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ネーミングを武器に、社内に起こせよムーブメント|Note 23

    「木漏れ日」という言葉は日本語独特の言葉らしい。

    木々の葉の隙間から差し込む自然の美しさを一語で表現した「木漏れ日」という単語が存在するおかげで、日本人はその現象をより認識しやすく、他者への共有が容易となり、結果としてそれを文化として積み上げることができている。

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    木漏れ日を浴びる愛犬ぽてきち

    つまり言葉というものは、単なるラベルではなく、世界の見え方を変えるレンズとなる。

    かつて、環境大臣だった小池百合子さんが、夏場の省エネを目的に「クールビズ」という言葉を発明したことで、一気に夏場の職場のノーネクタイ・ノージャケットが広がった。

    自分が今日もお気軽にTシャツで出勤できているのもそのムーブメントがあったおかげで、つくづく言葉が持つチカラは絶大だ。

    そうは言っても、そんな広く世の中に影響を与えるようなインパクトを残すことはなかなか再現が難しい。運の要素も多分にあることだろう。だけど、自分がいる会社の中でくらいなら、時には起こせるムーブメントもある。

    この記事は、会社の中で行われるさまざま施策、イベント、社内サイト・ツール、研修等々において、名前をつけることにひたすらこだわり続けたチームの記録である。


    ネーミングから始めよ

    前述した通り、言葉というのはとても大切だ。

    言葉があると、そこに輪郭ができる。
    輪郭ができると、人は物事を認識しやすくなる。
    認識がされると、他者への共有が加速する。
    共有が増えると、行動が起こりやすくなる。
    行動が日常になれば、それはやがて文化となる。

    そんなわけで、自分が所属する株式会社ネットスターズのSales Opsチームでは、繰り出す施策にいちいち大げさに名前をつけることにこだわっている。

    ・ダサいドキュメント撲滅塾
    ・セールス・アクティベーター
    ポNetstars wiki
    ・ブレスト実践道場
    ポStarPay Quest
    ・マンスリー剛
    ・Sales Ops実践ノート

    などなど、手掛けてきたいろいろな取り組みに、いろいろな名前をつけてきた。

    オシャレでカッコいい(ような気がする)名前もあれば、中には全然カッコよくない名前がついているものもある。

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    だけど、ここで重要なのは、カッコいい名前になってるかどうかではなく、みんなが認識しやすく納得できる名前になっているかどうかだ。

    名前をつけるなんてどうでもいいと思っている人もいるかもしれない。そんなの後回しでいいと思ってる人もいるかもしれない。

    でもそうじゃない。むしろ、名前をつける行為こそ成果を最大化するために真っ先にやるべきことなのだ。


    パグの振り見て我が振り直せ

    繰り返しになるが、名前をつけることには、重要な意味がある。

    それは、名前がついた瞬間に、「その取り組みが“認識される存在”になる」ということだ。

    逆に言えば、名前のない施策は、どれだけ良い内容だったとしても、組織の中でうまく認識されず、記憶にも残らず、会話にも上がらず、そのまま埋もれていってしまう可能性が高い。

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    PUG★SPRING 2022 フライヤー

    ネーミングへのこだわりは、自分自身で企画運営していた犬(パグ)のイベントからの学びでもある。

    「PUG★SPRING」、「パグ・レボリューション」、「PAGFES」など、主催してきたイベントには単なる”パグオフ会"のようなタイトルではなく、オリジナルなイベント名をつけていた。これにより、参加者にとって非常に記憶に残るイベントになっていたように思う。

    語感の良さも大切だ。春先のイベントだった「PUG★SPRING」はパンクロックのイベント「PUNK SPRING」から取っていたし、「パグ・レボリューション」はモーニング娘。の「ラブ・レボリューション」、「PAGFES」はそのまま夏フェスという単語から取っているだけに馴染みやすい。

    口に出したときの語感・語呂の良さを侮ってはいけない。文字面だけではなく、口に出した回数が多いほど愛着が湧き自分ごとに変わっていくというものだ。

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    PAGFES 2024 ポスター

    散歩中疲れたのか飽きたのか、頑として歩かなくなったパグの様子に「歩かんシエル」と名前をつけたこともあった。フランス語のアルカンシエル(虹)という単語と引っ掛けたダジャレみたいなものではあるが、くだらなくたってなんだって、口に出したときの語感の良さが大切という意味では、このネーミングは我ながら100点満点。

