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旅に目的なんてない

    ケント

    Bonjour!
    2024年6月から、ワーキングホリデーでフランスに来ています。
    現在はパリの日本食レストランで働きながら、フリーランスのWebデザイナーとしても活動しています。

    冬が明け、ようやく穏やかな春の季節がやってきました。
    日中は20度近くまで気温が上がる日もあり、もはや夏のような陽気です。
    とはいえ、夜になるとまだ冷え込むことも多く、油断はできません。

    ヨーロッパの人たちは暑がりな人が多いのか、すでに真夏の服装をしている人もちらほら見かけます。
    Tシャツ短パンで、アイス片手に外をお散歩。
    でも、夜の寒さを思うと、僕はなかなか夏モードには入りきれずにいます。



    働いているレストランが、内装工事のため急遽2週間の休暇となりました。
    このタイミングを活かして、帰国間際に行こうと思っていた中央ヨーロッパへの旅行を前倒しでしてみることにしました。

    バスに乗って国から国へと移動する。
    この移動スタイルこそ、ヨーロッパを旅する楽しさのひとつだと思います。

    とはいえ、僕ももう30歳。
    一日中歩き回ったり、バスの車内や空港のベンチで夜を明かしたりしていると、やっぱり疲れがたまってきます。
    朝は元気でも、お昼を過ぎる頃から疲れが出てきて、夜にはクタクタです。

    旅は若いうちにたくさんしておくに限る!
    そんなことを、改めて感じる旅になっています。



    コロナ禍が明けて、世界中の人々が海外旅行をするようになりました。
    今ではどこもかしこも海外旅行がブームとなっています。
    特に、これまでは金銭的な理由からあまり海外に行く機会が少なかった中国やインドといったアジアの人たちも、どんどん海外に出かけるようになっています。

    海外旅行がブームとなったことで、宿泊施設や交通機関が非常に充実するようになりました。
    この恩恵に預かるように、僕も格安宿と格安バスで費用を抑えながら旅を楽しんでいます。

    しかしながら、その結果として、世界各地で「オーバーツーリズム」という問題が起きています。
    観光客が都市に押し寄せすぎて、その街のキャパシティを超えてしまう現象です。


    世界一のオーバーツーリズムといえば、スペインのバルセロナ。
    1991年は年間170万人だった観光客は、2023年には年間3200万人まで増えたそうです。
    30年少々でおよそ20倍。
    バルセロナの人口は160万人です。
    住民の20倍もの観光客が訪れ、街はすでに悲鳴を上げています。

    かつては、ガウディ建築を巡り、バルでワインやピンチョスを楽しむのが王道の過ごし方でした。
    しかし現在では、主要な観光地は完全に予約制となり、当日予約はかなり難しい状態になっています。
    市場やレストランも人で溢れかえり、以前のようにゆったり楽しむことが難しくなりつつあります。

    実際、僕は昨年11月にバルセロナを訪れましたが、人の多さに圧倒されて、いくつかのスポットは訪れるのを諦めたほどでした。
    また、混雑を抑えるために値段を引き上げる動きもあり、かつての「安くて楽しいバルセロナ」は、すでに過去のものになりつつあります。

    これはバルセロナの例ではあります。
    しかし、世界中の観光地がそのような時代の変化に今まさに直面しています。



    今回の旅は、最初から最後まで完全に一人旅の予定です。
    僕はこれまで、日本全国47都道府県と、海外およそ45カ国を訪れてきました。
    そろそろ「旅人」と名乗ってもいい頃かもしれません。

    そんな話をすると、たまに「旅行の目的って何?」と聞かれることがあります。
    うーん。。なんだろう。
    正直、明確な目的なんてあまりありません。

    「行きたいから行く」
    「見たことのない景色を見たいから見に行く」
    僕はその程度のシンプルな動機で旅に出ています。

    もちろん場所によっては、「この景色を絶対に見たい!」といった具体的な理由があることもありますが、それはほんの一部。
    基本的には、特に理由がなくても時間ができたら、自然と旅に出かけているような感覚です。



    日本で最も有名な紀行文といえば、沢木耕太郎の『深夜特急』ではないでしょうか。

    この本は、筆者が26歳のときに体験した旅を、帰国後に振り返り、物語形式で綴ったものです。
    当時まだ情報の少なかったアジアの熱気やカオスを、細かく臨場感たっぷりに描いており、多くの若者がこの本に影響されて旅に出たと言われています。

