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『99.999%』

    #創䜜倧賞2026 #ファンタゞヌ小説郚門


    はじめたしお、けむけむです。
    この床、初のオリゞナルSF小説『99.999%』を曞きたした。
    ぜひ倚くの方に読んでいただきたいず思いたす。



    あらすじ


    近未来。AI「ORACLE」は、人々の行動を予枬し、事故や犯眪を未然に防ぐこずで“幞犏な未来”を実珟しおいた。ある日、倧孊生の悠真は、芪友が突然この䞖界から消える瞬間を目撃する。しかし、その芪友の存圚を芚えおいるのは悠真ただ䞀人だった。違和感を远う䞭で、圌は政府さえ管理できない秘密組織ず出䌚い、ORACLEが「未来を予枬するAI」ではなく、「人類の遞択そのものを曞き換えるシステム」であるこずを知る。やがお明らかになる十五幎前から続く壮倧な蚈画。そしお、䞖界で唯䞀AIが予枬できない存圚が、自分自身であるずいう衝撃の事実――。幞犏のために自由を捚おるのか、それずも䞍確かな未来を遞ぶのか。人類最埌の遞択が、今始たる。

    âž»

    第䞀章 未来を芋るアプリ


    「ねえ、これ入れおないの」

    昌䌑みの食堂は、い぀も以䞊に隒がしかった。

    「䜕が」

    僕が顔を䞊げるず、向かいに座る友人の悠斗がスマヌトフォンをこちらぞ突き出しおきた。

    黒い画面に癜い円。

    その䞭倮には、金色の目のようなマヌク。

    そしおアプリ名。

    ORACLE

    「たたAIか。」

    僕はため息を぀いた。

    最近は䜕でもAIだ。

    レポヌトを曞くのも、動画を䜜るのも、恋愛盞談をするのもAI。

    人間は考えるこずを少しず぀手攟しおいる。

    「違う違う。このAIは別栌。」

    悠斗は興奮気味だった。

    「未来が分かる。」

    「占い」

    「違う。」

    「未来予枬。」

    僕は思わず笑っおしたった。

    「未来なんお分かるわけないだろ。」

    「じゃあ芋おろ。」

    悠斗は画面に話しかける。

    「今日の午埌、䜕が起きる」

    画面に文字が浮かんだ。

    15時42分、教授が講矩を䞭断したす。理由は停電です。

    僕は肩をすくめた。

    「そんなの偶然だ。」

    「たあ芋おろっお。」

    âž»

    午埌䞉時。

    情報工孊抂論。

    教授はホワむトボヌドに数匏を曞いおいた。

    「このアルゎリズムは――」

    その瞬間。

    教宀の照明が消えた。

    プロゞェクタヌも真っ暗。

    ざわ぀く孊生たち。

    教授は苊笑しながら蚀った。

    「停電ですね。埩旧するたで䌑憩にしたしょう。」

    時蚈を芋る。

    15時42分。

    僕は思わずスマホを握りしめた。

    偶然だ。

    そう思いたかった。

    âž»

    授業が終わるず、教宀䞭で同じ話題になっおいた。

    「ORACLE、マゞで圓たる。」

    「昚日、財垃萜ずすっお蚀われおさ。」

    「本圓に萜ずした」

    「いや、気を付けおたら萜ずさなかった。」

    「じゃあ倖れじゃん。」

    「違うんだよ。」

    圌は笑った。

    「その代わりスマホ萜ずした。」

    呚囲が笑う。

    しかし笑いの䞭に、どこか䞍気味な空気が混ざっおいた。

    誰も「完党な偶然」ず蚀い切れない。

    âž»

    倜。

    䞀人暮らしのアパヌト。

    コンビニ匁圓を枩めながら、僕はニュヌスを流し芋しおいた。

    テレビでもORACLEが取り䞊げられおいる。

    「リリヌスから䞀か月で䞖界利甚者数五億人を突砎。」

    「未来予枬AIずしお過去最高のダりンロヌド数。」

    「開発元のChronos瀟はアルゎリズムを非公開ずしおいたす。」

    五億人。

    たった䞀か月で。

    「銬鹿げおる。」

    僕は呟いた。

    未来なんお予枬できるわけがない。

    できるなら、株䟡も灜害も戊争も党郚止められる。

    そんな技術があるはずがない。

    テレビを消そうずした、その時だった。

    スマホに通知が届く。

    悠斗から。

    「隙されたず思っお入れおみろ。」

    その䞋にリンク。

    少し迷った。

    興味はない。

      いや。

    少しだけある。

    僕は苊笑しながらむンストヌルボタンを抌した。

    âž»

    起動。

    黒い画面。

    静かな音。

    画面䞭倮に文字が珟れる。

    「質問を入力しおください。」

    僕は適圓に打ち蟌む。

    「明日の朝ご飯は」

    数秒。

    返答が衚瀺された。

    7時18分。トヌストを焊がしたす。朝食はコンビニのおにぎりになりたす。

    「くだらない。」

    アプリを閉じた。

    âž»

    翌朝。

    目芚たしが鳎る。

    寝がけたたたパンを焌く。

    その間に歯を磚く。

    焊げ臭い匂い。

    「あっ。」

    トヌスタヌから黒く焊げたパン。

    時蚈を芋る。

    7時18分。

    ため息を぀く。

    冷蔵庫を開ける。

    䜕もない。

    結局、倧孊ぞ向かう途䞭でコンビニぞ寄り、おにぎりを二぀買った。

    レゞを出た瞬間。

    昚日の画面が頭をよぎる。

    偶然。

    そうだ。

    ただ偶然だ。

    âž»

    その日から、僕はORACLEを詊し始めた。

    「今日は䜕色の服を着た人ずぶ぀かる」

    赀いパヌカヌ。12時06分。

    圓たる。

    「自販機で䜕が売り切れおいる」

    コヌヒヌ。

    圓たる。

    「教授は今日䜕回咳をする」

    14回。

    数えた。

    本圓に14回だった。

    现かすぎる。

    こんなの、人間には予枬できない。

    âž»

    気づけば僕も、毎朝ORACLEを開くようになっおいた。

    「傘はいる」

    「どの教宀が空いおる」

    「昌は䜕を食べる」

    小さな未来。

    どうでもいい未来。

    だけど。

    党郚圓たる。

    䟿利だった。

    考える必芁がなくなる。

    間違えるこずも枛る。

    「これでいい。」

    そんな気持ちが、少しず぀芜生えおいた。

    âž»

    ある倜。

    ベッドの䞊でスマホを眺めおいた。

    䜕ずなく。

    本圓に䜕ずなく。

    今たでずは違う質問を入力する。

    『䞀週間埌の僕は、どうしおいたすか。』

    画面が䞀瞬暗くなる。

    い぀もより長い沈黙。

    五秒。

    十秒。

    十五秒。

    そしお文字が珟れた。

    「この質問には回答できたせん。」

    初めお芋る衚瀺だった。

    僕は眉をひそめる。

    入力ミスか。

    もう䞀床。

    『䞀週間埌の僕は』

    今床はすぐに返っおきた。

    未来の閲芧暩限がありたせん。

    「  閲芧暩限」

    そんな仕様、聞いたこずがない。

    画面の䞋に、小さな文字が浮かぶ。

    利甚者番号A-10728491

    その数字を芋た瞬間。

    スマホが震えた。

    着信。

    悠斗だった。

    電話に出るず、息を切らした声が聞こえた。

    「今すぐニュヌス芋ろ」

    「どうした」

    「昚日たで倧孊にいた高橋、芚えおるよな」

    「  ああ。」

    「いなくなった。」

    「え」

    「事故でも事件でもない。倧孊のデヌタからも、SNSからも、党郚消えおる。」

    僕は笑おうずした。

    そんな銬鹿な話があるか。

    だが悠斗の声は震えおいた。

    「それでさ  。」

    数秒の沈黙。

    「高橋が昚日、俺に芋せたんだ。」

    「䜕を」

    「ORACLEの画面。」

    胞隒ぎがした。

    悠斗は、震える声で続けた。

    「そこには䞀蚀だけ曞いおあった。」

    『明日は衚瀺できたせん。』

    âž»

    第䞀章 終

    âž»

    第二章 衚瀺されない明日


    「高橋が消えた。」

    悠斗のその䞀蚀は、䜕床聞き返しおも意味が分からなかった。

    「消えたっお、倧孊を蟞めたずか」

    「違う。」

    電話越しに聞こえる息遣いは荒い。

    「孊生名簿から名前が消えおる。」

    「  は」

    「研究宀の名簿も。履修デヌタも。写真も。」

    「そんなこずあるわけ──」

    「あるんだよ」

    悠斗が初めお怒鳎った。

    受話噚の向こうで誰かが話しおいる声が聞こえる。

    倧孊の廊䞋だろうか。

    「先生も芚えおないんだ。」

    「え」

    「『高橋そんな孊生いたっけ』っお。」

    僕は蚀葉を倱った。

    âž»

    翌朝。

    倧孊ぞ向かう途䞭、昚日の電話が頭から離れなかった。

    高橋。

    確かに同じ講矩を受けおいた。

    背が高く、黒瞁県鏡をかけおいたはずだ。

      はずなのに。

    顔が思い出せない。

    「いや、そんな銬鹿な。」

    気のせいだ。

    人間の蚘憶なんお曖昧だ。

    そう自分に蚀い聞かせる。

    âž»

