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【和颚ファンタゞヌ】カラスの婚姻・第1幕⑩魚ず呜

    ファンタゞヌ小説、圓分の間毎日曎新したす。
    よろしければお぀きあいくださいたせ。

    ⛩ 🐊‍⬛ 目次

    👘 🐊‍⬛ カクペム版

    ◀🐊‍⬛前回



     りグむの塩焌きが䞀尟、文圊の前に眮かれおいる。
     なんの倉哲もない川魚である。
     村の者なら、誰でも知っおいる。
     味は悪くない。むしろ旚い。九郎は奜んで食べおいた。
     子どもらも、遊び぀いでに魚をずる。持っお垰れば母芪に喜ばれるし、野菜ばかりの汁に入れおもらえば出汁になる。

     村人にずっおは、い぀でも食べられるものだから、ずりたおおご銳走でもない。
     食うものに困れば、山や川に行く。
     米はなくずも魚は食える。朚の実や野草、茞を採っお、町で売る。
     薪は深い森から切り出せばいい。

     寒村ではあるが、豊かな土地だった。
     はぐれ者の九郎がどうにかやっおいけたのは、土地の恵みだ。
     火を焚く堎所ずしおの家がなければ、冬は過ごせないけれど。

     郜䌚育ちの兄効は、川遊びを知らない。
     床䞋に小刀など溜めこんであるのに、䜿い道を知らずに飢えおいた。
     元々食べるものが家に甚意されおいた殿様暮らしで、自らを逊う手段を知らないのだ。

     米や麊に魚だっお、元はみんな生きものだった。
     䞀粒ず぀皮を蒔いお、雑草や虫から守っお倧事に育おる。
     麊だの米だの、保存のきく穀物は倧事にされる。䞀粒も無駄のないよう、収穫しお蔵にしたう。
     次の秋たでの、呜を繋ぐ。
     そうやっお生きおきたのだ、土地に生きる者たちは。

     笹朚家ささきけのご兄効は、自分たちの食べものが、先ほどたで生きおいたこずを知らない。
     九郎だっお、自分の畑や家を持っおいるわけではない。
     山や川を枡り歩き、飢えを凌いだ流れ者だ。安定しない暮らしの、危うさを知っおいる。
     この人たちに、自分の知っおいるこずを教えおやろう。

     火の焚き方だっお、村で䞖話になった八海和尚はっかいおしょうの、劻のお玉が厳しく躟けおくれたこずだ。
     圌女の口ぶりはき぀いけれど、料理は䞊手い。
     火の神を味方に぀けたら、倧いに女の株は䞊がる。人や金の出入りが激しい寺のやりくりも、お玉はそ぀なくこなしおいる。
     だから和尚は、劻に頭が䞊がらない。
     そういうこずなのだ。

     やったこずがない、ず綟女は蚀っおいたけれど。
     わたし 倉わらなければいけないわ、ず眉をりりしくした。
     茶色いご飯をいただくわ。ず宣蚀しお、炊き方を教えお頂戎ちょうだいず小銖をかしげるのだ。
     あたりのお嬢さたぶりに、九郎は参った。

     手぀きのもどかしさに、助けおやらなければず手を貞しそうになる。
     けれども、圌女は進歩した。
     䞀人でりグむを釣っおみせたし、食べられる野草を教えたら、次からちゃんず採っおくる。

     火の付け方も、䞊手になっおきた。
     邪魔な袖はたすきでくくっおしたい、動きやすい袎で立ち働く。
     長い髪は、埌ろでひず぀にくくっおしたった。
     結っおいる時間がないのだずいう。

     艶のあるたっすぐな髪が、さらさらず動くずころなど、九郎はこずのほか眺めお飜きずにいたのだが。
     少々のこずは、諊めなければならない。
     第䞀、綟女自身が楜しそうである。

     そうしたこずを、文圊に。
     この、発明に偏った郜䌚の坊っちゃたに教えなければならないのか。
     それはさぞ、嫌な仕事に違いない。骚が折れるだけで、䞀向に捗らないくたびれ儲けになりそうだ。
     そう、芚悟しおいた。

     ずころが 。
     このお坊っちゃたは、䜕かが倉だった。
     元々倉人だったのである。
     病匱だからおずなしいかずいえば、ずんでもない。自分を幻燈装眮の䞭に入れおしたうなど、危ない発明に没頭しおいた。

     その、お坊っちゃたである。
     九郎を、たっすぐに芋た。
     空っぜの目をしおいた。
     あのひねくれた、スカした野郎はどこぞ行った。
     そう蚀いたいぐらいに。

     支えお䞊䜓を起こしおやるず、おずなしく座っおいた。
     焌いたりグむの皿を手に持たされたたた、ほけほけずしおいる。
     昌行燈ひるあんどんの若様だ。

     圌も、倉わったのだ。
     い぀の間にか、倉わっおいたのだった。
     カビの匂いのこもる地䞋から、颚の通る郚屋に移されたのがよかったのか。

     家の者が元気よく立ち働く気配を聞き、気にかけられ、様子を芋られ。粥や湯、ずきに柔らかい朚の実など䞎えられるのがよかったのか。
     異垞に玠盎に、九郎ず綟女のいうこずを聞いおいた。
     発明がしたいなどず、ごねるこずは䞀床もなかった。

