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C.V.Orbit

    <あらすじ>
    声が高いことを理由にいじめを受け、声優の夢を諦めた高校1年生の田浦凌空は、高校入学後クラスメイトである須和光汰からの「声優向いてると思うけど」という言葉をきっかけに、再び声優を夢見る。しかし茨城県高萩市に住む高校1年生には、声優を目指す環境が用意されていなかった。そんな中、凌空と光汰は、アフレコに挑戦できる場所を自分たちで用意しようと「アニメ制作同好会」を立ち上げる。校長からの「文化祭で1つでも賞を取らなければ1年で活動終了」という壁を乗り越えるため、仲間と共にゼロからアニメを作り始める。——これは、人気声優を目指す凌空の最初の物語。

    <登場人物>
    ・田浦 凌空(たうら りく):月野高校1年1組。アニメ制作同好会・声優担当。幼少期から声優を目指していたが、中学時代に声が高いことでいじめられ1度夢を諦める。高校で出会った光汰の一言をきっかけに、再び声優を目指し「アニメ制作同好会」を発足。
    ・須和 光汰(すわ こうた):月野高校1年1組。アニメ制作同好会•脚本担当。トラウマがあり女子に苦手意識を持っている。
    ・五十嵐 峻(いがらし しゅん):月野高校1年5組。アニメ制作同好会•声優担当。低くカッコイイ声を持つモテ男子。父親は有名な研究員。順風満帆に見えるが、ある秘密を抱えている。
    ・彩坂 美月(あやさか みつき):月野高校2年4組。アニメ制作同好会•アニメーター。凌空の幼馴染。独学でショートアニメを制作しSNSに投稿している。
    ・鴨志田 凌(かもしだ りょう):月野高校社会科教諭・2年1組担任。アニメ制作同好会の責任者。ノリは軽いが生徒思いでみんなから慕われている。
    ・双葉 琳香(ふたば りんか):月野高校2年1組 。全国高校美術コンクール金賞受賞の実力派。アニメ制作同好会に助っ人として参加する。
    ・新藤 進(しんどう すすむ):月野高校3年。演劇部部長。演劇部を全国優勝に導いた立役者。凌空たちの演技指導役。

    第1話:むしろ武器じゃん

    〇凌空の部屋(朝)
       部屋の棚にはアニメのポスターやキャラクターのフィギュアが飾られ
       本棚の奥、少し汚れた『声優になるためには』という本がしまってある。
       凌空、鏡の前でネクタイを締める。
    凌空母「凌空!そろそろご飯食べないと遅刻するよ」
    凌空「今行く!」
       凌空、部屋を出て階段を下りる。
    〇月野高校・校門前(朝)
       「入学式」と書かれた立て看板が置かれている。
       校舎の外壁には、「美術部 双葉琳香 全国美術コンクール金賞」「月野高校演劇部 全国大会優勝」と書かれた懸垂幕が並んで掲げられている。
    〇月野高校・昇降口前(朝)
       「クラス表」と書かれた大きな模造紙が張り出されている。
       凌空、クラス表で自分の名前を探す。
    維月「あれ?凌空」
    凌空「え?維月?」
    維月「超久しぶりじゃん。元気?」
    凌空「元気元気!」
    維月「凌空も月野だったんだ。何組?」
    凌空「えっと……(クラス表から自分の名前を見つける)俺1組だ」
    維月「俺も1組だ。クラス一緒じゃん」
    凌空  「まじ?よっしゃぁ」
    〇月野高校・体育館(午前)
       ステージ上には、「令和7年度 茨城県立月野高等学校入学式」と書かれた横断幕が掲げられている。
       ずらりと並べられたパイプ椅子には生徒と保護者が座っている。
       美月、琳香、在校生席に座っている。
    校長「(演台で式辞を読みながら)たくさん学び、好きなこと、やりたいことに全力で挑戦できる、そんな3年間にしてください」
       凌空、光汰、校長の話を聞いている。
       離れた席に五十嵐が座っている。
    教師1「続いて1年次の担任を紹介します。1年1組宇佐美唯先生」
       宇佐美、1年1組が座っている席の前に立ち、一礼。
    〇月野高校・1年1組(昼)
       教室でクラスメイトたちが、順番に自己紹介をしている。
       凌空、みんなの自己紹介を聞いている。
          光汰、黒板の前に立つ。
    光汰「須和光汰です。アニメが好きです。よろしくおねがいします」
          クラス一同、拍手をする。
          光汰、席に戻る。
          凌空、黒板前に立ち喉を触り咳払いをする。
    凌空「(少し低めの声で)田浦凌空です。俺もアニメめっちゃ好きです。好きな食べ物はポテト。MBTIはESFJです。よろしくお願いします」
          クラス一同、拍手。
          凌空、一礼し席に戻る。
    〇月野高校・1年5組教室(昼)
       「1年5組」と書かれたクラス札。
       五十嵐、黒板の前に立っている。
    五十嵐「五十嵐峻です。辛いものとラジオが好きです。よろしくお願いします」
    女子生徒1「(ヒソヒソと)めっちゃカッコよくない?」
    女子生徒2「(ヒソヒソと)背高いし、声も低くてカッコイイ」
    〇月野高校・2年1組(昼)
    鴨志田「はい、今日はみんなお疲れ。明日から2年は通常授業ね。じゃ、解散」
       クラス一同、下校や部活の準備をする。
    鴨志田「双葉」
       鴨志田、琳香を見て手招きしている。
       琳香、鴨志田の元に行く。
       鴨志田、琳香に表彰状を渡す。
       表彰状には、全国高校美術コンクール金賞と書かれている。
    鴨志田「おめでとさん」
    琳香「ありがと」
    鴨志田「で?最近美術部行ってないみたいだけど」
    琳香「うん」
    鴨志田「辞めんのか?」
    琳香「別に」
    鴨志田「こういうこと、普通生徒本人に言わないんだけど、一回こういう賞を取ると、顧問だったり校長だったりが、次を期待して良い意味で目をつけんだよ」
    琳香「……」
    鴨志田「だけど、無理すんなよ?別にやめてもいいんだから」
    琳香「……」
    鴨志田「美術部じゃなくても絵は描けるんだし」
    琳香「うん」
    鴨志田「じゃあ、俺会議あるから行くわ」
       鴨志田、教室を出ようとする。
       琳香、席に戻ろうとする。
    鴨志田「(立ち止まり琳香を見て)あ、俺絵のこととかよくわかんないけど、お前の絵好きだったぞ。じゃあ」
    琳香「……」
    〇月野高校・廊下・1年1組教室前(昼)
       美月、教室前の廊下でスマホを見ている。
       画面には、自作のショートアニメが流れている。
       通知欄に「いいね100」の文字。
       美月、その数字を見て軽く首をかしげる。
    〇月野高校・1年1組教室(昼)
       ホームルームが終わり、生徒たちが片付け始める。
    凌空「(後ろの席から光汰に話しかける)ねぇねぇ、なんのアニメが好きなの?」
    光汰「(少し驚いて)え?えっと、結構なんでも見るかな」
    凌空「 おれ大秘宝とか7人の柱とが好きなんだけど」
    光汰「全部見てるよ」
    凌空「まじで?よろしくね!」
    光汰「よろしく!」
    凌空「えっと、なんて呼べばいい?」
    光汰「なんでもいいよ」
    凌空「じゃあ、光汰で!俺のことも凌空で」
    光汰「凌空。よろしく」
       美月、後ろの扉から教室を覗き、維月の席に向かう。
    美月「いた。全然返信来ないから来ちゃった」
    維月「わりぃ。見てなかった」
       凌空が美月に気が付く。
    凌空「美月ちゃん?」
    美月「え?凌空?めっちゃ久々じゃーん。維月とクラス同じだったんだ」
    凌空「(美月に向かって)久しぶり!(光汰に向かって)あ、あいつが彩坂維月。親同士が仲良くてちっちゃい頃よく遊んでたんだ。で、あっちが維月のお姉ちゃんの美月ちゃん」
    維月「よろしく」
    光汰「俺、須和光汰。よろしく」
    美月「彩坂美月です。維月のことよろしくね」
    光汰「よ、よろしくお願いします」
    美月「そうだ。ママたちもう駐車場いるって。早く帰ろ!」
    凌空「(スマホを見て)俺も、親から連絡来てたわ。じゃあ、2人ともまた明日」
    光汰/維月「また明日」
       凌空、教室を出る。
    〇月野高校・1年1組教室(昼)
    T「-1週間後」
       凌空、光汰、維月、お弁当を食べている。
       廊下をユニフォームや部Tを着た上級生が行き交う。
       黒板の前では、演劇部が活動日や活動場所について説明をしている。
    凌空「2人は何部入るの?」
    維月「俺はサッカー」
    凌空「ずっとやってたもんね」
    維月「うん」
    凌空「光汰は?」
    光汰「うーん。俺は演劇部かな」
    凌空「演劇興味あるの?役者志望とか?」
    光汰「いや、本当はアニメ業界行きたいんだけど」
    凌空「え?声優とか?」
    光汰「ううん。脚本とか。それに、声優なら凌空の方が向いてるんじゃない?」
    凌空「え?」
    光汰「ずっと思ってたんだけど、凌空の声ってたまに千秋純さんに似てるときあるよね」
    凌空「千秋純って、大秘宝とか7人の柱出てる人だよね?」
       凌空、スマホで千秋純を調べる。
       凌空、千秋純が演じたキャラ9選というショート動画を見る。
    キュアラテ「好きなんだからいいじゃん。諦める必要なんて無いよ」
    光汰「そう!このキュアラテやってる時の千秋さんの声が凌空に似てるなって」
    凌空「(少し唇を噛み締める)女子キャラじゃん。似てるかな?」
    光汰「うん。たまに似てるなって思うときあるんだよね。男の人なのに女性キャラやるってすごいよね」
    維月「そういえば凌空、声優目指してなかったっけ?」
    光汰「そうなの?」
    凌空「え、あ、うん、でも……」
       凌空、喉に手を当てる。
    凌空「諦めたんだよね......」
    光汰「そうなの?」
    凌空「俺、結構声高いじゃん?こんな声じゃ声優なんて無理かなって」
    光汰「え?なんで諦めるの?むしろ武器じゃん!凌空、声優向いてると思うけど」
    凌空「え?……」
    光汰「どうかした?」
    凌空「ううん。何でもない」
    維月「てか、 声優みたいなことできる部活ってなんでないんだろうな」
    凌空「え?」
    維月「だって演劇部とか軽音部とか、文化部でも色々あるのに、声優の人みたいなことが出来る部活は無いのかなって」
    光汰「確かに。声優になるためには、まず養成所って感じだもんね」
    維月「俺、あんまり詳しくないけど養成所って高いんでしょ?」
    光汰「うん。結構高いらしいよ」
    維月「てか、この辺にあるの?」
    光汰「こんな田舎にはないよ。一番近くて都内じゃない?」
    維月「片道2時間ってことでしょ?」
    光汰「そうだね」
    維月「だから、声優みたいなことできる部活があればいいのにって思って。(ご飯を食べる)そうだ2人で作っちゃえば?」
    凌空「え?」
    光汰「(笑いながら)いやいや。さすがにそれは無理でしょ」
    維月「さすがに無理か」
    〇凌空の部屋(夜)
       凌空、ベットで寝転んでいる。
    × × ×
    光汰「会った時から思ってたんだけど、凌空の声ってたまに千秋純さんに似てる時あるよね」
    × × ×   
       凌空、スマホで「千秋純」を検索する。  
       凌空、千秋純の出ているアニメやラジオの切り抜きを見漁る。
    キュアラテ「好きなんだからいいじゃん。諦める必要なんて無いよ」
    声優1「千秋さんは声優をやっていて、諦めたくなったこととか、逃げ出したくなったことはないんですか?」
    千秋純「全然ありますよ。元々自分の声も好きじゃなかったし、でもやっぱり声優っていうお仕事が好きなんですよね。これ以上やりたいって思うことが無くて。そうなるともう、頑張るしかないなって。実質自分には選択肢がなくて、もうどんなに辛くてもしんどくても、頑張るしかないっていう気持ちでやってきました」
    声優1「ご自身の声が嫌いだったんですか?」
    千秋純「嫌いでしたね。高いし、ずっと低い声の人に憧れてました。でも、声優をやっていくうちに、自分の声を好きって言ってくれる人が増えて、そういう人たちがいるなら、自分が自分の声を嫌っちゃいけないなって思うようになりましたね」
    声優1「千秋さんみたいな素敵な声の持ち主でも、自分の声が好きじゃないことがあるんですね」
    千秋純「全然ありますよ。でも、他の人とか見てても、元々自分の声が好きで声優やってる人なんて滅多にいないと思いますよ」
    声優1「確かに。じゃあ最後に声優を目指している人にメッセージとかありますか?」
    千秋純「うーん。メッセージか。僕もそんな大それたことを言えるほどのものでもないですけど、キュアラテの言葉を借りるなら好きなら諦める必要はないってことですかね。あとは、その時その時で、自分が思う一番の近道を選んで、全力でやることが大切だと思います」
       凌空、切り抜きを見ながら涙を流している。
       凌空、本棚にしまっていた「声優になるための本」を引っ張り出し読み始める。
       本の中には「女声」「キモイ」などの悪口が落書きされている。
    × × ×
    光汰「むしろ武器じゃん!凌空、声優向いてると思うけど」
    × × ×
       凌空、本を抱きしめ、声を出して泣く。
    〇月野高校・下駄箱(放課後)
    凌空「(靴を履き替えながら)光汰、ナック行かない?今日からポテトL250円なんだ」
    光汰「(靴を履き替えながら)いいよ」
    〇ナクドナルド・店内
       凌空と光汰が、向かい合って座っている。
    光汰「都会の忍者、来期アニメ化決定だって。凌空、前に原作読んでるって言ってたよね」
    凌空「……」
    光汰「凌空?」
    凌空「あ、ごめん、なんて?」
    光汰「なんかあった?」
       凌空、神妙な面持ち。
    × × ×
       落書きされた「声優になるためには」の本
    × × ×
    凌空「……光汰」
    光汰「ん?どうした?」
    凌空「あの、昨日の話なんだけど」
    光汰「昨日の話?」
    凌空「声優向いてると思うって言ってくれたじゃん?」
    光汰「うん」
    凌空「あれ、ガチ?」
    光汰「え?うん。向いてると思うよ。凌空は自分の声が高いからって言ってたけど、俺は凌空の声、結構いい声だと思うし好きだよ」
    凌空「……ありがとう。今まで声褒めてもらったことなかったから、めちゃくちゃうれしい」
    光汰「そうなの?」
    凌空「うん。俺さ……」
    光汰「ん?」
    凌空「自分の声がすげぇ嫌いでコンプレックスでさ、だから、声優なんて自分には無理だと思ってたんだけど……やっぱり、もう一回声優目指したいなって思って。でさ、急だしバカだと思わるかもしれないけど、昨日維月が言ってた声優の部活やってみたくて」
    光汰「え?」
    凌空「もし、光汰が良ければなんだけど、一緒に部活作るの手伝ってくれないかな?……って、ごめんやっぱそんなのできるわけないか」
    光汰「いや、いいよ」
    凌空「え?嘘。マジ?」
    光汰「うん。部活作るなんて、ザ・青春漫画って感じで面白そうじゃん。うちの演劇部ちょっと強豪過ぎて、さすがにあれかなって思ってたし……」
    凌空「まじ?ありがとう。よかったぁ。言うのまじ緊張した。光汰、まだ時間平気?」
    光汰「うん。全然平気」
    凌空「じゃあ俺ポテト買ってくる」
    光汰「え?まだ全然残ってるじゃん」
    凌空「男子高校生がポテト1個で満足するわけねぇだろ」
    光汰「普通するだろ……」
       凌空、財布を持ち階段を駆け下りる。