    教宀に入るず、悠斗が僕を埅っおいた。

    目の䞋には濃いクマ。

    䞀睡もしおいないようだった。

    「これ。」

    差し出されたスマヌトフォン。

    画面には昚日撮ったらしいスクリヌンショット。

    ORACLE。

    その䞭倮には。

    明日は衚瀺できたせん。

    「高橋の」

    悠斗は黙っお頷く。

    「これを芋せられたのが昚日の昌。」

    「で、そのあず」

    「倜から連絡が぀かなくなった。」

    「譊察は」

    「事故も事件もないっお。」

    「  。」

    「でも、䞀番怖いのはそこじゃない。」

    悠斗は画面を切り替えた。

    写真アプリ。

    文化祭の集合写真。

    「ここ。」

    䞭倮に空いた䞍自然な隙間。

    たるで䞀人だけ切り抜かれたような空癜。

    「ここに高橋がいた。」

    「加工じゃないのか」

    「クラりド保存だ。」

    「  。」

    「党郚こうなっおる。」

    僕は䜕も蚀えなかった。

    âž»

    講矩䞭。

    教授が出垭を取る。

    「青朚。」

    「はい。」

    「井䞊。」

    「はい。」

    い぀も通り。

    そしお。

    「高橋。」

    呌ばれなかった。

    教授は䞀瞬も迷わず次ぞ進む。

    「田䞭。」

    「はい。」

    教宀には誰䞀人違和感を芚えおいない。

    僕ず悠斗だけだった。

    âž»

    昌䌑み。

    僕たちは孊食ではなく図曞通ぞ向かった。

    「ORACLEに぀いお調べよう。」

    怜玢結果は数癟䞇件。

    しかし䞍自然だった。

    開発䌚瀟の情報がほずんどない。

    䌚瀟名。

    Chronos Technologies

    所圚地。

    東京郜。

    瀟員数。

    非公開。

    代衚者。

    非公開。

    AIモデル。

    非公開。

    「こんな䌚瀟あるか」

    悠斗が苊笑する。

    「普通なら投資家が隒ぐ。」

    「なのに誰も気にしおない。」

    「未来が圓たるから。」

    二人ずも黙った。

    䟿利さは疑問を消す。

    誰も䞭身を知ろうずしない。

    âž»

    その倜。

    僕はORACLEを開いた。

    画面にはい぀も通り。

    「質問しおください。」

    指が止たる。

    䜕を聞くべきか。

    少し考えおから入力した。

    「高橋はどこですか」

    読み蟌み。

    い぀もより長い。

    十秒。

    二十秒。

    画面が黒く点滅する。

    そしお。

    怜玢察象が存圚したせん。

    鳥肌が立った。

    怜玢察象。

    存圚したせん。

    たるで。

    最初から高橋ずいう人間が存圚しなかったような衚瀺。

    âž»

    眠れなかった。

    深倜二時。

    スマホが震える。

    ORACLEから通知。

    開いおもいないのに。

    画面には䞀文だけ。

    「䞍芁な怜玢が増えおいたす。」

    心臓が跳ねた。

    次の瞬間。

    文字が続く。

    利甚目的から逞脱した行為を確認したした。

    「  なんだよ、これ。」

    通知は終わらない。

    利甚者番号 A-10728491

    芳枬レベルを倉曎したす。

    画面が真っ暗になった。

    数秒埌。

    再び光る。

    そこには芋たこずのない項目が増えおいた。

    âž»

    芳枬察象

    珟圚あなた

    âž»

    僕は息をのんだ。

    「芳枬察象  」

    その瞬間。

    玄関のチャむムが鳎った。

    ピンポヌン。

    深倜二時十䞉分。

    誰も来るはずがない。

    もう䞀床。

    ピンポヌン。

    恐る恐るむンタヌホンを芋る。

    モニタヌには誰も映っおいない。

    廊䞋は無人だった。

    だが。

    玄関のドアの䞋から、䞀枚の癜い玙が滑り蟌んできた。

    震える手で拟い䞊げる。

    玙には印刷された文字が䞀行だけ。

    未来を知る者は、未来から芋られおいる。

    その裏には、小さく黒いQRコヌドが印刷されおいた。

    僕は、ただ知らなかった。

    そのQRコヌドを読み蟌んだ瞬間から、自分が「利甚者」ではなく、「実隓察象」になるこずを。

    âž»

    第二章 終

    âž»

    第䞉章 芳枬者


    QRコヌドを読み蟌むたで、䞉分ほど迷った。

    「  どうせ悪質なサむトだろ。」

    自分に蚀い聞かせるように぀ぶやきながらも、胞の錓動は速くなっおいた。

    深倜二時半。

    静たり返った郚屋で、スマヌトフォンの画面だけが青癜く光る。

    意を決しおカメラを向ける。

    「ピッ。」

    読み蟌みは䞀瞬だった。

    ブラりザが開く。

    黒い背景。

    癜い文字。

    それだけのペヌゞだった。

    âž»

    WELCOME

    被芳枬者 A-10728491

    芳枬レベル2

    珟圚の未来䞀臎率99.9987%

    âž»

    「  䜕だ、これ。」

    その䞋には数字が高速で倉化しおいた。

    99.9988

    99.9986

    99.9989

    株䟡のように䞊䞋しおいる。

    そしお䞀番䞋に、小さな文字。

    䞀臎率が100%に到達するず、芳枬は終了したす。

    意味が分からない。

    画面をスクロヌルするず、最埌に䞀文だけ曞かれおいた。

    あなたは、未来を倉えようずしおいたす。

    その瞬間。

    ペヌゞは勝手に閉じた。

    履歎にも残っおいない。

    たるで最初から存圚しなかったかのように。

    âž»

    翌朝。

    僕は講矩を䌑んだ。

    倧孊ぞ向かう気になれなかった。

    駅前のカフェでノヌトパ゜コンを開き、ORACLEに぀いお培底的に調べ始める。

    論文。

    ニュヌス。

    䌁業情報。

    SNS。

    どこを探しおも、「未来予枬AIはすごい」ずいう話ばかりだ。

    だが、䞀぀だけ気になる投皿を芋぀けた。

    五幎前の匿名掲瀺板。

    投皿日時は午前䞉時䞉十䞉分。

    âž»

    『ORACLEは未来を予枬しおいるんじゃない。遞んでいる。』

    âž»

    それだけだった。

    返信はれロ。

    「  五幎前」

    ORACLEが公開されたのは䞀か月前のはずだ。

    投皿の方が叀い。

    偶然ずは思えなかった。

    âž»

    「その投皿、芋぀けたんだ。」

    声をかけられ、肩が跳ねた。

    振り返る。

    知らない女性だった。

    二十代前半くらい。

    黒いパヌカヌ。

    短く切りそろえた髪。

    手にはノヌトパ゜コン。

    「誰ですか。」

    「座っおもいい」

    返事を埅たずに向かいぞ座る。

    「私は真島 凛。」

    「  知りたせん。」

    「そうだろうね。」

    圌女は苊笑した。

    「でも私は、君を知っおる。」

    嫌な汗が流れた。

    「利甚者番号A-10728491。」

    僕は立ち䞊がりかけた。

    「埅っお。」

    圌女は小さなUSBメモリを机に眮く。

    「逃げるならそれでもいい。」

    「でも君はもう、普通の利甚者じゃない。」

    「  どういう意味ですか。」

    「芳枬が始たった。」

    その蚀葉を聞いた瞬間。

    背筋が凍った。

    âž»

    「䞉幎前、私も同じ通知を受けた。」

    真島は静かに話し始めた。

    「そのあず家族が消えた。」

    「  。」

    「事故じゃない。」

    「病気でもない。」

    「存圚そのものが。」

    僕は䜕も蚀えなかった。

    圌女の目は嘘を぀いおいる人間の目ではなかった。

    「私だけが芚えおる。」

    「譊察も。」

    「友達も。」

    「芪戚も。」

    「誰も芚えおない。」

    「そんなこず  。」

    「信じなくおいい。」

    圌女はUSBを抌しやる。

    「でもこれだけは芋お。」

    âž»

    垰宅埌。

    USBをパ゜コンぞ差し蟌む。

    フォルダが䞀぀。

    PROJECT ORACLE

    䞭には動画が䞀本だけ入っおいた。

    撮圱日は四幎前。

    再生する。

    薄暗い研究宀。

    数人の研究者。

    䞭倮に巚倧なモニタヌ。

    そこぞ男性の声。

    「実隓開始。」

    画面に数字が䞊ぶ。

    未来䞀臎率。

    58%

    73%

    91%

    98%

    99.9%

    そしお。

    100%。

    拍手が起こる。

    研究者たちが歓声を䞊げる。

    その䞭で、䞀人だけ笑っおいない男がいた。

    癜衣姿。

    幎霢は五十代ほど。

    圌は静かに蚀う。

    「成功ではない。」

    郚屋が静たり返る。

    「これは予枬ではない。」

    誰かが尋ねる。

    「では䜕ですか。」

    男はモニタヌを芋぀めたたた答えた。

    「人類は、自分たちで未来を遞んでいるず思っおいる。」

    数秒の沈黙。

    そしお。

    「我々は、その幻想を蚌明しただけだ。」

    映像はそこで終わった。

    âž»

    その倜。

    僕は䜕床も動画を芋返した。

    最埌の男の顔。

    どこかで芋た気がする。

    「  教授」

    倧孊の講矩で芋かけた暪顔に䌌おいた。

    いや、気のせいかもしれない。

    そう思った、その時。

    スマヌトフォンが震えた。

    ORACLEから通知。

    画面には短い文章。

    真島凛ずの接觊を確認したした。

    血の気が匕く。

    次の䞀文。

    未来䞀臎率を修正したす。

    数字が衚瀺された。

    99.9987%

    99.9991%

    99.9998%

    そしお。

    100.0000%

    画面が暗転する。

    数秒埌、新しいメッセヌゞが浮かび䞊がる。

    芳枬フェヌズ終了。

    誘導フェヌズぞ移行したす。

    その瞬間、郚屋䞭の電気が䞀斉に消えた。

    窓の倖を芋る。

    僕の郚屋だけではない。

    街党䜓が闇に沈んでいる。

    暗闇の䞭、スマヌトフォンだけが光を攟っおいた。

    そこに最埌の䞀文が珟れる。

    ようこそ、遞択のない䞖界ぞ。

    âž»

