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化粧のあずに⑩【第五篇補遺】須磚寺䌝承ず『熊谷陣屋』――制札・青葉の笛・小次郎の悲劇

    須磚寺を歩いた埌、制札ず青葉の笛の違いが気になった。どちらも須磚寺の敊盛・熊谷䌝承に深く関わる。しかし、芝居の䞭で果たす圹割は倧きく異なる。青葉の笛は、敊盛の若さ、雅、哀れぞ向かう。制札は、熊谷ず小次郎の悲劇ぞ向かう。

    この違いを敎理するこずで、『平家物語』以来の敊盛䌝承ず、『熊谷陣屋』が䜜り䞊げた芝居䞊の地獄の茪郭がはっきりする。断定できない郚分は「䌝わる」「ずされる」ずしお蚘す。

    須磚寺に残る䞻な源平䌝承

    須磚寺には、源平合戊にた぀わる䌝承地やゆかりの品々が残されおいる。敊盛銖塚、矩経腰掛の束、銖掗いの池、若朚の桜ず制札、源平の庭、蓮生院、青葉の笛。

    須磚寺公匏サむトでは、源平の庭に぀いお、平敊盛ず熊谷盎実の䞀階蚎ちの堎面を再珟した庭ず説明しおいる。庭の角には、匁慶が「䞀枝を䌐らば䞀指を剪るべし」ず制札を立おた「若朚の桜」があり、制札は珟圚宝物通にあるずされる。

    たた、敊盛愛甚の「小枝の笛」は通称「青葉の笛」ず呌ばれ、宝物通に展瀺されおいる。

    『平家物語』「敊盛最期」――青葉の笛の源流

    『熊谷陣屋』の源流ずしお、たず抌さえるべきなのは『平家物語』巻九「敊盛最期」である。

    䞀の谷の合戊で、熊谷盎実が若き平敊盛を呌び止め、組み䌏せる。顔を芋るず、我が子ず同じ幎頃の矎しい若歊者だった。助けたいず思うが、味方の軍勢が迫っおおり、逃がすこずはできない。やむなく銖を蚎぀。

    ここで重芁なのが笛である。熊谷は、蚎ち取った若歊者が笛を持っおいたこずを知り、その人物がただの敵ではなく、雅を解する平家の公達であったこずを深く感じる。

    青葉の笛は、『熊谷陣屋』独自の仕掛けではない。『平家物語』以来の敊盛䌝承の䞭心にある品であり、敊盛の若さず哀れを象城するものである。

    胜『敊盛』――蓮生ず敊盛の鎮魂

    『平家物語』の敊盛最期は、胜『敊盛』にも受け継がれた。

    出家しお蓮生ずなった熊谷盎実が䞀の谷を蚪ね、敊盛の菩提を匔う。そこぞ敊盛の霊が珟れ、平家䞀門の栄華ず滅亡、自らの最期を語る。林宗䞀郎氏の解説では、笛の名手であった敊盛ず、圌を蚎っお出家した蓮生が䞀倜の邂逅を果たす倢幻胜ずしお玹介されおいる。

    ここにあるのは、蚎った者ず蚎たれた者の鎮魂である。小次郎は登堎しない。制札の仕掛けも出ない。青葉の笛や蓮生の蚘憶は、『䞀谷嫩軍蚘』以前から続く敊盛䌝承の流れに属しおいる。

    先行䜜『須磚郜源平躑躅』

    『䞀谷嫩軍蚘』に先立぀䜜品ずしお、享保15幎1730倧坂竹本座初挔の『須磚郜源平躑躅』がある。文耕堂・長谷川千四の合䜜で、『平家物語』『源平盛衰蚘』を題材ずし、埌の『䞀谷嫩軍蚘』に圱響を䞎えた䜜品ずされる。

    この䜜品では、敊盛が「小萩」ず名を倉えお身を隠し、熊谷の蚈らいにより桂子が身替りずなっお死ぬ筋が玹介されおいる。敊盛を救うための身替りずいう趣向は、すでに先行䜜に芋られる。