    第2話:”好き”というエンジン

    〇月野高校・職員室(放課後)
       宇佐美、鴨志田、向かいの席で仕事をしている。
    凌空/光汰「(職員室に入りながら)失礼しまーす」
       凌空、光汰、宇佐美の席に向かう。
    凌空「うさみん!」
    宇佐美「宇佐美先生ね。どうした?」
    凌空「部活作りたいんだけど」
    宇佐美「部活作りたい?」
    光汰「はい。新しく部活作ることってできますよね?チア部は2年前にできたって聞きました」
    宇佐美「部活かぁ、ちなみに何部?」
    凌空「なんか声優部的な」
    宇佐美「声優部?」
    光汰「はい。アニメのアフレコとかをやる部活を作りたいんです」
    宇佐美「うーん、どうだろう。普通の部活なら、条件を満たせば作れると思うんだけど……」
    光汰「やっぱり難しいですかね?」
    鴨志田「同好会からなら、出来るんじゃないですかね?」
    宇佐美「え?」
    鴨志田「横からすみません。耳に入ってきちゃって」
    凌空「同好会って部活と違うんですか?」
    鴨志田「大きく何かが違うってわけじゃないんだけど、アンオフィシャルだから活動日数に制約がある感じかな。テスト期間はもちろん、土日や夏休みなんかは学校が使えなかったりするね」
    凌空「活動ができるなら、全然それでも大丈夫です」
    宇佐美「部活にしろ、同好会にしろ最終的には校長のOKが出なきゃ出来ないから、とりあえず一回確認してみるね」
    凌空「あざす」
    光汰「ちなみに、もし校長の許可が下りたら、他に何か条件ってありますか?」
    宇佐美「えっと、ちょっと待って」
       宇佐美、職員室の奥にある引き出しから2枚のプリントを取って戻ってくる。
    宇佐美「はいこれ(プリントを凌空と光汰に渡す)」
       凌空、光汰、貰ったプリントを見る。
       プリントには「同好会設置に関する規定」と書かれている。
       ①責任者がいること
       ②4人以上のメンバーがいること
       ③活動場所が確保できること
    凌空「責任者っていうのは?」
    宇佐美「部活でいう顧問みたいなことだね」
    凌空「なるほど、うさみんやってくれる?」
    宇佐美「私すでに部活持ってるからな」
    凌空「そっかぁ」
    鴨志田「なんで、その部活作ろうと思ったの?」
    凌空「俺、声優になりたくて」
    鴨志田「演劇部じゃダメなの?うち結構強豪だけど」
    凌空「ダメじゃないんですけど、サッカー選手になりたい奴は、足を速くするために陸上部入らないじゃないですか。あんまり遠回りしたくなくて」
    鴨志田「なるほどね。分かった、責任者は俺がやるよ」
    凌空「え?マジっすか?」
    宇佐美「鴨志田先生いいんですか?」
    鴨志田「いいですよ。俺部活持ってないし」
    凌空/光汰「ありがとうございます」
    宇佐美「校長の答え返ってきたら、また伝えるね」
    凌空「うっす」
       凌空、光汰、職員室を出る。
    宇佐美「鴨志田先生すいません。本当に良いんですか?」
    鴨志田「はい。ちょっと思うとこ色々と思うところあって」
    〇月野高校・1年1組教室(放課後)
    T「-数日後」
       生徒たち、帰り支度をしている。
    宇佐美「田浦君、須和君。ちょっといい?」
    凌空「ん?」
    光汰「はい」
    宇佐美「この前の部活の話、校長から許可が出ました」
    凌空「え?マジ?うさみん。ありがとう」
    宇佐美「だから、宇佐美先生ね」
    光汰「ありがとうございます」
    宇佐美「お礼は鴨志田先生に言って。渋ってる校長を説得してくれたの、鴨志田先生だから」
    凌空「鴨志田先生が?」
    宇佐美「うん。2人の事呼んでたよ。たぶんまだ教室にいると思う」
    凌空「分かりました!光汰行こう!」
       凌空、光汰、教室を出る。
    〇月野高校・会議室(回想)
       職員会議が終わり、職員たちは各々片付けをしている。
    宇佐美「校長先生。すみません。少しよろしいでしょうか」
    校長「宇佐美先生、どうされましたか」
    宇佐美「あの、私のクラスの子たちが声優同好会を作りたいと言っていて」
    校長「声優同好会?」
    宇佐美「はい。活動内容としてはアニメのアフレコを行うみたいな感じらしいんですけど」
    校長「うーん。そうですね、あんまり特殊なものを作ってしまうと、今後、あれもこれもとなってしまう可能性があるので」
    宇佐美「そうですよね……」
    校長「顧問をできる先生も限られていますし」
    鴨志田「顧問は自分がやります」
    校長「鴨志田先生がですか?」
    鴨志田「はい」
    校長「しかし、アニメのアフレコというのは。同好会もあくまで学びの場なので」
    鴨志田「いいじゃないですか。アニメは人生の教科書って言うじゃないですか。実際そこから、たくさんのことを学んでる子供たちだって大勢いるわけですし」
    校長「それはそうかもしれませんが」
    鴨志田「それに、校長入学式で言ってたじゃないですか。たくさん学び、好きなこと、やりたいことに全力で挑戦できる、そんな3年間にしてくださいって」
    校長「それは……」
    鴨志田「他の学校に無いからこそ、うちが挑戦すれば入学志望者の増加だって期待できると思うんですよね。本人たちも同好会で良いって言ってますし、彼らが在籍してる3年間だけでも、チャンスをあげてもいいんじゃないですか?」
    校長「......分かりました。同好会としての活動を許可します」
    鴨志田「ありがとうございます」
    校長「ただし、活動実績として制作したものを文化祭で発表し、そこで何らかの賞を受賞すること。それが出来なければ、今年いっぱいで同好会の活動は終了とします」
    宇佐美「それは......」
    鴨志田「分かりました」
    校長「楽しみにしてますね」
       校長、会議室を出ていく。
    宇佐美「鴨志田先生......。どうしてここまでしてくださるんですか?」
    鴨志田「俺、生徒たちには好きだけでどんどん突っ走ってほしいんですよ。出来ないとか向いてないとか、そういうのは大人になってから嫌と言うほど直面するじゃないですか。だから、学生時代だけでも、好きなことに全力で挑戦してほしいなって思ってて」
    宇佐美「鴨志田先生って優しいんですね。本当にありがとうございます」
    鴨志田「宇佐美先生、あの、全然関係ないんですけど、その、今度の土曜とかって」
       宇佐美、スマホの通知がなる。
    宇佐美「え?やば、こんな時間。すいません。私そろそろ帰らなきゃ」
       宇佐美、荷物を片付け会議室を出ようとする。
    鴨志田「え?あ、はい」
    宇佐美「すいません!」
    鴨志田「あ、宇佐美先生」
    宇佐美「はい(立ち止まり、振り返る)」
    鴨志田「文化祭のことは俺から言うんで、2人には黙っててもらえますか?」
    宇佐美「え?はい、わかりました」
    鴨志田「すいません。よろしくお願いします」