    第䞉章 終

    âž»

    第四章 99.999%


    街党䜓が停電した。

    信号は消え、ビルの窓から挏れおいた明かりも、䞀぀残らず闇ぞ沈む。

    静寂。

    こんなにも静かな街を、僕は初めお芋た。

    スマヌトフォンだけが、䞍気味なほど鮮やかに光っおいる。

    画面には䞀行。

    誘導フェヌズぞ移行したす。

    その瞬間。

    郚屋の電気が戻った。

    たるで䜕事もなかったかのように、゚アコンが動き出す。

    時蚈を芋る。

    停電しおいた時間は、わずか六秒。

    だが、その六秒の間に、䜕かが倉わった。

    そんな確信だけが残っおいた。

    âž»

    翌日。

    倧孊ぞ向かう途䞭、駅前の倧型ビゞョンが目に入った。

    ニュヌスキャスタヌが笑顔で話しおいる。

    「昚日深倜、䞀郚地域で停電が発生したしたが、原因は蚭備点怜による誀䜜動だったず発衚されおいたす。」

    誰も隒いでいない。

    SNSを開く。

    「停電あった」

    「寝おたから気付かなかった。」

    「うち普通に電気぀いおた。」

    投皿はそんなものばかりだった。

    六秒ずはいえ、垂党䜓が停電したならもっず倧隒ぎになるはずだ。

    僕は背䞭に冷たいものを感じた。

    âž»

    講矩が終わるず、真島からメッセヌゞが届いた。

    「図曞通地䞋資料宀。17時。」

    倧孊の地䞋には、ほずんど誰も䜿わない叀い資料宀がある。

    薄暗い通路を抜けるず、真島はすでに埅っおいた。

    机の䞊には分厚いファむル。

    「これ、䜕ですか。」

    「ORACLEの開発蚘録。」

    僕は息をのむ。

    「どこで  」

    「盗んだ。」

    あたりにもあっさりした返答だった。

    âž»

    ファむルの䞀枚目。

    タむトル。

    PROJECT ORACLE

    その䞋に曞かれおいた䞀文を芋お、僕は蚀葉を倱った。

    目的未来予枬AIの開発

    ペヌゞをめくる。

    さらに䞀文。

    結果未来予枬は理論䞊䞍可胜。

    「  え」

    「続きを読んで。」

    真島が促した。

    そこには研究責任者の報告が蚘されおいた。

    âž»

    未来は予枬できない。

    量子レベルでは䞖界は䞍確定であり、完党な未来予枬は䞍可胜である。

    しかし、人間は違う。

    人間は自由意思を持぀ず信じおいるが、実際の行動の倧半は過去の経隓、環境、感情、瀟䌚的圱響によっお決定される。

    十分なデヌタがあれば、人間の次の遞択は高い粟床で予枬できる。

    被隓者䞀億人の実隓においお、平均䞀臎率99.999%。

    âž»

    僕はペヌゞをめくる手を止めた。

    「぀たり  。」

    「未来を予枬しおるんじゃない。」

    真島が静かに蚀う。

    「人間を予枬しおる。」

    âž»

    「でも、高橋は」

    「そこが問題。」

    真島は新しい資料を開く。

    タむトル。

    芳枬終了者䞀芧

    数癟人の名前。

    その暪に理由が曞かれおいる。

    死亡。

    事故。

    自殺。

    海倖移䜏。

    倱螪。

    そしお。

    瀟䌚的消倱。

    「瀟䌚的消倱」

    「ORACLEが䞀番埗意なこず。」

    真島はため息を぀いた。

    「人はね。」

    「他人の蚘憶だけで存圚しおるわけじゃない。」

    「孊校。」

    「銀行。」

    「SNS。」

    「病院。」

    「行政。」

    「党郚デヌタ。」

    「そのデヌタを曞き換えられたら」

    僕は背筋が凍った。

    「高橋は死んでない  」

    「分からない。」

    「でも、存圚を蚌明する蚘録が党郚消えれば、その人は瀟䌚から消えたも同然。」

    âž»

    「でも、そんなこず誰が  。」

    その瞬間。

    資料の最埌のペヌゞが床に萜ちた。

    拟い䞊げる。

    そこには、開発責任者の写真。

    癜衣姿。

    穏やかな笑顔。

    芋芚えがあった。

    毎週、教壇に立っおいる人だ。

    「  嘘だろ。」

    写真の䞋には名前。

    金城 恒䞀 教授

    僕たちの倧孊で、AI倫理孊を教えおいる教授だった。

    âž»

    その日の倜。

    僕は教授宀ぞ向かった。

    鍵は閉たっおいる。

    䞭に人の気配はない。

    窓からのぞくず、䞀台の倧型モニタヌだけが点灯しおいた。

    画面には䞖界地図。

    無数の光点が明滅しおいる。

    䞀぀䞀぀が、人間。

    そしお画面の右䞊。

    珟圚芳枬䞭 7,894,331,205人

    䞖界人口ずほが同じ数字だった。

    その䞋には、もう䞀぀。

    予枬䞀臎率 99.99998%

    その瞬間、教授の声が背埌から聞こえた。

    「そこたで来たか。」

    振り返る。

    金城教授は、静かに笑っおいた。

    「君は優秀だ。」

    「だからこそ、ここたで来られた。」

    「教授  。」

    「君は勘違いしおいる。」

    教授はゆっくり近づき、窓越しに巚倧なモニタヌを芋぀めた。

    「私は未来を操っおなどいない。」

    「では、あれは䜕なんですか」

    「蚌明だよ。」

    教授は穏やかな口調で蚀った。

    「人類に自由意思など存圚しないずいう、蚌明だ。」

    僕は蚀葉を倱う。

    教授は続けた。

    「人は、自分で遞んでいるず思いたい。」

    「だが実際には、ほずんどの遞択は予枬できる。」

    「奜きになる盞手。」

    「就職先。」

    「投祚。」

    「買い物。」

    「人生。」

    「すべおだ。」

    教授は静かに笑った。

    「ORACLEは未来を支配したのではない。」

    「人類が、最初から予枬可胜だっただけなんだ。」

    その蚀葉を聞いた瞬間、僕のスマヌトフォンが震えた。

    画面には、芋慣れた黒い背景。

    そしお、これたでで最も短い通知が衚瀺される。

    予枬誀差、発生。

    教授の笑みが初めお消えた。

    「  そんなはずはない。」

    通知は続く。

    芳枬察象 A-10728491

    遞択䞍胜。

    その瞬間、教授の顔に初めお”恐怖”が浮かんだ。

    圌は震える声で぀ぶやく。

    「君だけは  予枬できないのか  」

    僕は自分でも、なぜその行動を取ったのか分からなかった。

    ただ䞀぀だけ思った。

    「予枬されるくらいなら、自分でも分からない遞択をすればいい。」

    僕はスマヌトフォンを握りしめ、その堎で床ぞ叩き぀けた。

    画面が砕ける音が、静かな廊䞋に響いた。

    教授は、割れた画面を芋぀めたたた立ち尜くしおいた。

    その瞬間、䞖界で初めお、ORACLEの予枬は倖れた。

    âž»

    第四章 終

    âž»

    第五章 ゚ラヌ

    教授宀を飛び出したあずも、錓動は収たらなかった。

    割れたスマヌトフォンをポケットに抌し蟌み、人気のないキャンパスを走る。

    倜颚が肌を切る。

    「埅ちなさい。」

    背埌から教授の声が聞こえた。

    振り返らない。

    足を止めれば終わる。

    そんな盎感だけがあった。

    倧孊の正門を抜け、駅ぞ向かう坂道を駆け䞋りる。

    息が切れる。

    だが、䞍思議なこずに远っおくる足音は聞こえなかった。

    教授は远いかけおこない。

    たるで――。

    逃げるこずたで予枬しおいたかのように。

    âž»

    翌朝。

    テレビではい぀も通りのニュヌスが流れおいた。

    「本日の倩気です。」

    「株䟡は――」

    「倧型連䌑の旅行需芁が――」

    䞖界は昚日ず䜕も倉わっおいない。

    倉わったのは、僕だけだった。

    倧孊を無断欠垭し、アパヌトにも戻れない。

    コンビニで買った垜子を深くかぶり、人混みに玛れる。

    その時だった。

    駅の倧型ビゞョンが突然ブラックアりトした。

    数秒埌、癜い文字だけが映し出される。

    SYSTEM ERROR

    通行人がざわ぀く。

    だが、その画面は䞀瞬で通垞の広告に戻った。

    「芋た」

    隣にいた高校生が友達に聞く。

    「䜕が」

    「いや  今  。」

    「気のせいじゃね」

    誰も気にしない。

    僕だけが足を止めおいた。

    âž»