    その後曲としてリリースしたことも相まって、歩かんパグを愛でる感覚が、パグ界隈に広がった。

    全部抱きしめて君と歩かんシエル
    ただ、歩ける一歩を歩くだけ
    ほら、歩けぬパグは愛でるだけ

    The Pug & Peace『歩かんシエル』
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    『歩かんシエル』ジャケット画像


    追い求めてるのは、”これだ!感”

    先ほど口に出したときの語感・語呂の良さが大切だと述べたが、ネーミングでもう一つ大切なのは、「ああ、あれのことね」と誰もが同じものを思い浮かべられる”これだ!感”だ。

    "これだ!感"とは言い換えると、”本質を一言で言い当てている感覚”に近いかもしれない。

    認識のズレが起きないことはもちろん、その名前を聞いた瞬間に、内容やそこに込めた思いまで感じられるような気持ちの良さ。それは決して、横文字のカッコよさや、オシャレさのことではない。

    例えば、「提案資料作成スキルアップ講座」といったスキルアップの研修があったとして、確かにタイトルから内容自体はなんとなく想像はつく。悪くはない。ただ、実施する側の想いや目指しているレベル感まではタイトルからは伝わらない。

    一方で、「ダサいドキュメント撲滅塾」と言われればどうだろう。ネーミング自体はオシャレでもカッコよくもなく、むしろダサいかもしれないけれど、何を目指しているのか、どうなりたいのかは一瞬で伝わる。

    名前と実態がピタッと重なった瞬間に生まれる感覚。それがネットスターズのSales Opsチームが求める”これだ!感”だ。

    そうして名付けた「ダサいドキュメント撲滅塾」は、進める中で自然と「ダサドキュ」という略称が生まれたことも相まって組織全体に広がり、定着し、年間通して全50回の完走を果たすことに繋がった。

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    ダサいドキュメント撲滅塾 実践編

    かつて、お客様に出荷した決済端末にトラブルがあり緊急対応が必要となったことがあった。トラブル対応チームを組み、多くのメンバーの力を借りて対応にあたった。その際の緊急対応の呼びかけには、「決済端末トラブル対応」という言葉ではなく「端末キッティング祭り」という言葉を用いた。

    もちろん深刻な事態ではあるものの、対応するメンバーが暗くなっていては物事は好転しない。ネーミング一つでモチベーションやチームの雰囲気にも影響を及ぼす。"これだ!感"のある名前にはそういったチカラもある。


    ダサさこそ正義

    ネーミングが大事だという話をすると、誤解する人が一定数いる。

    良い名前をつけなければいけない。
    オシャレな名前を考えなければいけない。
    センスのある横文字を使わなければいけない。

    だけど目指すべきは、そういった話ではない。

    むしろ、自分たちが大事にしているのはその逆だ。まずはダサい名前から始めようということを推奨している。

    コピーライターでもなければ、広告代理店でもない。自分たちはそんな分野とは専門外の会社員だ。最初から完璧な名前なんて出てくるわけがない。だから、とにかく思いついた名前を口に出す。

    ダサくてもいい。ベタでもいい。ダジャレでもいい。

    最初に出した案がダサければダサいほど、その後で発言する人がラクになる。

    「それだったらこういうのもいいよね」
    「じゃあ⚫︎⚫︎なんてどう?」
    「その名前だと少しニュアンスが違うかも」

    そんな会話が生まれ、そこから次々ネーミング候補が生まれることだろう。一方で、オシャレさを狙って考えて考えて悩んでるだけでは何も始まらない。

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    柴犬型無線機「トランシーバ」
    とりあえずダジャレから始めるのもよい

    ブレインストーミングと同じで、最初に必要なのは、正解ではなく、たたき台と発射台だ。ダサい名前は、最高のたたき台となり、次々とネーミング候補のロケットを飛ばす優れた発射台になり得るのだ。

    みんなが「これだ!」と思える名前に辿り着くために大切なのは、最初から100点の名前を考えることではない。誰かが率先してダサい名前を口にすることだし、自分がその誰かになることだ。

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    社内でブレストするときの5か条


    名前は愛着で選ぶ

    「例のやつ」、「この前やった取り組み」、「営業強化の件」etc.