    第3話:アニメーターの力

    〇月野高校・2年1組教室前廊下(放課後)
       凌空、光汰、廊下で待っている。
       美月、友人と廊下を話しながら歩いている。
    友人「美月、昨日のアニメ見たよ!キャラ可愛いし、動きも自然だし、あんなの一人でやってるなんて凄すぎ」
    美月「ありがとう」
       美月、凌空たちの方に歩いてくる。
       美月、凌空、目が合う。
    美月「あれ?凌空?どうしたの5組の教室の前で」
    凌空「ちょっと鴨志田先生に用があって」
       鴨志田、生徒たちと教室の掃除をしている。
    美月「掃除中だし呼んでいいんじゃない?(鴨志田に向かって)かもしー」
    鴨志田「(廊下にいる凌空たちに気が付き)おぉ、お前らか。もう少しで終わるからちょっと待ってて」
    凌空「(鴨志田に向かって)はい。(美月に向かって)ありがとう」
    美月「いえいえ!またねー」
       美月たち、帰宅。
    〇月野高校・2年1組教室(放課後)
    生徒1「なんで1年生がかもしーに?」
    鴨志田「あぁ、俺、同好会の責任者やるんだよ」
       教室一同がしんとする。
       琳香、驚いた顔で鴨志田を見つめる。
    2年1組一同「えぇぇぇぇぇ」
       凌空、光汰、驚く。
    生徒1「かもしーが?責任者?」
    生徒2「え?なんで?同好会?なんの?」
    鴨志田「秘密ー。てか、まだ決まったわけじゃないから。人数集めたり場所決めたり、色々やることあるのよ」
    生徒1「え、なんで?なんで責任者なんてやることにしたの?」
    鴨志田「まぁ、色々あって」
    生徒1「あ!(凌空たちに向かって)2人、誰のクラス?」
    凌空「宇佐美先生です」
    生徒1「あぁ、なるほど(振り返って)みんな!この2人うさみんのクラスだって」
    生徒一同「あぁぁぁぁ」
    生徒2 「うさみんに、かっこいいとこ見せたかったのか」
    鴨志田「別に宇佐美先生は関係ないって」
    生徒1「はいはい」
    鴨志田「俺行かなきゃだから、あとお前らに任せていい?」
    生徒1「いいよ。もう机戻すだけだし」
    鴨志田「さんきゅ。じゃあ、あとはよろしく」
       鴨志田、教室を出る。
    鴨志田「(凌空たちに向かって)お待たせ。えっと、一旦社会科準備室で話そっか」
    凌空/光汰「はい」
    〇月野高校・社会科準備室(放課後)
       鴨志田、自分の席に座る。
    鴨志田「改めまして、鴨志田です。アニメとか映画見るのは好きだから、他の先生よりは声優とかについて詳しいと思う。よろしく」
    凌空「田浦凌空です。よろしくお願いします」
    光汰「須和光汰です。よろしくお願いします」
    鴨志田「田浦と須和ね。よろしく。まず最初に、2人に謝らなきゃいけないことがあって」
    凌空/光汰「...…」
    鴨志田「校長に条件を出された」
    凌空「条件?」
    鴨志田「うん。今年の文化祭で1つ賞を取る。それができなかったら、同好会は1年で活動終了だって」
    光汰「そんな」
    凌空「……大丈夫です。賞取ればいいんですよね?」
    鴨志田「うん。まぁ、そうだね」
    凌空「じゃあ、取ります。大丈夫です」
    光汰「まじで?」
    凌空「だって、それ以外選択肢ないならしょうがないじゃん。それに、光汰いるし大丈夫っしょ」
    光汰「......でも、月野高校の文化祭って」
    鴨志田「須和は知ってそうだな。うち文化部、結構盛んなんだよ。特に演劇部、軽音部、美術部、ダンス部は大会でもかなりいい成績を残してる。そして、もちろんそいつらも文化祭での発表がある。正直うちの高校で文化祭の賞を取るっていうのは、結構なハードルだけど」
    凌空「大丈夫です」
    光汰「本当に?」
    凌空「うん。どうにかなるって、てかどうにかする。」
    光汰「さすがミスターポジティブ」
    凌空「まぁね」
    鴨志田「あとは、メンバーだけどあと2人集まりそう?」
    凌空「えっと」
    光汰「まだ、何も当てが」
    鴨志田「問題はアニメーターだよな」
    凌空 「アニメーター?」
    鴨志田「え?お前らアニメのアフレコやりたいんでしょ」
    凌空 「はい」
    鴨志田「アニメーターいないと何も始まらないでしょ」
    凌空「確かに……」
    光汰「まさかとは思うけど、なにも考えてなかった?」
    凌空「……」
    鴨志田「文化祭で勝つなら、完全オリジナルじゃないと難しいと思う」
    光汰「アニメ作れる人なんて、そんな簡単に見つかるかな」
    凌空「わかんない」
    鴨志田「とりあえず、アニメーターともう1人の部員。その4人で、文化祭までにアニメを作る。これが勝つための最低条件。部員が集められるまでは活動もできないから、とりあえず、なる早でここをクリアすること」
    凌空/光汰「わかりました」
    鴨志田「活動内容によっては、声優同好会じゃなくてアニメ同好会とかアニメ声優同好会に変わるかもだけど、それはいい?」
    凌空「はい。なんでも平気です」
    鴨志田「おっけ。活動場所の方は、俺がなんとかしておく」
    凌空/光汰「ありがとうございます」
    鴨志田「じゃあ今日の話はここまで」
    凌空/光汰「ありがとうございました」
      凌空、光汰、社会科準備室を出る。
      鴨志田、凌空たちの背中を見てほほ笑む。
    〇月野高校・下駄箱(放課後)
       凌空、光汰、靴を履き替えている。
    光汰「アニメーターどうしよっか」
    凌空「うん」
       維月、下駄箱に来る。
    維月「(後ろから)あれ?凌空?」
    凌空「あ、維月。あれ、部活は?」
    維月「今日は休み。トレーニング室でちょっとだけ筋トレしてた」
    凌空「おつかれ」
       凌空、光汰、維月、昇降口を出て駐輪所に向かう。
    維月「2人は?いつもより遅くない?」
    凌空「この前、維月が声優部ってなんでないんだろうって言ってたじゃん?」
    維月「あぁ、うん」
    凌空「つくることにした!」
    維月「え?マジ?」
    光汰「まぁ、でも色々大変なんだけどね」
    維月「大変?」
       光汰が維月に鴨志田から言われたことを説明している。
    維月「アニメーターか。いるなぁ、ひとり」
    光汰「え?」
    凌空「まじ?」
    維月「うん(ポケットからスマホを出し、mitsukiと検索しながら)これ」
       維月、美月のアカウント(mitsuki)を見せる。
       凌空、光汰、維月のスマホ画面を覗く。
    維月「これ、美月のアカウント」
    凌空「え?これ美月ちゃんひとりで作ってるの?」
    維月「そう」
    光汰「すごい」
    凌空「美月ちゃん。入ってくれないかな?」
    維月「わかんないけど、別に部活入ってないし、ワンチャンあるんじゃない?」
    凌空「え?まじ?今から話できたりしない?」
    維月「聞いてみようか?」
    凌空「お願い」
       維月、スマホを取り出しメッセージアプリを開く。
       以下、画面上で、
     × × ×
    維月「今、何してる?」
    美月「店手伝ってる」
    美月「どした??」
    維月「今から行っても平気?」
    維月「凌空がアニメ作れる人探してるらしくて、美月と話したいって」
    美月「???」
    美月「まぁ、今暇だしいいよ」
    維月「おけ」
     × × ×
       維月、スマホをしまう。
    維月「今店だから、そっちなら行って平気だって」
    凌空「まじ?じゃあ、今から行っていい?」
    光汰「店?」
    維月「俺、両親がカフェやってて」
    光汰「そうなんだ」
    凌空「早く行こーぜ」
    維月「光汰はどうする?ラキマの交差点のすぐ近くなんだけど」
    光汰「どうしよう」
    凌空「行こうぜ。維月の母ちゃんの店のポテト超うまいんだよ」
    光汰「わかったわかった。行こっか」
       凌空、光汰、維月、自転車に乗り走り出す。
    〇cafe Luna・店内(夕方)
       落ち着いた雰囲気の店内。
       私服にエプロンをした美月がカウンターでコーヒーを淹れている。
       凌空、光汰、維月、店内に入る。
    美月「いらっしゃ(凌空たちに気づき)あ、凌空いらっしゃい」
    凌空「やっほー」
    維月「ただいま」
    光汰「(緊張しながら)こ、こんにちは」
    美月「奥の席座って、何飲む?」
    凌空「俺、レモネード」
    光汰「じ、自分は、アイスティーで」
    美月「はーい」
    維月「凌空たち、美月と話したいみたいだし俺代わるよ」
    美月「本当?じゃあ、お願い」
       美月、エプロンを取り凌空たちの席に座る。
    凌空「ごめん。急に来て」
    美月「ううん。全然。どうした?」
    凌空「実は、俺たちアニメを作る同好会を作りたいんだけど、今、アニメーターがいなくて」
    美月「維月からメッセージでちょっと聞いたけど、どういうこと?」
    凌空「えっと……。俺は声優に光汰はアニメの脚本に興味があって、2人でアニメを一から作れる同好会があればいいのにと思って、先生たちに頼んで発足する許可は出たんだけど、アニメ作れる人がいなくて探してたら、維月が美月ちゃんのアカウント見せてくれて、美月ちゃんしかいないと思って。......それで来たんだ」
    美月「なるほど」
    凌空「美月ちゃんの力が必要なんだ、俺たちのメンバーになってくれないかな」
    美月「うーん。アニメっていうのは具体的に何分くらい?」
    凌空「えっと……(光汰の方を見る)」
    光汰「…え、えっと、正直、まだ全然決まってないんですけど、校長から条件が出てて」
    美月「条件?」
    凌空「文化祭でアニメの上映をして賞を1つ取れって、じゃなきゃ今年いっぱいで活動終了だって」
    美月「やばいじゃん」
    凌空「そうなの、やばいの」
    美月「うちの文化祭で賞取るってことは、最低20分は必要だよね。ショートアニメじゃ絶対勝てないと思う」
    凌空「そっか」
    美月「私、1~2分のアニメしか作ったことないんだよね。声入れたこともないし」
    凌空「そこをなんとか(頭を下げる)美月ちゃんの力が必要なんだ。……俺はアニメが好きで、これまでたくさん背中を押してもらって、アニメがきっかけで光汰とも仲良くなれて、俺は声優さんのお芝居に感動してこんな風になりたいって思ったけど。……でも、アニメがいいものになるかどうかは、正直アニメーターさんの力にかかってると思う」
    美月「…...」
    凌空「どんなに原作が面白くても、声優さんのお芝居が上手くても、作画が良くなきゃ見ようと思わない。でも美月ちゃんの絵なら、みんな見たいって思ってくれると思う。美月ちゃんが作るアニメにはその力があると思ったから、だから……」
    〇美月の部屋(回想)
       美月、中学のジャージを着て椅子に座りスマホをいじっている。
       スマホ上部に「「アカツキロック」アニメ化決定!ティザービジュアル公開」というバナー通知が表示される。
    美月「え!やばい!まじ?」
       美月、嬉しそうにバナー通知をタップする。
    美月「え、なにこれ。主人公なんでこんなのっぺりしてるの?原作めちゃくちゃかっこいいのに」
       美月、つぶやきコメントを見る。
       以下、画面上で、
     × × ×
    かこ「あれ、原作の絵こんな感じだったっけ?」
    ててて「なんか微妙そう??」
    ザウルスくん「気になってたけど、作画イマイチだな」
     × × ×
    美月「アニメ化ずっと楽しみにしてたのに……」
    〇cafe Luna・店内(夕方)
    美月「(凌空の顔を見て)分かった。やる」
    凌空「マジ?」
    美月「うん」
    凌空「マジで?本当に?」
    美月「本当に」
    凌空「ありがとう」
    光汰「ありがとうございます」
    美月「2人ともよろしくね。やるなら絶対賞取ろう」
    凌空「うん」
    〇帰り道(夜)
       凌空、光汰、自転車に乗っている。
    凌空「美月ちゃんがやるって言ってくれて本当に良かった」
    光汰「だね」
    凌空「でも、光汰大丈夫だった?」
    光汰「何が?」
    凌空「いや、いつも美月ちゃんと話すとき、光汰緊張してるっていうか、 気まずそうだから」
    光汰「え?」
    凌空「クラスでもあんまり女子と話してるとこ見ないし、女子苦手なのかなって」
       光汰、自転車をこぐ足が止まる。
    凌空「光汰?」
    光汰「ごめん。気付かれてると思ってなくて」
    凌空「見てれば分かるだろ、こんだけ一緒にいるんだし」
    光汰「凌空って意外と繊細なとこ気付くよね」
    凌空「そうか?」
    光汰「うん」
    凌空「なんで苦手なの?」
    光汰「いや、まぁ」
    凌空「まぁ、なによ。……あ、言いにくいことだったら聞かないけど」
    光汰「……うちの中学女子が多くてさ、男子は結構雑にこき使われてたりしてたのよ。そん中に凄い優しい子が一人だけいてさ。その子だけは俺らのこと凄い気遣ってくれてたのね。で、まぁ段々仲良くなって、その子のこと好きだなって思い始めた頃に、男友達に相談をしたのさ。そしたらそれをクラスの女子に聞かれて、そいつが本人に言っちゃったのね。で、気まずくなって。そっから卒業まで結局話せなくてさ……。もちろん、その好きだった子が悪いとは思ってないよ?でも、なんか女子ってなんだかなって思っちゃって」
    凌空「そっか」
    光汰「まぁ、それだけの話ですよ。もちろん女子は全員どう。みたいなのは無いんだけど、なんか女子と距離縮めるの怖くて」
    凌空「なるほどね。美月ちゃんは大丈夫そう?」
