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Photo by゚ドガヌ・ドガ / メトロポリタン矎術通

元・倩才キッズ動画配信者の末路⑀

    キブシ

    ④

     こんにちは、キブシです。

     この䞀連の文章に察しお様々なコメントを頂戎したした。ありがずうございたす。党おに目を通し、ご意芋や感想を有り難く頂戎しおおりたす。

     圓時の私達を知っおいる知人から連絡があるのでは無いかず䞍安がありたしたが、今の所ありたせん。䞍安ず蚀いたしたが、僅かに期埅もしおいたした。あの頃の関係者ずは誰䞀人連絡が取れおいたせん。繰り返しになりたすが、私は圓時の掻動を埌悔しおいる蚳ではありたせんし、関係者に憎しみを抱いおいる蚳でもありたせん。ただ、もう䞀床䌚えたらどんな話をするだろうかず倢想する事はありたす。

     私達は生きおいるだけで倧勢の人間ず出䌚いたすが、その䞭で䞀生涯の付き合いをする人間なんおごく僅かです。私には友達ず呌べる人間はほずんど居たせんでしたが、倚くの人も、幌少期からの付き合いを瀟䌚人になっおも続けおいる人は珍しいでしょう。友人関係ほど深くなくおも構いたせん。家から䞀番近いコンビニ店員でも、かかり぀けの歯医者でも、ずにかく数え切れない人間ず関わりを持ちたすが、目たぐるしい速床ですれ違っおゆくだけです。

     むンタヌネットは、そのすれ違う速床を曎に速くしたした。私達のチャンネルを登録しおいた人々も、この蚘事を読んで䞋さっおいる人々も、たるで快速電車がホヌムですれ違うような速床で、ほんの束の間関係を持っただけに過ぎたせん。ずおも速くお䞀瞬である代わりに、どんなに遠くにいおも亀差するし、ものすごい回数同時に亀差する事もありたす。蜟音ず共に、数え切れない快速電車が絶え間なくすれ違う駅のホヌムに、私達は立っおいたす。

    ==========

    

     どれくらい時間が経っただろう。しばらくサンタは無蚀でペヌゞをめくっおいた。最埌のペヌゞたでめくり終えた所で、たた最初のペヌゞに戻った。

    「䜕だこれ 。マゞで 。」サンタは、絶望に満ちた顔をしお、力無くノヌトを助手垭の私の膝の䞊に萜ずした。

    「ただの日蚘だ 。䜕の秘密も曞いちゃいねぇ 。」

     私は、姉のノヌトをパラパラずめくった。姉は、出お行った最埌の日も日蚘を曞いおいた。日付は䌏せたす。

    20XX幎 X月 X日

    おはよう。昚日は匟たちずかくれん
    がをしお遊んだけど、芋せ物のさ぀
    えいだからぜんぜん面癜くなかった。

    倩気がいいのに、ずっず家の䞭にい
    るから頭がおかしくなりそう。匟は
    い぀もニコニコさ぀えいをしおいる。
    えらいずは思わない。キモい。どこ
    かおかしいず思った。でもその方が
    えこひいきされるし、この家で暮ら
    すにはいいのかも。

     確かに、動画配信に察する䞍満や、私に察する悪態を陀けば、本圓にただの日蚘だった。考えおみれば、䜕か重倧な秘密が暎露されおいるのであれば母がずっくに芋぀けお凊分しおいるだろう。姉が芋぀けたであろう“真実”は、すでにこの䞖に存圚しないのか。

     「ほ 他には姉ちゃんの郚屋に、他に䜕があったのこれだけじゃ無いはずだ。こんなものを、ママが隠すわけ無い。ちゃんず探したのかよサンタ」私はサンタが倧抂鈍臭い事を知っおいたので、真っ先に芋萜ずしを疑った。

     「探したさこのノヌトだっお衚玙に䜕も曞いお無いから、理科のノヌトに玛れおたんだ。そこたで、しっかり芋たさ。郚屋にあったもので、他に倉わったものは絵くらいだ。姉ちゃんが描いた絵じゃ無いぜ。高そうな画家の絵だ。詳しく無いからわかんねぇけど、ずにかく高そうだったよ。䞁寧に垃がかかっおおさ。」

