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詩「折られもせず傷みたい」



    七夕のあと
    コンビニの前で
    笹だけが
    まだ立っていた

    短冊はもう
    半分
    雨にふやけて
    願いごとじゃなく
    濡れた舌みたいだった

    会いたい
    しあわせになりたい
    ずっといっしょにいたい

    そういう
    ありふれたやつほど
    水を吸って
    読めなくなるのが早い

    笹の骨は
    思ったより白くて
    細くて
    さみしいね

    あんなので
    ほんとうに
    空まで届くと
    信じていた子の指まで
    すこし
    透けて見えそう

    ぼくは
    何も結ばない

    きみの名前なんか
    吊るしたら
    風のたび
    安っぽく鳴ってしまうから

    だから
    ストローを噛んでいた

    やわらかい月みたいな
    歯のあとをつけて
    言えなかったことだけ
    口のなかで
    つぶしていた

    笹の枯れた先
    さみしい さみしい

    それでも
    まだ
    空のほうを向いているのが
    かなり
    気持ち悪い

    もう誰も見ていないのに
    願いだけ
    やめそこねたみたいで

    ぼくも少し
    似ている

    かなわなくていいから
    腐らないでほしいなんて
    そんなの
    いちばん
    子どもっぽいのに

    夜風が吹くたび
    短冊のはしが
    かすかに鳴って

    それが
    祝福じゃなくて
    傷のうすいこすれに
    聞こえる

    七夕のあと
    コンビニの前で
    笹だけが
    まだ立っていた

    さみしい笹の骨

    ぼくは
    ああいうふうに
    折られもせず
    かなわぬまま
    先っぽから
    静かに傷みたい




    七夕なので
    似ているようで
    少し違う詩を
    ふたつ置きました

    同じ願いを
    書いたはずなのに

    短冊は
    それぞれ
    別の場所で濡れていく

    会えるふたりより
    会えないまま
    光ってしまうもの

    今日は
    そのほうを
    書きたかったのかもしれません

     
     
    まっしろしろろ。 魔法のステッキを握りしめて嵐が丘に。 詩、短歌、川柳、イラスト、写真を置いています。 甘くて痛いもの、静かに残るものが好きです。 どうぞよろしくお願いいたします。

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