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自分にしかできないことなんて、そう簡単には見つからない

やっと3ヶ月が経った。
でも、あっという間の3ヶ月でもあった。

3月から始めた大阪の小さなマーケティング会社での仕事は、無事に試用期間が終了した。

社長と面談をし、僕のこれまでの働き方を評価してもらった。
ありがたいことに今後も継続して契約してもらうことに。

ただ、当初の想定だった営業や業務改善の仕事はあまりやらず、
代わりに本業にも近いWebサイト制作をゴリゴリやるようになった。

自分のスキルを使って貢献できていることや、
今でも前線で働く社長から直接マーケティングを学べていることに嬉しさがある。

でも、お客さんと関わる機会がいまいち少ないことや、
改善以前に業務への理解がうまくいっていないことへのモヤモヤはある。

そして、このタイミングで、社長からフルタイムの正社員としてのオファーを受けた。
思ってもいなかったことで純粋に驚いた。

僕はこれからもこの会社の仕事をしていきたい。
最近一人暮らしを始めたし、とうとうインボイスのための課税事業者になった。
今後、ますます支出は増える一方だ。

金銭面を考えたら素直に社員になった方がいいのだろう。
そんなことが一瞬頭の中を駆け巡る。

少し考えたけど、僕はこのオファーを断った。
今後も引き続き、パートタイムの業務委託契約で働くことになった。

理由はいろいろあるけど、なによりフリーランスという不安定な状況でもっとがんばりたいと思ったから。

僕にとってフリーランスの最大のメリットは、収入源を複数確保できること。

目の前の人のために働いて直接対価を得られる今の仕事はとてもやりがいがある。
それに、自ら積み上げてきた結果として今のマルチワークという状況がある以上、これを簡単に手放したくはない。

不安定。だけどがんばる。

とはいえ、すぐにまた気持ちは不安な方に傾いてく。

自分はこれからどこへ向かいたいのか。
そのために今何を積み上げるべきなのか。

まるでゴーギャンの大作のような、壮大な考えの渦に巻き込まれる。
曖昧な意志を強くするために、僕は「自分にしかできないこと」を考え始めた。



そもそも僕は何になりたいのか。
ふと思い出すことがある。

「ケント、お前は何者なのか」

1年前、フランスのパリで働いていた日本食レストランのオーナーから言われたこの言葉。
今でもふとした瞬間に頭をよぎる。

将来的には自分の会社を持って、経営をしたい。
今後もずっと海外との接点を持ち続けたい。

漠然と抱いていたその気持ちは、年々強くなっている気がする。

でも、そのために何を武器にすればいいのだろう。
何を積み上げればいいのだろう。

そんなことを考え始めると、どうしても自分に足りないものばかりが目につく。

僕は昔からアイデアマンではない。
革新的な発想が次々と浮かぶタイプでもないし、0から1を生み出すことも決して得意な方ではない。
この頭の硬さには、自分で自分が嫌になる。

対して世の中には、圧倒的な発想力で事業を立ち上げたり、
誰も思いつかなかったサービスを作ったりと、すごい人がたくさんいる。

そんな人たちを見るたびに、いつも自分との違いを感じる。

だからこそ、「自分にしかできないこととは何か」という問いにぶつかっているのだ。

そして気づけば、その答えを探すことに必死になっている自分がいる。



今振り返ると、僕はある種の思い込みに囚われていた。
経営者になる人は、みんな何か一つずば抜けたものを持っている人だと思っていた。

革新的なアイデアを持っている。
圧倒的な技術を持っている。
成功する人は、0から1を生み出すのが得意。
誰も思いつかない発想で新しい価値を作り出し、それを形にして世の中へ届けている。

だからこそ、自分にはそうした才能がないように思えて、その差ばかりが気になった。

僕だって新しいことに挑戦するのは好きだし、海外へ飛び出す行動力もある。
でも、これまでしてきたことを振り返ると、何か画期的なアイデアを生み出してきたわけではない。
キャリア的にも中途半端だ。

僕はむしろ、情報の整理や傾聴、既存のシステムの改善が得意だったりする。

だから、「経営者になりたい」という気持ちがある一方、
「でも、自分はそのタイプじゃない」という感覚もどこかにあった。

そしてネガティブ思考に陥り、
「唯一無二の強みがなければいけない」
「自分にしかできないことを見つけなければいけない」
といった焦りの感情が生まれていた。

今思えば、自分で勝手にルールを作り、勝手に苦しくなっていたのかもしれない。



先日読んだとある本には、印象的な言葉が書かれていた。

「商品やサービスは、頭の中で作り上げるのではなく、
人との対話の中で磨かれ、完成されていく。」

なるほど。

僕はそれまで、頭の中にある完璧に磨かれたアイデアを形にするのが商品であり、成果物だと思っていた。
まず素晴らしい発想があり、それを商品化して、世へ届ける。
それが世間で評価されていく。

