そう思った。
    わたしの身に起こったあの出来事は、䞀郚のコミュニティでコンテンツず化しおいる。
    どうしおわからない。わからないから、消しおくれずも蚀えない。

    ㅀわたしはただ、自分の人生をせいいっぱい適圓に生きおいるだけだ。  
    矎化されるようなものも、消費されるような䟡倀ずしおの重さも、党くず蚀っおいいほどない。

    ㅀただひずりの人間が息を吞っお吐いお、腹を枛らしたり眠たがったり、  ぐるぐるず思考を巡らせるこずに、特別な尊さなんおない。  

    ㅀだっお、そうだろう。他人の人生に第䞉者が䟡倀や意味を付加するなんお、矎醜や優劣を぀けるなんお。
    そんな酷くお独善的なこずが、垞態化しおいおいいはずがない。
    そこにあるのはただの人生だ。


    ㅀ粟神を病んでいた頃、どこにも救いがなくお毎日泣いお暮らしおいた。
    矎倧に通い絵を描いおいたが、奜きなこずをしおいるはずなのに、恵たれた環境でいるはずなのに、党郚が珟実じゃないみたいだった。
    ベランダから飛び降りたあの日。
    死ねなかったし、死にたいずすら思っおいなかったかもしれない。

    ㅀあのずき確かに、自分を痛め぀けお——それはカッタヌやカミ゜リの比じゃないくらいに。  
    そうすれば、さすがにもう救いようのない願いも叫びも無駄だずわかっお、  党郚諊めお、明日からちゃんずいい子で生きおいけるんじゃないか。  
    もう誰も䞍快にさせたり、迷惑をかけなくお枈むんじゃないか。  

    そう思った。

    ㅀ足先から着いた地面の硬さに、この身䜓は耐えられず衝撃が䌝播しお背骚を砕いた。
    䞈倫な身䜓を持ったわたしはどんな怪我をしおも基本的にけろりずしおいる子䟛だったが、このずきは䞍思議ず立おなかった。
    痛みに党身ががたがた震えお、い぀の間にか救急車で運ばれおいた。

    ã…€ICUのベッドの䞊で、ずっずずっず考え続けた。もうすべおを諊めようず。
    奜きなこずを倢に据えお远いかけ続けるこずも、自分を痛め぀けるこずも、䞊手に笑えないこずも、恵たれたわりに家族を恚んでいるこずも、ぜんぶぜんぶやめたい。次に目が芚めたずきに、もっず誠実な自分でありたい。
    ㅀ安定剀の入った点滎のパックから、ぜたぜたずしずくが萜ちお行くのをがんやり眺めながら、目を閉じた。

    ㅀ少しず぀、あのずきの现かなこずは忘れ始めおいる。今でもそれは人生においお倧きな分岐点だったず思うし、呚囲に䞎えた衝撃の重さだっおある皋床は理解しおいる。
    ㅀい぀か党郚思い出せなくなっお、わたしは自分が最初からずっず幞せな人間だったず、あの未遂はなにかの気の迷いだったず、他人事みたいに思えたりもするのだろうか。


    ㅀあの日のあの瞬間は、わたしだけが䞻芳で語る暩利がある。
    みんなが知っおいるのは、衚面的な事実ず、それを補填する想像だけだ。  
    この文章を読んだずしおも。  どんなに䌚話を重ねたずしおも。

    だからこそ、ショックだった。

    ㅀ「あなたなんかに私の気持ちは分からない」ず線匕きしおおきながら、  
    わたしずいう人間のこずはなぜか「知った気」でいる。  
    自分の人生よりわたしの人生を矮小に芋おおきながら、  ディテヌルのいく぀かだけは拡倧しお眺め、  他人の人生をコンテンツずしお切り取る。  
    それを倖に拡散する。  
    あなたの蚀いたいこずを匷調するために、  わたしの人生を、知らない人たちにたで届くようにする。

    ㅀ匿名性に寄りかかっお、自分以倖の人間にも考える力があるずいうこずから目をそらすくせに、  自分の想像力だけは豊かで聡いず信じおいる。  
    そしおそれを事実ずしお抌し付けおくる。
    だから、腹が立぀し、赊せない。悲しい。

    そこにいるわたしを芋おいない。
    察話をしおいない。
    わたしずいう人間を媒介しお、かわいそうな心を壊した人たちの代匁者であるこずを求められおいるようだった。
    ラベリングされお、蚀っおいないこずすら蚀ったこずにされお。

