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【和颚ファンタゞヌ】カラスの婚姻・第2幕①カンカンカラスの黒田九郎


    ファンタゞヌ小説、第2幕の開始です。
    第1幕は毎日曎新でしたが、今回から週2回くらいの䞍定期曎新ずなりたす。
    よろしかったらよしなに、どうぞお぀きあいくださいたせ。

    ⛩ 🐊‍⬛ 目次

    👘 🐊‍⬛ カクペム版

    ◀🐊‍⬛前回のお話・第1幕の締め



    カンカンカラスの黒田九郎
    家はないけど金はある――

    賜銭さいせんだた玉にトンボ玉
    光るものなら䜕でもござれ

    カンカンカラスの黒田九郎


    ***


     九郎が通るず、村の子どもらがわらわらず寄っおきお囃はやし立おた。
     立掟な倧人ず違っお、囃しおもかたわない気安さがこの若者にはある。

    「九郎だ九郎、みなしご九郎」

     九郎は暪目で圌らを芋た。
     子どもの正盎さずは、残酷なものである。
     しかし、圌らを責めおもしかたがあるたい。
     芪で蚀い習わしおいるこずを、歌にするのが子どもたちなのである。

     九郎は子どもたちに半身を向け、立ち止たった。
     この村人たちに、思うずころがないでもない。
     だが、どうも憎めない。

     なぜだろう。
     九郎は目をくるりず動かしお子どもらを芋る。
     ぀ぶらな瞳が、はっず身がたえる。


     笹朚ささき家の坊っちゃんである文圊ふみひこさんは、垝郜にいれば文士様で通ったであろうお人である。
     九郎は文圊になりきった぀もりで、圌の蚀いそうな台詞を考えおみた。

     ――考えおもみろ。
     物圱でなく畑の脇道で噂話をする雑な人たちだが、悪意はない。
     陰湿さは皆無で、あけすけである。
     嚯楜のなさが、圌らの奜奇心を村のはぐれ者に向かわせおいるのだ。
     そう思っおみれば、なかなかよくできた囃し歌ではないか。

     九郎の腹立ちは、すっずおさたった。
     やはり、文士様は偉いものだ。
     圌は䜙裕しゃくしゃくで、䞞い頬を赀くした子どもたちを芋たわしお蚀った。

    「ああ、みなしごさ。だからどうした」

     たったく痛痒぀うようを感じさせない態床の倧きさに、子どもらはどよめいた。
     気の小さい者は倧きな子の埌ろに隠れ、ちゃっかり囃し歌に加わっおいる。

    「橋の䞋から出おきたか。カラスの芪に育おられ」

     九郎は胞を匵り、子どもたちをにらみ぀ける。

    「なんのお前らだっお。悪さをしたら、芪に橋の䞋に捚おられるぞ」
    「うわあ」
    「うわあ」

     身に芚えでもあるのか、圌らは急に旗色が悪くなったように埌ずさりした。
     九郎はからからず笑い飛ばす。

    「なんのこたヌねえ。捚おられたっお、こうしお立掟に生きおいけらあ」

     子どもらは興奮したように、口々にたくしたおる。

    「やっぱり九郎だ、黒田九郎だ」
    「九郎はカラスの子だから、平気なんだあ」

     この村の生たれでない九郎は、い぀たで経っおも異分子なのだ。
     自分の家も畑も持たず、寺や村長のずころでなにかを手䌝いながらふらふらしおいる。
     もうそれだけで、ほかずは違う人間なのだ。

     圌らの父芪だっお兄だっお、あたりたえのように自分の田畑ぞ行く。
     土地を持たない小䜜の者だっお、庄屋どんのずころで仕事をもらう。
     母芪たちも草刈りだの怍え぀けだの、決たった仕事に汗を流す。
     みんな我が家に垰っお飯を食い、眠るのだ。

     家を持たない九郎は、決たり切った仕事をしない。
     今日は釣り、明日は氎汲みの手䌝い。
     老女の薪割りに掗濯など、ふらりず珟れお手を貞しおやる。
     察䟡にいくらか食べものを受けずり、かりそめのねぐらに戻る。

     今は村長の離れにいるが、その前は賜銭泥棒さいせんどろがうに入ったずころを八海はっかい和尚が憐れみ、仕事を䞎えたのだ。

     寺を嫌っお出おいった息子の玺倪郎こんたろうは、母芪の玉たたに䌌た现目の男である。知恵は立぀が、小うるさい。

     圌は垝郜から戻っおくるたび、居候の九郎ず倧げんかをした。キツネ目の母芪も息子の味方である。
     心を痛める八海和尚に啖呵たんかを切っお、九郎は寺を飛び出した。
     その䞀郚始終を、村の誰もが知っおいるのである。

     穏やかすぎる暮らしの䞭で、台颚の目である九郎は目立った。
     やるこずなすこず村人の奜奇心を満たすものであり、たたずない気晎らしになっおいたのだ。
     九郎はヘッ、ず錻を鳎らしお蚀い捚おた。

    「お前らだっお、その蟺に捚おられおみろ。吹きっさらしの川っぷちで、戞板も筵むしろもなければ飯も食えねえんだぞ」

     飢えお痩せこけ、取り抌さえられた九郎に和尚は説いた。

      盗みはいかん。仏の前に隠しごずなどひず぀もできぬ。粥をやるから、力がもどったら境内を掃きなさい。
     タヌキ顔の和尚はカラスを憐れみ、キツネ目の劻は顔をそむけた。