    光汰「優しい人なんだろうなとは思う。維月のお姉ちゃんだし。……だから、他の女子よりは話しやすいかな。……2人きりとかはさすがに無理だけど」
    凌空「そっか、それなら良かった」
    光汰「うん」
    凌空 「あとの1人どうしよっか。声優やってくれる人がいいよね」
    光汰「そうだね」
    凌空「まぁ、とにかく、手当たり次第声かけるしかないか」
    光汰「それでいけんの?」
    凌空「大丈夫だって。いけるいける」
    光汰「まぁ、凌空がそう言うなら大丈夫か(笑う)」
    凌空「よっしゃぁ。頑張るぞ」
       凌空、光汰、自転車を思い切り漕ぎ始める。
    〇月野高校・1年1組(昼休み)
       凌空、教室でクラスメイトに声をかけている。
    凌空「ねね、俺と光汰でアニメを作る同好会作るんだけど、声優やってくれる人探してて、興味ない?」
    クラスメイト1「ごめん、俺もう部活決まってて」
    凌空「(笑顔で)そっか、おっけ」
       凌空、違うクラスメイトに声をかける。
    凌空「ちょっと聞いてもいい?」
       別のクラスメイトも首を横に振る。
       凌空、笑顔で頷き違う人に声をかけていく。
    〇月野高校・グラウンド(体育の授業)
       凌空、光汰、維月、ジャージ姿で立っている。
       ジャージを着た男子の集団が、こちらに歩いてくる。
       凌空、男子集団に駆け寄る。
    凌空「みんな2組だよね?俺、1組の田浦凌空。よろしく」
    男子集団「よ、よろしく」
    凌空「急なんだけど、みんなもう部活入ってる?」
    男子1「うん」
    男子2「入ってるけど」
       光汰、維月、凌空の様子を少し離れた場所から見ている。
    維月「アイツすげぇな」
    光汰「凌空ってずっとあんな感じなの?」
    維月「なんか、昔より明るくなった気がする」
    光汰「そうなんだ」
       凌空、男子の集団との会話を終え、光汰と維月のところに戻ってくる。
    光汰「どうだった?」
    凌空「アイツらも部活もう決まってるって」
    光汰「まぁ、そうだよね、うちの学校、部活・同好会の入部、基本必須だもんね」
    維月「たしかに」
    光汰「あれ?でも、維月のお姉さんなんで部活入ってなかったの?」
    維月「美月が入学したころ、店のパートさんが産休に入っちゃって、店がやばいからっていうので、親が許諾願い書いたんだよ」
    光汰「なるほど」
    凌空「維月、同好会入ってくれない?」
    維月「バカ言うな」
    凌空「ですよね」
       チャイムが鳴る。
    体育教師「よし!授業始めるぞ。並べ」
       ジャージを着た生徒たち、クラスごとに整列する。
    〇月野高校・購買前(昼休み)
    T「-1週間後」
       凌空、光汰、維月、購買で並んでいる。
    維月「メンバー見つかった?」
    凌空「いや全然ダメ、1週間なんの進展もなし」
    維月「サッカー部でも、ほぼ全員声かけられたって話題になってたよ」
    凌空「マジか」
       五十嵐、凌空たちの前に並んでいる。
       五十嵐から少し離れたところで、女子たちがコソコソしている。
    凌空「なんか今日、女子多くね?」
    維月「あぁ、今日水曜だから」
    凌空「水曜?なんかメニュー違うの?」
    維月「いや、水曜は五十嵐が購買買いに来るんだよ。ほら、あいつ。あの前に並んでる背高いやつ」
    凌空「え、だから?」
       女子2人組が、五十嵐にそっと駆け寄る。
    女子たち「(五十嵐に向かって)あの……」
       五十嵐、振り向く。
    光汰「(五十嵐の顔を見て)あぁ、なるほど」
    維月「顔良し、スタイル良し、声良し、しかも父親は大手製薬会社の研究員で金持ち」
    光汰「維月、なんでそんなに詳しいの?」
    維月「うちのマネージャーたちが騒いでて、あと2年の中でも有名だって美月が」
    光汰「あぁ、なるほど」
    女子1「すみません、オンスタフォローしたくて……」
    五十嵐「あ、いいですよ」
       凌空の目が見開く。
    凌空「光汰、今の聞いた?」
    光汰「オンスタのフォローでしょ?」
    凌空「そうじゃなくて、アイツの声」
    光汰「声?」
    凌空「アイツの声、やばい。同好会入ってくれねぇかな。」
       五十嵐と女子がQRコードの読み取りをしている。
    女子2「すみません!私もフォローしていいですか?」
    五十嵐「はい。でも、俺、あんまり更新しないけど平気ですか?」
    光汰「確かに、めちゃくちゃいい声だな」
    購買のおばちゃん「次のどうぞ」
    五十嵐「(おばちゃんに向かって)はい。(女子たちに向かって)すいません」
    女子たち「すみません。ありがとうございました」
       五十嵐、購買のパンを選んでいる。
    凌空「ちょっと、俺声かけてくるわ」
       凌空、光汰に財布を預ける。
    凌空「惣菜パン2つなんでもいいから買っておいて」
    光汰「おけー」
    維月「(2人のやり取りを見ながら軽く笑う)ふふ」
    光汰「え?なに?」
    維月「光汰、随分と凌空の扱いに慣れてきたなと思って」
    光汰「そう?」
    維月「うん」
       五十嵐、パンを購入する。
    五十嵐「ありがとうございました」
    凌空「あの」
    五十嵐「ん?」
    凌空「急にごめん。俺、1年1組の田浦凌空。五十嵐君だよね?」
    五十嵐「うん」
    凌空「五十嵐君って部活入ってる?」
    五十嵐「まだ、入ってないけど」
    凌空「あの、俺アニメを作る同好会をやりたいんだけど、人数が1人足りてなくて、もしよかったら入ってくれないかな」
    五十嵐「アニメを作る同好会?」
    凌空「今脚本とアニメーターは集まったんだけど、声優やれる人が俺しかいなくて、五十嵐君。めっちゃいい声してるなと思って、声かけちゃった」
    五十嵐「あんまりよく分かんないけど、俺声優とか興味なくて」
    凌空「そっか……でも、マジで、めちゃくちゃいい声だから、どうしても入ってほしくて」
    五十嵐「いや……」
       山之内が、ジュースを持って五十嵐の元に寄って来る。
    山之内「峻、悪い自販機混んでて」
    五十嵐「俺も今買ったとこ。(凌空に向かって)悪い、俺行かなきゃ」
    凌空「そっか。部活悩んでるんだったら、ちょっと考えておいてくれないかな」
    五十嵐「分かった」
       五十嵐、山之内、教室に戻る。
       光汰、維月、パンを買い終わり凌空と合流する。
    光汰「(パンを渡しながら)はい。どうだった?」
    凌空「一旦考えるって」
    光汰「そっか」
    凌空「うん。でもまだ部活には入ってないらしい」
    光汰「え?本当に?」
    凌空「だからまた声かけてみようと思う。俺、絶対アイツに入ってほしい」
    光汰「入ってくれるといいけど」
    〇月野高校・廊下(昼休み)
       五十嵐、山之内、廊下を歩いている。
    山之内「さっきの誰?」
    五十嵐「1組のやつ。同好会作るから入ってほしいって」
    山之内「同好会ってなんの同好会?」
    五十嵐「わかんないけど、なんかアニメ作るとか言ってた」
    山之内「アニメなんてそんな簡単にできるの?」
    五十嵐「俺に聞かれても分からんて」
    山之内「で?入るの?」
    五十嵐「いや?」
    山之内「だよね。でも、そろそろ部活入らないと担任がうるさいっしょ」
    五十嵐「うん」
    山之内「俺と一緒に軽音部入る?峻がボーカルやってくれたら心強いんだけど」
    五十嵐「嫌だよ、うちの軽音部ガチじゃん。活動日数多いでしょ」
    山之内「まぁ、そうだけど、峻そんなに忙しいの?」
    五十嵐「部活で忙しいとバイトできないじゃん」
    山之内「お前父ちゃん有名な研究員だろ。バイトなんてする必要ある?」
    五十嵐「いやいや、山之内くん。お金はあればあるだけいいのよ」
    山之内「一体何にそんな使うっていうのかねぇ」
    五十嵐「そういうことじゃないのよ」
    〇月野高校・駐輪場(朝)
       凌空、五十嵐の姿を見つけて駆け寄る。
    凌空「五十嵐君。おはよう」
    五十嵐「(少し驚き)あ、おはよう」
    凌空「同好会の話なんだけど、ゆっくり話したくて、考えてくれた?」
    五十嵐「あ、ごめん、考えてはいるんだけど、他の部にも誘われてて、もう少し待ってくんない?」
    凌空「そうなんだ……。ちなみに何部?」
    五十嵐「……えっと。軽音部」
    凌空「そっか、そしたらまた明日誘いに行くわ」
    五十嵐「え?」
    凌空「じゃ」
       凌空、走り出す。
       五十嵐、凌空の背中を見つめる。
    山之内「お待たせ。(凌空の後ろ姿を見て)あれってこの前の……」
    五十嵐「うん」
    山之内「なんて言ったの?」
    五十嵐「他の部活にも誘われてて、そっちと悩んでるって」
    山之内「他の部活って?」
    五十嵐「軽音部」
    山之内「お前、ふざけんなよ(笑う)アイツ、可哀想」
       女子たち、五十嵐を見つけ黄色い声援を上げる。
    女子1 「キャー!五十嵐君!おはよう」
       五十嵐、女子たちにニコッと笑顔を向ける。
    山之内「この嘘つき男のどこがいいのか」
    五十嵐「聞こえてるぞ」
    山之内「聞こえるように言ってるんだよ」
    〇月野高校・1年1組教室(授業中)
       宇佐美、授業をしている。
       凌空、後ろの席から光汰の肩をたたく。
    光汰「ん?なに?」
    凌空「五十嵐君どうしたら入ってくれると思う?」
    光汰「ちょ、今?そんなこと言われたってわかんないよ」
    宇佐美「そこうるさい」
    凌空/光汰「すみません」
    〇月野高校・1年5組教室前廊下(放課後)
       凌空、廊下で五十嵐を待っている。
       五十嵐、教室を出る。
    凌空「何度もごめん。考えてもらえたかな?どうしても五十嵐君に入ってほしくて」
    五十嵐「ごめん。俺演技とかできないし、表舞台立って目立つのとか苦手なんだよね」
    凌空「声優だから自分が表立って演技するとかは、あんまりないんだけど」
    五十嵐「あ、そっか……」
    凌空「どうかな?」
    五十嵐「ちなみに活動日数ってどのくらいなの?」
    凌空「まだ詳しいことは決まってないんだけど、同好会だからテスト期間とか休みの日とかは活動しちゃダメらしい」
    五十嵐「あ、そうなの?じゃあ、夏休みはずっと休み?」
    凌空「うん」
    五十嵐「ちなみに平日の活動日数は?」
    凌空「まだ決まってない」
       1年5組担任、教室を出てくる。
    1年5組担任「おい、五十嵐、お前いつになったら入部届出すんだ。〆切もうとっくに過ぎてるだろ。入れない理由あるなら、親御さんから許諾書貰ってこい」
    五十嵐「(担任に向かって)はい。分かりました……。(凌空に向かって)良いよ。俺、入っても……」
    凌空「え?マジで?」
    五十嵐「うん」
    凌空「よっしゃ。マジでありがとう」
    五十嵐「そろそろ部活入れって担任にも言われてたし」
    凌空「そうだったんだ。良かった。じゃあ連絡先聞いてもいい?」
    五十嵐「うん」
       五十嵐、スマホを取り出しQRコードを表示する。
    凌空「ありがとう。(QRコードを読み取る)追加した。今スタンプ送るわ」
       五十嵐のスマホの通知がなる。
    五十嵐「来た」
    凌空「OK。じゃあ追加しておいて」
    五十嵐「了解」
    凌空「これからよろしく」
    五十嵐「うん」
    凌空「じゃあね」
    五十嵐「また」
    〇月野高校・1年1組教室(放課後)
       光汰、掃除をしている。
       凌空、教室に走って戻ってくる。
    凌空「光汰!」
    光汰「びっくりした。なに?」
    凌空「五十嵐君入ってくれるって」
    光汰「え?本当に?」
    凌空「うん。連絡先もゲットしてきた」
    光汰「ということは……」
    凌空「メンバー4人集まった。よっしゃー(光汰に抱き着く)」
    光汰「(少し驚き)よかったよかった」
    凌空「早く鴨志田先生のとこ行こう!」
    光汰「うん。もう机戻すだけだからちょっと待ってて」
    凌空「OK。俺も手伝うわ」
    光汰「ありがとう」
       凌空、光汰、机を元の場所に運ぶ。
    〇月野高校・職員室(放課後)
       鴨志田、仕事をしている。
    凌空/光汰「(職員室に入りながら)失礼します」
       凌空、光汰、鴨志田の席に向かう。
    凌空「鴨志田先生」
    鴨志田「おぉ」
    凌空「先生、部員4人集まりました!」
    鴨志田「意外と早く集まったね。アニメーターも見つかった?」
    凌空「はい。2年の美月ちゃんがやってくれることになりました」
    鴨志田「美月、美月、あぁ彩坂か」
    凌空「はい」
    鴨志田「もう一人は?」
    凌空「5組の五十嵐って」
    鴨志田「あぁ、あのイケメンか」
    光汰「(ボソッと)あんたが言いますか」
    鴨志田「ん?」
    光汰「すいません。何でもないです」
    鴨志田「活動場所なんだけど、一旦は柔道場使わせてもらうことになった」
    光汰「柔道場?」
    鴨志田「うん。うち柔道部ないから放課後誰も使ってなくて、畳だし防音的にもちょうどいいだろ」
    光汰「なるほど」
    凌空「ありがとうございます」
    鴨志田「そしたら早速だけど、明日の放課後集まってもらっていい?」
    凌空「はい。2人にも伝えておきます」
    鴨志田「おっけ。じゃあ、また、明日」
    凌空「はい。ありがとうございます」
    光汰「ありがとうございました」
       凌空、光汰、職員室を出る。