     「なんの絵」

     「あヌ、女の子だ。バレ゚ダンサヌの。わかんねぇけど、ずにかく高そうな 。高そう っお事は 。たさか そういう 」サンタは手を口に圓おお考えを巡らせた。

     「そういう事か 高い絵を保管しおる郚屋だから、キヌ坊に入るなっお蚀ったのか そ それだけ 」

     私も、蚀われおみればそんな気がしおきた。姉が出お行っおから倧分時間も経っおいる。どんな蚌拠だろうず、ずっくに消し去っおいる事だろう。私は、プツリず身䜓の力が抜けおしたった。私はずにかく自分が信じお生きおきた“䞖界”が本物なのかどうか知りたかっただけだ。望みは、たったそれだけなのに。真実が遠のいた事でどっず疲れがきた。暖かい車内で、目蓋が重くなるのを感じた。しかし、サンタの様子は違った。

     「くそっ くそっくそっ じゃあ、どうすりゃいいんだ どうしたら真実が分かる 蚌拠が無けりゃ、どこの週刊誌だっお取り合っおくれねぇ 。どうしたら、あの狂った家を止められるんだ 」

     私は、さっきたで感じおいた眠気を忘れお、憀りを露わにするサンタを芋぀めおいた。

     「サンタは、どうしおそこたでしおサンタがいい人だっおいうのは分かるよ。でも関係ない僕達のために、どうしおそんなに」

     サンタは口髭を撫でお、浅く息を吐いた。

     「オレが報道の仕事をしたかったのは ガキの頃に䞖話になった人が新聞蚘者だったからだ。オレが高校生の頃、歳の離れた匟が死んだんだ。亀通事故で。飲酒運転でさ、倧きなニュヌスになった 。」

     サンタはポケットに手をやる玠振りを芋せたが、すぐに手をハンドルに戻した。私は、それが煙草が吞いたい時に芋せる仕草だず知っおいた。撮圱の合間に、よく他のスタッフず庭にいそいそず出おいくのを芋おいたからだ。サンタは、私の前では煙草を吞わなかった。

     「はぁ 。嫌な事を思い出しちたった。いやさ、ほずんどの蚘者は倱瀌極たりないク゜野郎共だず思ったが、その蚘者さんは違ったんだ。最初はあんなに倧勢の蚘者が自宅たで来おいたのに、日に日に蚘事がどんどん小さくなっお、䞖の䞭は事故の事をさっさず忘れた。あっずいう間だったよ。最初はネットでも正矩感ぶった人達が意芋を発しおくれおいたのに、あっずいう間に忘れられた。ただ裁刀も始たっちゃいなかったのに。そんな䞭、ひずりの蚘者さんだけが、最埌たでずおも芪切だった。なにより、真実を䌝えたいずいう気抂を感じたんだ。」

     私は、サンタの瞳の奥に、䜕か他の倧人ずは違う茝きが宿っおいる気がした。それが䜕か分からないが、ずにかく傷぀いた人間だけが持぀、傷぀いたからこそ持おる䜕かだず思った。

    「真実を远うっお事は、぀たりは傷぀いた人間ず関わりを持぀っお事だよ。そう、真実を知るには責任が䌎う。䞀床関わるなら、最埌たで っおな。その人は、本物の蚘者だった。」

     サンタは、雪が降り積もる田園を芋぀めながら、そうぜ぀りぜ぀りず語った。もしかするず、サンタは亡くなった匟ず自分を重ねおいたのかも知れないず思った。でも、それは結局聞けないたただった。

     「 家に戻ろう、サンタ。姉ちゃんの手がかりも無いんじゃ、もう無理だよ。このたた撮圱を続けおいれば、い぀か䜕か分かるかも知れないけど、どうかな 。期埅はできないけど、䜕もしないより、ただマシなんじゃないかな。」

     「いや、ただ最埌の手がある 。」

     私は、サンタの顔にぞっずした。い぀も穏やかな目をしたサンタが、血走った目をしお遠くを睚んでいる。圌がどれだけ必死になっおいるかひしひしず感じた。

     「サンタ 最埌の手 っお」

     「シンプルな事だよ。譊察を呌ぶんだ。蚌拠を芋぀けお出版瀟に垂れ蟌むっおのが䞀番いい方法だず思っおいたけど、䞀足飛びに譊察に来おもらうんだ。」

     「ちょ ちょっず埅っおよ䜕の眪でいたんずこ、ママは子どもに動画配信をやらせおいるだけだよそりゃパパは他人かも知れないし、普通に家じゃないかも知れないけどさ、それで䜕の眪があるっおいうのさ」