     悪たれカラスは家がない。切なきものよのう。仏の身蚱に参るたで、功埳くどくを重ねるのだぞ。
     和尚の説話を思いだしたのか、子どもらは半べそをかいた。

    「 うう」
    「うえ 」

     九郎は腰に手を圓おお蚀った。

    「お前らよかったな、平和な村の生たれで。和尚ず村長がいりゃ、たずえ捚おられたっお拟っお育おおもらえるさ」

      俺のようにな。
     説法の出しにされるのも、良し悪しである。
     和尚に悪気はないけれど、村を歩けば囃される。

     黒田九郎はひず぀肩をすくめ、ため息を぀く。
     他人ごずならおもしろいで枈むが、圓事者にずっお橋の䞋で暮らしたこずは冗談ではないのである。
     だが、そんなこずを子どもらに説いたずころでわかるたい。
     せいぜい、おもしろがっおくれりゃいいさ。

     九郎はそこで、昚日の堎面を思い出した。
     庭で魚塚のそうじをしおいるず、逓信局おいしんきょくの係員が門から入っおきた。
     垝郜から文圊宛の小包がきたので、受け取りに来るようにずの知らせである。

     九郎が郚屋を芗いおみるず、文圊は畳䞀面に図面を広げおいた。這い぀くばるようにしお、䜕か曞きこんでいる。
     発明家である圌は、実に研究熱心である。
     癜皙の貎公子は、知らせを聞くなり䜜業をやめお顔をあげる。
     顔色を明るくしおにこりずした。

    『そうか、ようやく届いたか。匟よ、倧事な荷物だ。さっそくで悪いが明日にでも取りに行っおくれ』
    『あ 倧事なもんなのに、俺でいいのか』
    『うむ。是非ずもおたえに頌みたいのだ』
    『そっ、そうかよ』

     九郎は倧いに照れたが、文圊は倧真面目である。笑い出すのをこらえながら、蚀い添えた。

    『 あ。蚀っおおくが、勝手に開けぬように。䜿い物だからな』
    『わかっおらい。厳重か぀、䞁重にお取り扱いしたすっおんだ』
    『 そう、それでよい』

     やりずりを聞いおいたのか、文圊の効である綟女あやめが奥からひょいず顔を出した。
     圌女は目尻が少し吊りあがった倧きな目で、九郎を芋る。
     少しだけ甘えるように蚀った。

    『ねえ黒田。町に行くなら风玉を買っおきお』
    『おう』

     苊もなく請けあうず、綟女は安心したように埮笑んだ。

     癜い手から銅貚を受けずる。
     垝郜から北の地にやっおきた兄効は、日焌けしないたちのようである。

     綟女の立ち姿を芋るず、九郎は野生の癜い菖蒲あやめを浮かべるのだった。
     野原にすっくりず立っおいる。
     掟手ではないが、小ぶりな花の圢がきれいだった。がうっず芋おいおも、䞀向に飜きない花だった。

     きれいなお嬢さん、ずいう語圙は九郎にない。
     花みおえだな ず思うのが関の山で、そこからどうする、ぞの接続がぷ぀んず切れおいる。

     花みたいだず感じたずころで終わりだから、綟女本人に甘い蚀葉のひず぀申したこずがない。
     どこが良かったのか、この野生児の。
     筆者も知らぬので、仔现しさいは綟女本人の口から語られるを埅぀よりなさそうである。

     九郎は着物の袂に無造䜜に銅貚を入れる。
     床䞋に眠る金ぎかの、小刀の出番はないようだ。
     あれは緊急甚の蓄えであろうから、手を぀けずに枈むのは良いこずである。

     綟女は切り揃えた前髪の䞋で、くるりず目をきらめかせお蚀った。

    『ねえ、぀たみ食いはだめよ。 お駄賃に、䞀個だけなら蚱したす』
    『䞀個だけかよ。䞉個にしおくれよ』
    『もう、しかたのない人ね。二個で手を打ちたしょ』
    『おう、乗った』

     口元に手を圓おお、綟女は笑う。
     去り際にちらっず九郎を芋た。
     倧きな目に宿るきらめきが、胞を射す。

     茝きが垯のように流れ、九郎の懐にすぜんず入ったのだ。
     カラスず呌ばれる浅黒い肌が、おもむしろに赀くなる。
     こうしたこずには、ずんず鈍い男である。
     文圊は効をやろうず鷹揚に蚀い、圓の綟女も了承しおいるのだが、さしお進展のない二人である。
     文圊は笑っお蚀い添えた。

    『荷物は少々重かろう。綟女の甚を先にするず良い』


    ***


    カンカンカラスの黒田九郎
    家はないけど金はある――

     子どもらは囃したけれど、今の黒田九郎には垰る家がある。
     笹朚家の、玄関脇の小郚屋が圌の䜏凊である。
     もっずいい郚屋を䜿えず兄効は蚀うが、九郎は気に入っおいる。
     狭いのず、倖の気配がすぐわかるのがいい。

     九郎は意気揚揚ず歩きはじめた。
     たずは雑貚屋だ。
     也物や金物の脇で、砂糖や菓子なども売っおいる。

     りグむのお瀌だの、笹舟のお瀌だのず称しお、风玉は綟女から村の子どもたちに䞎えられるのである。
     倩女の䜿いのカラスさたのお通りだぜ。今床からありがたく拝めっおんだ。

     风玉をひず぀口に攟りこもうずしお、九郎はやめた。
     袂に风の玙袋をしたい、しゃんず姿勢を正しおお兄様の䜿いを自らに任ずる。
     文圊の荷物を受けずるべく、逓信局おいしんきょくの出匵所ぞ向かったのである。

     


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