    第4話:アニメ制作同好会始動

    〇月野高校・1年1組教室前廊下(放課後)
       光汰、しゃがんでロッカーの荷物を整理している。
       ロッカーの上にスマホを置いている。
    光汰「文化祭でやるのどんな話がいい?」
    凌空「うーん。コメディとか?」
    光汰「あのねぇ」
    凌空「ん?」
    光汰「簡単に言うけど、それが一番難しいんだよ」
    凌空「そうなの?」
    光汰「そうなの!」
    凌空「でも、男2人だから恋愛系もできないし、シリアス系とかもできないっしょ」
    光汰「まぁ、それはそうなんだけど。凌空はやりたい役とかないの?」
    凌空「うーん。主人公」
    光汰「そうじゃなくて……」
       光汰のスマホが鳴る。
    光汰「ちょっと誰からの連絡か見てくれない?」
    凌空「(光汰のスマホを開き)えっとね、『失恋した俺が異世界転生したら、女子に超迫られるハイスペモテ……」
    光汰「うぉぉぉぉぉ」
       光汰、急いで立ち上がりスマホを抱きかかえる
    凌空「え?急にどうした?」
    光汰「何が?」
    凌空「何がじゃねぇだろ」
    光汰「べ、別に」
    凌空「いやいやいや」
    光汰「いやいやいや。まじで、まじで、なんもないから」
    凌空「別にそんな言いたくない話なら、無理して聞かねぇけどさ」
    光汰「いや、まぁ、うん。そのラノベの投稿してて」
    凌空「え、すげぇじゃん。俺も光汰の読みたい」
    光汰「いや、それはマジで無理」
    凌空「なんで?」
       光汰、周りに人がいないかを確認する。
       光汰、凌空に少女漫画風の表紙を見せる。
    光汰「こういう系なんだよね」
    凌空「なるほどね、光汰こっち系好きなんだ」
    光汰「誰にも言うなよ?」
    凌空「言わねぇよ。てか、別に俺もこういうの読むし」
    光汰「え?そうなの?」
    凌空「別に読むだろ。高1男子の欲なめんな」
    光汰「俺、これほど凌空と友達になって良かったと思った日はないわ」
    凌空「それは他にもあってくれ」
    光汰「そんなことはいいんだよ。文化祭どんな話にするって話」
    凌空「まぁ、詳しいことは明日、美月ちゃんにも相談してみよう。美月ちゃんが描けるか次第みたいなところもあるし」
    光汰「……」
    凌空「緊張する?」
    光汰「うん。まぁ……」
    凌空「そうだよな、でも俺もいるし、な?」
    光汰「わかりましたよ。部長」
    凌空「部長?」
    光汰「部長でしょ。凌空が。着いていきますから」
    凌空「お、おう」
    〇光汰の部屋(夜)
       光汰、勉強机に座り、ノートパソコンを開いている。
       画面にはチャットAIの画面。    
       ノートには「20分・登場人物男子2人」とメモ書き。
    光汰M「(AIのチャット欄にタイプしながら)初めてアニメの脚本を書くんだけど、どういうのがいいと思う?時間は20分くらいで登場人物は男子2人」
       AIの回答が画面に表示される。
       以下、AIの回答
    × × ×
    ① 日常×少しの非日常(SF・ファンタジー要素) 例:放課後の教室。1人が「実は俺、タイムリープしてるんだよね」と切り出す。もう1人は冗談だと思うが、次々と予言が的中していき……。 ポイント:派手なバトルがなくても、会話だけで世界観を広げられます。
    ② 緊迫のワンシチュエーション 例:学校の倉庫(またはエレベーター)に閉じ込められた2人。脱出を試みる中で、お互いが隠していた「ある秘密」や「本音」が暴露されていく。 ポイント:「ここから出たい」という共通の目的があるため、ストーリーがダレません。
    × × ×
       光汰、画面を見つめる。
    光汰「うーん……。初心者にSFは無理でしょ」
       椅子の背にもたれかかり、天井を見上げる。
    光汰「……男2人で20分か」
    〇月野高校・柔道場(放課後)
       柔道場の真ん中にホワイトボードが置かれている。
       光汰、凌空と話し合いながらホワイトボードに何かを書いている。
       美月、柔道場に入る。
    美月「やっほー」
    凌空「美月ちゃん!」
    光汰「こんにちは」
    美月「何書いてるの?」
    凌空「もう1人入ってくれたやつに、全然説明できてないから、今決まっていることをまとめようと思って」
    美月「なるほど(ホワイトボードを見て)光汰くん字上手だね」
    光汰「え、そ、そうですか?ありがとうございます」
       鴨志田、柔道場に入る。
    鴨志田「よっ」
    凌空/光汰/美月「こんにちは」
    鴨志田「全員揃った?」
    凌空「まだ、五十嵐君が来てないです」
       五十嵐、柔道場に入る。
    五十嵐「こんにちは」
    鴨志田「お、噂をすれば」
       五十嵐、どこに行けばいいか困っている。
    凌空「あ、こっち。見えるとこ座っちゃって」
       五十嵐、座る。
    鴨志田「(凌空にアイコンタクトを送り)進行お願いしていい?」
    凌空「あ、はい、えっと、じゃあ、とりあえず自己紹介でいいかな」
    光汰「いいんじゃない」
    凌空「1年1組。田浦凌空です。まぁ、みんな知ってると思うけど、よろしくお願いします」
    光汰「同じく1年1組。須和光汰です。よろしくお願いします」
    美月「2年4組。彩坂美月です。うちだけ学年違うけど、仲良くしてくれたら嬉しいです。よろしく」
    五十嵐「1年5組。五十嵐峻です。よろしくお願いします」
    鴨志田「はい。責任者の鴨志田です。よろしく」
    凌空/光汰/五十嵐/美月「よろしくお願いします」
    鴨志田「(凌空の方を見て)みんなにはどこまで説明してる感じ?」
    凌空「えっと、彩坂先輩には大方、五十嵐君にはあんまり話せてないです」
    五十嵐「ん?」
    凌空「一応、ここに書いてもらったんだけど」
       以下、ホワイトボード上で、
     × × ×
    メンバー
    田浦:声優
    五十嵐:声優
    須和:脚本
    彩坂先輩:アニメーター

    目標:文化祭までにアニメを作り賞を取る
    4月|声優チーム:発声・アフレコ練習
       制作チーム:脚本進行
    5月|★台本完成目標(後半テストで2週間休み)
    6月|通常練習
    7月|★アフレコ目標(7/21~夏休み)
    8月|夏休み=活動×
    9月|9/20・21文化祭
      9/20 生徒のみ
         9/21 一般公開=授賞式
     × × ×
       五十嵐、ホワイトボードを見る。
    五十嵐「文化祭までにアニメを作り賞を取る……」
    凌空「校長に文化祭で受賞出来なかったら、この同好会は今年いっぱいで活動終了って言われてて」
    五十嵐「うちの文化祭で受賞ってかなりハードル高いんじゃないの?」
    凌空「そうなんだけど、絶対勝ちたい。俺と光汰と五十嵐君とみつ……あ、彩坂先輩なら行けると思ってる」
    美月「呼び方いつも通りでいいよ。(鴨志田と五十嵐に向かって)幼馴染なの」
    鴨志田「あぁ、そうなんだ。そういえば、活動日数は?どうする?」
    凌空「(光汰と美月に向かって)どう思う?」
    光汰「正直かなり時間は無いと思うから、出来るなら週5とかの方がいいと思う」
    美月「私も光汰君と同じ意見」
    凌空「五十嵐君は、活動日数の希望とかある?」
       五十嵐、少し驚いた顔をする。
    五十嵐「えっと。……俺はなんでも」
    凌空「本当に?(鴨志田に向かって)先生、できるなら週5でやりたいんですけど」
    鴨志田「週5?」
    凌空「家じゃ中々発声とかできないから、もし出来るならここ使わせてほしいっす」
    鴨志田「みんな本当に平気か?」
    光汰「俺は、大丈夫です」
    美月「うちも」
    鴨志田「五十嵐も?」
    五十嵐「あ、まぁ、はい。大丈夫です」
    鴨志田「まぁ、お前らがいいなら俺はいいけど。活動時間で何やるかは、お前らで勝手に決めてくれ。倉庫の机とか椅子とかホワイトボードは好きに使っていいから」
    美月「かもしー、顧問みたい」
    鴨志田「俺、一応責任者なんですけど?」
    美月「あ、そうだった」
    五十嵐「ちなみにアフレコ練習って具体的には何するの?」
    凌空「アニメ流しながらアフレコの練習したり、拾ってきた台本の音読とかしたいなって思ってるんだけど、どう?」
    五十嵐「あんまりよく分かんないけど……」
    凌空「まぁ、やっていけば分かると思う!」
    五十嵐「……了解」
    光汰「(凌空に向かって)脚本の内容決まるまでは、色々相談したいんだけど」
    凌空「もちろん。脚本に関しては美月ちゃんにも色々相談したい」
    美月「わかった」
    鴨志田「おっけ、詳しいことは徐々にってことで、もろもろ決まったかな」
    凌空「はい」
    鴨志田「はい。じゃあ、みんなこれ。同好会も入部届は必要だから。あ、同好会名……」
    凌空「あ、それ考えたんですけど、アニメ制作同好会がいいかなって。光汰とか美月ちゃんの力がなきゃアフレコもできないし」
    鴨志田「じゃあ、それで、その名前書いて明日までに俺のところ持ってきて」
    凌空/光汰/五十嵐/美月「はい」
    〇月野高校・1年5組教室(朝)
       五十嵐、教室で入部届を書き自分で印鑑を押している。
    山之内「おはよう。なにそれ?」
    五十嵐「入部届」
       山之内、アニメ制作同好会という字を見る。
    山之内「峻まじで入るんだ」
    五十嵐「同好会だから、夏休みとかは活動無いらしくて」
    山之内「なるほどね。じゃあ、練習少ないの?」
    五十嵐「いや、平日は週5だって」
    山之内「え?まじ?なら軽音部でもよかったじゃん」
    五十嵐「軽音部は土日も夏休みも練習ですよね?」
    山之内「そうでした」
    五十嵐「まぁ、バイト決まったらどうせ行かないし、なんでもいいんだけどね」
    山之内「部員のやつら可哀想」
    五十嵐「でもサボるのも1年だけだよ?多分」
    山之内「1年?」
    五十嵐「うん。文化祭で賞取らなきゃ1年で活動終了だって」
    山之内「うちの高校の文化祭で賞って無理くない?」
    五十嵐「それな。だから2年からはバイト増やせるかなって」
    山之内「どんだけバイトしたいんだよ。お前ハイスぺなんだし、もったいない気がするけどな」
    五十嵐「え?」
    山之内「いや、お前にしかできないことがきっとあるのになって思って。もし俺がお前なら絶対ボーカルやるのに」
    五十嵐「そんな大したことないって。てか、俺自分の声あんま好きじゃないし」
    山之内「え?そうなの?なんで」
       チャイムが鳴る。
       1年5組担任、教室に入る。
    担任「ほら、チャイム鳴ったぞ。席戻れ」
    五十嵐「怒られるぞ」
       山之内、自分の席に戻る。
       五十嵐、スマホで求人アプリを開く。
       求人情報を「時給順」に並び替え、一番上の薬局に応募する。
    〇月野高校・1年1組教室(朝)
       光汰、自分の席でスマホでAIアプリとチャットをしている。
       凌空、教室に入り自分の席に座る。
    凌空「(光汰に向かって)おはよう」
    光汰「おはよう」
    凌空「脚本どう?」
    光汰「ごめん。まだ何も思い浮かんでない」
    凌空「全然。俺も考えてみたんだけどさ、SFとかはどう?」
    光汰「なし」
    凌空「えー。タイムスリップ系とか面白いと思ったんだけどな」
    光汰「たしかに、面白いとは思うよ。でも、ごめんだけど、俺にはその技量がない」
    凌空「そっか。SFいいと思ったんだけどな」
       チャイムが鳴る。
    〇月野高校・職員室(放課後)
       五十嵐、入部届をもって職員室に入る。
    五十嵐「鴨志田先生」
    鴨志田「あ、五十嵐か」
    五十嵐「これ(入部届を渡す)」
    鴨志田「お前さ。本当にいいの?」
    五十嵐「何がですか?」
    鴨志田「なんか、お前だけ流されてる感じだったから」
    五十嵐「あぁ、まぁ」
    鴨志田「活動日数も多いし、平気?」
    五十嵐「はい」
    鴨志田「……あ、っそ、お前がいいならいいけど」
    五十嵐「じゃ、失礼します」
    鴨志田「はーい」
    〇月野高校・柔道場(放課後)
       凌空、光汰、美月、倉庫から長机とパイプ椅子を出し準備している。
    凌空「美月ちゃん」
    美月「ん?」
    凌空「光汰がどんな話書こうか悩んでるみたいなんだけど、なんかいいアイデアない?」
    美月「20分だと、ギャグアニメとかが参考にしやすいのかな」
    光汰「そうなんですよね、けど、ああいうの書くの苦手で......」
    美月「確かに、ギャグアニメとかコメディとかって難しそうだよね。ここで笑ってくださいって言うのが伝わっちゃうし」
    光汰「そうなんです」
    美月「そしたら青春系は?」
    光汰「青春系?」
    美月「部活ものとか、バイト中のなにげない会話とか」
    光汰「あぁ、なるほど。青春日常劇的な感じですか?」
    美月「そうそう」
    光汰「それなら、比較的書きやすいかもしれないです」
       五十嵐が柔道場に入ってくる。
    五十嵐「こんにちは」
    凌空「あ、俺、五十嵐と発声やってくるから、あとは2人に任せた」
    光汰「え、おい」
    美月「いってらっしゃい」
       凌空、五十嵐に駆け寄る。
    凌空「おっす」
    五十嵐「おう」
    凌空「今日の練習なんだけど……」
       凌空、カバンの中から新品の「声優になるためには」という本を出す。
       本には何か所か付箋が貼られている。
    凌空「まずはここに書いてある基礎練をしたくて」
    五十嵐「あ、うん」
       凌空、本のページをめくる。
       五十嵐、凌空の勢いに負け、流される。
    美月「光汰君は、ずっと脚本書いたりしてるの?」
    光汰「いや、脚本書くのは今回が初めてです」
    美月「脚本書くのはってことは、他のは書いてたんだ」
    光汰「(焦りながら)あ、えっと、いや、その」
    美月「すごいなぁ」
    光汰「いやいや。先輩の方が凄いですよ。あんなにすごいもの作るなんて」
    美月「私なんてまだまだだよ。ただ好きでずっと続けてるけど、絵なんてもっとうまい子たくさんいるし」
    光汰「そうなんですか?でも、俺、先輩が作るアニメ凄い感動しました!本当にすごかったです」
    美月「本当に?うれしい。ありがとう。うちも、光汰君の作る脚本楽しみにしてるね」
    光汰「は、はい。頑張ります。」
       凌空、光汰と美月の様子を見て小さく微笑む。
    〇月野高校・職員室(放課後)
       鴨志田、仕事をしている。
    新藤「かもしー」
    鴨志田「おう(顎で指す)」
    新藤「うっす」
       新藤、職員室を出る。
       鴨志田、立ち上がり職員室を出る。
    〇月野高校・社会科準備室(放課後)
       鴨志田、新藤、社会科準備室に入る。
       鴨志田、社会科準備室の電気をつける。
    新藤「これ、この前借りてたDVD」
    鴨志田「はいよ。どうだった?」
    新藤「特典のメイキングが最高だった」
    鴨志田「分かる。なぁ進、今日演劇部休みだよな?」
    新藤「なんで知ってんの?」
    鴨志田「だって俺、教師だもん」
    新藤「休みだけど、どうした?」
    鴨志田「今日の放課後、俺の同好会見に来てくれない?」
    新藤「同好会?」
    鴨志田「俺、アニメ制作同好会の責任者になったのよ」
    新藤「うちに、そんなのあったけ」
    鴨志田「今年の新入生がつくったの」
    新藤「へぇ、で、なんで俺が見に行くの?」
    鴨志田「あいつらの演技観てほしいんだよね」
    新藤「あぁ、別に良いけど」
    〇月野高校・柔道場(放課後)
    凌空/五十嵐「ア・エ・イ・ウ・エ・オ・ア・オ。カ・ケ・キ・ク・ケ……」
       光汰、美月、椅子に座り作業している。
       鴨志田、新藤、柔道場に入る。
    鴨志田「よっす」
       凌空、五十嵐、光汰、美月、入ってきた2人に注目する。
    全員「こんにちは」
    光汰「(美月に向かって)あれって………」
    美月「演劇部部長の新藤先輩。ずっと優勝を逃してたうちの演劇部が全国初優勝したのは、あの人のおかげって言われてる」
    光汰「なんでそんな人が」
    鴨志田「こちら演劇部部長の新藤先輩です」
    新藤「どうも」
    凌空/光汰/五十嵐/美月「こんにちは」
    鴨志田「今日は特別に、新藤先輩が2人に演技指導をしてくれることになりました」
    新藤「(鴨志田に向かって)ちょっとまって、かもしー、俺演技を見るとは言ったけど指導するとは一言も言ってない」
    鴨志田「大丈夫大丈夫。変わんない。変わんない」
    新藤「変わるでしょ。てか俺一応受験生なんだけど」
    鴨志田「まぁまぁ」
    凌空「あのぉ……」
    鴨志田「ごめんごめん。大丈夫ということで、これ(凌空にプリントを渡す)五十嵐にも回して」
       凌空、プリントを受け取り一部を五十嵐に渡す。
    鴨志田「須和たちが台本作るまでには、まだ時間かかると思って、台本拾ってきた。今日はこれを読みながら、新藤先輩にアドバイスをいただくって感じで練習してください」
    凌空「はい!」
    五十嵐「は、はい」
    鴨志田「じゃ、後はよろしく」
    新藤「は?かもしー行っちゃうの?」
    鴨志田「俺も一応、仕事があんのよ。職員室いるから、なんかあったら呼びにきて」
    新藤「はぁ」
       鴨志田、柔道場を出る。
    凌空「あの、大丈夫ですか?」
    五十嵐「あの人、意外と強引なんですね」
    新藤M「意外?全然いつも通りだけど」
    新藤「まぁ、いいや。じゃあ、とりあえず、さっき言われた通り……ってか、お前ら着替えないのか?」
    凌空「え?」
    新藤「制服じゃ動きにくくない?」
    凌空「僕たちがやるのはアフレコだし、そんなに動かないかなって」
    新藤「アフレコも立派なお芝居だろ。芝居するならまずは全身を使えるようになるとこから。それに腹式呼吸も必須だから、筋トレも重要。こんなにいい場所使わせてもらってるんだから、うまく使わなきゃもったいないと思うけど」
    凌空「わかりました!着替えて……」
    新藤「いいよ。今日は、時間無いし。じゃあ、とりあえず読んでみて」
    凌空「(台本を読みながら)え?助けてほしいの?そんなん言ってもらわないと分かんないよ」
    凌空「(台本を読みながら)最低って、俺のこと?勝手に好きになったのはそっちだよね?」
       光汰、美月、凌空たちの練習を見ている。
    美月「なんか……」
    光汰「ぎこちないですね」
    美月「だね」
       読み手が凌空から五十嵐に切り替わる。
    五十嵐「(台本を読みながら)暇つぶしに付き合ってくれてありがとう」
    五十嵐「(台本を読みながら)愛してるよ。これで満足?」
       凌空、五十嵐のことを鋭い視線でまっすぐ見ている。
    光汰「すげぇ」
    美月「なんか怖い」
    新藤「おっけ、一旦次のセリフも読んでみて」
    五十嵐「(台本を読みながら)え? ホント!?」
    新藤「ストップ。台本に電話をかけながらって書いてあるじゃん。そういう時は、ちゃんと電話かけている芝居しながら、やらなきゃ」
    五十嵐「はい」
    新藤「じゃあ、もう1回最初から」
    五十嵐「(台本を読みながら、電話をかけているフリをしている)うん、じゃあ明日の10時に駅前の、時計台の下でいいかな?……うん、うん。わかった。それじゃ、明日ね!」
       読み手が五十嵐から凌空に変わる。
    凌空「(台本を読みながら)よっしゃーーー!」
    新藤「ここも一緒。そんな棒立ちで喜んだことないでしょ。実際だったら、ガッツポーズとか顔を上に向けたりとかしない?」
    凌空「たしかに」
    新藤「もう1回」
    凌空「(台本を持ちながら、ガッツポーズ)よっしゃーーー!(台本を読みながら)俺はその日、17年間の人生で初めてのデートの約束を取り付けることができた。ようやく……ようやく俺にも春が来たってわけだ!」
    新藤「おっけ、ありがとう。色々言いたいことはあるんだけど、2人とも演技未経験であってる?」
    凌空/五十嵐「はい」
    新藤「じゃあ、まず演技の基本から簡単に。1つ目喜怒哀楽。この4つの感情をしっかり使い分けられるようになること。2つ目は感情の強弱をつけられるようにする。そして最後が情景を思い浮かべて演じること。ドラマとか映画の場合は実際に映像で見せれるけど、舞台の場合それができないから役者の演技で観客に情景を想像させなきゃいけない。それはアフレコとかも通ずる部分があると思うから、出来るようになった方がいいと思う」
    凌空/五十嵐「はい」
    新藤「その上でさっきの細かいところを言っていくんだけど」
       新藤、台本を読みながら2人に指導している。
    光汰「すごい」
    美月「さすがだね」
    光汰「てか、これ……」
    美月「ん?」
    光汰「いや、男2人で恋愛はできないなって思ってたんですけど、恋愛未経験の初心な男子が超モテる男友達に恋愛相談をするみたいな話ならできるかもと思って」
    美月「それ面白いかも。男子高校生2人なら私も描きやすいし」
    光汰「初心な男子は一生懸命その友達に相談するんですけど、モテ男子は全然共感してくれないみたいな」
    美月「いいと思う」
       光汰、タブレットのメモ機能にメモをする。
    〇月野高校・職員室(夕方)
       新藤、職員室に入る。
    新藤「かもしー。俺、帰るぞ」
    鴨志田「おう。どうだった」
    新藤「どうって、まぁ初心者にしては悪くないんじゃない?特にあの背高い方は」
    鴨志田「あ、そっち?」
    新藤「え?うん」
    鴨志田「新藤さんの御眼鏡にかなったと」
    新藤「まぁ、演劇向きの演技ではないけど。あれは、日頃から嘘とかついてないとできない芝居だね」
    鴨志田「嘘ねぇ……」
    新藤 「まぁ、恥ずかしさみたいなのがあるだろうから、それが無くならないと何ともって感じだけど」
    鴨志田「田浦は?」
    新藤「もう1人の方は、きっとセリフの練習とかはしたことあるんだと思う。でも、生の演技っていうよりは、大げさな感じになっちゃうとこがあるかな。声は出てるし、まぁ、ちゃんとやれば伸びるんじゃない」
    新藤「じゃあ、俺塾行くから」
    鴨志田「なぁ、進」
    新藤「ん?」
    鴨志田「あの2人、ちょっと演劇部で見てくれねぇか」
    新藤「は?」
    鴨志田「無理?」
    新藤「俺ら夏の大会控えてるんだけど」
    鴨志田「でも1年生は基礎練してるでしょ?」
    新藤「なんでそういうことだけ知ってるの?」
    鴨志田「ふふん。基礎練だけでいいから」
    新藤「見返りは?」
    鴨志田「教師に見返り求めんなよ」
    新藤「じゃ、帰るわ」
    鴨志田「わかったよ。この前言ってた映画の特典付き限定版DVD貸すから」
    新藤「乗った」
    鴨志田「サンキュー」
    新藤「でも意外だな。かもしーが同好会にそんな一生懸命になるなんて。部活の顧問とかだるい。残業ごめんみたいな感じだったじゃん」
    鴨志田「君は、俺にどんな印象を持ってるわけ」
    新藤「いやいやマジで。マジでどうしたの?」
    鴨志田「まぁ、なんというか、俺の気持ち的には変わってないよ。生徒たちには余計なことを考えず、とにかく好きなことに挑戦してほしいんだよね。そのためには最善を尽くしたいと思ってますよ。常に」
    新藤「えぇ、いい奴」
    鴨志田「受験生なんだろ早く帰った」
    新藤「俺、あんたに足止めくらってたんだけど」
    鴨志田「悪い悪い」
    新藤「じゃあ」
    鴨志田「まじ助かった。ありがとう」
    〇月野高校・柔道場(夕方)
       外の日がだんだん沈んできている。
       時計は6時00分を示している。
    凌空「(五十嵐に向かって)え?助けてほしいの?そんなん言ってもらわないと分かんないよ。……最低って、俺のこと?勝手に好きになったのはそっちだよね?……」
    凌空「今のどうだった?」
    五十嵐「全然違うと思う」
    凌空「えぇ、でもさっきよりは良いよな?」
    五十嵐「どうだろう」
       鴨志田、柔道場に入る。
    鴨志田「時間だぞ。そろそろ片付けろ」
    凌空「はい」
       光汰、美月、片付け始める。
       凌空、五十嵐、台本をカバンの中のファイルにしまう。
       鴨志田、凌空と五十嵐のもとに近づく。
    鴨志田「田浦、五十嵐、今日どうだった?」
    凌空「マジやばかったっす。演技教えてもらったの初めてだったんで、超楽しかったです」
    鴨志田「それはよかった。明日から夏まで演劇部の基礎練に混ぜてもらえることになったから」
    凌空「え?まじすか?」
    鴨志田「うん」
    凌空「ありがとうございます」
    鴨志田「お礼は明日、新藤先輩に言うように」
    凌空「はい!」
    五十嵐「……はい」
    五十嵐、鴨志田と合った目線を逸らす。

