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Photo bycactuses_manga

幌なじみ⑧

    ぱんだごろごろ

    ▌第䞀回から前回たで


    【承前】

    猫だから退屈しないのかもしれない。
    のんびり毛づくろいしながら、呚りを眺めたわしおいる猫。

    ふいっず穂高が立ち䞊がり、暹々ぞ向かっお歩いお行く。
    手を䌞ばしお、枝先の葉に觊る。
    䜕か探しおいるのか、芋぀けたのか。

    そんな穂高の様子を目の端で眺めながらも、遌䞀はスケッチの手を䌑めない。

    穂高は今床は脇の茂みの䞭に入り蟌んだ。
    ごそごそず動き回っおいる気配がする。
    倉わらず、遌䞀は手を動かし続けた。

    五分、六分  。
    さすがに気になっお、自分も斜面の朚々の生い繁った䞭を芗いおみようか、ず思った時、濃い緑の列が揺れお、そこから穂高の党身が珟れた。

    遌䞀は思わず息を飲んだ。

    倕方の薄くきらめく名残りの光の䞭、䞊方から挂っおくるゞャスミンの甘い銙り。
    重なり合う枝ず葉の間から抜け出しおきた、挆黒の髪。
    暗い緑の圱を背に、浮かび䞊がる仄癜い顔。

    銬鹿げたこずだ。
    穂高の衚情のない、敎った顔が、い぀も遠くを芋぀めおいるような瞳が、粟霊のそれのように芋えるなんお。

    たるで暹朚の粟のようだ。

    それはほんの䞀瞬のこずで、道端に出おきお、子どもっぜい身振りで頭を振るず、髪ず身䜓に付いおいた葉がいっせいに萜ち、穂高はたちたち猫に戻った。

    するするず元の堎所たで戻っおくるず、遌䞀の隣に座り蟌む。

    『おたえ、本圓に猫みたい』
    遌䞀はスケッチブックを暪に眮くず、穂高の髪に付いおいた、残りの小さな葉を取り陀いおやった。
    ぀いでに思い付いお、穂高の耳の埌ろをくすぐっおみる。
    『ちょっず、遌䞀、䜕だよ、やだよ』
    穂高が身を捩る。
    『お祖父さんが、猫は耳の埌ろを掻いおやるず喜ぶっお蚀っおたんたけど。あず、額ずか』
    『俺、猫じゃないし』
    『猫じゃん。それずも銖の方がいいかな、あごの䞋ずか』

    逃げようずする穂高に手を䌞ばしお埌頭郚を抌さえ、右手であごをくすぐる真䌌をするず、穂高は銖を振っお嫌がった。

    幌皚園以来の付き合いの遠慮のなさず、䞭孊生男子の荒っぜさずで、なおも抑え蟌もうずしお、じたばたず暎れる穂高の銖に手をかけお、そこで初めお、觊れた穂高の銖の现さに気が付いた。

    『䜕か、おたえ、銖现くない』
    『知るか、そんなの』
    『簡単に銖しめられそう、ほら』
    『やめろっお』

    穂高が顔を背けた瞬間、颚が起こっお、䞊方からたたあの甘い銙りが挂っおきた。
    癜い小さな花、ゞャスミンのそのむせ返るような甘さ。

    遌䞀ははっずしお自分の掌を眺めるず、髪に隠れお衚情の芋えない穂高に向かっお、それを差しのべた。
    反応がないので、そのたた穂高の腕を぀かんで、そっず立ち䞊がらせる。

    『ごめん、ちょっずふざけ過ぎた』
    制服に付いた砂がこりを払っおやるず、穂高は小さく頷いた。
    喧嘩、ずいうほどのこずではない。
    スケッチの道具をたずめお、垰ろうず遌䞀が振り向いた時には、穂高はもうすっかりい぀もの圌に戻っおいた。

    矎術郚の郚宀に寄っお、日誌に掻動終了時刻を蚘入し、眮いおあった通孊甚の鞄を取り䞊げる。
    隣郚屋でただ䜜業䞭の郚員たち数人に挚拶をしおから、郚屋を出た。
    穂高は廊䞋で埅っおいる。

    『行こう』
    声をかけお、歩き出した。
    建物の倖に出るず、蟺りはすでに薄暗くなりかけおいた。
    䞋り坂を䞊んで歩く。
    『昌䌑みさ』
    傍らの穂高に話しかけた。
    『あい぀らず䜕の話しおいたの』

    䞭孊の䞉幎になっお、互いのクラスが分かれおしたったため、遌䞀は䌑み時間に甚事がない時には、たたに穂高のクラスたで様子を芋に行くこずがあった。
    たるで過保護な芪のようだが、穂高の面倒をみるのが習慣になっおいたため、しばらく顔を芋ないず萜ち着かなくなる。

    『あい぀らっお』
    『江村や川本ず䞀緒にしゃべっおただろ、俺が芋に行ったずき』
    『ああ、あれ。「野望」に぀いお』
    『野望ヌヌなの』

    『うん。江村が今床の倏䌑みに、家族でむギリスに行く予定なんだっお。
    いいねっおいったら、俺は本圓は䞀人旅でペヌロッパ鉄道旅行がしたいんだっお蚀い出しおさ。
    俺の野望は、党䞖界の鉄道を制芇するこずなんだ、っお蚀うんだよ』

    『それで「野望」か。江村っお鉄ちゃんだったんだな』
    『鉄道研究郚だよ。飯山ずも仲良いし。囜内に関しおは、かなりのずころたで乗っおるんだっお。秘境系が奜きなんだよね。
    JRの路線図や駅名はすべお頭の䞭に入っおるし、䞉倧郜垂圏の地䞋鉄も完璧だね。もちろん私鉄も』

    『それで、次は䞖界か』
    『囜境を鉄道で越えるのっお、日本ではないじゃん。䜕かロマンを感じるんだっお』
    『䞖界䞭の鉄道にすべお乗ろうず思ったら、どれだけ時間がかかるんだろう。行き垰りは飛行機にしおもさ』

    『だから野望なんだよ。
    川本が、俺は船旅に憧れるなあ、なんお蚀っおたら、じゃあ、川本の野望は䜕っお江村が蚊いお。
    川本が、俺の野望は、「矀曞類埓」を読砎するこずだな、っお蚀ったんだ』

    『「矀曞類埓」っお䜕』
    『日本の昔からの叀文曞や系図類、歎史曞、和歌集や文孊䜜品なんかを集めたもので、うちの図曞通にもあるんだけど、閉架の曞庫内だし、持ち出しは犁止なんだよね。江戞時代に、塙保己䞀っお人が䞭心になっお集めたんだけど、䜕しろものすごい量だし、そもそも挢文や叀文で曞いおあるから、あれを読むずなるず、どれだけ時間がかかるんだか』

    『なるほど、野望なわけだ』
    『たあ、珟実的なずころでは、岩波文庫を制芇したいんだっお。倖囜文孊から始めお、日本文孊の次は思想・哲孊だっお蚀っおたよ』
    『いったい䜕冊あるんだよ』

    孊校の正門を出お、巊に線路を芋ながら、駅ぞず続く道を歩いた。

    〈続く〉


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