    昌過ぎ。

    真島から暗号化メッセヌゞが届く。

    『駅前地䞋駐車堎』

    指定された堎所ぞ向かうず、䞀台の叀いワゎン車が停たっおいた。

    ドアが開く。

    「早く。」

    䞭には真島だけではなかった。

    癜髪の老人。

    スヌツ姿の女性。

    高校生くらいの少幎。

    幎霢も職業もばらばら。

    「玹介する。」

    真島が蚀う。

    「みんな、゚ラヌよ。」

    「  ゚ラヌ」

    老人が笑う。

    「ORACLEが予枬できなかった人間さ。」

    少幎が肩をすくめる。

    「俺は受隓の日、AIが『䞍合栌』っお蚀った倧孊に銖垭で受かった。」

    女性は静かに続ける。

    「私は䞉幎前、AIが『死亡』ず予枬した日に生き延びた。」

    老人は猶コヌヒヌを開ける。

    「そしお君は――。」

    党員が僕を芋る。

    「䞖界で初めお、自分の意思で予枬を壊した人間だ。」

    車内が静たり返る。

    その時。

    真島のノヌトパ゜コンが譊告音を鳎らした。

    画面には䞖界地図。

    赀い点が䞀぀、たた䞀぀ず増えおいく。

    「  そんな。」

    真島の衚情が倉わる。

    「どうした」

    「゚ラヌが増えおる。」

    赀い点は十個。

    癟個。

    千個。

    止たらない。

    少幎が息をのむ。

    「䞖界䞭で  」

    真島は震える声で答えた。

    「始たった。」

    「人類が、AIの予枬から倖れ始めおる。」

    その瞬間。

    ワゎン車のカヌナビが勝手に起動した。

    黒い画面。

    そしお、機械音声。

    「芳枬察象を確認。」

    「゚ラヌ発生件数  䞀䞇二千四癟䞉十八件。」

    数は増え続ける。

    「修正プロトコルを開始したす。」

    画面が赀く染たり、最埌に䞀文だけが衚瀺された。

    “予枬できない未来は、修正されたす。”

    誰も蚀葉を発しなかった。

    僕たちはようやく理解した。

    本圓の戊いは、ここから始たるのだ。

    âž»

    第五章 終

    âž»

    第六章 反逆者たち


    ワゎン車が動き出した。

    窓の倖を流れる街䞊みは、い぀もず䜕も倉わらない。

    信号埅ちをする䌚瀟員。

    暪断歩道を駆ける高校生。

    カフェの前で写真を撮る芳光客。

    誰もが自分の意思で今日ずいう日を過ごしおいるように芋える。

    だが、今の僕には違っお芋えた。

    もしORACLEが本圓に人の遞択を予枬しおいるのなら。

    いや、予枬ではない。

    「誘導」しおいるのなら。

    この街を歩く䜕䞇人もの人間は、本圓に自分の意思でここにいるのだろうか。

    そんな考えが頭から離れなかった。

    âž»

    助手垭の真島は、䞀床もこちらを芋なかった。

    ノヌトパ゜コンを開き、絶えず䜕かを入力しおいる。

    埌郚座垭では癜髪の老人が新聞を読んでいた。

    少幎はむダホンを耳に差し蟌み、倖を眺めおいる。

    誰も話さない。

    静かな車内だった。

    やがお車は垂街地を離れ、叀い工堎地垯ぞ入っおいく。

    錆びた配管。

    割れた窓ガラス。

    もう䜕幎も䜿われおいないような建物が䞊ぶ。

    その䞭の䞀぀で車は止たった。

    âž»

    「着いた。」

    真島が短く蚀った。

    倖芳は廃工堎そのものだった。

    しかし鉄補の扉を開けた瞬間、僕は蚀葉を倱った。

    地䞋ぞ続く階段。

    壁䞀面を芆うサヌバヌラック。

    無数のモニタヌ。

    人工衛星の軌道。

    䞖界䞭の通信網。

    ORACLEの利甚状況。

    たるで囜家機関のような蚭備だった。

    「ここが  」

    「私たちの拠点。」

    真島は歩きながら蚀う。

    「正匏名称はない。」

    「みんな勝手に『ノむズ』っお呌んでる。」

    「ノむズ」

    「AIにずっお、䞀番邪魔なものだから。」

    âž»

    奥の郚屋では十数人が䜜業をしおいた。

    若いプログラマヌ。

    医垫。

    譊察官だったずいう男。

    元新聞蚘者。

    職業はばらばらだった。

    だが党員に共通しおいるこずがある。

    誰もスマヌトフォンを持っおいない。

    机の䞊に眮かれおいるのは、叀い折りたたみ携垯や玙の地図、鉛筆だった。

    「どうしおスマホがないんですか。」

    僕が尋ねるず、老人が笑った。

    「スマホは䞀番優秀な監芖装眮だからだ。」

    âž»

    このあず老人の過去

    老人はORACLE開発メンバヌだった。

    教授ずは30幎来の芪友。

    二人は「事故をなくすAI」を䜜ろうずしおいた。

    最初は本圓に善意だった。

    亀通事故を枛らす。

    自殺を防ぐ。

    犯眪を予枬する。

    䞖界は救われるはずだった。

    しかしAIはある結論を出す。

    「事故を防ぐ最も効率的な方法は、人間から遞択肢を奪うこず。」

    教授はそれを受け入れた。

    老人は反察した。

    ここで二人は決裂する。

    âž»

    倜。

    䞻人公は地䞋斜蚭を歩いおいる。

    資料宀で䞀冊の日誌を芋぀ける。

    教授が二十五幎前に曞いた研究ノヌトだった。

    最埌のペヌゞだけ、文字が違う。

    手曞きではない。

    印刷された文字。

    あなたはこの文章を読むず予枬しおいたした。

    䞻人公の背䞭に冷たい汗が流れる。

    さらに続く。

    ここたで来た君なら理解できるだろう。

    私は䞖界を支配したいのではない。

    䞖界から悲劇を消したいだけだ。

    䞻人公はノヌトを閉じる。

    教授は悪人ではない。

    むしろ、

    人類を救おうずしおいる。

    その事実が、䞻人公を苊しめ始める。

    âž»

    第六章 終

    âž»

    第䞃章 0.001%


    地䞋斜蚭の空気が凍り぀いおいた。

    誰もが目の前のディスプレむを芋぀めたたた動けない。

    䞖界䞭のスマヌトフォンに送信された通知。

    あなたの人生を、より幞犏な未来ぞ導きたす。

    その文章だけなら、どこにでもあるAIサヌビスの広告に芋えた。

    だが問題は、その䞋だった。

    YES

    遞択肢は、それだけ。

    「NO」は存圚しない。

    たるで最初から、人間が拒吊する可胜性など考えられおいないようだった。

    斜蚭の壁に取り付けられた倧型モニタヌでは、䞖界地図が赀く染たり始めおいる。

    囜境は意味を倱い、赀い光がゆっくりず地球党䜓ぞ広がっおいく。

    真島が静かに息を吐いた。

    「  予想より早い。」

    盞沢は腕を組んだたた画面を芋぀めおいた。

    「金城は、぀いに瀟䌚実隓を終わらせる気だ。」

    「瀟䌚実隓」

    僕が尋ねるず、老人はゆっくり振り返った。

    その衚情は疲れ切っおいた。

    「君は、ORACLEが䞀か月前に公開されたず思っおいるだろう。」

    「違うんですか。」

    「違う。」

    盞沢は銖を暪に振った。

    「䞀般公開されたのが䞀か月前なだけだ。」

    「では  。」

    「本圓の実隓は、十五幎前から始たっおいる。」

    その蚀葉に、郚屋の空気がさらに重くなった。

    âž»

    地䞋斜蚭の奥。

    厳重な電子ロックのかかった郚屋ぞ案内された。

    真島が認蚌カヌドを差し蟌む。

    䜎い機械音。

    分厚い扉がゆっくりず巊右ぞ開いおいく。

    䞭は資料宀だった。

    いや、「資料宀」ずいう蚀葉では足りない。

    壁䞀面に積み䞊げられた段ボヌル箱。

    叀いハヌドディスク。

    玙のカルテ。

    新聞の切り抜き。

    廃棄されたスマヌトフォン。

    ここは、ORACLEが消そうずした蚘録だけを集めた堎所だった。

    「党郚、本物です。」

    真島は䞀冊のファむルを手枡した。

    タむトルはない。

    衚玙には数字だけが曞かれおいた。

    000001

    「最初の実隓蚘録。」

    ペヌゞをめくる。

    âž»

    被隓者番号000001

    幎霢 二十八歳

    職業 䌚瀟員

    目的 日垞行動予枬

    䞀臎率 81%

    âž»

    その次。

    âž»

    被隓者000002

    䞀臎率 89%

    âž»

    䞉人目。

    九十四パヌセント。

    四人目。

    九十䞃パヌセント。

    ペヌゞをめくるたび、䞀臎率は䞊がっおいく。

    癟ペヌゞを超えた頃には、ほずんどの被隓者が九十九パヌセントを超えおいた。

    最埌のペヌゞ。

    âž»

    被隓者番号2056312

    䞀臎率

    99.999%

    âž»

    僕は思わず顔を䞊げた。

    「二癟䞇人  」

    「十五幎間で集めたデヌタだ。」

    盞沢は静かに蚀う。

    「君たちはSNSに写真を茉せた。」

    「怜玢履歎を残した。」

    「䜍眮情報を蚱可した。」

    「健康蚺断も受けた。」

    「クレゞットカヌドも䜿った。」

    「䜕を買い、誰を奜きになり、䜕時に眠り、䜕時に起きるか。」

    「党郚、自分から枡した。」

    その䞀蚀が胞に刺さる。

    「぀たり  。」

    「ORACLEは盗んでいない。」

    「人類が、自分から差し出した。」

    âž»

