
沖縄単車紀行(上陸編)
翌朝。激しい二日酔いで目が覚める。頭痛。船旅ひとり旅で飲む酒の量を明らかにオーバーしていた。おまけに船の揺れも相まって気持ち悪い。自分は三半規管が弱く、これでも大人になってだいぶマシになった方だが、子供の頃の遠足の移動などは地獄だった。バスの匂いと揺れでほぼ毎回吐いていたし、小1の夏休みに初めて東京へ飛行機で行った時も、行きと帰りの機内で漏れなく嘔吐した。オートリバース機能ついてるんじゃないかってぐらい乗り物で吐く実績は確かだった。
それでもこれだけ大型のフェリーで酔う人は珍しいらしく、その珍しい枠でなんだかんだ到着する17時ぐらいまでしっかりと気持ち悪く、食堂でお昼のカレーはなんとか食べれたものの、終始うっ、うっ、と嘔吐の呼び鈴が鳴る始末。
起きてからデッキに出れることを知り、徳之島や沖永良部島に停泊する度にデッキで風を浴びて酔いを覚まし、景色いいな〜などとごまかしていたが、それ以外の時間は部屋で布団被って無理矢理寝ていた。なんて情けないんだ。


基本的に移動中はほぼ電波が立たないので、一旦デジタルデトックスして、代わりにあらかじめ用意しておいた本を読もうと開いたりもしたが、1、2ページめくったところで気持ち悪くなり、読むのをやめた。しかもレヴィ・ストロースの「悲しき熱帯」なんて少し小難しそうな本を持ってきたものだからいかんともしがたい。結局は寝るだけの船旅となってしまった。

宮崎に比べて沖縄はさすがに暑かった。コーチジャケットを羽織るも汗でベタつく。
上陸寸前で調べたわりと近くの森の中のキャンプ場が平日割で1000で泊まれるとのことだったので、すぐさまネット予約し、食材調達へ。



チキンドラム、ポーク玉子おにぎり、サータアンダギー、オクラとわかめのサラダ、しいたけともつの入った出し汁、オリオンビールなどを買い、キャンプ場へ向かう。
もう森、花、あと民家の瓦、シーサー、看板、建物、すべてに圧倒される。ここは日本なのか?と思わせる。大地のパワーを感じる。花の匂いや風の匂いも含め、五感全体で感じれるバイク移動という手段はやはり間違いなかったとにんまり顔でキャンプ場へ到着した。
受付を訪ねたが、ドアが閉まっていたので、そこに書いてある番号に電話する。
「あー予約の方ねー。今日は誰もいないから貸切だよ。だから好きなとこにテント張っていいからねー。シャワーも炊事場も使い放題よ。それでテント張った頃に展望台行ったらちょうど景色が綺麗だと思うよー。楽しんでね」などとご丁寧過ぎる挨拶で歓迎されてなんて最高なんだ、とまずテントサイト脇のあずま屋に全荷物を置き、テントを張る。美々津の田辺さんにお借りしたソロテントがまさか初日で活躍するとは思わなかった。素早くテントを張り、バイクで展望台へ。


船酔いと船酔いでべつに何もしてないが疲れていたので、さっさと飲もう、とキャンプ場へ戻る。シャワー室でシャワーを浴び(入り口のドアで肩にヤモリが降ってくるという洗礼を受けた)、あずま屋のテーブルに買ったものを並べ、飲む。

サブスクで音楽とかかける気分ではなかったので、無音で飲む。ゼラチン状に固まっていたしいたけともつの出し汁をステンレスマグカップに移し、バーナーで温めてすすったらめちゃくちゃ美味かった。やさしいお出汁。
沖永良部出身東京在住の旧友よーくんとラインのやりとりの流れから、電話へ。「めんそーれー!」と。よーくんが東京から沖永良部へ帰るときはだいたい那覇でトランジットしてからフェリーで地元へ帰るらしく、沖縄のことも知っていたし、気候や風土がそもそも似ているので、いろんな話を聞かせてもらった。
話しながらもあずまやの天井から「ケッケッケッ」と鳴き声が聞こえて、それがヤモリの鳴き声だと知り、「そうだよ、ヤモリって鳴くんだよ〜」と教えてもらう。種類によってなのか、うちに住んでるヤモリが鳴いてるのは聞いたことない。ほんとは鳴くのかな。
いつものごとく2時間ほど電話したのち、ほろ酔いでテントに入る。着いたばかりの沖縄の森で真夜中に旅人ひとり。ズクだかフクロウのおびただしい数の鳴き声を聞きながら眠りについた。
つづく。