会社に入るのではなく、席に座る。転職の相談で、私が最後に確かめていること
こんにちは、キープレイヤーズの高野秀敏です。
入社して三日目の人から、電話がかかってきたことがあります。
声が小さかった。周りに人がいるのだと分かりました。
「聞いていた話と、違うんです」
面談では、その会社の話を何度もしていました。事業のこと、社長の性格、伸びている理由。伝えていなかったのは、誰の下につくかでした。配属は入社の三日前に決まっていて、決めたのは面接に一度も出てこなかった部長でした。
その人は半年で辞めました。悪い会社ではありません。合わない席だったのです。
このとき、自分の仕事の抜けを知りました。会社を説明して、席を説明していなかった。
会社に入るのではありません。席に座るのです。
内定の前に、席を確かめる
それ以来、転職の相談では、会社の良し悪しとは別に席の話をするようにしています。確かめてほしいことは3つです。
1 直属の上司になる人と、内定の前に話せるか。面接に出てきた人と、入社後に毎日顔を合わせる人が違うことは珍しくありません。
2 そのポジションは、なぜいま空いているのか。新設なのか、前任者が辞めたのか。辞めたのなら、何年いたのか。
3 入社して最初の3か月で、何ができていれば合格なのか。これを会社側が言葉にできないときは、配属がまだ固まっていないことが多いです。
聞きにくいと感じるかもしれません。ただ、これを嫌がる会社はあまりありません。むしろ、ここを聞いてくる人のほうが、入社後に活躍する印象を持たれます。
決まった日は、終わりではない
もうひとつ、自分のやり方を変えたことがあります。
紹介した人が、一年もたずに辞めたことが何度もあります。いちばんこたえたのは、決まった日にいちばん喜んでいた人が辞めたときでした。内定の日には長い連絡をくれた人です。そのあと、私は連絡を取らなくなりました。決まったからです。
人材紹介の仕事は、入社した日に報酬が確定します。私の頭の中でも、あの日でその案件は終わっていました。
先月、こんな調査が出ました。過去3年以内に転職エージェントを使って転職活動をしたITエンジニア405名に聞いたもので、エージェント経由で入社した経験がある人の63.0%が、1年以内の早期離職を経験していたそうです。一方で、同じエージェント会社をまた使いたいと答えた人は79.3%いました。
転職活動の支援そのものは良かった。足りないのは、入った後だけ。そう読める数字です。
この構造の中で長く仕事をしてきたので、私は業界を批判できる立場にはありません。ただ、紹介した方には、入社の一か月後と三か月後に必ず一度連絡を入れるようにしました。用件はありません。何かあれば聞く、というだけです。
それだけで、辞めると決めた後ではなく、迷っている段階で相談が来るようになりました。
「君の代わりはいる」と言われた人へ
面談で、上司から「君の代わりはいるよ」と言われたと打ち明けた人がいました。悔しかったと笑っていましたが、目は笑っていませんでした。
その言葉は、半分は正しいです。会社はたいていの仕事を誰かで埋めます。埋まらないと事業が止まるからです。
ただ、埋められるのは仕事です。関係ではありません。
その方は経理の責任者でした。引き継ぎ書は分厚く、手順は全部書いてあった。書けなかったのは、監査法人のあの担当が何を嫌がるか、銀行のどの支店に先に話を入れると稟議が早いか、役員のうち誰が数字より先に背景を聞きたがるか。紙にならないものばかりです。
一年後に彼は辞めました。後任は優秀な方だったそうですが、決算は遅れるようになり、銀行の返事も鈍くなった。穴は一年近く塞がりませんでした。
転職を考えるとき、多くの方は「自分のスキルがよそで通用するか」を気にされます。私が一緒に棚卸しするのは、むしろ関係のほうです。誰から、何を任されてきたか。それは職務経歴書に一行も書かれていないことが多く、そして次の会社でいちばん効きます。
相談にいらっしゃる方へ
転職すると決めていない段階の相談が、いちばん多いです。いまの会社に残るべきか、動くならいつか、という話から始まることもよくあります。
お話を聞いたうえで、私の手元の案件でお役に立てそうなら、具体的な会社のお話をします。そうでない場合も、書類の見せ方や、どんな席を狙うべきかはお伝えできます。
良い会社ほど、求人を出していません。社長が「誰かいないかな」と思っているだけのポジションは、探しても出てこない。だから、探すのではなく、声がかかる状態を自分でつくっておくことも、あわせてお話ししています。
数字の出どころ
ITエンジニア405名の調査は、株式会社キッカケクリエイションが2026年8月に公表したものです(過去3年以内に転職エージェントを利用して転職活動を行ったITエンジニアが対象)。
ご相談について
転職のご相談を無料でお受けしています。転職すると決めていない段階で構いません。
採用する側のご相談は、月次の顧問として受けています。ベンチャー・スタートアップ・中小企業で20万〜30万円、大手企業は50万円からです。
オンラインサロンでは、月末の月曜日19時45分からオンラインで集まっています。個社名を出す話や、まだ表に出ていない話はそちらでしています。月4,980円です。
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