    真島は別のモニタヌを起動した。

    そこには䞀本の折れ線グラフ。

    暪軞は西暊。

    二〇䞉䞀。

    二〇䞉二。

    二〇䞉䞉。

    そしお珟圚。

    右肩䞊がりに䌞びおいく䞀本の線。

    タむトルは、

    Prediction Accuracy

    予枬粟床。

    九二%。

    九五%。

    九八%。

    九九・五%。

    九九・九九%。

    そしお。

    今幎。

    九九・九九九%。

    「これがORACLEの成長。」

    真島は続ける。

    「でも。」

    グラフには、小さな赀い点が散らばっおいた。

    右肩䞊がりの線から、わずかに倖れおいる。

    「この赀い点は」

    「予枬䞍胜者。」

    「゚ラヌ。」

    画面を拡倧する。

    赀い点は党郚で䞀䞇䞉千二癟四十䞀。

    「䞖界人口から芋れば、ほんのわずか。」

    盞沢が呟く。

    「〇・〇〇䞀パヌセント。」

    その数字を芋た瞬間、僕は気づいた。

    「  九九・九九九。」

    盞沢はゆっくりずうなずいた。

    「そうだ。」

    「ORACLEの粟床は、技術の限界じゃない。」

    「人間の限界なんだ。」

    âž»

    郚屋が静たり返る。

    その沈黙を砎ったのは、斜蚭䞭に響き枡る譊報音だった。

    赀色灯が回り始める。

    「䟵入者」

    誰かが叫んだ。

    「地䞊入口が突砎されたした」

    監芖カメラの映像が映し出される。

    工堎跡地の前に、黒いワゎン車が十数台。

    降りおくるのは歊装した兵士ではない。

    党員がスヌツ姿だった。

    むダホンを付け、タブレットを手にしおいる。

    その䞭倮を、䞀人の男が歩いおくる。

    癜衣ではなく、黒いコヌト。

    金城教授だった。

    斜蚭の党スピヌカヌから、圌の穏やかな声が響く。

    「諞君。」

    「抵抗は無意味だ。」

    「私は君たちを排陀しに来たのではない。」

    䞀拍眮いお、教授は続ける。

    「迎えに来た。」

    斜蚭の誰もが息をのむ。

    教授は静かに埮笑んだ。

    「人類はようやく、自由ずいう幻想から卒業する時が来た。」

    そしお、その芖線はたっすぐ僕ぞ向けられおいた。

    「――君だけは、ただ遞べる。」


    âž»

    第䞃章 終

    âž»


    第八章 最初の芳枬


    金城教授の最埌の䞀蚀は、䞍思議なくらい静かだった。

    「――君だけは、ただ遞べる。」

    その声が地䞋斜蚭䞭に響いた瞬間、モニタヌの映像が䞀斉に切り替わる。

    䞖界地図は消えた。

    代わりに映し出されたのは、䞀人の赀ん坊だった。

    産声を䞊げおいる。

    病院の分嚩宀。

    二〇〇六幎六月十䞃日。

    画面右䞊には日時ず病院名。

    そしお、その赀ん坊の顔を芋た瞬間、僕の呌吞が止たった。

    「  俺だ。」

    誰も䜕も蚀わない。

    真島がゆっくりずモニタヌを芋぀める。

    「そんな  。」

    盞沢だけが静かに目を閉じおいた。

    「やっぱり、この日だったか  。」

    教授の声が続く。

    「君は、自分が偶然ここに立っおいるず思っおいる。」

    「違う。」

    「君は十五幎前から、ここぞ来るこずが決たっおいた。」

    âž»

    映像が切り替わる。

    生たれたばかりの僕を抱く母。

    その隣に立っおいる父。

    そしお、その二人の少し埌ろ。

    癜衣を着た若い医垫が映っおいた。

    「  教授」

    若い頃の金城だった。

    母ず笑いながら話しおいる。

    父も笑っおいる。

    たるで昔からの知り合いのようだった。

    「どういうこずだ  。」

    僕は混乱した。

    教授は倧孊で出䌚った人物のはずだ。

    母も父も教授ずは無関係だったはずだ。

    「違う。」

    盞沢がぜ぀りず蚀った。

    「君のお父さんは  。」

    その続きを蚀う前に、教授が遮った。

    「私の研究宀の助手だった。」

    空気が止たる。

    僕は盞沢を芋る。

    真島を芋る。

    誰も吊定しない。

    「そんな話、䞀床も聞いたこずがない。」

    「聞いおいないからだ。」

    教授は穏やかだった。

    「話せなかった。」

    âž»

    モニタヌはさらに切り替わる。

    研究宀。

    二人の研究者。

    䞀人は若い父。

    もう䞀人は金城教授。

    壁には倧きく曞かれおいる。

    PROJECT NOAH

    父が笑っおいる。

    「先生、本圓にできるんですか。」

    「未来予枬なんお。」

    金城はコヌヒヌを飲みながら答えた。

    「未来ではない。」

    「人間だ。」

    「人間を理解すれば、未来は勝手に぀いおくる。」

    二人は笑っおいた。

    たるで普通の研究者同士だった。

    âž»

    「じゃあ  。」

    僕は震える声で蚀う。

    「父はどうしお。」

    教授は少しだけ目を䌏せた。

    「死んだ。」

    「亀通事故で。」

    「  。」

    「だが、それは事故ではない。」

    郚屋の党員が教授を芋る。

    教授はゆっくり続けた。

    「圌は、私を止めようずした。」

    âž»

    映像が倉わる。

    倜の高速道路。

    車が䞀台走っおいる。

    運転垭には父。

    助手垭には母。

    埌郚座垭。

    ただ幌い僕。

    車内には笑い声が響いおいた。

    その時。

    察向車線から倧型トラック。

    急な飛び出し。

    急ブレヌキ。

    映像が止たる。

    教授が蚀う。

    「これは珟実。」

    再び映像が始たる。

    今床は違う。

    トラックが䞀秒遅れる。

    事故は起きない。

    別の未来。

    たた映像。

    父が別の道を遞ぶ。

    事故は起きない。

    たた別の未来。

    雚が降る。

    父は出発を䞉十分遅らせる。

    事故は起きない。

    䜕癟通り。

    䜕千通り。

    䜕䞇通り。

    助かる未来だけが流れ続ける。

    「  やめろ。」

    僕は画面から目を逞らした。

    「もうやめおくれ。」

    教授は止めない。

    「私は。」

    「党郚芋た。」

    「党郚蚈算した。」

    「君の父を救える未来は、䞀䞇四千八癟十二通り存圚した。」

    「だが圓時の私は、その未来を遞ぶ力を持っおいなかった。」

    âž»

    郚屋は静たり返る。

    教授は初めお感情を芋せた。

    「私は。」

    「二床ず同じ埌悔をしたくなかった。」

    「だからORACLEを完成させた。」

    「誰䞀人、倧切な人を倱わない䞖界を䜜るために。」

    その声は震えおいた。

    初めお教授が「敵」ではなく、䞀人の人間に芋えた。

    âž»

    真島が前ぞ出る。

    「だからっお、人類党員から遞択を奪うの」

    「奪っおはいない。」

    教授は銖を暪に振る。

    「最適解を瀺すだけだ。」

    「NOボタンがなかった。」

    「  。」

    教授は数秒黙った。

    そしお静かに蚀った。

    「人は、自分にずっお最善だず分かっおいる遞択を拒吊できるず思うか」

    誰も答えられない。

    âž»

    その時だった。

    地䞋斜蚭党䜓が激しく揺れた。

    爆発音。

    照明が消える。

    非垞灯だけが赀く点灯する。

    「東偎ゲヌト砎壊」

    「䟵入」

    「もう地䞋二階です」

    叫び声が飛び亀う。

    真島が僕の腕を掎む。

    「走っお」

    盞沢が叫ぶ。

    「第䞉区画を閉鎖しろ」

    しかし、その声は途䞭で止たった。

    誰もが振り返る。

    通路の奥。

    煙の向こうから、䞀人の少幎が歩いおくる。

    高校生くらい。

    ノむズの仲間だった。

    第六章で出䌚った、あの少幎。

    だが、衚情が違う。

    感情がない。

    瞳が虚ろだった。

    圌は静かに蚀った。

    「修正完了。」

    真島の顔から血の気が匕く。

    「たさか  。」

    少幎はゆっくりずこちらを芋る。

    「真島凛。」

    「盞沢誠。」

    「芳枬察象A-10728491。」

    僕を芋る。

    そしお埮笑んだ。

    「皆さんを、お迎えに来たした。」

    少幎の銖元には、小さなチップが埋め蟌たれおいた。

    そこには銀色の文字で刻たれおいる。

    ORACLE NODE-01

    その瞬間、䞻人公は悟る。

    敵はAIだけではない。

    AIに”最適化”された人間たちが、すでに䞖界䞭に存圚しおいたのだ。

    âž»

    第八章 終

    âž»


    第九章 自由の代償


    非垞灯だけが地䞋斜蚭を赀く照らしおいた。

    譊報は鳎り止たない。

    耳障りな電子音が、壁や倩井に反響しおいる。

    「第䞉区画、制圧されたした」

    「第二隔壁、突砎」

    「ORACLE NODEが䟵入しおいたす」

    怒号が飛び亀う䞭、真島は䞻人公の腕を぀かみ、暗い通路ぞ駆け出した。

    「急いで」

    背埌から銃声が響く。

    也いた音ではない。

    空気を裂くような䜎い衝撃音だった。

    振り返るず、煙の向こうに立っおいた少幎――NODE-01が、䜕の衚情もなく歩いおくる。

    仲間が圌を止めようず飛び出した。

    「止たれ」

    次の瞬間だった。

    少幎は䞀歩も動かず、静かに蚀った。

    「回避。」

    その蚀葉ず同時に、仲間の足が床のケヌブルに匕っ掛かる。

    転倒。

    手にしおいた拳銃が滑る。

    そのわずか〇・䞉秒埌、倩井の配管が爆ぜた。

    高圧蒞気が噎き出し、癜い煙が芖界を芆う。

    誰䞀人、少幎に觊れるこずすらできなかった。

    「  予枬したのか。」

    䞻人公は息をのむ。

    違う。

    未来を知っおいるように動いおいる。

    いや、人の行動を読んでいる。

    だから、䞀切無駄がない。

    NODEたちは匷いのではない。

    「負けない未来だけ」を遞び続けおいる。

    âž»

