
今日知った言葉⑮ penitentiary(ペニテンシャリィ)
1.刑務所は英語で何と言う?
英語で刑務所と言えば、多くの方がドラマ『プリズン・ブレイク』(Prison Break)を思い浮かべるのではないだろうか。
そう、刑務所と言えばまず「プリズン」。辞書で "prison" を引くと、このように出ている。
(O-LEX)
刑務所、監獄、牢獄、拘置所、留置所
(Oxford English Dictionary)
a building where people are kept as a punishment for a crime they have committed, or while they are waiting for trial
つまり、罪を犯した人を罰として社会から隔離しておく所だ。アメリカだとタトゥーをしたスキンヘッドや髭面、強面の面々がいるというイメージがある。
だがもう1つ、「ジェイル」という言葉も聞いたことがあるのではないだろうか。"jail" も辞書を引くと同じような定義が出てくる。
(O-LEX)
刑務所、監獄、牢獄、拘置所、留置所
(Longman)
a place where criminals are kept as part of their punishment, or where people who have been charged with a crime are kept before they are judged in a law court
こちらは「オクスフォード」ではなく「ロングマン」の定義を使った。なぜかというと「オクスフォード」では "jail" = "a prison" としか書かれていないからだ(useless…)。
要するに、辞書を引いても違いがよくわからないのだが、日常的な使われ方には違いがあるようだ。
2.prison と jail の違い
国や地域によって多少違いはあるかもしれないが、アメリカの場合は主に、次のような使い分けが見られる。
"prison" は刑が確定した人を収容する所で、主に重罪犯罪者(felon)が長期に入るので、州や連邦政府が厳重に管理している(『プリズン・ブレイク』のイメージどおり)
"jail" の方は、比較的短期刑の人が服役する所。郡や市などの地方自治体が管理している。
また、用法の違いとして "jail" は動詞としても使われる。
He was jailed for robbery.(彼は強盗の罪で刑務所に入れられた)
They ought to jail him for life.(彼は終身刑になるべきだ)
"prison" の場合は、動詞として使う時は接頭辞 "im-" を付ける。
He was imprisoned for debt.(彼は借金のために拘留された)「ジーニアス英和辞典」
Some young mothers feel imprisoned in their own homes.(若い母親の中には、自分の家に閉じ込められているように感じる人もいる)「Oxford English Dictionary」
2番目の「オクスフォード」の例にもあるように「閉じ込められる」の意味で使われることもあるようだ。
3.penitentiary の意味と刑務所関連の言葉
さて、それでタイトルのこの単語であるが、これも調べてみたら実は「刑務所」を表す言葉だった。
"penitentiary" /pen.ɪˈten.ʃər.i/(ペニテンシャリィ)
しかし、ただ単に容疑者・犯罪者を隔離する場所ということではなく、語源的には penitence(悔悛・罪を悔いること)から来ているので、受刑者を「更生させる」場所という意味合いが強いようである。
日本の刑務所にはこの「更生させる」という目的があり、日常生活は厳しく管理され、教育や作業プログラムがあって、出所後は自立した生活ができるように訓練される。
一方、自由の国アメリカでは刑務所もかなり自由。比較的軽・中犯罪者が多い刑務所ではテレビやスポーツ・娯楽設備を自由に使えたり、刑務官とも対等にしゃべれるようだ(あまり上下関係がない)。
3食きちんと食べられて働かなくてもいいのだから、居心地がいいのだろう。再犯率も高く、刑務所はどこもパンク状態だという。
昔はアメリカでも更生のための教育プログラムが充実していたようなのだが、さすがに人数も多すぎて予算もないので少なくなる傾向にあるらしい。
"imprisonment" と同じ意味で "incarceration" /ɪnˌkɑːr.səˈreɪ.ʃən/(インカーサレイション)という、これまた難しい単語もある。こちらは "mass incarceration"「大量収監」などのように使われる。
「人を収監する」は、この "incarcerate" の他に、意外や "book" が使われることもある。