でも、その本ではまったく異なることを言っていた。

大切なのはアイデアではなく、目の前の誰かの困りごと。

誰かの課題に触れ、試し、反応をもらい、改善する。
商品もサービスも、その繰り返しの中で少しずつ形になっていくものだったのだ。

言われてみれば納得だった。

AirbnbやUberのような世界的なサービスでさえ、
出発点は天才的なひらめきというよりも、誰かの困りごとだった。

そして僕はハッとした。
もしかすると、自分はサービスの作り方だけではなく、世の中そのものを勘違いしていたのではないか。



そこで気づいた。

僕はずっと、「唯一無二の絶対的な能力」を探していたのだ。

自分にしかできないこと。自分だけの強み。
他の誰にも真似できない何か。

そういった最強の武器を見つけなければ、経営なんて到底できないと思っていた。

でも実際には、「自分にしかできないこと」をやるのは難しい。
そもそもそんなの簡単に見つかりっこない。

30代にもなると、自分の向き不向きもある程度見えてくる。
だからこそ、「自分にしかできないこと」を探せば探すほど、
自分に足りないものばかりが目についてしまう。

一方で、世の中を見渡してみると、必ずしも唯一無二の能力で勝負している人ばかりではない。

僕の周りにも、バリバリ働く経営者が何人かいる。
よくよく見てみると、彼らは決して全員がアイデアマンというわけではないのだ。

人をつなぐのが得意な人。
情報を整理するのが得意な人。
現場を理解し、信頼関係を築くのが得意な人。
コミュニティを作り、人を巻き込むのが得意な人。

同じ経営者でも、みんなそれぞれ違う形で価値を生み出していた。

そして、もう一つ気づいたことがある。

それは、「自分らしさ」は能力ではなく、
経験の組み合わせから生まれるのかもしれないということ。

例えば僕なら、
ITエンジニアやWebデザイナーとして働いた経験。
フィリピンやジョージア、フランスで暮らした経験。
日系大手から外資、中小、フリーランスまであらゆる組織で働いた経験。
47都道府県・52カ国を旅してきた経験。
日本語だけでなく、英語やフランス語を使って働いてきた経験。
そして最近携わり始めた営業やマーケティング。

どれも単体で見れば特別ではない。
でも、それらをすべて経験している人は決して多くない。

僕はずっと「自分にしかできない能力」を探していた。
でも本当に価値になるのは、「自分が歩いてきた道の組み合わせ」なのかもしれない。

そう思うと、少し肩の力が抜けた気がした。



そもそも、今は「いつか何かになるための準備期間」だと思っていた。

昨年日本に帰ってきてから、あれこれと試したがうまくいかず、お金もなくなった。
だから、ここで心機一転、将来のために力を蓄える時間にしよう。
そう意気込んでいた。

ただ、振り返ってみれば、
仕事も勉強もしているし、自分の感情に向き合い、アウトプットもしている。
また、新しいコミュニティに飛び込んで人と出会い続けている。

だから、本当は違うのかもしれない。

僕はずっと、「いつか始まる本番」のために今を生きていた。

でも、人と出会い、考え、試し、失敗しながら、自分なりの形を少しずつ作っているなら、
それはもうすでに僕の人生そのものだった。

Connecting the dots.
人生は後から振り返ると線になる。
だとしたら、今やっていることも、将来のために我慢している時間ではなく、すでにその線の一部なのだろう。

「オリジナル」とは、ある日突然ひらめく天才的なアイデアではない。
長い時間をかけて積み重なった経験が、ある瞬間につながることなのだ。

だからこれからは、闇雲に完成形を探すより、たくさんいろんな経験を増やしていきたい。

そして何より、
目の前で困っている人に対して、今の自分は何ができるのか。

今の僕には、その問いの方がずっと大切な気がしている。



以前の僕は、「自分にしかできないこと」を探していた。

経営をしたいし、海外との接点を持ち続けたい。
そのためには、何か特別な才能や唯一無二の能力が必要だと思っていた。

でも今回、考え方が少し変わった。

自分にしかできない能力を探すのではなく、自分が歩いてきた道を見つめ直すこと。
そして、その経験の組み合わせを誰かの役に立つ形へ変えていくこと。

それこそが、一つの価値の作り方だ。

世界を知ることは、自分の小ささを知ることでもある。
世の中には、自分より優秀な人も、面白い人も、行動力のある人もたくさんいる。
でも同時に、自分が活躍できる場所が思った以上にたくさんある。

だからこれからは、自分に足りないものを気にするより、自分が経験してきたことをもっと大切にしたい。
その経験を整理しながら、目の前で困っている誰かの役に立てる人でありたいと思う。
それが世に役立つ仕事やサービスにつながればいいな。

そうやって、自分が思い描く未来を作れるのだと思う。

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