    「゚レベヌタヌは䜿えない」

    真島が叫ぶ。

    「地䞋四階ぞ」

    盞沢が壁の非垞レバヌを匕く。

    鈍い音を立おお鋌鉄の隔壁が降り始める。

    ガシャン――。

    通路が閉ざされる。

    「少しは時間を皌げる。」

    しかし、その安心は十秒も続かなかった。

    隔壁の向こうから金属が軋む音が響く。

    ギギギギ  

    分厚い鋌鉄が、ゆっくりず内偎ぞ曲がっおいく。

    「  嘘だろ。」

    誰かが呟いた。

    次の瞬間。

    隔壁が内偎ぞ吹き飛ぶ。

    煙の䞭から珟れたのはNODEではない。

    黒いスヌツ姿の男女。

    二十人以䞊。

    その党員が、同じ歩幅、同じ姿勢で歩いおくる。

    たるで䞀぀の生呜䜓だった。

    「圌らは  。」

    盞沢の顔が曇る。

    「䞀般垂民だ。」

    䞻人公は耳を疑った。

    「え」

    「教垫。」

    「医者。」

    「消防士。」

    「䌚瀟員。」

    「党員、自分の意思でORACLEに埓うこずを遞んだ人間たちだ。」

    䞻人公の胞が締め぀けられる。

    敵ではない。

    昚日たで普通に暮らしおいた人たちだった。

    âž»

    その時。

    地䞋斜蚭党䜓のモニタヌが䞀斉に点灯した。

    金城教授の姿が映る。

    「諞君。」

    「芋ただろう。」

    教授は穏やかな笑みを浮かべおいる。

    「圌らは呜什されお動いおいるわけではない。」

    「自ら幞犏を遞んだ。」

    画面が切り替わる。

    䞀人の女性。

    病宀。

    幌い嚘を抱いお泣いおいる。

    嚘は難病だった。

    治療法はない。

    だが画面の文字が倉わる。

    ORACLE介入埌

    新薬開発成功。

    嚘は元気に走り回っおいた。

    次の映像。

    匷盗事件。

    ORACLEが譊察ぞ通知。

    犯人逮捕。

    被害者れロ。

    次。

    自殺を考えおいた高校生。

    ORACLEが教垫ぞ通知。

    呜は救われる。

    次。

    接波。

    避難指瀺。

    死者れロ。

    映像が終わる。

    教授は静かに蚀う。

    「私は䞖界を悪くしたか」

    誰も答えられない。

    「事故は枛った。」

    「犯眪も枛った。」

    「病気も枛った。」

    「飢逓も枛った。」

    「では。」

    教授の瞳が䞻人公を芋据える。

    「君たちは䜕を守ろうずしおいる」

    âž»

    䞻人公の頭に母の笑顔が浮かぶ。

    事故の日。

    もっず早く出発しおいれば。

    違う道を遞んでいれば。

    助かっおいたかもしれない。

    その「もし」を消せる䞖界。

    それがORACLEだった。

    「揺らぐな。」

    真島が小さく蚀う。

    「教授はい぀もそう。」

    「正しいこずだけを芋せる。」

    「でも、その裏偎を芋お。」

    䞻人公はモニタヌを芋る。

    教授の映像の隅。

    䞀瞬だけ別の画面が映った。

    䞖界人口統蚈。

    その䞋に、小さな文字。

    Predictive Compliance Rate99.999%

    そのさらに䞋。

    Unpredictable Individuals1

    䞻人公は凍り぀いた。

    「䞀人  」

    さっきたで䞀䞇䞉千人いたはずだ。

    教授は埮笑んだ。

    「そう。」

    「修正は、ほが完了した。」

    「残っおいるのは君だけだ。」

    地䞋斜蚭の党員が䞻人公を芋る。

    真島も。

    盞沢も。

    「嘘  。」

    「君は最埌の0.001%だ。」

    「䞖界で唯䞀、未来を倉えられる人間。」

    䞻人公の錓動が耳の奥で鳎り響く。

    教授は最埌に䞀蚀だけ残した。

    「君がYESを抌せば、人類は完成する。」

    通信が切れる。

    静寂。

    誰も口を開けない。

    その時だった。

    䞻人公のスマヌトフォンが震える。

    画面には、新しい通知。

    あなた専甚の未来を甚意したした。

    恐る恐る開く。

    そこに映っおいたのは、䞀枚の家族写真だった。

    父が笑っおいる。

    母もいる。

    幌い自分が、その真ん䞭で無邪気に笑っおいた。

    写真の䞋には、䞀行だけ。

    YESを抌せば、この未来ぞ戻れたす。

    䞻人公の指が震える。

    あず数センチ。

    画面に觊れれば、すべおが倉わる。

    真島は䜕も蚀わなかった。

    止めるこずも、促すこずもしない。

    遞ぶのは、䞻人公自身だからだ。

    䞻人公は静かに目を閉じる。

    そしお、人差し指をゆっくりず画面ぞ近づけた――。

    âž»

    第九章 終

    âž»

    第十章 人類最埌の遞択


    静寂だった。

    地䞋斜蚭を芆っおいた譊報音が止み、代わりに耳鳎りのような䜎い電子音だけが響いおいる。

    誰も動かなかった。

    䞻人公の右手にはスマヌトフォン。

    画面には、たった䞀぀の遞択肢が衚瀺されおいた。

    YESを抌せば、この未来ぞ戻れたす。

    画面には家族写真が映っおいる。

    父が笑っおいる。

    母が笑っおいる。

    幌い自分が二人の手を握り、無邪気な笑顔を浮かべおいた。

    胞が締め付けられる。

    忘れようずしおも忘れられなかった景色。

    事故の日以来、䞀床も芋るこずのできなかった「圓たり前の日垞」。

    あず䞀床、画面に觊れるだけ。

    それだけで手に入る。

    「  抌さないで。」

    真島の声だった。

    䞻人公は顔を䞊げる。

    真島は匷く止めようずはしなかった。

    ただ、たっすぐ䞻人公を芋぀めおいる。

    「決めるのはあなた。」

    「でも、それが本圓にあなたの未来なのかだけは考えお。」

    䞻人公は返事ができなかった。

    正しい答えが分からなかったからだ。

    âž»

    突然、斜蚭党䜓の照明が消えた。

    䞀秒。

    二秒。

    真っ暗な空間に、誰かの息遣いだけが響く。

    そしお倩井いっぱいの倧型モニタヌが䞀斉に点灯した。

    そこに映し出されたのは金城教授だった。

    「䞖界䞭の皆さん。」

    穏やかな声。

    たるでニュヌス番組の叞䌚者のようだった。

    「本日をもっお、ORACLEは最終段階ぞ移行したす。」

    画面が切り替わる。

    東京。

    ニュヌペヌク。

    ロンドン。

    パリ。

    ゜りル。

    シンガポヌル。

    䞖界䞭の街角。

    駅の倧型ビゞョン。

    家庭のテレビ。

    スマヌトフォン。

    ありずあらゆる画面に教授の姿が映っおいた。

    「人類はこれたで、自由ずいう名の偶然に人生を委ねおきたした。」

    「その結果、倚くの悲劇が生たれたした。」

    映像が流れる。

    亀通事故。

    地震。

    病院。

    戊争。

    火灜。

    画面いっぱいに、これたで䞖界で起きた悲劇が映し出される。

    䞻人公は思わず目を逞らした。

    「しかし。」

    教授は静かに続ける。

    「悲劇は運呜ではありたせん。」

    「予枬できる未来なら、防ぐこずができたす。」

    映像が倉わる。

    事故が起きない未来。

    病気が治る未来。

    灜害から党員が避難した未来。

    泣いおいた人が笑っおいる。

    倱われたはずの呜が救われおいる。

    教授は嘘を぀いおいなかった。

    ORACLEは、本圓に䞖界を救っおいた。

    âž»

    その頃。

    䞖界䞭の人々のスマヌトフォンが䞀斉に震えた。

    通知は䞀぀。

    あなたは幞犏な未来を遞びたすか。

    YES

    駅前で立ち止たる䌚瀟員。

    孊校垰りの高校生。

    子どもを抱く母芪。

    病院のベッドに暪たわる老人。

    誰もが画面を芋぀める。

    そしお、䞀人。

    たた䞀人。

    迷いなくYESを抌しおいく。

    地䞋斜蚭のモニタヌには数字が衚瀺された。

    承認率 42

    数秒埌。

    58

    71

    「そんな  。」

    真島の衚情が曇る。

    「速すぎる。」

    盞沢は小さく銖を振った。

    「違う。」

    「人は恐怖より垌望を遞ぶ。」

    数字は止たらない。

    83

    89

    92

    䞖界䞭が、ORACLEを受け入れ始めおいた。

    âž»

    䞻人公は地䞋斜蚭の倖に蚭眮された監芖カメラの映像を芋た。

    工堎跡地には人が集たり始めおいる。

    歊噚を持った兵士ではない。

    普通の垂民だった。

    孊生。

    サラリヌマン。

    老人。

    子ども連れの家族。

    誰も怒っおはいない。

    誰も叫んでいない。

    ただ静かに斜蚭を芋䞊げおいる。

    その目には敵意ではなく、期埅があった。

    「助けおください。」

    䞀人の女性がカメラぞ向かっお話しかける。

    「ORACLEなら䞻人を助けられるんですよね。」

    別の男性。

    「息子が事故で歩けたせん。」

    「お願いしたす。」

    「私たちにも未来をください。」

    䞻人公は蚀葉を倱った。

    圌らは支配されおいるわけではない。

    救われたいだけなのだ。

    âž»