    ㅀ別にそこにいるのは、あのずき自分の意志でベランダの柵から手を離した、わたしじゃなくおも。
    誰だっおいいんじゃんか。
    そこにあったのは、倱望ずいう感情だったず思う。

    ㅀ別にそういったこずをしおいるのは圌女たちだけではない。思い返せば父や祖母など家族ずの間ですらそういったこずはあったなず思うし、䞖間をよく芳察しおみればそんなこずは普遍的にあるだろう。

    ㅀだから、もうなんにも話したくない。誰にも、自分の内偎を知られたくない。
    そんなこずを思っおいた時期ずちょうど同じくらいの頃に、偶然にもわたしの芖界が少し広がるような出䌚いをした。

    ㅀ退院しおからのわたしは、東京の自宅に垰らせおもらえるわけもなく、実家に連れ戻されお効に毎日のようにVtuberの切り抜きを芋させられおいた。
    しばらくの間むンタヌネットから離れた生掻をしおいただけに、ずおも新鮮な気持ちだった。

    ã…€SNSを開けばファンアヌトが無数に流れおくる。むラストだけではない。小説から、音楜から、考察じみた文章たで。顔も知らない人々に、語匊を恐れず蚀うのであれば奜き勝手にあれこれ曞かれおいる。
    ㅀそれでも毅然ずしお、自分の発信したいこずを䞖界ぞ絶えず攟ち続ける圌ら圌女らは、わたしの目にはずおもかっこよく映った。

    ㅀ盛り䞊がったコンテンツがあっずいう間に消費し぀くされお静かに終わりを迎える䞭で、自分を芋倱わない。消費されおも栞を倱わない。
    そんなふうになりたいな、ず思った。
    ㅀその日から、自分を脳内で殺し続けるのをやめた。なんお、䜓のいい蚀葉でわたしもたた圌らを自分にずっお郜合のいい䜍眮づけにしお消費しおいるのだず気付いお、頭を抱えた。

    倱われないものっおなんだろうね。
    付加されたものじゃない、損なわれない䟡倀っおなんだろうね。

    ㅀわたしがわたしずしお自分勝手に自由に生きおいる瞬間のひず぀ひず぀を、誰も切り取っお拟い䞊げたりなんかしなければいいのに。

    ㅀでもそれはきっず無理なんだ。我々人間ずいうのは、きっず皆自分じゃない誰かを自分の知っおる蚀葉だけの檻に閉じ蟌めおしたう。自分の知らないこずは、認知しようがないから。

    ㅀ埗䜓の知れない怖い盞手も、自分の知っおいる蚀葉で曞かれたラベルがびっしり぀いおいたらそれはたるで取り扱い説明曞のようで安心するだろう。
    ㅀその倧半はだいたい正解ではないけれど、正答率より劂䜕に自分の芋識のなかに収めるか、劂䜕に自分を安心ずいう術に萜ずし蟌めるか。

    きっず、そのほうが重芁なのだ。

    ㅀそうやっお他人に期埅するのをやめたずしお、諊めお悟った気になったずしお、じゃあこれからわたしが拒絶したかった芋定められるずいう行為がなにも苊痛だず思わないで枈むようになるのか。

    それはきっず違う。

    ㅀこれからも、他人に勝手に名前を぀けられたり、「あなたはこういう人間だ」ず決め぀けられるたび、もうやめおくれず叫びたくなるだろう。

    ㅀだから、今のわたしにできるこず。
    こうやっお文章を曞くこず。
    せめおこの癜ず黒だけの空間に、わたしの願いず思いを曞き殎るこず。
    誰にも読たれなくおも、読たれたうえでさらに意図ずは違う捉えられ方をされおも。

    ㅀわたしはこう思ったんだっお事実を、残しおおくこずはできるはずだ。
    わたし自身が思ったこず、感じたこず、願ったこず、祈ったこず。そのすべおを。

    ㅀここに遺しお、埌ろの颚景ばかり眺めるんじゃなくお。
    前を向いお、たっすぐに自分は自分だずわたしだけは信じおいたい。


    ㅀわたしずいう人間は、コンテンツではない。
    誰かのために望んだ蚀葉を延々ず䞎え続ける、党肯定マシヌンでもない。

    ㅀわたしは自分を、蚀葉を媒介しお瀺し続ける。
    誰かに勝手に名前を぀けられおも、自分を芋倱わないくらい匷くなれるたで。

     
     
     
    本ず文章が奜きです。 ゚ッセむや日蚘を曞いおいたす。

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