    第5話:嘘の延長線

    〇月野高校・剣道場(放課後)
       大人数の1年演劇部が輪を作っている。
       凌空、五十嵐、その輪の中に混ざる。
    新藤「今日から田浦と五十嵐が、基礎練に混ざることになった」
    凌空「田浦凌空です。よろしくお願いします」
    五十嵐「五十嵐峻です。よろしくお願いします」
    女子1「(隣の女子に向かって)あの五十嵐君がなんで演劇部に?てか、マジでイケメンだね」
    男子1「(男子2に向かって)あいつ1組の田浦じゃね?あの声優同好会どうの言ってた」
    男子2「(男子1に向かって)あ、本当だ。俺も声かけられたんだよね」
    新藤「じゃあ、早速基礎練始めるぞ。まず筋トレから」
       演劇部、横2列に並び寝ころぶ。
       凌空、五十嵐、見様見真似で寝ころぶ。
    新藤「腹筋30回」
    演劇部一同「はい!1・2……」
       凌空、五十嵐、腹筋をする。
    〇月野高校・柔道場(放課後)
       柔道場の端にはパイプ椅子と長机、ホワイトボードが置かれている。
       光汰、美月、パイプ椅子に座り、それぞれのタブレットを開きながら作業している。
    光汰「先輩。すいません。ちょっといいですか?」
    美月「うん」
    光汰「脚本のことで悩んでて、やっぱり最後は主人公の恋愛が成功した方がいいですかね?」
    美月「うーん。でも2人の友情物語なら、だらだら恋愛相談してるだけでも面白い気がするけどな」
    光汰「なるほど」
    美月「光汰くん、私もいい?」
    光汰「はい」
    美月「キャラデザ作ってみたんだけどさ…」
       美月、タブレットに書いたイラストを見せる。
    光汰「え、すごい!もうできたんですか?」
    美月「どうかな?」
    光汰「2人ともめっちゃカッコイイです。でも……」
    美月「でも?」
    光汰「いや、その」
    美月「大丈夫!何でも言って」
    光汰「……いいんですか?」
    美月「うん」
    光汰「主人公がちょっとイケメンすぎませんか?モテなくて悩んでるっていう設定なのに、これだとモテちゃいそうだなって」
    美月「あぁ、なるほど、たしかに。モテなさそうなキャラって難しいな。いっそ坊主とかにする?」
    光汰「坊主ですか!?」
    美月「嘘。嘘。冗談」
       光汰、笑みをこぼす。
    〇五十嵐の家・五十嵐の部屋(午前)    
       シンプルな部屋。
       部屋ではラジオが流れている。
    ラジオ「5月3日土曜日。今日はゴールデンウィークということで」    
       五十嵐、ラジオを切る。
       五十嵐、私服姿で履歴書の入った封筒をカバンに入れる。
    〇五十嵐の家・リビング(午前)
       部屋着姿の五十嵐父、本を読んでいる。    
       五十嵐、玄関に向かおうとする。
    五十嵐父「(本から目を離さず)出かけるのか?」
    五十嵐「うん、ちょっと」
       五十嵐、そのまま玄関に向かい、靴を履いて家を出る。
    〇薬局・バックヤード(土曜・午前)      
       五十嵐、薬局屋の店長と面接している。   
       店長、五十嵐の履歴書を見る。
    店長「今、平日人が足りてないんだけど、平日も入れたりする?」
    五十嵐「はい。大丈夫です」
    店長「わかりました。そうしたら結果はまた後日、電話かメールでご連絡しますね」
    五十嵐「はい。ありがとうございました」
    〇帰り道(夕方)
    T「-1週間後」
       凌空、光汰、自転車で並走してる。
    光汰「久しぶりの演劇部の練習どうだった?」
    凌空「めっちゃきつかったけど、おもろかったよ。でもやっぱり演劇部はゴールデンウィークも練習してたから、すげぇ置いて行かれてる感じした」
    光汰「そっか」
    凌空「光汰はどう?進んだ?」
    光汰「うん。結構いい感じ。でも、主人公たちの名前で悩んでて……」
    凌空「名前か。どんなキャラ?」
    光汰「凌空の方はいい奴なのにモテない初心な奴」
    凌空「え、俺モテない役なの?」
    光汰「でもいい奴だよ?」
    凌空「でも、モテないんでしょ?」
    光汰「ごめんって」
    凌空「五十嵐の方は?」
    光汰「超モテるハイスぺ男子」
    凌空「五十嵐じゃん」
    光汰「まぁ、そうだね」
    凌空「初心ないいやつか。……あ!宇生とかでいいんじゃない?宇宙の宇に生まれるで宇生」
    光汰「分かりやすくていいかも。天才?」
    凌空「でしょ?」
    光汰「五十嵐の方は?」
    凌空「五十嵐のままでいいだろ。なんか名前もモテそうだし」
    光汰「五十嵐、絶対嫌がるでしょ」
    凌空「たしかに……。じゃあ、西園寺とかは?」
    光汰「西園寺モテそう。金持ちっぽいし、それにしよう。凌空ありがと」
    凌空「楽しみにしてるわ」
    光汰「うん」
    凌空「てか、来週からテストか。嫌だな、練習もできないし」
    光汰「だね」
       凌空、光汰、十字路の前で自転車のスピードを落とす。
    光汰「じゃあ」
    凌空「じゃあ、また明日」
       凌空、光汰、それぞれの道に走り出す。
    〇月野高校・廊下(朝)
       掲示板には「1年1学期中間テスト範囲」と書かれたプリントが何枚も貼られている。
    〇月野高校・1年5組教室(朝)
    T「-数日後」
       五十嵐、席でイヤホンをつけラジオを聞いている。
       五十嵐のスマホに知らない番号から電話がくる。
    五十嵐「(電話に出て)もしもし。はい。五十嵐です……」
       山之内、教室に入り五十嵐の席に来る。
    五十嵐「(電話しながら)あ、本当ですか?はい。テスト期間に入っちゃうので、6月末とかからでも大丈夫ですか。はい。ありがとうございます。よろしくお願いします」
       五十嵐、電話を切る。
    山之内「おはよう。電話?」
    五十嵐「うん。面接してた薬局。採用だって」
    山之内「おめでとさん」
    五十嵐「サンキュ」
    〇凌空の部屋(夜)
       凌空、濡れた髪をタオルで拭きながら、部屋に入ってくる。
       凌空のスマホに通知がくる。
       スマホには、「脚本完成した!」のメッセージ。
    凌空「まじか!!」
       以下、画面上で、
    × × ×
    光汰「気になるとこあったら直すから言って」
    光汰「アドリブで変えてもいいし」
    凌空「光汰。マジありがとう!すぐ読むわ」
    × × ×
       凌空、光汰から送られてきたデータをPCで開き、読み進める。
    凌空「(セリフを読みながら)なぁ、西園寺。お、お前は、す、すきな、人とかいるの?」
    凌空「(セリフを読みながら)は、は?お、おれ?俺は別にいないけど」
    凌空「(セリフを読みながら、読み方を少し変えて)は、は?お、おれ?俺は別にいないけど」
    〇月野高校・1年1組教室(朝)
       光汰、教室で授業の準備をしている。
       凌空、走って教室に入ってくる。
    凌空「光汰!!」
    光汰「お、凌空……」
    凌空「めっちゃ良かった」
    光汰「え?」
    凌空「本当は読んだ後、連絡しようと思ってたんだけど、練習してたら寝落ちしたっぽくて。マジごめん」
    光汰「いや、全然。てか本当に大丈夫だった?」
    凌空「大丈夫どころじゃない。最高」
    光汰「よかった。実は緊張してたんだよね」
    凌空「でさ、役作り?で悩んでることあって。ちょっと、相談してもいい?」
    光汰「うん」
       チャイムが鳴り、宇佐美が入ってくる。
    凌空「うわ、タイミング」
    生徒1「うさみん。凌空が文句言ってる」
    宇佐美「田浦くんなんか言った?」
    凌空「(生徒1に向かって)言ってねぇよ。(宇佐美に向かって)うさみん。今日も可愛いなって」
    宇佐美「そういうのいいから、あと宇佐美先生ね」
    凌空「なんで?あいつには何も言ってなかったじゃん」
       教室の生徒が笑う。
    〇月野高校・剣道場(放課後)
    T「-6月中旬」
       凌空、新藤、剣道場の真ん中に立っている。
       五十嵐、1年演劇部、座って凌空のことを見ている。
    新藤「(手をたたき)喜」
    凌空「(嬉しそうに)まじ?やばい!え?やばくない?超やばいんだけど」
    新藤「(手をたたき)怒」
    凌空「(少し戸惑い)クソ。ふざけんな。クソが」
    新藤「もっと。もっと、実際にどうしようもなく怒ってる自分を想像して」
    × × ×
    〇凌空の部屋 
       凌空、叫びながら物を投げ暴れている。
    × × ×
    凌空「クソ。ふざけんな。クソが」
    新藤「ストップ。田浦、お前感情に蓋してるだろ」
    凌空「……」
    新藤「100%の感情を出すっていうのは、結構怖いけど、そのストッパーがあるうちは、お前は表現者になれないぞ」
    凌空「はい……」
    新藤「あと、お前、声、なんか無理してない?」
    凌空「……いや」
       凌空、喉を触る。
    新藤「いや、気のせいだったらいいんだけど、無理して低くしようとしてるのかなって」
    凌空「いや、特には」
    新藤「あ、そう?まぁ、じゃあいいや。よし、次のやつ」
    演劇部1「はい!」
       凌空、座る。
       五十嵐、凌空の姿を見ている。
       演劇部1、凌空と同じ練習をしている。
       凌空、ぼーっと演劇部の練習を眺めている。
    新藤「よし、集合」
    演劇部一同「はい」
       凌空、五十嵐、演劇部一同、輪になって並ぶ。
    新藤「みんな演技しようって言うのが全面に現れちゃってるかな。演技って言うのは、一種嘘の延長線なのよ」
    五十嵐「……」
    新藤「本当の自分を偽って別の人間を演じなきゃいけないからさ」
    凌空「……」
    新藤「その役の感情をどれだけ自分に落とし込めるかが大切だから。そこんとこ五十嵐が上手いから、参考にしてみ。あと来週からテスト期間で部活は休みになるけど、各自自主練はしっかりやるように」
    演劇部一同「はい!」
    〇月野高校・柔道場(放課後)
       鴨志田、凌空・五十嵐・光汰・美月に印刷した台本を配る。
       美月、五十嵐、台本をめくる。
    凌空「……」
       光汰、凌空を見つめる。
    〇帰り道(夕方)
       凌空、光汰、自転車で並走している。
    光汰「凌空、なんかあった?」
    凌空「いや、別に……なんで?」
    光汰「なんか元気ないから」
    凌空「そう?いつも通り、めっちゃ元気だよ」
    光汰「凌空って、嘘つくの結構下手だよね」
    凌空「え……」
    光汰「本当に平気?」
    凌空「いや、大丈夫」
    光汰「凌空がそういうならいいけど。じゃあまた明日。」
    凌空「うん」
       凌空、光汰の背中を見つめる。
    〇学校の帰り道(回想)
       中学生の頃の凌空。
       複数の同級生に囲まれている。
    同級生1「女声」
    同級生2「まだ声変わり来ないとかやば」
    同級生3「田浦の声、キモ」
    同級性1「陰キャ」
    同級生2「根暗」
    同級生3「ヲタク」
    〇帰り道(夕方)
       凌空、お店のショーウィンドウに映った自分を見つめニコッと笑う。
       凌空、咳払いをする。
    凌空「普段から、偽りの自分を演じているつもりなんだけどな」
    〇凌空の部屋(夜)
       凌空、部屋に入る。
    × × ×
       中学時代の凌空、ベッドにうずくまり叫んでいる。
    × × ×
       凌空、カバンを投げ捨て深くため息をつく。
       凌空のスマホの通知が鳴る。
       通知を見ると美月からの「キャラデザ完成」というメッセージ。
       凌空、通知をタップしメッセージを開く。
       画面に、美月の描いたキャラクターが映る。
       凌空、キャラクターを見て深いため息をつく。
       凌空、カバンから台本を取り出す。
    凌空「なぁ、西園寺。お、お前は、す、すきな、人とかいるの?」
    〇月野高校・剣道場(放課後)
    T「-数日後」
       凌空、五十嵐とのチャットを開く。
       凌空、「今日練習こないの?」とメッセージを送る。
    新藤「練習始めるぞ」
    凌空/演劇部一同「はい!」
       凌空、急いでスマホをしまう。
       演劇部の輪に混ざり、腹筋。
    凌空/演劇部一同「ア・エ・イ・ウ・エ・オ」
    〇月野高校・柔道場(放課後)
    凌空「光汰、宇生のことでちょっと聞きたいんだけど」
    光汰「もちろん」
    凌空「こいつって俺からみたら結構、いい奴だと思うんだけど、光汰的にコイツがモテない理由って何だと思う?」
    光汰「確かに、宇生は悪いやつではないんだけど、女子から見たらバカすぎるんだよね」
       凌空、光汰、台本を読みながら熱心に話し合っている。
       美月、凌空たちのもとに来る。
    美月「2人ともごめん。絵コンテ作りたいから手伝ってほしいんだけど」
    凌空「何すればいい?」
    美月「各コマの長さを決めたくて、一旦全セリフの秒数計りたいんだけどいい?」
    凌空「もちろん」
    美月「五十嵐君って今日休み?」
    凌空「あ、うん、連絡はしたんだけど返ってこなくて」
    美月「そっか。五十嵐君のセリフの秒数も計りたかったんだけど」
    光汰「もしよかったら、俺が五十嵐のとこ読みましょうか?」
    美月「本当?めっちゃ助かる」
    光汰「上手くできるかわかんないけど、時間計るだけなら」
    美月「ありがとう」
    〇凌空の部屋(夜)
       凌空、五十嵐にメッセージを打っている。
    凌空「明日は部活来れる?」
    〇薬局・バックヤード(夜)
       卓上の時計は「22:00」と表示されている。
       五十嵐、ロッカーを開けスマホを確認する。
       五十嵐、凌空のメッセージを未読スルーする。
       五十嵐、着替えバックヤードを出る。
    五十嵐「(店長に向かって)おつかれさまです」
    〇月野高校・1年5組前廊下(朝)
       凌空、台本を読みながら廊下に立っている。
       凌空の前を五十嵐が通る。
    凌空「五十嵐君」
       五十嵐、気まずそうに凌空の方を見る。
    五十嵐「あ、昨日は休んじゃってごめん」
    凌空「うん。今日は来れる?」
    五十嵐「ごめん。今日は父さんが研究所に寝泊まりしてるから、荷物を届けに行かなきゃいけなくて」
    凌空「そうなんだ。分かった。明日は?」
    五十嵐「明日は行けると思う」
    凌空「おっけ。休むこと新藤先輩にも伝えておくね」
    〇美月の部屋(夜中)
       美月の机の時計は「0:40」と表示されている。
       美月、タブレットに映された絵コンテに、絵を書きこんでいる。
       たまに、ペンを置き手のストレッチをしている。
    〇月野高校・柔道場(放課後)
       凌空、光汰、台本の読み合わせをしている。
    〇月野高校・1年5組前廊下(放課後)
    T「-1週間後」
       1年5組、ホームルームをしている。
       凌空、台本を読みながら廊下に立っている。
       1年5組生徒たち、教室から出てくる。
       凌空、台本をしまい教室を覗く。
       凌空、五十嵐を見つける。
    凌空「五十嵐。今日来れる?」
    五十嵐「ずっと休んでてごめん。今日は行く」
    凌空「良かった」
    五十嵐「でも、ごめん、俺掃除当番でちょっと遅れちゃうかもだから、先行っててくれる?」
    凌空「了解」
       凌空、走って剣道場に向かう。
    〇月野高校・剣道場(放課後)
       凌空、1年演劇部、ジャージに着替え準備をしている。
    新藤「そろそろ始めるぞ」
    凌空/演劇部「はい」
       凌空、1年演劇部、新藤を中心に輪になる。
    新藤「五十嵐は今日も休みか?」
    凌空「今日は掃除終わったら来るって言ってました」
    演劇部1「え?俺、五十嵐とクラス一緒だけど、アイツ多分掃除当番
    じゃないぞ?」
    凌空「え?」
    新藤「サボりか。まぁいいや、時間無いから始めるぞ」
    凌空/演劇部員「はい!」
       凌空の顔が曇っている。
       凌空、1年演劇部、筋トレをする。
       時計の針が16時30分から17時に進む。
    凌空「(荷物を持ち)ありがとうございました」
       凌空、剣道場を出る。
       凌空、五十嵐に電話を掛けるが出ない。
    〇月野高校・柔道場(放課後)
       光汰、美月、タブレットで作業をしている。
       凌空、柔道場に入る。
    光汰「おつかれー。あれ五十嵐は?今日も休み?」
    凌空「う、うん、なんか連絡取れなくて」
    光汰「そっか」
       凌空、柔道場の端に荷物を置く。
       光汰、少しイライラしている凌空を心配そうに見つめる。
    光汰「そうだ。凌空。先輩が、もう前半のレイアウト作ってくれたんだよ」
    凌空「え?まじ?もう?」
    美月「うん」
    凌空「すげぇ」
       凌空、台本を開く。
       凌空の台本には、すでにたくさんの書き込みがされている。
    凌空「光汰、読み合わせ付き合ってくれない?」
    光汰「うん」
       凌空、光汰、読み合わせをする。
    〇帰り道・部活帰り(夕方)
       凌空、光汰、自転車で並んで帰っている。
    光汰「ごめん。俺、読むの下手で、あんま練習になんないよね」
    凌空「いやいや、全然。家じゃ、掛合の練習できないから、めっちゃ助かった」
    光汰「それなら良かった」
       光汰、凌空の横顔を見つめる。
    凌空「なんだよ。そんな見つめて」
    光汰「ううん。なんでもない」
       凌空、光汰、十字路の手前で自転車のスピードを落とす。
    凌空「じゃあ」
    光汰「うん。また明日」
       凌空、十字路を右手に曲がり自転車を走らせる。
       光汰、凌空の背中を見つめる。
    〇月野高校・2年4組(歴史の授業)
       鴨志田、歴史の授業をしている。
       美月が黒板を写しているが、時々右手首をかばうように手をぶらぶらさせる。
       授業終了のチャイムが鳴る。
    鴨志田「はいじゃあ、今日はここで」
       鴨志田、生徒、授業の片づけをする。
       鴨志田、授業の荷物を一式持って、美月の席に来る。
    鴨志田「おい、ちょっと手出せ」
    美月「ん?手?」
    鴨志田「お前、右手痛いだろ」
    美月「え、あ、まぁ、若干?でも大したことないよ」
    鴨志田「見せて」
       美月、鴨志田に右手を出す。
       鴨志田、美月の右手を軽くひねる。
       美月、痛そうな顔をする。
    鴨志田「ちょっと、ついて来い」
       鴨志田、美月、教室を出る。
    〇月野高校・保健室(昼)
       鴨志田、保健室に入る。
    養護教諭「鴨志田先生、どうされたんですか?」
    鴨志田「(廊下にいつ美月に向かって)彩坂」
    美月「失礼します」
    鴨志田「コイツがちょっと手痛めたみたいで」
       美月、保健室に入り右手を出す。
    養護教諭「いつから?」
    美月「3日前くらいからです。でも、本当に大したことなくて」
    養護教諭「思い当たる原因はある?」
    美月「えっと……」
    鴨志田「お前、1日何時間絵描いてる?」
    美月「4~5時間くらい」
    養護教諭「グーパーしてみて」
       美月、右手を開いて握ってを繰り返す。
    養護教諭「痛い?」
    美月「今はそんなに、ペン持つと少し痛みます」
    養護教諭「軽度の腱鞘炎っぽいね。心配だったら整形外科行ってもいいかも」
    美月「え?」
    養護教諭「まだ、軽傷だから1週間くらい休めば大丈夫だと思うけど」
    美月「え?1週間は休むのは無理です」
    鴨志田「無理じゃない」
    美月「でも……」
    鴨志田「まだ、間に合わないってことはないだろ」
    美月「だけど、早くしないとアフレコが」
    鴨志田「ここで無理したら1ヶ月安静にってこともあり得るぞ」
    美月「……」
    鴨志田「そうなったら、責任を感じるのはアイツらだ」
    美月「……わかった」
    鴨志田「応急手当お願いしていいですか」
    養護教諭「もちろんです」
       美月、悲しそうに俯く。
    鴨志田「大丈夫。アイツらに話すときは俺も一緒にいるから。それに、そんなことで怒るようなやつじゃないだろ」
    美月「うん。ありがとうございます」
    〇月野高校・剣道場(放課後)
       凌空、1年演劇部と共に練習をしている。
       鴨志田、剣道場を覗く。
       新藤、鴨志田に気が付く。
    新藤「かもしー?どうしたの?」
    鴨志田「練習中悪い。田浦ちょっといいか?」
    凌空「はい」
       凌空、柔道場を出る。
    〇月野高校・剣道場前(放課後)
       鴨志田、光汰、美月が並んでいる。
       美月は右手に包帯を巻いている。
    凌空「え?美月ちゃんどうしたの?」
    美月「ごめん。その」
    鴨志田「軽い腱鞘炎だと」
    光汰「腱鞘炎?大丈夫ですか?」
    美月「うん。そんな重症ではないって、でも、1週間安静にしなきゃいけなくて。ごめんね、早くアフレコできるようにしなきゃなのに」
    凌空「いやいや、そんなの良いって、そんなことより安静にして」
    光汰「そうですよ。まだ、時間はありますし」
    美月「ありがとう」
    鴨志田「そういえば、五十嵐は?」
    凌空「……」
    光汰「最近ずっと休んでます」
    鴨志田「大丈夫なのか?演劇部で練習できるのもあと1週間くらいだろ」
    凌空「連絡はしてるんですけど、返信いつも来なくて、教室の前で待ってると、予定があるとか後で行くとか、結局来ないんですけど」
    鴨志田「そっか」
       凌空、俯き睨むような目つき。
    美月「練習中だったのに呼び出してごめんね」
    凌空「(笑顔で)全然。むしろ、そんな手傷めるまで、気付けなくてごめん」
    美月「凌空のせいじゃないよ」
    光汰「俺も気付けなくてすみません」
    美月「本当に2人のせいじゃないから気にしないで。ねぇ、ちょっと、演劇部での練習見て行ってもいい?」
    凌空「え?うん。たぶん端っこでなら大丈夫だと思う」
    美月「光汰君もたまには見学させてもらおうよ」
    光汰「は、はい」
    鴨志田「じゃあ、俺戻ってるわ。終わる頃にまた来るから」
    凌空「わかりました」
    〇月野高校・剣道場(放課後)
    凌空「すみません。戻りました」
    新藤「おけ。じゃあ、次田浦行こうか」
    凌空「はい」
       凌空、剣道場の真ん中に立つ。
    新藤「(手をたたく)喜」
    凌空「よっしゃぁ!!え?まじ?まじ?本当にいいの?」
    新藤「(手をたたく)楽」
       凌空、ドッジボールのジェスチャーを始める。
    凌空「うぇーーい。よし!んっ(ボールを投げる動作)よっしゃ」
    新藤「(手をたたく)怒」
       凌空、その場で俯く。
    凌空「ふざけんなよ」
    新藤「もっと」
    凌空「ざけんな」
    〇月野高校・1年5組前廊下(回想)
    五十嵐「ずっと休んでてごめん。今日は行く」
    凌空「良かった」
    五十嵐「でも、ごめん、俺掃除当番でちょっと遅れちゃうかもだから、先いっててくれる?」
    〇月野高校・剣道場(放課後)
    凌空「ふざけんな。なめんな。クソが。クソが」
       光汰、美月、凌空の演技を見ている。
    美月「すごい……」
    光汰「……」
    新藤「おっけ。田浦」
       凌空、ぼーっとしている。
    新藤「田浦!」
    凌空「はい!」
    新藤「これまでで一番よかった。お前は感情のストッパーさえ邪魔しなければめちゃくちゃいいもの持ってると思うから、今の忘れないように」
    凌空「はい」
    新藤「おっけ、じゃあ、今日の基礎練はここまで、大会稽古はじめるぞ」
    演劇部1年「はい」
    凌空「新藤先輩、今日もありがとうございました」
    新藤「おつかれ」
       凌空、荷物をまとめ光汰たちのもとに来る。
    凌空「お待たせ、行こっか」
    光汰/美月「……うん」
    〇月野高校・柔道場(放課後)
       凌空、台本を読みながら練習をしている。
       美月、光汰、タブレットを開き作業している。
       凌空、時折せき込む姿。
    〇凌空の部屋(夜)
       凌空、台本を読みながら書き込みをしている。
       時折、せき込む姿。
    〇月野高校・1年1組教室(朝)
    T「-7月上旬」
       チャイムが鳴る。
       宇佐美が教室に入る。
       凌空の席には、誰も座っていない。
    光汰「あれ、凌空は?」
    宇佐美「田浦君は風邪でお休みと連絡がありました」
    維月「アイツが休むなんて珍しい」
    光汰「大丈夫かな」

