おばあちゃんのヒモ
私が中学生の頃、ある日突然、おばあちゃんのお家に住み着いた四十代男性(通称サルさん)の話です。
おばあちゃんの家に遊びに行ったら、突然見知らぬ男性がおばあちゃんと当然のように暮らしていて、不思議としかいえない感覚に囚われたのを覚えています。
本当に突然としか言えなくて、そしてあまりにも、当然のようでした。
おばあちゃんはスナックで働いていました。サルさんはもともとはそこの客で、おばあちゃんは世話焼きなので、生活がままならないサルさんを放っておけず、サルさんを家に住まわせたようでした。
なんというか、とても分かりやすく簡潔に言えばヒモでした。
サルさんは車を持っていて、おばあちゃんは足が悪く、文字通りおばあちゃんの足になっていました。
おばあちゃんとサルさんは親子ほどの歳の差があって、ふたりの間にある感情が親子的感情なのか恋愛感情なのかよく分からなかった。
サルさんは「おばあちゃんの車椅子は俺が押す」とずっと言っていました。
つまり、おばあちゃんの足がもっと悪くなっても、足になる覚悟はあったらしいです。
ただ、失礼なんですが、おばあちゃん以外はサルさんを全く信用してませんでした。言葉の節々に滲み出る加害性とか、どこでも爪を噛む癖とか
みんなが乗る車に、分かりやすく置いてあるAVとか。サルさんの部屋にもAVがたくさん散らばってました。中学生だった私がそれを見た時、正直に気持ち悪いなあって思いました。
自然と、親戚はみんな、正月くらいしかおばあちゃんの家にはいかなくなってしまいました。
で、そのまま、結構長い間サルさんはおばあちゃんと暮らしてました。
でも、サルさんがいなくなったのも突然でした。
サルさんはよくおばあちゃんのスナックの手伝いをしていました。
スナックによく来る三十代くらいのカップルがいました。そのカップルの女性と、駆け落ちしてしまったようです。
じゃあカップルの男性は?というと。
サルさんは、男性を殴って、彼は亡くなってしまったらしい。
痴情のもつれ、というのか、サルさんが殴って、そのあとすぐ亡くなってしまったそうでした。
当然、事件だろうと思ったけど、事件にならなかった。男性のお母さんがそれを望まなかった。
男性も日頃、お母さんを殴っていたからだった。
もう男性のことで何かをする気力はなかったんだろうとか、居なくなってくれてよかったとお母さんは思ってるんじゃないか、とか、周りは言っていた。
私はどうしようもなく複雑になった。事件にするのが正しさなのかもしれないが、お母さんの立場からしたら助かったのかもしれない。
これは因果応報というべきなのだろうか。
一連のサルさんの出来事は、色々と考えることが多かった。ただ、サルさんが最終的に撲殺をしてしまうとは思ってもいなかった。
今思い出しても、あまりいい思い出ではない。