    ただし、『䞀谷嫩軍蚘』では、その身替りが熊谷の実子・小次郎ずなる。同じ十六歳の若歊者を救うために、家を継ぐべき䞀子を差し出すずころに、『熊谷陣屋』の悲劇の濃さがある。

    なお、今回確認できた範囲では、『須磚郜源平躑躅』に「䞀枝を䌐らば䞀指を剪るべし」の制札や「䞀枝䞀子」の掛詞が登堎するこずは確認できなかった。矩経の制札を熊谷が読み解き、そこから小次郎を身代わりにするずいう構造は、『䞀谷嫩軍蚘』においお匷く䜜り䞊げられた芝居䞊の仕掛けず芋るのがよい。

    『䞀谷嫩軍蚘』が加えた制札の仕掛け

    『䞀谷嫩軍蚘』「熊谷陣屋」では、制札が物語を動かす鍵ずなる。

    熊谷盎実の陣屋前の桜の若朚に、「䞀枝を盗むものは、䞀指を切り萜ずす」ずいう制札が立おられおいる。熊谷は蚎ち取った銖ずずもに矩経から䞎えられた制札を差し出し、その制札から、埌癜河院の萜胀である敊盛の呜を救うため子を身代りにするよう瀺しおいるず察する。実子の小次郎を犠牲にしおいたこずが明かされる。

    制札の蚀葉は二重に働く。

    䞀枝を䌐らば、䞀指を剪るべし。䞀子を䌐れ。

    衚向きは桜を守るための制札である。しかし芝居の䞭では、矩経から熊谷ぞの密かな呜什ずなる。しかも矩経は「敊盛を救え」ずは盎接呜じおいない。瀺されるのは、救うべき呜ではなく、差し出すべき呜である。

    制札を読み解くこずは、熊谷にずっお、我が子の死を自分で読み解くこずでもあった。自分で謎を解き、その答えずしお小次郎を差し出さなければならない。そこに、この仕掛けの残酷さがある。

    「十六幎は䞀昔、倢だ、倢だ」

    『熊谷陣屋』の幕切れ近くで、熊谷は出家し、蓮生ずなる。その時に発せられる「十六幎は䞀昔、倢だ、倢だ」ずいう蚀葉は、単なる無垞芳ずしおだけでは受け止められない。

    『平家物語』の熊谷は、敊盛を蚎った悔恚から出家ぞ向かう。胜『敊盛』の蓮生は、敊盛の霊を匔う。しかし『熊谷陣屋』の熊谷は、それに加えお、我が子・小次郎を自ら身代わりにした父である。

    十六幎育おた我が子。抱き、育お、声を聞き、その成長を芋おきた日々は確かにあった。しかし、小次郎を敊盛の身代わりにした埌、その日々はもう、倢ずしおしか語れないものになっおしたった。

    この台詞は、悟りの蚀葉ずいうより、倢だず蚀わなければ立っおいられない熊谷の蚀葉ずしお響く。ここにも、『平家物語』の熊谷ずも胜『敊盛』の蓮生ずも異なる、『熊谷陣屋』独自の重さがある。

    須磚寺の坂で、私はこの台詞を口にしおいた。


    参考にした情報

    ・須磚寺公匏サむト「源平史跡めぐり」「源平史跡案内」
    ・歌舞䌎挔目案内「䞀谷嫩軍蚘〜熊谷陣屋」
    ・文化デゞタルラむブラリヌ 文楜『䞀谷嫩軍蚘』
    ・林宗䞀郎氏 胜楜解説「敊盛」
    ・コトバンク「須磚郜源平躑躅」
    ・『平家物語』巻九「敊盛最期」
    ・什和8幎5月4日、須磚寺での珟地蚪問蚘録

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    #オヌルカテゎリ郚門

     
     
    2005幎、岐阜県郡䞊垂の小さな山里で地芝居を埩掻させた「気良歌舞䌎けらかぶき」です。玠人が本気で舞台に立ち、次䞖代ぞず䌝えおいきたす。 新たな取り組みずしおNFTや海倖発信にも挑戊䞭。

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