    第6話:偽りの背景

    〇薬局(夕方)
       五十嵐がレジをしている。
       マスクをつけた凌空、喉飴や薬、熱さまシートを持ってレジに並んでいる。
    五十嵐「お次の方どうぞ」
       凌空、レジに進む。
    五十嵐「ありが……。あ……」
       凌空、顔を上げる。
    凌空「え?」
    五十嵐「1,432円になります」
    凌空「……」
       凌空、お金を払う。
       五十嵐、商品を渡す。
       凌空、奪い取るように受け取り帰る。
    〇凌空の部屋(夜)
       凌空、電気もつけずベッドに座り込んでいる。
    × × ×
       薬局のレジに立つ五十嵐。
    × × ×
    凌空「……なんなんだよ」
       凌空、スマホを開き五十嵐とのトーク画面を見る。
       既読のつかないメッセージがずらりと並んでいる。
       凌空、文字を打ち始め、途中で消す。
     凌空「……」
       凌空、スマホを伏せ天井を見上げる。
    〇月野高校・1年1組(朝)
    T「-数日後」
       凌空、教室に入る。
    光汰「凌空、風邪平気?」
    凌空「うん。もう大丈夫。それより光汰、悪いんだけど昼休み付き合ってくれない?」
    光汰「え?うん。分かった」
    〇月野高校・1年5組教室前廊下(昼休み)
       1年5組生徒、お弁当を食べている。
       五十嵐、山之内とご飯を食べている。
       凌空、いきなり教室に入り五十嵐の席に来る。
    凌空「おい」
    光汰「凌空?」
    山之内「え?何急に」
    五十嵐「(山之内に向かって)大丈夫。(凌空に向かって)わかった」
       凌空、光汰、五十嵐、教室を出る。
    〇月野高校・屋上前階段(昼休み)
    凌空「お前、なんで嘘ついてたわけ?」
    五十嵐「……」
    凌空「今まで親がとか何とか言ってたけど、ただバイトしてて来なかっただけだろ?」
       光汰、凌空の雰囲気に驚く。
    五十嵐「お前って、キレたりいら立ったりするんだ」
    凌空「は?今そんな話してねぇだろ。なんでバイトしてんのか聞いてんだけど?」
    五十嵐「俺のところ、シングルだから」
    凌空「それは知ってる。でも金持ちなんだろ?バイトする必要ねぇじゃん」
    五十嵐「お前には分かんねぇよ」
    凌空「そりゃ言わなきゃ分かんねぇよ。だから聞いてんだろ」
    五十嵐「たかが、同好会になんでそんなむきになってんの」
    凌空「たかが?てめぇ、もう1回言ってみろ」
    五十嵐「たかが同好会でしょ。そんな一生懸命になったって、将来どうなるっていうの?
    凌空「お前にはたかが同好会かもしれねぇけど、俺には今これしかできねぇんだよ」
    五十嵐「は?」
    凌空「やっと、もう1回夢と向き合えたんだよ」
    光汰「……」
    凌空「俺中2にとき、いじめられてたんだよ。声変わり遅くて。声が女みたいだって。それがきっかけで、ハブられたり、キモがられたり、そんな空気を察して、友達全然いなくなった。」
    五十嵐「……」
    凌空「俺、そん時から声優目指してたんだけど、お前みたいな高い声じゃ、声優にはなれないって笑われて。そっから、俺壊れちゃって、無理やり声低くしようと叫びまくって、そしたら声ガッサガサになって。自分の声が聞きたくないから喋らなくなって、生きてるのも辛かった」
    光汰「……」
    凌空「で、中3のタイミングで転校して、普段喋るときはちょっと声低くしたりして、皆に嫌われないようにハブられないように明るく振舞ったよ。今でも、あんときの壊れた自分に戻っちゃいそうで、怒りとか悲しみとかそういうネガティブな感情を出すのはめちゃくちゃ怖い。」
       五十嵐、演劇部での練習を思い出す。
    × × ×
    〇月野高校・剣道場(回想)
    新藤「(手をたたき)怒」
    凌空「(少し戸惑い)なんで?なんでなんだよ。クソ。くそぉ」
    新藤「もっと。もっと、実際にどうしようもなく怒ってる自分を想像して」
    凌空「なんで?なんでなんだよ。」
    新藤「ストップ。田浦、お前感情に蓋してるだろ」
    凌空「……」
    新藤「あと、お前、声、なんか無理してない?」
    凌空「……いや」
       凌空、喉を触る。
    × × ×
    〇月野高校・屋上前階段(昼休み)
    凌空「でも光汰に出会って、はじめて声褒めてもらえて、俺の夢を応援してくれて、やっと、また頑張ろうって思えたんだよ」
    光汰「……」
    凌空「わりぃ、泣くつもりは無かったんだけど」
    五十嵐「……」
    凌空「別にやる気ねぇならそれでいいんだよ。まぁ、お前の声は必要だけど、来ないなら他の人探さなきゃいけないわけで、だから嘘つくのは辞めてくんない?」
    五十嵐「悪かった」
    凌空「はぁ、言ったらスッキリしたわ」
    五十嵐「……」
    凌空「で、なんでバイトしてんの?」
    五十嵐「……」
    × × ×
       10歳の五十嵐、家でゲームをしている。
       綺麗な恰好をした母親の姿。
    五十嵐母「買い物だから、すぐ帰ってくるね」
    五十嵐「(ゲーム画面から目を離さず)うん」
       玄関のドアが閉まる音。
       五十嵐母の背中。
    × × ×
    五十嵐「……俺の母さん、俺が10歳の頃に男作って家を出て行ったんだよ」
    凌空「……え」
    五十嵐「相手は大学病院の跡取り。当時の父さんは研究者の端くれって感じだったから、お金が理由なんだろうなって」
    凌空/光汰「……」
    五十嵐「人はお金が無きゃ裏切られるんだって思った……」
    凌空「わりぃ、何も知らないのに、もういいよ。」
    光汰「……」
    凌空「……俺こそ何も知らないのにキレて悪かった」
    五十嵐「まぁ嘘ついてた俺が悪いから」
    凌空「……嘘つかれるのはムカつく。だから直せ」
    五十嵐「分かった」
    凌空「で、部活どうすんの?」
    五十嵐「行くよ。休むときもちゃんと連絡する」
    凌空「嘘じゃないな?」
    五十嵐「そこまでひん曲がってねぇよ」
    凌空「俺、あんまり人のこと信用してねぇから」
    五十嵐「悪かったって」
    凌空「まぁ、本当に来てくれるならいいけど」
       凌空、五十嵐の肩を軽く叩く。
       チャイムが鳴る。
    五十嵐「あ、俺次移動教室だから。行かなきゃ。わりぃ」
    凌空「急に呼び出して悪かった。じゃあ、あとで」
    五十嵐「あとで」
       五十嵐、階段を下りる。
    光汰「……」
    凌空「光汰、付き合わせてごめんな。光汰がいればあんまりカッとならずに済むかなって思ったんだけど、無理だったわ。お見苦しいところをお見せしました」
    光汰「いやいや、全然」
    凌空「光汰……」
    光汰「ん?」
    凌空「ありがとう」
    光汰「お礼言われるようなことは何もしてないよ」
       光汰、階段を下る。
    光汰「ほら行くよ」
    凌空「うん」
       凌空、光汰を追いかける。
    〇月野高校・剣道場(放課後)
       凌空、ストレッチをしている。
       五十嵐、扉を開ける。
    五十嵐「こんにちは」
       1年演劇部、一斉に五十嵐を見る。
    新藤「随分と久しぶりじゃないの。俺ら大会迫ってるから、やる気ないやつに教えるほど暇じゃないんだけど」
    五十嵐「今まで勝手に休んですみませんでした」
       凌空、立ち上がり新藤の元に駆け寄る。
    凌空「新藤先輩すみません。五十嵐が来なかったのは、俺にも責任があります。すみませんでした。お時間無い中俺たちに指導してくださっていることは重々承知です。だけど、俺らもアフレコ本番まで時間がありません。文化祭で勝つために、先輩の指導が必要なんです。」
    五十嵐「……」
    凌空「この通りです。五十嵐も基礎練参加させてください。お願いします」
    五十嵐「(凌空の姿を見て、すぐに頭を下げる)お願いします」
    新藤「……分かった。急いで準備しろ」
    凌空/五十嵐「ありがとうございます」
       五十嵐、急いで準備をする。
    五十嵐「ア・エ・イ・ウ・エ・オ……」
    新藤「五十嵐、声が小さい、最初から」
    五十嵐「はい。ア・エ・イ・ウ」
       凌空、五十嵐の練習姿を見てほほ笑む。
    〇月野高校・柔道場(放課後)
       美月、タブレットに絵を書いている。
       光汰、美月の指示に従い原画の手伝いをしている。
       凌空、五十嵐、柔道場に入る。
    五十嵐「こんにちは」
    美月「本当に来た!光汰君から3人でちゃんと話せたって聞いたよ」
    五十嵐「今まで、勝手に休んですみませんでした」
    美月「私は全然」
    凌空「五十嵐、急いで読み合わせするぞ」
    五十嵐「うっす」
       柔道場、鴨志田が入ってくる。
    鴨志田「おつかれ」
    凌空/光汰/五十嵐/美月「こんにちは」
    鴨志田「あれ?五十嵐久しぶりじゃん」
    五十嵐「はい……」
    鴨志田「(凌空の顔を見て)よかったな」
    凌空「はい!先生どうしたんですか?」
    鴨志田「(後ろを振り返り)おーい」
       琳香、柔道場に入る。
       美月、琳香の顔を見て驚く。
    鴨志田「彩坂の手心配だから助っ人呼んだ」
    美月「え、嘘……」
    凌空「誰?」
    美月「バカ。1年で全国美術コンクールで金賞取った美術部の双葉琳香ちゃん」
    光汰「1年で全国……」
    凌空「すげぇ!!」
    〇月野高校・2年5組(回想)
    鴨志田「なぁ、お前最近絵描いてる?」
    琳香「描いてない」
    鴨志田「もしかして、暇?」
    琳香「まぁ、暇ちゃ暇だけど」
    鴨志田「今、うちの同好会が20分くらいのアニメ作ってるんだけど、原画担当が一人しかいなくてさ、間に合うかギリギリらしいのよ」
    琳香「20分のアニメを一人で……」
    鴨志田「4組の彩坂っていうやつがやってるんだけど、この前腱鞘炎になっちゃってさ。お前、手伝ってくれない?」
    琳香「……」
    鴨志田「部活とか同好会とか入るの怖いか?」
    琳香「……」
    鴨志田「お前が金賞取ったら、先輩から恨みかったんだってな」
    琳香「知ってたんだ」
    鴨志田「まぁな、でもそんなのただの僻みだ。気にすんな。……って言っても、お前意外と繊細だもんな」
    琳香「え?」
    鴨志田「クールだなんだの言われてるけど、割と人の目気にするじゃん」
    琳香「……」
    鴨志田「お前はいいやつだから、チームプレーで何かを作るって言うの、結構向いてると思うだよな。……とりあえず、文化祭までだけでもいいから手伝ってくんない?」
    琳香「……わかった」
    〇月野高校・柔道場(放課後)
    美月「(琳香に向かって)人は全然足りてないし手伝ってくれたら超うれしいけど、本当にいいの?」
    琳香「うん。最近部活行ってないし。私も美月ちゃんのアカウントいつも見てて凄いなと思ってたから。私はキャラクターとかあんま得意じゃないんだけど、模写とか背景なら手伝えると思う」
    美月「もう、本当に超助かる。マジありがとう」
    琳香「よろしく」
    美月「コンクールの時の絵見たよ。私感動しちゃった。特に水面の光の反射がすごくて」
    琳香「ありがとう。えっと、何からやればいいかな」
    美月「あ、そうだよね、背景お願いしてもいい?まずは(絵コンテを出す)」
       鴨志田、琳香の様子を見てほほ笑む。
    凌空「五十嵐、俺らも早く練習するぞ」
    五十嵐「うっす」
    美月「かもしー、台本もう一部印刷してきてほしい」
    鴨志田「はいよ」
       鴨志田、柔道場を出る。
    凌空「(台本を読みながら)まぁ、モテる西園寺くんには分からないだろうね」
    五十嵐「(台本を読みながら)そうだね、分かんないね」
    光汰「ここはちょっとバカにしてる感じのほうがいいかも」
    五十嵐「わかった」
       凌空、五十嵐にペンを渡す
    凌空「光汰の指示はちゃんと台本に書き込む」
    五十嵐「あ、うん」
       五十嵐、凌空からペンを受け取り台本に書き込む。
       凌空、五十嵐、光汰、読み合わせを続ける。
       窓の外の景気がだんだんと暗くなる。
       鴨志田、柔道場に入ってくる。
    鴨志田「そろそろ時間だぞ」
    凌空/五十嵐/光汰/美月/琳香「はい」
    鴨志田「アフレコ本番は、来週の金曜だよな?」
    凌空「はい」
    鴨志田「間に合いそうか?」
    美月「こっちはアフレコできる最低限までは終わってる」
    凌空「俺らも大丈夫です。どうにか間に合わせます。(五十嵐に向かって)な?」
    五十嵐「……はい」
    鴨志田「おっけ、当日は視聴覚室で機材は貸してもらえるって」
    凌空/光汰「ありがとうございます」
    鴨志田「あとこれ、台本(琳香に渡す)」
    「ありがとう」
    鴨志田「じゃあ今日はこれで、おつかれ」
    凌空/五十嵐/光汰/美月/琳香「お疲れさまでした」
    〇月野高校・剣道場(放課後)
    T「-1週間後」
        凌空、五十嵐、1年演劇部、発声練習をしている。
    新藤「(五十嵐に向かって)もっとお腹から声出す!」
    五十嵐「サ!セ!シ!ス!セ!ソ!サ!ソ」
       新藤、笑顔で頷く。
    凌空「(嬉しそうな顔で五十嵐を見て)タ!テ!チ!ツ!テ!ト!タ!ト!」
       剣道場の時計がゆっくり進んでいく。
    新藤「(手をたたき)哀」
    凌空「くそ、なんで、なんで……(感情がだんだんと大きくなり)なんでだよ。なんでなんだよ!」
    新藤「おっけ!今日は田浦の演技が一番良かったぞ。よし、じゃあみんな稽古の準備して」
       1年演劇部、稽古の準備をする。
    凌空「新藤先輩。みんなもちょっといいですか」
    新藤「ん?」
    凌空「俺ら、今日で演劇部の参加最後になります」
    新藤「そっか、今日で最後か」
    凌空「はい。短い時間でしたがありがとうございました。大会がんばってください」
    新藤「ありがとう。お疲れさま」
    凌空/五十嵐「ありがとうございました」
    新藤「はいよ、じゃあ、文化祭楽しみにしてるから」
    凌空「ありがとうございます。俺らも大会見に行くんで」
    新藤「来てくれんの?」
    凌空「はい。楽しみにしてます。じゃあ、マジでありがとうございました」
    五十嵐「ありがとうございました」
       凌空、五十嵐、剣道場を出る。
    〇月野高校・剣道場前廊下(放課後)
    凌空「ついにアフレコだな」
    五十嵐「ああ」
    凌空「楽しみだな」
    五十嵐「……うん」
    凌空「五十嵐もしかして緊張してる?」
    五十嵐「は?してねぇよ」
    〇月野高校・視聴覚室(放課後)
       スタンドマイクが2本置かれている。
       光汰、美月、琳香、鴨志田プロジェクターの準備をしている。
       プロジェクターに制作したアニメーションが映し出される。
       画面の右上にはストップウォッチが表示されている。
       凌空、五十嵐、視聴覚室に入る。
    凌空/五十嵐「こんにちは」
    光汰「おつかれ」
    凌空「うわ、すげぇ。準備全部任せちゃってごめん」
    美月「全然。最後の練習どうだった」
    凌空「バッチリ」
    光汰「いつでも始められるよ」
    凌空「分かった。すぐ始めよう」
    五十嵐「うん」
       凌空、マイクの前に立つ。
    × × ×
    同級生1「女声」
    同級生2「声、キモ」
    同級生3「お前が声優なんてなれるわけないじゃん」
    × × ×
    千秋純「キュアラテの言葉を借りるなら好きなら諦める必要はないってとこですかね。あとは、その時その時で、自分が思う一番の近道を選んで、全力でやることが大切だと思います」
    × × ×
    光汰「むしろ武器じゃん!凌空、声優向いてると思うけど」
    × × ×
       光汰、五十嵐、凌空を見つめている。
       凌空、深呼吸をする。
    凌空「よし。やろう」
    光汰「おっけ。(美月に向かって)お願いします」
    美月「いくよ」
       美月、アニメーションの再生ボタンをクリックする。
       プロジェクターに動画が流れ始める。
    凌空「(台本を読みながら)なぁ、西園寺」
    五十嵐「(台本を読みながら)ん?」
    凌空「(台本を読みながら)俺ってなんでモテないんだと思う?」
    五十嵐「(台本を読みながら)知らない」
       凌空、五十嵐、プロジェクターと台本を交互に見ながらセリフを読んでいく。
       凌空、台本を読みながら表情がコロコロと変わる。
    凌空「(台本を読みながら)だなっ!」
       プロジェクターの映像が黒い背景になる。
    光汰「おっけ。いいと思う。アフレコこれで終了」
    五十嵐「ふぅ……」
    凌空「終わったぁ」
    琳香「お疲れさま」
    美月「2人ともすごかったよ!」
    鴨志田「お疲れさん」
    光汰「前半の方は原画貰ってるから、出来るところから編集進めていくね」
    凌空「サンキュ。片付けは俺と五十嵐でやるんで3人は作業進めちゃってください」
    美月「あ、本当に?」
    光汰「いいの?」
    凌空「もちろん」
    琳香「ありがとう」
       光汰、美月、琳香視聴覚室の後ろの席で作業を始める。
       凌空、五十嵐、片づけ始める。
    凌空「(鴨志田に向かって)鴨志田先生!このマイクどこ置けばいいですか?」
       美月、琳香、絵を書いている。
       光汰、動画の編集をしている。
       チャイムが鳴る。
    美月「もうこんな時間か」
    鴨志田「今日は本当にお疲れさま。よくここまで来たな。明日からテスト週間でテスト終わったらすぐ夏休みだから、次の活動は2学期入ってからだな」
    凌空「はい」
    鴨志田「2学期始まったら、すぐ文化祭。みんな後悔無いよう最後まで頑張れよ」
    凌空/光汰/五十嵐/美月/琳香「はい」

