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向き合うこと――その姿勢が、その人の説得力になる

    ――俳優思考・第二十一回

    噂では、ウチの劇団は稽古が厳しいなんて言われてるみたいです。
    たくさんの方から言われるなら、まだ注目度アップでいいんですが、微妙に言われてるだけなので、微妙です。

    ただ、舞台でも映画でも、これは俳優に限った話じゃなく、何かを達成しようとしているなら、意識は常に高く持っていてほしいんです。
    技術や経験は後からいくらでも身についていく。
    でも、向き合う姿勢というものは、本人が持とうと思わない限り生まれませんよね。

    経験が少なかろうが、「いい作品にしたい」と思ってやってくれている人と一緒にやれる時間は、わたしにとっては、とても有益です。

    以前、稽古に全然来ない俳優がいました。彼には彼なりの考えがあったのでしょう。本人にしか分からない事情もあったのかもしれません。でも、その考えを貫きたいのなら、一人でやればいい話です。舞台は一人で完成するものじゃない。

    彼は最後に、「みんなでいい酒を飲みたい」なんて言っていました。 気持ちはわかります。でも、酒が目標じゃないんですよね。おまけに、稽古に来ないでいい酒が飲めるのかっていう話でもある。

    そりゃ誰だって、いい作品にしようと思ってるでしょう。でも、やっぱりそれに対する意識、姿勢の問題だと思うんです。たまに来たと思ったら、疲れたっていって寝てるとかだと、周りから何なんだあいつは?ってなりますよね。

    稽古に来ないことで自分がみんなから遅れてしまうのは当り前の話で、その遅れを取り戻すために努力するのも当り前。でも、自分が行かなかったことで、その時に稽古に来ていた他の俳優も遅れてしまうわけです。その責任はどう取るんだって話なんです。こういうことを言うと「ヤクザみたいだ」なんて言われるんですが、脅したいわけじゃない。

    結局、言いたいことは、姿勢が大事なんだって話です。 姿勢って、正座するとか背筋を伸ばすとか、そういうことじゃなくて「思い」のことですよ。
    取り組む姿勢。向き合いかた。

    そこに、その人の説得力が出るんだと思います。

    ビジネスもそう。お金でつながる関係はたくさんあるかもしれません。
    でも、最終的に信頼されるのは、その人がどういう姿勢で向き合っているかだと、わたしは思います。

    何事も姿勢が説得力を紡いでいくんだと思うんです。
    自分自身の思いに、真摯に向き合ってみてください。

    とはいえ、世の中には、面白くないことに向き合わなきゃいけない時も、やりたくないのにやらなきゃいけないことも、たくさんあると思います。
    そんな時に「真摯に向き合えるか!」ってなりますよね。
    それもわかります。

    でも、やらなきゃいけないなら、やるしかない。
    「やりたくないのに……」という気持ちのままやると、結局「ちゃんとやれよ!」って怒られて、余計にやりたくなくなるという悪循環に陥る。

    だから、結論として、
    「面白い」か「面白くないか」ではなく、「どう面白がるか」です。

    それが、俳優思考的に言う「取り組む姿勢」だと思っています。


    次回はこちら→『なぜ私は「うまい答え」に惹かれないのか――教え子とのやり取りで気づいたこと』
    前回はこちら→『なぜ『俳優思考』というタイトルにしたのか――俳優じゃなくても読んでほしい理由』
    まとめはこちら→【俳優思考】


     
     
    俳優、演出、脚本、劇団主宰、演技講師。 いろんな現場で培ってきた経験をもとに、人間関係や考え方について書いています。一見、俳優の世界は遠く感じるかもしれませんが、日常や仕事にも使えることだらけです。「俳優思考」が皆さまの何かしらになればと思っています。

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