
【ショートショート】シカシもカカシもない!(640文字)
「シカシもカカシもない!」
明石部長がタカシを怒鳴る。
まるで瞬間湯沸かしだ。
「タカシが大きなやらかし?」
定時を前におめかし中の情報通の女性社員をお菓子で誑かし、冷やかし半分で事情を探ると、どうやらそれは、まやかしのようだ。
トラブルの原因は部長のすっぽかしである。
スケジュール管理をタカシに任し、いつも仕事は、ほったらかし。
机に書類を取り散らかし、大事なメモも、ほっぽらかし。
部下を夜更かしで働かし、自分ばっかし早帰り。
さらに自分を甘やかし、自らの“しでかし”はゴマカシだ。
聞けば明石は昔から、機転を利かし、弱点を見透かし、権力をひけらかし、巧みにそそのかし、何かをほのめかし、時には驚かし脅かしながら、部下を跪かしてきたらしい。
今回も部下を言い負かし、上への報告は不可視にボカして騙くらかし…。明石は、ミスを犯した証を闇に溶かしたのだ。
タカシもさぞかし愛想を尽かし、何かを蹴散らかしたい気分だろう。
しかし、割りかし「部下を生かし、気遣いを欠かしません」みたいな雰囲気に見えた明石部長が、そんなアヤカシだったとは…。
我が社の文化史に残る、肩透かし野郎だ。
「タカシ、ちょっと顔貸しな」
俺はタカシをなだめすかし、真相の解き明かしと、社内への種明かしを勧める。
「手を貸してやるから、明石の鼻を明かしてやろう」
「しかし…」
「タカシ…。シカシもカカシもない」
「え?」
「問題なのは、明石のノンデリカシーだ」
その夜、二人で飲み明かしたのは言うまでもない。
(了)
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