
沖縄単車紀行(邂逅編)
ネカフェで朝を迎える。わりかし早い時間に目が覚める。ネカフェへ行くと決まって悶々としてしまうものなのだが、エロサーフィンは一旦やめておき、noteを少し綴ることに。
スマホの画面に向かって眉間に皺寄せ綴り綴っていると、隣の部屋から「あっ」と声が聞こえる。おやおや、どした?と一瞬思ったが、それから聞こえなくなったので再びnoteを綴っていると、しばらくしてまた「あっ」と。
それから声は何秒かに一回聞こえてくる。これはもしかするとこれだな、と。隣で何やらいちゃこいてやがんな、と。
途中から全然noteに集中できずにフリーズして耳を澄ましていると、ひとりは確かに女性の声だが、その声と会話している声も女性である。
つまり、レズっているのだ。
これはなかなかどうして、いかんともしがたく、もう完全にスマホなんかほっぽり出してるぼくは、耳だけに全集中し、声のありかを辿る。辿れば辿る程に余計悶々とする。
なんだこれは
もうここで小説いっこ書けんじゃないかと言うぐらい、「エロ事師たち」という名著を書いた野坂昭如に師事したいぐらい、猥の猥の猥(なにを言ってるんだ)、ついあちらの筆を走らせそうになったが(なにを言ってるんだ)、声は急にやんで、その直後にドアがガラガラっと開いたと思いきや、その女性客ふたりは帰っていったらしかった。一体全体なんだったんだ。
もうnoteどころではなくなっていたので、少ししてから自分も身支度を済ませて外へ出た。
昨夜店に入る前に小雨が降っていたので数日前の失敗は踏まぬようにと、ヘルメットは店内に持ち込んでいたので幸い水溜まりにならずに済んだ。
とりあえず近くの公園へ行き、雨に濡れたあずま屋のベンチに、下に手拭いを敷いて、荷物でパンパンのザックを枕代わりにして、仰け反るような形でnoteの続きを少し書く。だめだ、さっきのこともあって全然集中できん、、、。
公園には本土では見かけない植物があった。鳥も宮崎にはいない鳥がさえずっている。


喉も渇いていたので一旦コンビニへ。友達から電話が来て、店の外で話しているといきなり若いヤンチャそうな、バイクに跨った兄ちゃんから話しかけられる。
「あんたのそのバッグに入ってんの何?」
「サンゴです」
「どこで拾ったの?ダメだよ」
と軽く叱責される。そうか、本来は拾ったらダメなのか。
友達と海に行った際に貝殻集めを何度もする事があったのでその感覚でつい拾っていたが、確かにネットで調べると基本的にサンゴを持ち帰るのは法律違反らしい。
お兄さんの言うことは間違いなかったし、少し反省もしたが、声の声量と言い方が、ちょっとこれなんかやってんじゃないのか?ってヤバい感じがしてて友達と電話しながら少し揉めてたら、そのお兄さんがエンジンはかけずに跨ったバイクを後ろも確認せずにバックさせたものだから(ぼくの方を見てやいのやいの言いながらバックしていた)、ぼくが「危ない!」と言った瞬間には時すでに遅し、後ろに停まっていたタクシーのバンパーにバイクのナンバーが軽く接触してしまっていた。
すかさず中に乗っていた運転手が出てくる。しかしぼくから見てもほんの少しトンっと当たっただけだったので、無意識にぼくもバイクの兄ちゃんのフォローにまわり、タクシー運転手もやんわり許してくれ、そのまま兄ちゃんはバイクに乗り立ち去っていった。なんだかんだで長いこと絡まれずに済んだ。
「何があったの?」と友達に聞かれ状況を話す。近頃こんな事がいろいろ起こる。ここでは話さないが少し前も地元でトラブルがあったので、なんだかなー、などと。
電話してたら腹が減ってたので、その電話の主である友達が教えてくれた気になるお店へ向かう。名前は「ゲンキ食堂」。
御年94歳になるおばあがひとりで切り盛りしてるお店。YouTubeなどにも動画があがっているので調べてみて下さい。


バイクで到着すると、中にいたおばあと目が合う。本物だ、、。
「ここにバイク停めていいですか?」と聞くと「いいよー」と。
タイミングよくちょうどひとりのおじさんがそばを食べ終えたとこで、中に入るとぼくひとりになった。テーブル席に座る。
このお店は沖縄そばのほかに天ぷらとサータアンダギーが名物らしく、お店に入ってすぐに杖をついたおじいが天ぷらを6個ほど買っていった。天ぷらの中身はマグロらしい。
再びふたりきりになる。するとおばあが何々、と言う。聞き取れなかったので聞き返すと「ハエがいるね」と、ハエたたきを渡される。
ハエたたきを持ったままフリーズしていると、おばあはそのまま注文も聞かずに厨房へと入って行った。ハエはそのまま外へ飛び出していった。
これはどうしたものかと迷ったあげく、しばらくして「あのー、そば、いいですか?」と訪ねると「今作ってる」と。自動的にそばを作るシステムなのか、なるほど。余計な事聞いて申し訳ない気持ちもあったが、そのまま座って待つ。沖縄はすでに最高気温が26度近くあり暑かったので、店内でも壁に固定された扇風機が首を振っていた。すでにこの数日はTシャツでバイク移動してたし、腕も焼けて真っ赤になっていた。少しヒリヒリと痛む。
しばらくすると、「出来たよー」と。席を立ち御膳ごと受け取る。おばあは動画で観てた通り「ありがとありがとー」と言う。