     サンタは血走った目で私を芋た。私は、姉の圢盞を思い出しおたじろいだ。

     「必ず䜕かやっおる 䜕か隠しおるのは間違いない 譊察が調べりゃ䞀発で分かるさ。でも、確かに通報する明確な䜕かは無かった。だったら それを䜜ればいいんだ。」

     「え 」

     「䜕か事件を起こすんだよ 譊察を呌ばなきゃいけない事件を、あの家で起こすんだ 最初に火を぀けるのはやらせだったずしおも、あの家には燃えそうなネタがゎロゎロはるはずだ そうだな 火を付けるっおのは䟋えだったけど、マゞでそれもアリかもな 。あの家を攟火すりゃ、たちたち譊察が飛んでくるぜ。」

     サンタが捲し立おた話は、およそ蚈画ず呌べるものでは無かった。やぶれかぶれの最埌の手だ。でも、火を付けるのは反察だった。家には効もいる。家を燃やさないたでも、党おの真実を握っおいる母さえ譊察に調べおもらえればいいんだ。母に察しお䜕か“やらせ”をしお、譊察を呌ぶのはいけそうな気がした。䞀䜓、䜕をどうすればそれが出来るだろうか。母が近所のスヌパヌで䞇匕きをしたずでも通報すればいいのか私は、必死に考えを巡らせた。

     「サンタ 。そう蚀えば、僕達の動画のコメント欄で通報したしたっお曞いおあった事があったんだけど あれっお本圓なのかな 」

     私は、ふず思い出した事をサンタに聞いおみた。この手のコメントは定期的にある。子どもを動画に䜿っおいる時点で、けしからん事だず思う芪は䞖の䞭には倧勢いる。

     「ああ 。そういうのは倧抵ほんずにはしおないだろうさ。したずしおも、よっぜどハッキリした事実が無い限り譊察は動かない。ネットの曞き蟌みなんお、期埅できないね。第䞀、君のママはそういうのはかなり気を぀けおいる。この前の䌁画䌚議でも、ゞャヌゞのや぀が君を地䞋宀に閉じ蟌めお脱出スパむごっこをさせるっおアむデアを出したけど、閉じ蟌めるのは虐埅に芋えるからダメだず反察しおいた。そういう芋え方に、君のママは敏感だ。」

     「ぎゃくたい 。」

     私は、よからぬ事が頭をよぎった。そうだ、私はただの子どもじゃない。動画配信者だ。500䞇人の芖聎者がいる。母の目を掻い朜っお、こっそりず虐埅を思わせるサむンを動画で出すのはどうだろうか母は気が぀かなくずも、500䞇人の䞭で気が付く人がいる皋床の、ほんの些现なサむンだ。䞀人が気が぀けば、きっずコメント欄も荒れるだろう。あっずいう間に広たっお、通報されるかも知れない。問題は、そのサむンをどう出すかだが 。

     「サンタ 。さっきからポケット觊っおるけど、煙草でしょ吞っおきおいいよ。」

     「あ ああ。そうだな、少し萜ち着きたい。すぐ戻るよ。」サンタはそう蚀っお、車の扉を開けた。

    「あ、埅っお。僕も出る。暖房で気持ち悪くなっちゃった。」

     サンタは䜕の疑問も持たずに、私の手を取っお倖に降ろしおくれた。ポケットからラクダの絵が曞いおあるタバコを取り出すず、私に背䞭を向けお火を぀けた。サンタの癜い息に混じっお、煙草の煙が冬空に溶ける。私はゆっくりず、サンタに近付いた。背埌から、ゆっくりず。次の瞬間ヌ

     「おわっなに」サンタは驚いお腕に力を蟌めたが、勢いよく飛び぀いたのでタバコを地面に萜ずした。すかざず、それを拟い䞊げるず、私は自分の手の甲に煙草の火を抌し぀けた。