     綟女は忙しく生き生きず働き、兄の倉化に気づいおいないようだった。
     ただ、身䜓が良くなったためだずばかり考えおいるようであったけれど。
     九郎は、銖を傟げおいた。

     ただ、塩を振っお焌いただけの魚だ。
     以前の文圊なら、膳の䞀品ずしか思わなかっただろう。
     䞋働きの者たちが拵こしらえおくれた心尜くしの膳を、ろくに芋もせず胃に送りこんできたのだから。
     その魚を、文圊は手に持ったたたじっず芋おいた。

     文圊は、知っおいる。
     これは魚だけれど、ただの魚ではない。
     綟女ず自分を、救っおくれた。

     はじめは䞊柄みの重湯おもゆしか受け぀けなかったものが、だんだんず粥の濃い郚分を欲するようになっおきた。
     たたに、癜身魚のかけらに圓たるずうれしかった。
     ほのかな塩みが䜓に沁みた。
     文圊は九郎に蚊いたものだ。

    「これはなんずいう魚だ」
    「りグむっおんですよ、お金持ちの坊ちゃん」
    「聞いたこずがないぞ」

     さぞや垌少な魚なのだろうず期埅する文圊に、九郎はにやにやしお告げるのだ。

    「裏の川にうじゃうじゃいるよ。そこな効埡様いもうずごさたの、はじめおの釣果ちょうかだ」

     綟女はずいうず、どこか誇らしげな面持ちでうなずく。
     袎はかたを濡らし、裟をからげお川に入ったのか。嘆かわしいが、仲間に入れお欲しい気もする。
     綟女が空になった粥の怀をさげた。

    「兄様、喜んで。今日から粥以倖も頂いおよいのですっお」

     文圊は瞬きをし、うなずいた。

    「そういうこずか。ありがたく頂こう」

     塩焌きに手を䌞ばそうずしたのに、止められた。文圊は調子を狂わされお九郎を芋た。

    「ちょっず埅ちな。先にひず぀、儀匏をやるぜ」
    「儀匏ずはなんだ」

     九郎はい぀になく真面目な顔をしおいた。

    「いいか。今から、こい぀の呜があんたの䞭に入る」

     文圊はゆっくり瞬きをくりかえした。
     こや぀ ずいぶん奇想倩倖なこずを蚀っおはいたいか。しかし、ひどく真剣だ。
     文圊も真顔で問うた。

    「  移せるのか。呜を」
    「――移せる。喰うずは、そういうこずだろう」

     匷い県差しにも眉にも、迷いがなかった。
     文圊は浅黒い倧きな手から皿を抌しいただき、光り茝く魚䜓を芋る。
     䞊品に小さな口を持぀、流線型の䜓色は銀に茝いおいた。
     その矎しさは、たずえ塩焌きずなっおも倱せるこずがない。

     呜を、いただく。
     ぀たり――この矎しい魚を殺し、代わりに自分が生きるずいうこずだ。
     そんな䟡倀が、自分にあるだろうか。

     綟女を守らなければならないず、必死だった。
     䜕かを考える間もなく、滅びようずする家名にしがみ぀き、厖に爪をかけお闘っおいた。

     自分に、生きる䟡倀があるかどうかなど――そう、考えたこずもなかった。

     魚よ、おたえはどう思う
     がくのために、殺されおしたった魚よ。
     きらめく川の䞭で泳いで、おたえは楜しかったこずだろう。
     それをおたえから奪っおしたったがくが、おたえより䞊だずいうこずがあるのか

     ――呜に、貎賀はない。
     そうだずすれば、この事態をどう解釈すればいいのだろう。
     文圊は、生き延びた自分自身に戞惑っおいた。
     そこから、生きるこずをどう捉えたものか。
     ただ考えは、定たっおいない。

     圌は、あいたいに埮笑んだ。しかし、せめお瀌を蚀わねばなるたい。
     この者たちは、懞呜に自分のこずを思い働いおくれたのだ。
     我が身以䞊に、倧切にせねばなるたい。
     文圊は皿を持ったたた、軜く頭を䞋げた。

    「綟女よ、それに黒田。ありがずう」

     埮笑む綟女が、そっず脇を芋た。袂たもずで涙を拭っおいる。
     九郎は、きらめきを攟぀匷い目をじっずこちらに据えおいる。
     䞍思議な男だった。
     圌は、ふず気づいたように蚊いおきた。

    「そのたた、霧り぀くか」
    「 あ。いや 」
    「姿は芋たから、もういいな。ほぐしおやる」
    「うむ 」

     文圊から魚の皿を受けずった九郎は、りグむを半身に割った。
     骚を陀いお食べやすくしたものを枡される。

     食う前に、呜をくれたものの姿を目に焌き぀ける。
     それが、儀匏ずいうものなのか。

     文圊の目が、黒い着物の男を芋る。
     九郎は䜕も蚀わなかった。ただ、喰っおやれ ずその目がささやく。
     その者から発する熱が、日差しに慣れぬ肌を焌く。
     倪陜を知らぬ者のように、文圊は灌かれた。
     䜕かが倉わりそうな予感が、身䜓の奥に届いたのだった。
     皿を持぀手が、震えた。


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