そばには脂と骨付き肉がたっぷり乗っていて、だしが効いてて美味しかった。
この日は午前中とても忙しかったらしく、疲れ切ったおばあが向かいの席にゆっくりと腰掛けた。天ぷらはすべて売り切れだった。
「お兄ちゃんごめんねー。また来た時天ぷら食べさせるからねー」とやさしく言う。おばあは94歳だというが、ハイカラな服装と真っ赤な口紅がとってもかわいかった。
食後に「一緒に写真いいですか?」と聞くと快諾してくれたので、ぼくが宮崎からバイクで来たという話をしながら写真を撮る。

さっきまでの声のトーンと少し変わり、「そんな大変な、帰りは飛行機で帰りなさい!」と心配してくれた。
最後は背中で「ありがとありがとー、とってもありがとうねー」という声を聞き、お店をあとにした。バイクがうるさいので、少し押してからエンジンをかけた。
前半はわりと友達や親戚に会う旅だったが、後半は現地の人と話す機会が多かった。旅の醍醐味と言えば聞こえはいいが、ヘンに絡まれるのは極力避けたい。そんな矢先、バイクで信号待ちしてると、いきなり左肩をポンポンと叩かれる。またしても輩か!またなんか怒られんのか、絡まれんのか!?と警戒してパッと振り返ると、
「バイクのスタンド、立ったままですよ」と後ろの車の助手席のおじさんがわざわざ車から降りて教えに来てくれた。ホッ、輩じゃなかった。
「ありがとありがと、とってもありがとー」と言ったか言わないかは覚えてないが、礼を言い手を挙げてまた進む。
ぼくのバイク自体が物珍しいのか、歩道を歩く中国人の父と手をつないだ子供がすれ違いざまにグーサインを出して来たり、前を走るファミリーカーに乗る女の子が後部座席からぼくに向かって手を振ってくれたりした。自分も子供の頃、遠足の帰りのバスなんかで信号待ちの度に友達と一緒に後ろの車に手を振ったりしてた経験があるので、同じように手を振り返すと喜んでいた。
少しずつ北上しながらどこへ行こうか、気になるスポットを一時停車し確認したりする。夕方になっていたので例のごとく渋滞に巻き込まれ、ケツがとても痛む。
北谷という街に米軍基地があり、南下する際に見かけた軍の払い下げ品を売ってる店が気になってたので立ち寄る。なにか土産に、と幼なじみ用にあまり荷物にならないような物を探す。すると幼なじみの好きそうな頑丈そうなスキットルに蓋付きの煙草入れのついたものがあったので(幼なじみはヘビースモーカー)それを買うことに。

実はこのお店にバイクを停める時にすぐ手前にカブが停まっていて、それがめっちゃくちゃ気になりまくっていたので、土産を買ったあとにそのカブを手がけているであろうガレージのオーナーさんに話しかけてみる。「すごいっすね、これ」と。とにかくカスタムのセンスが自分のどツボだった。




オーナーさんは普段は特殊塗装屋さんらしく、少しずつ出展用にカブを何台か手がけて、いずれはカブのショップをオープンさせたいらしい。
ぼくがかつて東京にいた頃に路地裏の駐車場で偶然見かけて衝撃を受けたカスタムカブと肩を並べるほどの渋さと芸の細かさだった。

カブのオーナーさんとカブ談義をし、インスタを交換し、別れる。
「最近法が変わって、両側ともミラーつけないといけなくなったみたいだから気をつけてね!」と教えてもらう。右しか取り付けてない自分はそんなことは露知らず、堂々とこの沖縄の地で片ミラーで走っていたので、帰ったら取り付けることに。
北谷あたりの渋滞を抜けると2日前まで滞在していた恩納村を過ぎ、海沿いを走る。夕暮れが綺麗だったので、先を急ぎたいとこだが一旦バイクを停めて写真を撮る。

ちょうど後ろから散歩してるらしきおっさんがなんかおーうだのなんだの言葉なのかなんかわからない言葉で話しかけてくる。また絡まれんのか?
おっさんは沖縄の方言で話しかけてきて、半分ぐらいは何言ってるかわかんなかった。わかる言葉だけを繋ぎ合わせると、「昔内地(本土)にいた頃にタモリと友達だった」「新宿アルタのデカい電光掲示板を取り付けた」「旅は若いうちにひと通りしといた方がいい」などと、標準語だとしてもあんま何言ってるかよくわかんない話を6回ぐらいしてきた。おっさんは日焼けして真っ黒で、ホームレスのおっちゃんと同じ類の臭いを漂わせていた。いろんな人がおる。
カブのオーナーと話した時に、「今夜どこに泊まるの?」という話になり、まだ決まってないと告げると泊まれそうな砂浜、しかもちゃんとしたキャンプ場と普通に野宿出来そうな砂浜とを3つほどピックアップしてくれていたので、キャンプ場だと予約しないといけないので、教えてもらった野宿出来そうな「ウッパマビーチ」という砂浜を目指す。沖縄訛りのおっちゃんとしゃべったとこからも1時間はかかるぐらいの場所だった。
だんだん田舎になり、人気も減っていく。
途中のスーパーで酒とつまみを買い、目的のウッパマビーチに着いた頃にはもう真っ暗になっていた。数台停めれそうな駐車場にバイクを停めるも、暗すぎて海への入り口がわからずうろうろしていたが、スマホのライトで照らした先にアダンの生い茂るトンネルのような場所があり、そこが入り口だと気づくのに5分ほどかかった。
全荷物をバイクから降ろし、ライトを頼りに砂浜へ。とにかくさっさとテントを張らねば晩飯にありつけない。
ささっと5分ほどでテントを設営し、荷物をテント内に詰め込み、酒をあおる。旅が始まってここんとこ毎日飲んでいる。スーパーで買った総菜もあっためずともいちいち美味かった。

さっさと眠りについた。
つづく。