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【和颚ファンタゞヌ】カラスの婚姻・第2幕⑭あやかしの誓い


    ファンタゞヌ小説、第2幕の連茉䞭です。
    曎新は基本氎曜日ず日曜日ですが、たたに遅れたり内容が倉わるかもしれたせん。
    よろしかったらお぀きあいくださいたせ。

    ⛩ 🐊‍⬛ 目次

    👘 🐊‍⬛ カクペム版
    ※⑊よりnote独自展開でしたが、無事接続を果たしたした。やれやれ、よかった。


    ◀ 🐊‍⬛前回 




     光の球は、二人の䜓を通り抜けた。
     すこっず手応えもなく駆け抜けお、しばし䞊空に留たる。
     二人の肩に、光の粉がたばゆく散った。
     文圊ふみひこはにこにこしお、手のひらの䞭で光球を操るように浮遊させおいる。

     光球は呌吞するように薄くなり、濃くなりしお動きを止める。
     やがお、止たった光は 文圊の手の動きに呌応するように、小さくなった。
     そうしお、圌の䜓の䞭におさたったのだ。
     文圊は、足がも぀れたように぀んのめる。たるで、操り糞が切れたようだった。

    「わあっ」

     九郎くろうず綟女あやめが手を䌞ばし、圌の䜓を受け止める。文圊は、匱々しく蚎えた。

    「  ず、  」
    「  え」
    「  氎、をくれ  」

     綟女は汲み眮いた氎をもっおきお、噚を手で支えお飲たせおやる。
     文圊は倧倉喜んで、実においしそうに飲んだ。それから、厠かわやヘ行きたいず蚎える。
     肉䜓を持぀人ずしお、圓然であろう。
     歩けないので、九郎が抱えお連れおいった。

     二人には、山ほど聞きたいこずがあった。
     文圊は答えようずしお口を開きかけたのだが、九郎ず綟女の顔を亀互に芋るず安堵したのか、ふたたび眠っおしたった。
     綟女は思わず九郎の顔を芋る。

    「 ねえ。今の、これっお 」

     九郎はぶんぶんずかぶりを振った。なにもかも知っおいるず思われおは困るのだ。

    「 しっ、知らねえ。こい぀は、こっちの領域じゃねえぜ」
    「あっちもこっちも、区別が぀くものですか」
    「神さんのこずは、俺だっお軜々しく觊れるもんじゃねえ」
    「 だったら、なぜ 」

     九郎の秘密が解けたず思ったのに、たたしおも謎だらけだ。
     良い知らせはひず぀――青ざめおいた文圊の頬に、血色が戻っおいる。
     圌らは兄䞊を䞁重に寝床に入れ、芋守るこずにした。

     空はがんやりず癜み始め、遠くで鳥の目芚めた気配がする。
     行燈あんどんの火は、い぀の間にか立ち消えおいた。
     先ほど目芚めたこずなど嘘のように、文圊は眠りこんでいる。

     二人は困惑したたた、すっかり倜が明けるたで圌に付き添った。
     兄の䞊に、䞀䜓䜕が起きたのか。
     たったく、わけがわからない。

     あのずき、䜕が起きたのだろう。
     庭から飛んできた、癜い光球はなんだったのか。
     倢ではないかず思うけれど、綟女もいっしょに芋おいるのだ。

     文圊の枕元に膝を詰めお芋守った薄明に、九郎は自らの正䜓を綟女に告げた。
     
     すべおの秘密を打ち明けた。
     心から謝り、頭を䞋げた。
     文圊をこのような状態にしおしたったのは、自分の咎ずがである。
     いかように責められおも、返す蚀葉はない。

     沈痛な衚情でう぀むく九郎に向けられた、綟女の芖線は揺るがなかった。
     圌女はやさしく、しかしきっぱりず蚀ったのだ。

    「自分ばかり、責めないで。これは、わたしのせいでもあるのよ」

     九郎は匟かれたように頭を䞊げた。

    「けどよ 」

     綟女の目は、深い沌のように䜕かを呑みこんで静たり返っおいた。
     圌女なりに眠れぬ倜を抱え、思いあぐねる時を過ごしおきたのだ。
     綟女はささやいた。

    「最初に、眪を犯したのはだあれ」
    「 っ」

     九郎は背䞭を䞞め、口ごもった。䞊目づかいに綟女を芋た。その目は静かな茝きをたたえおいた。

    「思い出しおご芧なさい。兄さたを助けお。わたしに頌たれたから、あなたはそうした。そうだったわよね」
    「 けど、あの時はよ 」
    「こんなこずになるずは、思わなかった。みんながそう思ったのよ。兄さたでさえも。発明の結果、魂たで幻燈に入っおしたうずは思わなかったんでしょう」

     この屋敷を蚪れたばかりの頃を、九郎は思い返した。
     地䞋牢のような病宀で、痩せこけお目ばかりギラギラさせおいた文圊の姿を。
     確かに圌は、あのずき呜が危うかった。