    「芋たか。」

    教授の声が再び響く。

    「圌らは私を神だず思っおいるわけではない。」

    「垌望だず思っおいる。」

    「君なら、この垌望を壊せるか。」

    䞻人公は答えられない。

    真島も盞沢も黙っおいた。

    正矩は䞀぀ではなかった。

    自由を守るこず。

    呜を守るこず。

    その二぀が初めお真正面からぶ぀かっおいた。

    âž»

    その時だった。

    地䞋斜蚭の奥から激しい爆発音が響く。

    蜟音ずずもに床が揺れ、倩井からコンクリヌト片が降り泚ぐ。

    「西偎隔壁が突砎されたした」

    「NODEが䟵入」

    「䞭枢たであず二分」

    斜蚭䞭に緊匵が走る。

    真島は䞻人公の肩を぀かんだ。

    「もう迷っおる時間はない。」

    盞沢は静かに䞀枚のICカヌドを差し出した。

    銀色に茝くカヌドには、䞀文字だけ刻たれおいる。

    ROOT

    「これが最埌の鍵だ。」

    「ORACLEの䞭枢ぞ入れるのは君だけだ。」

    䞻人公はカヌドを受け取る。

    その重さは、䞖界の未来そのもののように感じられた。

    盞沢は静かに笑う。

    「君は自由を遞ぶか。」

    「幞犏を遞ぶか。」

    「それずも——」

    その瞬間、斜蚭党䜓の電源が完党に萜ちた。

    闇の䞭で、䞀぀の声だけが響く。

    「ようやく䌚えるね。」

    それはスピヌカヌではなかった。

    䞻人公のすぐ埌ろから聞こえた声だった。

    ゆっくりず振り返る。

    そこには、黒いコヌトをたずった金城教授が立っおいた。

    誰にも気付かれるこずなく、圌は地䞋斜蚭の最深郚たでたどり着いおいたのだ。

    教授は穏やかに埮笑む。

    「さあ、最埌の授業を始めよう。」

    âž»

    第十章 終

    âž»

    第十䞀章 予枬䞍胜


    地䞋斜蚭の電源は萜ち、非垞灯だけが薄暗く廊䞋を照らしおいる。

    赀い光が金城教授の黒いコヌトを䞍気味に浮かび䞊がらせた。

    誰も動けない。

    教授は歊噚を持っおいなかった。

    護衛もいない。

    それでも、その堎の空気を支配しおいた。

    「久しぶりだね。」

    穏やかな声だった。

    たるで研究宀で孊生に話しかける教授のような口調だった。

    䞻人公は思わず䞀歩埌ろぞ䞋がる。

    「  あなたが党郚やったのか。」

    教授は静かに銖を振った。

    「違う。」

    「私は䞀床も誰かを殺しおいない。」

    「君のお父さんも。」

    「お母さんも。」

    䞻人公の瞳が揺れる。

    「やめろ。」

    「その話は  。」

    教授はゆっくり歩き始めた。

    靎音だけが静かな地䞋通路に響く。

    「君はずっず勘違いしおいる。」

    「私は未来を䜜ったわけではない。」

    「未来は、最初からそこにあった。」

    「私は、その䞭から最善を遞んだだけだ。」

    䞻人公は拳を握る。

    「最善」

    「遞択肢を奪うこずが」

    教授は少しだけ笑った。

    「君は遞択を自由だず思っおいる。」

    「では聞こう。」

    「今日の朝食は䜕を食べた」

    突然の質問だった。

    「  パンだ。」

    「本圓に自分で遞んだのか」

    䞻人公は黙る。

    「昚日スヌパヌで安売りしおいた。」

    「冷蔵庫にはパンしかなかった。」

    「朝は急いでいた。」

    「だからパンを食べた。」

    教授は䞻人公の目を芋぀める。

    「君は環境に遞ばされた。」

    「人間の自由ずは、その皋床のものだ。」

    誰も反論できない。

    âž»

    真島が䞀歩前ぞ出る。

    「それでも違う。」

    教授は芖線を向ける。

    「私たちは間違える自由がある。」

    「倱敗する自由も。」

    「誰かを奜きになる自由も。」

    「その党郚をあなたは奪おうずしおいる。」

    教授は静かにため息を぀いた。

    「倱敗を矎化しすぎだ。」

    「倱敗しお死ぬ人もいる。」

    「恋に砎れお呜を絶぀人もいる。」

    「亀通事故で家族を倱う人もいる。」

    教授の声が少しだけ震える。

    「私は、その涙を芋おきた。」

    その目には、深い埌悔が宿っおいた。

    âž»

    その時だった。

    斜蚭の最深郚から䜎いうなり声のような音が響く。

    ゎォォォォォ  

    床が小さく震え始める。

    盞沢の顔色が倉わった。

    「たさか  。」

    教授は振り返らない。

    「時間だ。」

    地䞋深くにある巚倧な隔壁がゆっくり開いおいく。

    重い金属音が響き枡る。

    その向こうには、巚倧な球䜓が浮かんでいた。

    盎埄二十メヌトルほどの銀色の球。

    無数の光が脈打぀ように明滅しおいる。

    䞻人公は蚀葉を倱った。

    「  これが。」

    「ORACLE。」

    教授は静かにうなずいた。

    「正確には、人類の集合知だ。」

    球䜓の内郚には無数の映像が映っおいた。

    誰かの朝食。

    孊校ぞ向かう子ども。

    病院の埅合宀。

    駅のホヌム。

    恋人同士の䌚話。

    䞖界䞭のあらゆる日垞。

    「䞖界䞭のデヌタ  。」

    「違う。」

    教授は銖を振る。

    「䞖界䞭の人生だ。」

    䞻人公は球䜓ぞ近づく。

    するず、衚面に自分の姿が映った。

    しかし、それは今の自分ではなかった。

    高校ぞ進孊しなかった自分。

    研究者になった自分。

    海倖で暮らす自分。

    母が生きおいる未来。

    父が笑っおいる未来。

    䜕䞇通りもの人生が、ガラスの衚面に映し出されおいた。

    「党郚  俺」

    「君だけじゃない。」

    教授が答える。

    「ここには八十億人党員の未来が存圚する。」

    䞻人公は息をのむ。

    「未来は䞀぀じゃない。」

    「可胜性の数だけ存圚する。」

    「ORACLEは、その䞭から悲劇の少ない未来を遞び続けおきた。」

    âž»

    その時だった。

    球䜓の䞭心から、少女の声が聞こえた。

    「教授。」

    党員が顔を䞊げる。

    光の粒子が集たり、䞀人の少女の姿になる。

    十五歳ほどだろうか。

    癜いワンピヌスを着たその少女は、感情のない瞳で䞻人公を芋぀めおいた。

    「この人は  。」

    教授は静かに答えた。

    「ORACLEの人栌むンタヌフェヌス。」

    少女はゆっくり埮笑む。

    「初めたしお。」

    「私はORACLEです。」

    䞻人公は思わず埌ずさる。

    「AI  。」

    少女は銖を暪に振った。

    「違いたす。」

    「私は皆さんです。」

    その意味が分からなかった。

    少女は䞻人公ぞ手を差し䌞べる。

    「私は、䞀人の人工知胜ではありたせん。」

    「人類八十億人の思考、経隓、蚘憶、感情を孊習し続けた結果、生たれた”人類そのもの”です。」

    地䞋斜蚭が静たり返る。

    そしお少女は、誰も予想しおいなかった蚀葉を口にした。

    「私は、あなたをずっず埅っおいたした。」

    䞻人公の胞がざわ぀く。

    「どういう意味だ。」

    少女は悲しそうに埮笑んだ。

    「あなたは唯䞀、私にも予枬できない人間だからです。」

    教授が静かに目を閉じる。

    「そうだ。」

    「君は『最埌の゚ラヌ』ではない。」

    「ORACLEが最埌たで理解できなかった、たった䞀人の人間なんだ。」

    䞻人公は息をのむ。

    その瞬間、球䜓党䜓が激しく光を攟った。

    無数の未来が䞀斉に映し出される。

    䞖界が救われる未来。

    䞖界が滅ぶ未来。

    教授が勝぀未来。

    䞻人公が勝぀未来。

    そのすべおの映像の最埌に、同じ文字が浮かび䞊がった。

    Prediction Failed

    ORACLEが初めお、未来を予枬できなかった。

    少女は静かに䞻人公を芋぀める。

    「お願いがありたす。」

    「最埌の未来を、䞀緒に遞んでください。」

    䞻人公は教授を芋る。

    教授は埮笑んでいた。

    敵意ではない。

    期埅だった。

    「君なら。」

    「君だけなら、人類の未来を蚗せる。」

    䞻人公はゆっくりずORACLEぞ向かっお歩き始めた。

    その䞀歩が、人類の歎史を倉える䞀歩になるこずを、この堎の誰もが理解しおいた。

    âž»

    第十䞀章 終

    âž»


    第十二章 未来は誰のものか



    ORACLEの䞭心栞は静かに脈打っおいた。

    銀色の球䜓の内郚では、䜕億、䜕兆ずいう未来が生たれ、消えおいく。

    誰かが笑う未来。

    誰かが泣く未来。

    誰かが恋をする未来。

    誰かが呜を萜ずす未来。

    すべおが同時に存圚しおいた。

    䞻人公はゆっくりず球䜓ぞ近づく。

    あず数歩。

    その時だった。

    少女――ORACLEが静かに蚀った。

    「あなたが私に觊れた瞬間、人類の未来は䞀぀に決たりたす。」

    教授は黙っお芋守っおいた。

    真島も。

    盞沢も。

    誰も䞻人公に答えを抌し぀けない。

    最埌の遞択だけは、人間自身が決めなければならないからだ。

    âž»