    第7話:声春の最初の1ページ

    〇高萩市市民会館・ホール会場(午前)
       会場入口に「茨城県高校演劇コンクール」と書かれたポスターが貼ってある。
       凌空、光汰、五十嵐、客席に座り観劇している。
       鴨志田、離れた席で観劇している。
       他校の演劇部がカーテンコールをしている。
       会場内に拍手が鳴り響く。
    アナウンス「次は月野高校演劇部で『アルプススタンドのはしの方』です」
       ブザーが鳴り、会場が暗くなる。
       サイレンのSEが鳴る。
    新藤「え?点数入ったの?」
    演劇部1「いや分かんない」
       凌空、舞台を真剣に見ながら強くこぶしを握る。
       新藤にスポットライトが当たる。
    新藤「……ありがとう(新藤、静かに涙を流す)」
       サイレンが鳴り響く。
       舞台が暗転する。
       会場、スタンディングオベーション。
       鳴りやまない拍手の中、カーテンコールが行われる。
       凌空、五十嵐、光汰、まっすぐ舞台上を見つめている。
    凌空「……」
    五十嵐「……」
    光汰「……」
       会場の明かりがつく。
    アナウンス「20分間の休憩になります」
       客席に座っていた人たちが、動き出し賑やかになる。
    光汰「すごかったね」
    五十嵐「さすがだな」
    凌空「……」
    光汰「凌空?」
       鴨志田、凌空たちを見つける。
    鴨志田「お前ら来てたのか」
    光汰「こんにちは」
    鴨志田「アイツら文化祭もあれやるらしいぞ」
    光汰「あれを……」
    凌空「なぁ」
    光汰「ん?」
    凌空「録り直したいんだけど」
    光汰「え?」
    凌空「アフレコ、録り直したいんだけど」
    光汰「いやいや、もう夏休み入ってるし、次活動できるの2学期入ってからだよ。さすがに間に合わないって」
    凌空「鴨志田先生、夏休みどっかで活動させてもらえませんか。1日でいいので」
    鴨志田「うーん」
    凌空「お願いします。新藤先輩たち本当にすごかった。先輩の人生にはきっと演劇しかないんだろうなっていうのが、伝わってきて。正直勝てないなって思いました」
    光汰「……」
    凌空「でも、俺にもこれしかないんです。一度諦めた夢だったし、自分の声も嫌いでした。でも、光汰のおかげでもう1回目指すことが出来て。光汰が美月ちゃんとたくさん相談して面白い台本を作ってくれて。美月ちゃんも手傷めながら絵描いてくれてて」
    光汰「……」
    凌空「五十嵐もきっと俺になんか話したくなかったこと腹割って話してくれて。琳香先輩もすげぇ人なのに手伝ってくれたんです」
    五十嵐「……」
    凌空「みんなでここまで来たから、絶対負けたくない。最初は賞が取れればって思ってたけど、今はそうじゃなくて最優秀賞を取りたい。だから、もう1回だけ録り直しさせてくれませんか」
    光汰「先生、俺からもお願いします。夏休み中にもう一回やらせてもらえませんか」
    凌空「光汰……」
    光汰「着いていくって言ったでしょ」
       凌空、光汰を見つめ力強く頷く。
    五十嵐「お願いします」
    光汰「五十嵐?」
    五十嵐「一緒に録らなきゃ、俺が失敗してるみたいになりそうだし」
    凌空「……お願いします!」
    鴨志田「……歴史の補習なら付き合ってやる。須和と五十嵐も参加するか?」
       凌空、光汰、五十嵐、顔を上げる。
       鴨志田、3人を見てほほ笑む。
    凌空/光汰/五十嵐「はい!」
    鴨志田「明日、11時から視聴覚室で」
    凌空/光汰/五十嵐「ありがとうございます!」
    鴨志田「絶対、誰にも言うなよ?あくまで補習だからな?」
    凌空/光汰/五十嵐「はい」
    〇五十嵐の家(夜)
       五十嵐、台本を読み練習をしてる。
    〇月野高校・視聴覚室(午前)
       鴨志田、機材の準備をしている。
       凌空、五十嵐、光汰、視聴覚室に入る。
    鴨志田「おはよう」
    凌空/光汰/五十嵐「おはようございます」
    鴨志田「あんま時間無いと思って準備しておいたぞ。早く発声してリハーサルしな」
    凌空「え、リハーサルって」
    鴨志田「いきなり本番やってもしょうがないだろ、1回リハするくらいの時間は取ってるから」
    凌空「ありがとうございます。五十嵐、やるぞ」
    五十嵐「おう」
    凌空/五十嵐「ア・エ・イ・ウ・エ・オ。カ・ケ・キ・ク・ケ……」
       凌空、五十嵐、発声練習をする。
       光汰、プロジェクターにアニメーションを映し出す。
    光汰「準備できた。こっちはいつでもOK」
    凌空/五十嵐「ヤ・エ・イ・ユ・エ・ヨ・ヤ・ヨ」
       凌空、五十嵐、深く息を吐く。
    凌空「こっちもおっけ」
    光汰「よし、じゃあ、リハーサルから、最初の宇生からお願いします」
    凌空「はい」
       光汰、アニメーションの再生ボタンを押す。
    凌空「(台本を読みながら)なぁ、西園寺」
       凌空、五十嵐、台本とプロジェクターを交互に見ながらアフレコをする。
       プロジェクターに映る画面が暗くなる。
    光汰「おっけ。何個かいいかな?まず4ページ目の凌空。ここはもう少し冗談っぽい感じのほうがいいかも」
    凌空「了解」
    光汰「その後の返しはいい感じだったと思う。次は8ページの……」
    五十嵐「ごめん。5ページ目の俺のセリフなんだけど、これってもっと自然なほうがいいのかな」
    光汰「えっと……。ああ、今の感じでもよかったけど、確かに自然な感じにしたら西園寺のナチュラルな煽りみたいなところが引き立つかも。凌空どう思う?」
    凌空「そっちの方が良いと思う」
    光汰「じゃあ、それで」
    五十嵐「了解」
       凌空、光汰、五十嵐話し合いをしている。
       鴨志田、その姿を見ている。
    光汰「よし、始めようか」
    凌空/五十嵐「おう」
       凌空、五十嵐、目が合う。
       凌空、五十嵐、2人で頷く。
       凌空、光汰を見る。
       光汰、凌空の顔を見て優しく微笑む。
       凌空、光汰をみて頷く。
       凌空、プロジェクターを見つめる。
    光汰 「いきまーす。よーいスタート。」
       プロジェクターのアニメーションが流れる。
       凌空、五十嵐アフレコを始める。
    〇cafe Luna・店内(午前)
       美月と琳香がテーブルに座り、絵を描いている。
    〇月野高校・視聴覚室(午前)
       プロジェクターに映る画面が暗くなる。
    光汰「おっけ。いいと思う。2人は平気?」
       凌空、光汰に向けてピースを送る。
    光汰「(微笑みながら)おっけ。五十嵐は?」
       五十嵐、光汰に向けてピースを送る。
    光汰「(笑いながら)おっけ」
    凌空「おい、真似すんなよ!」
       凌空、五十嵐、光汰、笑う。
    凌空「(鴨志田の方を見て)先生、ありがとうございました」
       鴨志田、凌空にピースを向ける。
    凌空「かもしー」
    鴨志田「お前ついに呼んだな」
       凌空、五十嵐、光汰、鴨志田、笑う。
    光汰「(スマホ画面を見て)先輩たちから連絡来てる!作画全部終わって後は仕上だけだって」
    凌空「(スマホを見ながら)本当だ!」
    光汰「よし最後の大仕事頑張りますか」
    凌空「俺ら、なんか手伝えることある?」
    光汰「そうしたら、凌空は最後のエンドロールの編集を、五十嵐は効果音探すの手伝ってほしい」
    凌空「分かった」
    五十嵐「了解」
    凌空「先にこっち片付けちゃおうか」
    光汰「そうだね」
       凌空、光汰、五十嵐、マイクやプロジェクターを片付け始める。
    凌空「なぁ、五十嵐。お前、練習した?」
    五十嵐「……してねぇよ」
    凌空「嘘つけ、上手くなりすぎだろ」
    五十嵐「してねぇって」   
       五十嵐、視線を逸らす。
    凌空「あっそ」   
       凌空、唇を噛みしめる。
    〇帰り道(夕方)
       凌空、光汰、自転車で並走している。
    光汰「今日、お疲れさま」
    凌空「うん」
    光汰「五十嵐、上手かったね」
    凌空「……絶対練習してたよな」
    光汰「(笑って)だろうね」
    凌空「俺、もっと頑張らなきゃ」
    光汰「うん」    
       凌空、前を見つめる。    
       夕日が2人を照らしている。
    〇光汰の家
       光汰、動画編集をしている。
    〇琳香の家
       琳香、タブレットを開き仕上げ作業をしている。
    〇五十嵐の家
       五十嵐、タブレットで効果音を探している。
    〇美月の家
       美月、タブレットでチラシのデザインを作成している。
       隣では、維月が色塗りの手伝いをしている。
    〇凌空の部屋
       凌空、エンドロールの編集をしている。
    〇月野高校・2年1組(放課後)
    T「-9月上旬」
       凌空、五十嵐、美月、琳香、鴨志田、それぞれ席に座っている。
       プロジェクターがついている。
    光汰「いくよ」
    凌空「うん」
       プロジェクターに映った再生ボタンにカーソルが合いクリックされる。
       プロジェクターに完成したアニメが流れる。
       凌空、光汰、五十嵐、美月、琳香、鴨志田、アニメを見ている。
       アニメが終わる。
    五十嵐「すげぇ」
    美月「めっちゃいい!」
    琳香「2人のお芝居もすごい」
    光汰「凌空、どうかな?」
       凌空、唇を強く噛みしめる。
    凌空「すごい。これならイケると思う」
       光汰、ほほ笑む。
    美月「みんなでアニメ作るの楽しかったな」
    琳香「私も楽しかった」
    光汰「まぁ、色々ありましたけどね(五十嵐を見る)」
       五十嵐、俯く。
    凌空「みんな本当にありがとう」
    光汰「こちらこそ」
    美月「みんなちょっといい?実は私と琳香で用意したものがあって」
       全員、美月の方を見る。
       美月、段ボールを開ける。
       琳香、カバンからチラシの束を取り出す。
       美月、段ボールから畳まれたTシャツを取り出す。
    美月「じゃーん。文化祭で配るチラシとお揃いのTシャツ作っちゃった」
    凌空「すげぇ、え、めっちゃかわいい」
    美月「Tシャツの方はサイズ適当に選んじゃったんだけど、大丈夫かな」
       美月、みんなにTシャツを配る。
    光汰「着てみていいですか?」
    美月「もちろん」
       凌空、光汰、五十嵐、Tシャツを着る。
    凌空「ぴったり、まじかわいい」
    五十嵐「俺もぴったりです」
    美月「五十嵐君は当日ビラ配りも頑張ってね」
    五十嵐「え?」
    凌空「お前女子300人は呼べよ?」
    五十嵐「300人はさすがに……」
    光汰「先輩、これお金って」
    琳香「それは、かもしーからのプレゼントです」
    凌空「え?まじ?」
    光汰「ありがとうございます」
    鴨志田「怒られるから、誰にも言うなよ。あと今年だけな」
    凌空「みんな。本当にありがとう。みんなのおかげでここまで来れました。最初は賞を取ることが目標だったけど、今は絶対最優秀賞を勝ち取りたいって思ってる」
    美月「うん。そうだね」
    光汰「いけるよきっと」
    琳香「うん」
    美月「五十嵐君も女子300人呼ぶって言ってるし」
    五十嵐「いや、俺、そんなこと一言も言ってないです」
    美月「あ、かもしーもね」
    鴨志田「え?」
    美月「かもしーは女子500人ね」
    鴨志田「いやいやいや」
    琳香「大丈夫。他校の女子からはイケメンに見えるから」
    鴨志田「お前それどういう意味だ」
    美月/琳香「え?」
    鴨志田「え?」
       凌空、みんなを見て笑う。
    凌空「よし!俺も女子300人呼び込むぞ」
    五十嵐「それは無理だろ。男子ならともかく」
    凌空「お前なんつった?」
    五十嵐「いえ、なんでも」
    光汰「まぁまぁ、2人とも落ち着いて」
       チャイムが鳴る。
    凌空「最優秀賞取るぞ!」
    光汰/五十嵐/美月/琳香「おぉ!」
    〇月野高校・廊下(夕方)
       校内には色とりどりの装飾やクラス企画の看板が並んでいる。
       生徒たち、慌ただしく最後の準備を進めている。
    光汰「いよいよ明日からだね」
    凌空「うん。緊張してきた」
    光汰「大丈夫だよ。絶対。大丈夫」
    凌空「だね」
    〇月野高校・校門前
    T「-月野祭1日目 」
       入口には「月野祭」と書かれたアーケードが立っている。
    〇月野高校・廊下
       凌空、光汰、五十嵐、美月、琳香がビラ配りをしている。
    凌空「アニメ制作同好会です」
    光汰「11時から第1部の上映を行います」
    五十嵐「見に来てください」
       五十嵐の周りに女の子が集まる。
    女子1「アニメ同好会?五十嵐君アニメ好きなんですか?」
    五十嵐「うん。好きだよ。君も?」
    女子1 「はい!」
    五十嵐「じゃあ、ぜひ見に来てね」
    女子1 「はい!」
    光汰 「(凌空に向かって)誰、あの爽やかイケメン」
    凌空「あんな爽やか笑顔見たことないんだけど」
    五十嵐「(2人をにらみながら)何か文句でも?」
    凌空/光汰「いや、別に」
    〇月野高校・視聴覚室(午前)
       空席だった席に少しずつ観客が入り始める。
       時計が11時を指す。
    凌空「アニメ制作同好会です。時間になったので、上映したいと思います」
       客席から拍手がおこる。
       電気を消し、アニメが始まる。
       光汰、凌空、五十嵐、美月、琳香、鴨志田、視聴覚室の後方に立ち、客席を見守っている。
       アニメの上映が終わり、電気がつく。
       観客から拍手が起こる。
       凌空、光汰、五十嵐、美月前に立つ。
    凌空「皆さんありがとうございました。実は僕たちアニメ制作同好会は、今年の文化祭で受賞しなければ、今年いっぱいで活動終了になります。少しでもいいなと思ってくれた方は、後ろの投票箱にぜひ投票をお願いします」
    五十嵐「友人や家族の方にも、オススメしてくれると嬉しいです」
    凌空/光汰/五十嵐/美月「よろしくお願いします」
       観客から拍手が起こる。
    生徒1「面白かったね」
    生徒2「絵がめっちゃ良かった」
    〇月野高校・廊下
    生徒3「五十嵐君の声かっこよかったな」
    生徒4「宇生めっちゃ可愛くなかった?」
    生徒3「話も普通にめっちゃ面白かったよね」
    〇月野高校・校門前(午前)
    T「-月野祭2日目」
       アーケードの下を、保護者や外部の来場者が入っていく。
    〇月野高校・廊下(午前)
       凌空、光汰、五十嵐、美月、琳香、揃いのTシャツでビラ配りをしている。
    凌空「アニメ制作同好会です」
    五十嵐「上映は視聴覚室で行っています」
    鴨志田「よろしく」
    〇月野高校・体育館(午後)
    生徒5「やっぱり軽音部すげぇな、次、どこ行く?」
    生徒6「アニメ制作同好会の作品めちゃ面白いらしいぞ」
    生徒5「そんなのうちにあったけ?」
    生徒6「今年から出来たらしい。脚本もアニメも生徒で一から作ったんだって」
    生徒5「ちょっと気になるかも。行ってみようぜ」
    〇月野高校・視聴覚室(午後)
       座れないほどの人数が見に来ている。
       新藤、山之内、維月、校長、宇佐美も客席にいる。
       アニメが流れる。
       観客から笑い声。
       上映が終わり、拍手が起こる。
       投票箱に、次々と票が投じられていく。
       山之内、五十嵐の元に来る。
    山之内「峻」
    五十嵐「おう、来てたんだ」
    山之内「良かったよ。めっちゃ面白かった」
    五十嵐「サンキュ」
    山之内「あれは、お前にしかできないわ。バイトしてる場合じゃねぇな」
    五十嵐「うるせぇよ」
       新藤、凌空に話しかける。
    新藤「田浦お疲れ、面白かったぞ」
    凌空「ありがとうございます」
       新藤、投票箱に投票する。
    凌空「いいんですか?」
    新藤「俺らの本命は全国大会だから」
    凌空「ありがとうございます」
    アナウンス「間もなく16時になります。授賞式を行いますので、生徒の皆さんは体育館に集まってください」
    〇月野高校・体育館(午後)
       生徒一同、並んで座っている。
       校長、ステージに立つ。
    校長「では、今年の月野祭の授賞式を行います。まずはクラス賞、2年6組」
       2年6組生徒、喜びの声を上げる。
    校長「続いて、部活賞……」
       光汰、両手を握って祈っている。
    校長「軽音部」
       琳香、唇をかみしめる。
    校長「続いて、校長特別賞」
       五十嵐、深呼吸する。
       凌空、祈り続けている。
    校長「……アニメ制作同好会」
       凌空、唇を噛みしめ手で顔を覆い隠す。
       光汰、凌空の背中をさする。
       五十嵐、溜息をつく。
       美月、涙を流す。 
       鴨志田、凌空に駆け寄る。
    鴨志田「田浦、ステージ」
    凌空「……はい」
       凌空、ステージに向かう。
    校長「おめでとうございます」
       凌空、深々とお辞儀をする。
    凌空M「俺らアニメ制作同好会は、校長特別賞を取り、2年目以降も活動を続けられることになった。まだまだこの物語は終わらない。これは、一度夢を諦めた俺が主演声優になるため、行路(オービット)を進む決意をした声春の最初の1ページ」
    #創作大賞2026 #エンタメ原作部門

     
     
    2018〜2020年シナリオ作家協会にて脚本を学ぶ。 コロナ禍で一度夢を諦めるも、6年ぶりに執筆活動を再開✍️ 普段はTikTokを中心に活動中。 大人になっても消えないコドモごころを綴っています🫧 📕『C.V.Orbit』 創作大賞2026エンタメ原作部門応募作

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