    「だが  」
    「 そう、思いもかけず、倉なこずになっおしたったわね。わたしは思ったの。このたた䞉人で生きおいくよりなければ――わたしは 」

     九郎はぎょっずしお傍の女人にょにんを芋た。倩女のような姿に、倜叉の気配を宿した䞀個の嚘を。
     圌女は静かに蚀った。

    「もう、村の人たちを隙しお生きるよりないわ」
    「うえっ」

     たさかの発蚀でした。
     あやかしず連れ添う決意をした少女は、枅濁あわせ持぀匷さを持぀に臎ったのです。

    「あなたず兄さたずわたしず。食べものばかりでなく呜も分けあっお、䞀生秘密にしおいくしかないず思ったわ。それしか、道がないのなら」

     九郎は息を呑んだ。
     巻きこんではいけないず思っおいたのに、この痺れるような胞の熱さはどうだろう。
     この女は、人ずしおの穏圓な生き方を捚おおたで共に歩んでくれようずいうのだ。

    「 綟女  」

     自分たちが魚塚に匕かれおさたよっおいる間、綟女にも修矅の時があった。
     それは圌女の心の䞭で、ひそかに螏み固められた道筋だった。
     誰にも盞談できないたた、綟女はたったひずりで考え、決意したのだった。

    「わたしだっお考えるわよ。あなたず兄さたず、䞀床にいなくなった堎合のこずだっお。いろんなこずを、考えたわ――」

     九郎も少し冷静になった。思い぀める綟女を匕き戻すために、蚀葉で支える。

    「ただ早いぞ。そこたで事態は悪くねえ。なんずかならねヌか、考えようぜ」

     綟女はそこでにこりずした。性根が据わっおいる。
     九郎は圌女を惚れ惚れず芋぀めた。

    「 そうね。あなたたちは垰っおきおくれた。それだけでもよかったわ。兄さたがご無事なら、さらに良し」

     九郎は文圊の顔を芗いお蚀った。

    「顔色なんか、だいぶいいぜ」
    「䌑めば、少しはよくなるかしら」
    「䜕も食っおねえしな」
    「そうね。お粥を甚意しようかしら」

     綟女は䞍意に肩の力を抜いお、九郎に蚀った。

    「 ねえ。さっきの兄さた、倉だったわよね」

     九郎は即座にうなずいた。そしお、胞を叩いお請けあった。

    「あれは神気だず思うぜ 悪いもんじゃねえ。あやかしの俺にでもわからぁ」

     綟女は倫ずなる男に目を向けお、基本的な疑問をぶ぀けた。

    「 あなた、わたしず觊れあう分には䜕事も起こらなかったわよね。 なぜなの」

     九郎はもごもご蚀い蚳がたしく、畳の目を指で掻いた。

    「文圊兄ぃずは、いったん混ざっちたったからよ」
    「どうしおそうなったの」
    「わかんねヌけど。死にかけた奎は、生きるず死ぬの境目に行くんだ。その䞊、文圊兄ぃには"壁"がなかったんだ」
    「 "壁"っおなに」

     綟女はきょずんずした。
     人の身に壁があるずか蚀われおも、芋圓が぀かない。
     九郎は続けた。
     
    「簡単に誰ずでも混ざらないように、お互いの間に芋えねぇ境界――"壁"みおえなもんをこしらえおあるのさ」
    「あら。だから、あなたずわたしは混ざらなかったのね」
    「そういうこった。文圊兄ぃは開けっ攟しの家みおヌなもんで、悪いもんが寄っおきたら困るからよ。俺だけ通れるようにしお塞ふさいだんだ」
    「そうだったの」

     文圊の回埩は望たしいこずだったが、それは同時に九郎のあやかしずしおの本胜に火を぀けるこずにも繋がった。
     あやかしは本来、人や動物のように飲食しない。生きものの呜を吞っお糧かおにするのだ。

     文圊の呜は、茝いおいた。
     開けっぱなしの奜意ず慈愛をもっお、党力で九郎を受け入れようずしおいたからだ。
     抵抗するのは難しかった。
     そしお、二人は接觊した。

     呜は混ざり合い、文圊はあちら偎に匕かれおいった。死なせたいず自らの呜を差し出した九郎も、続いお倒れた。
     事件を思い出し、九郎は頭を垂れた。
     神が関䞎しおいるこずなど知らないから、自らを責めるのだった。

    「 俺は半端者だ。あやかしず人間の間に生たれた 。自分でもどうなるか、わからねえんだ」

     そばの女人にょにんは繰り蚀など聞き流し、画期的な提蚀をした。

    「今、詊しおみればいいのじゃない」
    「――はっ」
    「わたしが芋おいるから、兄さたに觊っおごらんなさい」
    「そっ 、そんなこずしたらよ 」
    「あなたねえ。この先、兄さたず䞀生觊れずに暮らしおゆけるの」
    「うぐっ 」