    そんな呼ばれ方をしている時点で、まだその施策は組織の中に存在していないのと同義だ。もし今、イマイチ社内施策が認知されずに悩んでいるなら、まずネーミングから始めるといい。

    名前をつけることで、会話が生まれる。
    認識が揃う。記憶に残る。

    そして、もう一つ忘れちゃいけない効果として、打ち出した企画や施策に参加する側はもちろん、企画する側にとってもその企画への愛着が一層深まるということがある。ネーミングとは組織の中に“存在”を生み出す行為であると同時に、愛着を持って最後までやり切るための原動力にもなっている。

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    ネットスターズの営業サポートチームでは、社内問い合わせ対応の工数が膨大であることといった長年の悩みがあった。ただし、その課題をもう少し掘り下げると、その本質は、問い合わせが多いことだけでなく、それが自由なタイミングで好き勝手にバラバラと寄せられることにあった。

    問い合わせがある都度、他の業務の手を止めて、問い合わせの対応をして、また戻るを繰り返すことで、業務が細切れになり、全体の効率が格段に落ちてしまっていたのだ。

    そこで、「各々の好きなタイミングで来られるのが厄介なら、どんな初歩的質問もOKな問い合わせ専用の時間を敢えて設けてそこに集中させてみよう」という解決方法を取ることとなり、さて、あとはその企画のネーミングだ。

    そこで出てきた名称が「何でも答えます会」だった。

    ダサい。ダサすぎる…
    果たして誰の発案なのか…

    「だが、それがいい。」
    花の慶次ならにっこり笑ってそう言うだろう。

    「何でも答えます会」という不思議と印象に残るそのフレーズは、毎日繰り返しアナウンスしていたこともあり、組織のおそらく全員が認知する存在となり、当初の目的に対し良い効果をあげる施策となった。

    名前自体はダサめでも、この案を考えたメンバーやこの案を採用したチームは最高にカッコいい。

    元も子もない話ではあるけれど、施策や企画の成否は、うまくいくまで続けられるかどうかで決まるとも言える。

    名前をつけることで愛着が湧く。その愛着が最後までやり切る力になる。

    本当にダサいのは名前ではなく、うまくいくまでやり切ることなく諦めてしまうこと。だったらうまくいくまでやり切るために、自分たちがとにかく愛着の持てる名前をつけてみるというのも、少なくとも社内施策や内輪の話であれば、非常に優れた考え方といえる。


    困ったら真ん魂(まんたま)

    そうは言っても、良い名前がなかなか出ないことももちろんある。そんなときは"真ん魂(まんたま)"が有効だ。

    「真ん魂」
    ソフトバンクホークス等で活躍した元プロ野球選手の川崎宗則氏(通称ムネリン)の言葉。真ん中に魂を込めた球」の略で、「投げる球に困ったら、ど真ん中のストレート。魂がこもっていればど真ん中ストレートでも抑えられる」という意味

    あれやこれや、いろんなネーミングをこねくりまわしていると、当初の目的や意図からずれていくのはよくあることだ。今の時代AIに聞けばいろいろな名前候補を提案してくれるが、数が多すぎて、逆に迷って決められないなんてシーンもあるだろう。

    "そんなときはとにかく真ん魂"をルールにしておくことをオススメする。いったん自分たちが実現したかった目的や想いに立ち返って、ど真ん中のそのものズバリを選んでみよう。

    ここで大切なのは、"真ん中"ではなく"ど真ん中"を選ぶこと。"ど真ん中"の"ど"こそがまさに魂で、そこがネーミングの根幹だ。

    Sales Opsチームで企画・構築した社内のナレッジポータルに名前をつけたときは、まさにど真ん中ストレートの「NETSTARS Wiki」を採用した。

    あれこれ名前は考えたものの、せっかく作る以上は「絶対に社員みんなに使ってもらいたい」という思いを込めて、奇をてらわずに社名+wikiという真ん魂でまとめる形となった。

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    NETSTARS wiki LOGO


    名前先行で企画を作る

    企画や施策があってそこに名前をつけるのが通常の流れではあるものの、ときには名前が先に立つことだってある。

    ネットスターズの中で最近始めた企画の一つに『マンスリー剛』という企画がある。事業領域が拡大するにつれ、代表の李剛(り つよし)と社員メンバーとの間に少し距離が生まれやすくなってしまっているのではないかという背景から、その距離を縮めるべく推進している企画だ。

    この企画については、社長の名前に引っ掛けた「マンスリー剛(つよし)」というフレーズを先に思いついて、そのフレーズをどうしても使いたかったばかりに、だったらこういった内容にしようという方向で企画が進んだ。