    僕も大学生の頃に読んで、すっかり夢中になったものです。
    (今でもインドに行けていないのが少し心残りですが……)

    先日SNSで見かけた情報によると、筆者は、実際に旅をしてから10年以上経ってからこの本を書き始めたそうです。
    そのことについて、筆者は次のように語っています。

    「旅の最中には、その旅の意味なんてわからない。むしろ、わかってはいけないのだ。わからぬままに旅をすること、それが本当の旅なのだ。」

    沢木耕太郎『旅する力 ― 深夜特急ノート』

    旅を通じて自分の内面に起きた変化に気づくまでに、10年以上の時間が必要だったということなのでしょう。
    もちろん職業作家として、中途半端なものを世に出せないという責任感もあったはずです。
    でも、この「熟成期間」があったからこそ、あの作品は多くの人の心をつかんだのだと思います。



    僕が今しているこの旅も、いつか何かしらの意味を持つ日が来るのかもしれません。
    でも、その「意味」を期待しながら旅をするのは、どこか違う気がします。

    目の前の一瞬の喜びや驚きをしっかり味わい、心に浮かんだ感情を大切にしながら、元気に楽しくその瞬間を過ごす。
    旅の最中に必要なのは、それだけで十分だと思います。

    今の時代は、「目的意識」や「タイパ」といった言葉が重視され、すべての行動に対して「意味」や「成果」が求められているように感じます。
    でも、人生はそんな単純な理屈だけでは成り立たないですよね?

    この旅に意味なんてないし、意味を無理に見出そうとも思っていません。
    むしろ、そのくらい肩の力を抜いていたほうが、旅はもっと楽しくなる気がします。



    東北地方でヒッチハイクをしていた時に宗教の勧誘を受けたり、
    ベトナムに再入国する際、急遽ビザを取得しなければならなくなったり、
    ニューヨーク行きの電車が雪で止まり、身動きが取れなくなったり、
    ロンドンの安宿で、夜通しずっと女性に見つめられながら一晩を過ごしたり、
    メキシコで生のタコスを食べてお腹を壊したり、
    ジョージアからトルコへの27時間バスの、最初の1時間でもう膀胱が限界になったり、
    ギリシャでは「水だよ」と言われて、テキーラを飲んでしまったり。

    良かった出来事よりも、大変だった出来事のほうが記憶に残るものです。
    でも、こういう予期せぬトラブルこそが旅の醍醐味でもあるし、そんな経験を重ねて、人は少しずつ強くなっていくのでしょう。

    ちなみに今回の旅でも、予約していたはずのバスが来ないというトラブルが発生しました。
    旅とは、ほんとうに思い通りにならないものです。



    今滞在しているハンガリーの首都・ブダペストは素敵な場所です。
    とても雰囲気が良く、歩いているだけでも気持ちがいい。

    眺めの良いと噂の丘を登ってみました。
    それなりに運動になり、気づけばしっかり汗をかいていました。
    こういう瞬間、僕のこの健康な体に感謝の気持ちが湧いてきます。

    これまで大きな病気やケガも特になく、持久力はそこそこある。
    旅をしていると、そんな自分の体がどれだけ頼りになるかを実感します。
    改めて、丈夫な体に育ててくれた両親への感謝を感じます。

    とはいえ、最初にも書いた通り、年齢とともに疲れがたまりやすくなったのも事実です。
    ちなみに、せっかく登った丘の頂上は工事中で、眺めは微妙でした。
    でも、そんな無駄足も旅ならではの楽しみなのかもしれません。

    きっと僕はこれからも、一人の旅人として世界のいろんな場所を訪れると思います。
    誰かに共有したい気持ちもあるけど、一番の理由は「自分が行きたいから行く」というただそれだけ。
    旅の目的なんて、いつか自然と見つかればいい。
    今はまだ、その時ではないから、無理に考えないようにしています。

    これからもパリでの生活は続きます。




    ↓ワーホリのきっかけなどはこちらに書いてます。

     
     
     
    やってみて、考えて、言葉にする。日々の暮らしで見つけた小さな気づきを、自分なりの言葉でまとめています。 フリーランスとしてWeb制作・マーケティングに携わる32歳。フィリピン就職、ジョージアノマド生活、フランスワーホリを経て、大阪在住。旅と本と野球とお酒のために生きている。

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