     蚀葉に詰たる九郎に、綟女はおきぱきず持論を述べた。
     男どもが䞍圚の間に、圌女なりに考え抜いおいたのだろう。

    「どこたでが安党なのか、きちんず知る必芁があるず思うの。可胜なら、わたしの呜を分けおあげるずころだけど 、それは無理のようね」

     綟女は考えおいたのである。
     もしも九郎が人間から呜を吞わずにいられないずいうのなら、自分のものも䞎えよう。
     文圊の負担を枛らせば、䞉人でどうにかやっおいけるかもしれないのだ。

    「あっ、綟女  」
    「きっず倧䞈倫よ。あなた、人の食べものも食べおるじゃないの。お逅でもなんでも、奜物をたくさん䜜っおあげる。食事で補えるなら、䞀局安党よ」

     九郎はたじたじず綟女を芋぀めた。
     頌りになる。たのもしい。
     そしお、さすが開明の兄を持぀だけある。
     倧倉に合理的で、科孊的な考えの持ち䞻であった。

     ――この機をずらえ、確かめるべきである。圌女はそう蚀っおいる。

    「たずは詊しよ。いきなり掎んだりしないでね」

     抱き぀くなんお、いきなり過ぎるわ。兄さたは、なぜそんなこずをしようずしたのかしら。
     自分たちのこずを棚に䞊げ、綟女はぶ぀ぶ぀蚀っおいた。

     呜を吞われるなどずいった、自分の䜓質を知らない文圊はずいぶんず無防備であったのだ。
     悪しき存圚に目を぀けられたら、もっず倧ごずになっおいたかもしれない。
     無事であるこずだけでも、感謝しなければならないのだろう。

     そうした考えであったから、綟女はあやかしである九郎を責めなかった。むしろ、圌の䞭の守護の力を認めおいた。
     九郎がいおくれお、よかったのだ。
     芋えぬものから守るこずなど、人間には想像もできないのだから。

     綟女に釘を刺された九郎は、甚心しおそろそろず手を䌞ばす。
     内心びくびくものである。
     文圊の額に、そうっず指先だけを觊れさせる。

     祈り、冷や汗、懇願。
     文圊兄ぃの呜を奪いおぇなんお、金茪際願わない。
     頌むぜ。頌むから  。
     
     しかし、身がたえる九郎ず、息を぀めお芋守る綟女の前で――怪異は起こらなかったのである。
     文圊は倉わらず、おだやかに寝息を立おおいた。
     九郎はくたくたず萎しおれ、綟女に叱咀されたのだった。

    「ほら、倧䞈倫だったでしょう。さっきの神気で䜕かが倉わったのよ。よくわからないけど、たぶん心配ないわ。お粥でも炊くわね。兄さたを芋おいお頂戎ちょうだい」

     綟女は九郎にそう蚀い぀け、すっくず立っお勝手ぞ向かった。実に凛々しいこずだ。
     九郎はぐんなりず溶け厩れ、文圊の入った垃団の瞁にすがった。

    「文圊兄ぃ  」

     芋慣れた癜皙はくせきの面が、少し遠くぞ行っおしたうような気がした。

    「 なんだ。泣くな、匟よ  」

     そう蚀っお、やさしく笑っおほしかった。
     やさしくないあやかしの者に、ひどくやさしい兄であった。

     やさしすぎお、神に隠されおしたった者。
     倩狗に奜かれ、剣術を教えられた者。倧蛇に捧げられた者。河童ず遊び盞撲を取った者。

     䌝説の息づく暗闇が、方々に生き残っおいる時代であった。
     電燈のたぶしさが、暮らしの隅々から怪異を駆逐する前の鄙ひなであり、寒村である。

     九郎は、焌け぀くほど深く己に誓った。
     笹朚家ささきけの者たちから、これ以䞊䜕かを倱わせおはならない。

       そうだ。
     たずえ、どんなこずがあろうずも。
     䜏みかを倱い、ふたたびあやかしに還ろうずも。
     この兄効を傷぀ける者の存圚を、己は決しお赊しはしないだろう。
     それが、誰であろうずも。

     九郎の目は、深い決意に沈んだ。
     その奥にはゆらりず、消せない熟火が揺れおいた。
     自らの家族を、守る者の火である。
     火を守る――即ち、火のぬくもりを囲む者たちを家族ず称する。

     九郎には、呜を賭しおも守りたいものができた。
     それがあやかしず圌ずを、明確に隔おるものずなったのだ。
     
     


    ▶ 🐊‍⬛ 続き

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    呌んでいる確かに君はいたんだず知り埗るこの身抱きしめ眠る 文䜓は短歌・散文詩・小説のあいだ。 根幹は存圚論。 衚出はSF幻想文孊児童文孊ノワヌル構造神話など。 https://kakuyomu.jp/users/yellow_snap_dragon

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