    「マンスリーだから月一回何か考えてやっていこう」
    「李さんに何かしら月一回発信してもらう?」
    「でもそれだけじゃ毎回ネタ考えるの大変だし、大変だと続けられなくないか」
    「だったら毎月一回必ず実施される企画をうまく絡めてやるとネタ探しの労力も減るのかも」
    「それなら毎月やってる社長賞と絡めて、受賞者との対談をコンテンツにしてみるか」
    「AIもあるし、文字起こしは負担にならず進められそうだね」

    そうして社長×社長賞受賞者の対談記事の作成・配信という形で『マンスリー剛』という企画が実現した。

    くだらない思いつきも、いつかどこかで何かの企画になるかもしれない。気になるフレーズや思いついた言葉は、忘れないようにメモしておくことをオススメしたい。


    没った名前にも価値がある

    最後に、没になった名前にも価値があるという話をしたい。

    新入社員オンボーディングの一環として、実践型コンテンツ「StarPay Quest」を企画することとなった際の話だ。

    企画としては、自社サービスを理解するために、各種社内システムを駆使して調べ、操作し、実際に街に出てサービスを体験してみるという実践型オンボーディングコンテンツだ。名前を考える過程では、

    「街に出るということで、ドラクエみたいな、クエストって言葉がワクワク感あっていいよね」
    「ネットスターズはQRコード決済の会社だからQuestのQのあとにRで始まる単語つけて、略してQRみたいになるのがよいかもね」
    「じゃあ体験してそれをレポートにして発信してもらうって内容にして、名前はStarPay Quest Reportageあたりかな」

    というやり取りがあった。

    最終的にはイマイチ語感が悪くしっくり来なかったので名前は「StarPay Quest」に落ち着いたが、ネーミングの過程で生まれた、体験をレポートにして発信するというアイデアは、コンテンツそのものにはしっかり取り入れたし、略してQRというアイデアは企画のロゴマークに反映させられた。

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    STARPAY QUEST LOGO

    ネーミング過程でのやり取りは、企画そのものを発展させる可能性を秘めている。

    そういった意味でも、企画の早期にネーミングのプロセスを入れておくことは非常に価値があるものだと思っている。


    まとめ 〜ネーミングを武器に、社内に起こせよムーブメント〜

    木漏れ日という言葉があることで、人は木々の隙間から差し込む光に美を感じやすくなる。

    クールビズという言葉が、ノーネクタイ・ノージャケットの文化を生んだ。

    言葉は、単なるラベルではない。

    人の認識を揃え、会話を生み、行動を促し、ときには文化そのものを作る力を持っている。

    もちろん、自分たちが考えたネーミングが「クールビズ」のように世の中をガラッと変えることはそうそうないだろう。

    だけど、会社という小さな社会の中でなら話は別だ。

    ダサいドキュメント撲滅塾という名前があったから、ドキュメントの品質について厳しい目が生まれた。

    何でも答えます会という名前が、社内問い合わせのあり方をアップデートした。

    マンスリー剛という名前が、社長と社員の距離を少しずつ縮めるきっかけとなった。

    だから、自分たちはこれからも企画を進めるとき、真っ先に名前を考える。

    ダサくてもいい。
    ベタでもいい。
    ダジャレでもいい。

    大切なのは、その名前に魂がこもっていること。

    もし今、何か新しい取り組みを始めようとしているなら、まずは名前をつけてみるのがよいだろう。

    言葉を作ることは、ムーブメントの種をまくことだ。世の中を変えるのは難しくても、社内くらいなら変えられる。

    ネーミングは組織開発の技術である。ネーミングがもたらす愛着は、最後まで走り切るガソリンとなる。

    ネーミングを武器に、期待に応えた素敵で楽しい社内施策を繰り出して、社内にムーブメントを起こしてみよう。




    Sales Ops実践ノート』では、株式会社ネットスターズのSales Opsチームが、ToDo・プロセス・スキル・カルチャーという4つの観点から、営業組織が最大限機能する状態を目指し、設計・運営してきたさまざまな取り組みと試行錯誤の模様を発信しております。連載は、ネットスターズSales Opsチームの熊野とそれぞれのアカウントで交互に実施しています。


     
     
    株式会社ネットスターズでSalesOps、カスタマーサクセス、インサイドセールス、各種システム開発案件のディレクション等担当してるほか、Pug界隈でパグ偏愛家としての顔も持っています。愛パグは、”だいきち”と”ぽてきち”の2頭。パグのイラストを描いたり、曲を作ったりしております♪

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