
その男は・・・創作大賞 応募作
新ジャンル新感覚(読む映像) ポエム風 Qショット
タイトル:その男は・・・
■その男は このスーパーで時々見かける
その男は 初老 おそらく62歳だ
その男の姿は よれよれの灰色のスーツ
ホームレスのような汚らしさや貧しさは感じられず無骨者ではない
ベルトは閉めているようないないような
ずり落ちてしまいそうな雰囲気を醸し出し妙に姿勢のいい佇まいだ
その男は ある特定のレジの女性がいると長居する
特に何かするわけではないが憧れているのだろう まだまだ現役だ
俺は、それ以外にその男の重要な情報を知らなかったが
ある瞬間 特ダネ情報を入手した
その男が 下を向いた瞬間 よれよれスーツと同系色の中折れハットが床に落ちたのだ
その男の頭は見事なバーコードだった
セルフレジに通せば
『ピッ』と かなりいい音で快音が鳴ってしまいそうな雰囲気だ
その男の値段はいくらだろう?と想像してしまう
■とある 雨降りの夜 俺は あのスーパーでその男を見かけた
いつもの よれよれ灰色のスーツだ 両肩のあたりが濡れている
傘を持っていないようだ 近所にでも住んでいるのだろうか?
その男は どこか寂しそうな顔だった
たぶん 今日は憧れのレジ係の彼女がいないからに違いない
その男は そんな日は 大胆な行動に出る
食品売り場の惣菜にまるで匂いを嗅ぐかのように顔を近づけるのだ
その男は 老眼なら手に持った惣菜を遠ざけて値段や原料を吟味するだろう
しかし その男は 顔を近づけるどころか目と鼻を近づけ口を開けてジロジロ見ているのだ
ラップがかかった発泡トレーとはいえ 俺はヨダレをこぼしたりしないだろうな?と その男に気付かれないように横目で盗み見ていた
■俺は移り住んだこの街で不思議な体験が増えた
俺の年齢は 30歳 独身 家賃5万円 築30年のボロアパートに住んでる
俺の仕事は 探偵ではない しがない普通のサラリーマンだ
最近 全く見知らぬ不特定多数の女性に挨拶される
仕方がないので返事を返しているが 全く腑に落ちないというより むしろ気持ち悪いのだ
俺は商店街を散歩していた 20代後半の美人に挨拶された
いつも通り返事を返したが不審な顔をした俺の表情を読み取って
「刹那さんじゃないの?」と問われて「違います」と答えた
「えええええぁっ! 顔も声も同じだよ ホントに違うの?」
「違います!!!」
「えーーーー! 声も世の中には似てる人がいるもんだねぇ」
俺はこれでようやく気が付いた この街に俺と似てる人物がいることを
そいつは誰だ?誰なんだ?・・・
■その男の正体
俺はやがて 同僚から 駅前で見かけたとか コンビニで見かけたとか 日暮里で見かけたとか言われるようになった
持ってる鞄まで同じだったと言われた 今まで一度も日暮里になんか行ったことがない 気持ち悪い あり得ない
そう言えば その男も同じような黒いショルダー鞄を持っていた よれよれスーツが印象強く気が付かなかった
俺はいきつけのコーヒーショップでパソコンを開いた瞬間に頭に閃光が走った
俺のドッペルゲンガーがこの街にいるんじゃないかって!
俺のドッペルゲンガーは 見る人によっては俺と同じ30歳に見える
俺が見えている あの男は その男は 62歳に見えるが未来の俺の姿なんじゃないかって
いや待てよ
俺が住んでる この場所は 道を挟んだ向こう側は 日暮里だ
読み方を変えれば 「ひぐれざと」だ
word:かっつぇimagination