
第17章 ある起業家との出会い。
最終面接の相手は、日本人なら誰もが知る実業家だった。
一つ答えるたびに、次の質問が飛んでくる。
「なんで?」
「それ、本当に優位性になる?」
「変化点は?」
興味を持ったものは、徹底的に掘り下げる。
表面的な答えでは終わらない。
本質を突く問いばかりだった。
もちろん、自社のサービスならなんでも答えられる自信はあった。
興味の対象は、違った。
私が競合として名前を挙げた、
まだサービスも開始してない他社のプロトタイプだった。
エアコンが壊れたのかと思うくらい冷や汗が止まらなかった。
私は面接で、満足のいく情報を提供できたのだろうか。
不安でしょうがなかった。
私も職業柄、役員や代表と会話する機会は何度もあった。
でも今回は鋭さが段違いだった。
「最終面接は、ほぼ受かるから」
そう言ってくれた本部長の言葉だけが心の支えだった。
帰り道。
おいしいカレー屋に寄って帰った。
良かった。
味はするし、おいしい。
面接と違ってカレーとの相性は良かった。
最終面接に至るまで、日本を牽引するすごい人達と会話できた。
本部長、執行役員、COO。
そして、CEO。
全員がずば抜けて高レベルだった。
今までの人生で、自分より高いレベルの人と、コミュニケーションがなかったわけではない。
でも今回は圧倒的だった。
そもそも会場がやばかった。
飾ってある絵が気になって何気なく撮って、AIに投げたらピカソだった。
壁に近づくのすら畏れ多い。
テーブルも見たことのない大きさの一枚板。
長さ12mに幅2mはあった。
そんなでかい木を見たこともない。
どうやって搬入したのだろうってレベルの大きさ。
映像が流れていたプロジェクターも、白飛びひとつなく、美しく調整されていた。
2台の映像は、1ピクセルのズレも感じなかった。
何もかもが完璧だった。
きっとそうやって仕事をしてきたんだと思う。
だからこの人の今があると思うと、納得感があった。
一周回って、別に落ちてても良かった。
そう思えるくらい良い時間を過ごせた。
貴重な経験をさせてもらった。
でも、合格して、入社しもっと会話できるなら。
自分はどれだけ成長できるだろうか。
帰りの電車で、メールが届いた。
まだ家にも着いていない。
件名:「入社日のご相談」