     「やめろ」サンタは倧声を出しお私を制したが、遅かった。

     「熱っ」

     私は煙草を雪原に萜ずした。火はゆっくりず消えおしたった。私は痛みのあたり、傷口を逆の手で芆った。

     「バカやろう䜕しおんだマゞでおかしくなったのか芋せおみろほら」

     サンタは私の手を掎んだ。私はおそるうそる傷口を芋たが、それを芋お萜胆した。ほんのり赀くなっおいるだけで、倧した傷では無い。旅行先で泊たったホテルのバスタブで火傷した時の方が、ずっず痛々しかった。

     「そんなんで根性焌きできるかよ 自分を傷぀けお譊察呌がうっお考えたのか それだけは、やっちゃダメだいいな」

     サンタは力匷く私の手を握り続けた。あたりに匷くお、思わず顔を歪たせたけれど、サンタの顔を芋お痛みを忘れおしたった。サンタは、私を芋぀めながら泣いおいたのだ。それが同情の涙なのか、䜕の涙なのか分からなかったけど、サンタは私の手を力䞀杯握り続けながら泣いおいたのだ。それを目の圓たりにしお私も、腹の底から䜕かが蟌み䞊げおきお、瞳から溢れ出た。暖かな涙が頬を぀たう。雪原の䞭、家族でも無く友達でも無い二人の他人は、そのたたしばらく動けなかった。

     「キヌ坊、倧䞈倫だ。オレが䜕ずかする。だから、お前はもう無茶するな 分かったな 。」私は、小さく頷いた。

     翌日の朝、い぀もより早く目が芚めた。昚日撮れなかった分の撮圱もあったから、今日は二本分働かなきゃいけない。今日は特別忙しいぞ。ただ眠っおいる効のほっぺを指で぀぀きながら思った。

     ふず、自分がいやに䞊機嫌な事に気が付く。䜕でだろうか。やる事は毎日倉わらないし、真実にはただただ遠い道のりがある。それなのに、䜕故かこれたで感じた事の無い充足感ずいうか、胞の奥が暖かい気持ちがした。サンタが垰っおきおから、私は䜕か倧切なものを手に入れた気がしおいた。サンタが居おくれたら、私は䟋え真実が分からなかったずしおも、それなりに満ち足りた生掻を送れるんじゃないか。もしも、たた“パパオヌディション”をするのなら、私はサンタにやっお欲しいなず思っおいた。

     䜕か、䞋の階から物音がした。もう撮圱準備を始めおいるのか。それにしおも、今朝は䜕だかい぀もより隒がしい。みんなが倧きな声で話しおいるのが聞こえる。䜕かあったのだろうか。私は効がしっかりず眠っおいるのを確認しお、自宀のドアを開けた。その時、やっず䌚話の内容が聞こえおきた。

     「救急車ただか」

     私はぞっずした。䜕があったんだこんな朝早くに、䞀䜓誰が怪我を私は階段を駆け䞋りた。スタッフ達が青ざめおいる。私はママを芋぀けお、䜕があったのか尋ねた。

     「照明機材が倒れおきお サンタさんが怪我を 」

     私は党おを察した。サンタは、自分の身を犠牲にしお譊察を呌がうずしたんだ。いや、救急車か。しかし、きっずサンタの事だからしたたかに事件性を疑われそうな现工をした䞊での事だろう。誰かがサンタを傷぀けようず仕組んだ様に芋せかけお、譊察たで呌ぶ぀もりだ。サンタ、やったな。サンタの怪我の具合が分からないので心配だけど、ずにかくサンタのお陰でやり遂げたんだ。

     「ママ名前を呌んでいたさん お話が 。」スタッフの䞀人がママの所にやっおきた。唇たで青ざめおいる。いささか倧げさでは無いかそう私は思っおいた。

     「救急車ずいうより け 譊察を呌んだ方がいいかも 。」

     「え」私は、思わず口から声が挏れた。

     「サンタさん、もう息をしおいたせん 。」

    柔らかな朝日に照らされお昚日の雪は、もうすっかり溶けおいた。

    ==========

    ⑥

     
     
     
    10幎前、某動画配信プラットフォヌムの登録者䞇人を超えるチャンネルで「キッズ配信者」をしおいたした。

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