"Book' em, Danno!" 「ぶち込んどけ、ダノ」
これはアメリカの人気ドラマ『Hawaii 5-0(ハワイ・ファイブオー)』で、犯人逮捕した時のスティーブの決めゼリフだ(ダノは相棒ダニーの愛称)。
そもそも動詞 "book" には「予約する」の他に「記録をつける、調書を取る」という意味がある。
If a police officer, referee, etc. books someone, they write down the person's name in an official record because they have done something wrong(誰かが何らかの違反や不正行為をした際、警察官や審判などが公式な記録にその人の名前を書き留めることを指す)
アメリカでは凶悪犯罪でも死刑は「残虐」であるとして、一時、死刑を廃止していたが2000年頃、また多く執行されるようになった。一方、件数が増えると冤罪の可能性も増えたり人種による偏りも見られるため、死刑執行にはやや慎重で消極的な意見が多いようである。
「死刑」は英語では "death penalty" や "capital punishment" と言われることが多い。"abortion"(中絶)と並んで賛否両論がわかれるテーマの1つである。
一方、「終身刑」は "life in prison / imprisonment" だが、同じ終身刑でも「仮釈放」"parole" ありとなしがある。仮釈放なしで50年以上の終身刑となると、事実上社会復帰は難しい。
「言い渡し」や「判決」は "sentence" なので、「終身刑判決」は "life long sentence" 、「死刑判決」は "death sentence" という。
また、「少年刑務所」は "juvenile prison"(ちなみにアメリカでは少年にも終身刑を課すことがある)、「少年院」は "prison" や "jail" ではなく、 "juvenile correctional institution"(少年更生施設)という呼び方をする。
"correct" には「正す」「矯正する」という意味があり、間違ったことをした若者を正しい道に導き、社会適応能力を高めることを目的としている。
"penitence"「更生」に近い気もするが、こちらの方が、より「反省、悔い改め、懺悔」の意味合いが強い。
4.見学できるアメリカの刑務所 "The Rock"
さて、脱獄が難しかったことで有名なのが「アルカトラズ島」通称 "ザ・ロック(The Rock)"であるが、ここにかつてあった連邦刑務所の名称も "Alcatraz Federal Penitentiary" だった。
古い刑務所だから、更生の意味合いが強かったのだろう。
かのアル・カポネが収容されていたことでも知られているが、ギャングの親玉は更生プログラムを受けて悔い改めることができたのだろうか。
サンフランシスコのフィッシャーマンズワーフからほど近いのだが、水温が低く潮目が速いため、悔い改めずに脱獄を企てた犯罪者たちは、ほとんど海を渡り切れず溺れ死んでしまったそうだ。
今では刑務所も閉鎖され、中が一般公開されている。
私も何年か前に子どもたちを連れて行ったのだが、サンフランシスコから島まではフェリーが出ていて、刑務所内はオーディオツアーで回ることができる。



独房はかなり狭い。ベッドとトイレと手洗いだけ。女性用はもう少し何とかなっているのだろうか。いずれにしても、一生入りたくない場所ではある。
5.監獄ホテル
が、最近ではあえて監獄に泊まってみたい人もいるようだ。
使われなくなった刑務所を改装して「監獄ホテル」にしているところがある。しかも、フォーシーズンズやロイドが手掛けていたり、元城だったりして結構豪華だ。
スタッフが刑務官の格好をしていたり、部屋が独房の造りだったり、本当に刑務所のような雰囲気を味わえるところも。
上の記事にも載っているが、日本でも今年、元奈良監獄がホテルになったと話題になった。しかも運営はあの「星野リゾート」だ。
いや、めちゃくちゃ美しい。全室スイートルーム。9月の平日で1泊78,262円(細かいな)、シルバーウィーク中はなんと14万~21万円となっている!
昔は悪い事をしたら(タダで)入れたところなのに(?)今では大枚はたかないと泊まれない高級施設に生まれ変わった。
ホテルに隣接するミュージアムのほうは宿泊しなくても見学ができ、監獄の雰囲気が十分味わえるようである。
興味のある方は、一度見学してみてはいかがだろうか?(要・事前予約)
映像字幕・実務翻訳者: 浦田貴美枝
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著書:『夢を叶える字幕翻訳者の翻訳ノート』
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