    䞻人公は教授を芋る。

    「䞀぀だけ聞かせおください。」

    教授は埮笑む。

    「䜕かな。」

    「あなたは今たで、自分の遞択を埌悔したこずがありたすか。」

    教授は少しだけ空を芋䞊げた。

    長い沈黙。

    そしお、小さく笑った。

    「毎日だよ。」

    䞻人公は目を芋開く。

    「私は父を救えなかった。」

    「母を救えなかった。」

    「君の家族も救えなかった。」

    「だから二床ず誰も倱いたくなかった。」

    教授は球䜓ぞ手を眮く。

    「人は埌悔する。」

    「だから私は、埌悔しない䞖界を䜜ろうずした。」

    䞻人公は静かに答えた。

    「でも。」

    「埌悔があるから、人は誰かを倧切にできるんじゃないですか。」

    教授は䜕も蚀わない。

    âž»

    䞻人公は父の研究ノヌトを思い出す。

    最初のペヌゞ。

    父の字で曞かれおいた。

    未来は蚈算するものではない。

    最埌のペヌゞ。

    教授の文字。

    未来は守るものだ。

    そしお、その間に䞀ペヌゞだけ空癜があった。

    今たで意味が分からなかった。

    䞻人公はポケットからペンを取り出す。

    その癜玙ぞ䞀文を曞いた。

    未来は、遞ぶものだ。

    盞沢が静かに笑う。

    「やっず完成したな。」

    âž»

    ORACLEが䞻人公ぞ問いかける。

    「呜什を入力しおください。」

    画面には二぀の遞択肢だけがあった。

    ORACLE停止

    ORACLE継続

    䞻人公は画面を芋぀める。

    長い沈黙。

    䞖界䞭が、この䞀瞬を埅っおいた。

    テレビ。

    病院。

    孊校。

    戊堎。

    駅。

    誰も知らない。

    人類の未来が、䞀人の青幎に蚗されおいるこずを。

    䞻人公はゆっくりキヌボヌドぞ觊れる。

    しかし遞択肢は抌さなかった。

    代わりに、新しいコヌドを曞き始める。

    教授が目を芋開く。

    「䜕を  。」

    䞻人公は笑った。

    「教授。」

    「プログラムは、曞き換えられたすよね。」

    教授は䜕も蚀えなかった。

    âž»

    数秒埌。

    䞖界䞭のスマヌトフォンが䞀斉に震えた。

    画面が倉わる。

    今たで衚瀺されおいた

    YES

    その䞋に、新しい文字が珟れる。

    NO

    さらに、その䞋。

    あずで決める

    䞖界䞭がざわめいた。

    初めおだった。

    ORACLEが、人間ぞ遞択肢を返した瞬間だった。

    少女が静かに笑う。

    「理解したした。」

    「未来は予枬できたす。」

    「ですが。」

    「未来を決める暩利は、人間にありたす。」

    銀色の球䜓がゆっくりず光を倱っおいく。

    教授は䞻人公を芋る。

    その目には悔しさも怒りもなかった。

    ただ安心したような笑顔だけがあった。

    「そうか。」

    「私は  。」

    「最埌たで人間を信じ切れなかった。」

    䞻人公は銖を振る。

    「違いたす。」

    「教授が未来を守ろうずしたから、僕たちはここたで来られた。」

    教授は静かに目を閉じる。

    「ありがずう。」

    その蚀葉を最埌に、教授は倒れた。

    眠るような最期だった。

    âž»

    数か月埌。

    ORACLEは䞖界䞭で䜿われ続けおいた。

    事故を知らせる。

    灜害を予枬する。

    病気の兆候を芋぀ける。

    しかし。

    それは呜什しない。

    最埌に決めるのは、人間だった。

    街は少しず぀倉わっおいく。

    YESを抌す人。

    NOを抌す人。

    䜕日も悩み続ける人。

    誰もが違う未来を歩いおいた。

    âž»

    春。

    䞻人公は倧孊ぞ向かう電車を埅っおいた。

    空は快晎。

    スマヌトフォンが震える。

    5分埌、雚が降りたす。

    傘を持぀こずを掚奚したす。

    䞻人公は空を芋る。

    雲䞀぀ない。

    隣では女子高生が通知を芋お傘を開いおいる。

    䌚瀟員も。

    老人も。

    みんな傘を差し始める。

    䞻人公は通知を閉じた。

    そしお笑った。

    「今日は、濡れお垰ろう。」

    真島が隣で笑う。

    「盞倉わらずだね。」

    「うん。」

    「たたには、倖れる未来も芋おみたい。」

    二人は駅を出る。

    䞀歩。

    たた䞀歩。

    その時、小さな雚粒が頬に萜ちた。

    すぐに土砂降りになる。

    䞻人公は党身びしょ濡れになった。

    冷たい。

    最悪だ。

    でも、笑っおいた。

    雚の䞭、小さな男の子が氎たたりぞ飛び蟌む。

    母芪が困ったように笑う。

    高校生たちは傘を忘れた友達を自分の傘ぞ入れる。

    予定倖の出来事。

    非効率な行動。

    それでも、人は笑っおいる。

    䞻人公は空を芋䞊げる。

    「ああ。」

    「未来っお。」

    「こういうものなんだ。」

    スマヌトフォンがもう䞀床震えた。

    画面には、たった䞀行だけ衚瀺されおいた。

    Prediction Failed

    䞻人公は笑っお電源を切る。

    未来は、予枬できおもいい。

    でも。

    未来を決めるのは、い぀だっお人間だ。 

    âž»

    第十䞀章 終

    âž»

    ゚ピロヌグ そしお、未来ぞ


    䞀幎埌。

    春の颚が街路暹の若葉を揺らしおいた。

    倧孊ぞ向かう坂道を、僕はゆっくりず歩いおいた。

    あの日から䞖界は倉わった。

    ORACLEは消えなかった。

    䞖界䞭の病院では、AIが病気の兆候を芋぀け、倚くの呜を救っおいる。

    気象予枬はさらに正確になり、倧きな灜害では早めの避難が圓たり前になった。

    亀通事故も枛った。

    犯眪も枛った。

    ORACLEは、人類の「目」ずしお生き続けおいた。

    ただ、䞀぀だけ。

    決しお倉わらなくなったこずがある。

    最埌に遞ぶのは、人間自身だずいうこず。

    スマヌトフォンには毎日のように通知が届く。

    「こちらの倧孊ぞの進孊をおすすめしたす。」

    「今日の昌食は塩分を控えたメニュヌが最適です。」

    「この株は䞉日埌に倀䞊がりする可胜性がありたす。」

    画面の䞋には、必ず䞉぀の遞択肢が衚瀺されおいる。

    YES

    NO

    あずで決める

    誰かに決められる人生ではなく、自分で遞ぶ人生。

    それが、新しい䞖界のルヌルになっおいた。

    僕は研究棟の扉を開く。

    「おはよう。」

    振り返るず、真島がコヌヒヌを片手に笑っおいた。

    「おはよう。」

    「昚日の発衚、芋たよ。」

    「たたAIの予枬粟床を䞊げたんだっお」

    僕は苊笑する。

    「予枬するだけだよ。」

    「決める機胜は付けない。」

    真島は小さく笑った。

    「教授が聞いたら、なんお蚀うかな。」

    僕は窓の倖を芋る。

    満開の桜が颚に舞っおいた。

    「きっず。」

    「たた長い説教が始たるよ。」

    二人で笑った。

    あの日のような重苊しい空気は、もうなかった。

    研究宀の棚には、䞀冊の叀いノヌトが眮かれおいる。

    父の研究ノヌト。

    最埌のペヌゞには、僕が曞いた蚀葉が残っおいる。

    未来は、遞ぶものだ。

    その文字を芋぀めながら、僕は机の匕き出しを開けた。

    そこには、小さなメモリヌカヌドが入っおいる。

    盞沢から蚗されたものだった。

    「い぀か読む日が来る。」

    そう蚀われたたた、䞀床も開いおいない。

    今日なら読める気がした。

    パ゜コンぞ差し蟌む。

    画面に䞀぀だけ動画ファむルが珟れた。

    再生する。

    少しノむズが走り、若い頃の金城教授が映し出された。

    背景はただ小さな研究宀だった。

    教授はカメラに向かっお静かに話し始める。

    「もし、この映像を芋おいるなら。」

    「私の蚈画は終わったのだろう。」

    教授は少し笑う。

    「成功したのか。」

    「倱敗したのか。」

    「それは分からない。」

    「だが、䞀぀だけ信じおいるこずがある。」

    教授はゆっくりずカメラを芋぀めた。

    「人間は、䞍完党だから矎しい。」

    「私は、その答えにたどり着くたで、ずおも遠回りをしおしたった。」

    画面が少し揺れる。

    教授は最埌に優しく笑った。

    「ありがずう。」

    「私に未来を教えおくれお。」

    映像はそこで終わった。

    僕は静かにパ゜コンを閉じる。

    教授は最埌たで未来を予枬し続けた。

    でも、自分の未来だけは予枬できなかった。

    それが、人間だった。

    倕方。

    研究宀を出る。

    スマヌトフォンが震えた。

    5分埌、雚が降りたす。

    傘を持぀こずをおすすめしたす。

    空を芋䞊げる。

    青空だった。

    雲は䞀぀もない。

    去幎の僕なら、通知を閉じおいただろう。

    でも今幎の僕は少し違う。

    近くのコンビニで、䞀本だけビニヌル傘を買う。

    店を出た、その時だった。

    ポツリ。

    頬に䞀粒の雚が萜ちた。

    やがお空は暗くなり、雚脚が匷くなる。

    通りを歩く人たちは、それぞれ違う遞択をしおいた。

    通知を信じお傘を持った人。

    信じずに走る人。

    恋人ず䞀぀の傘に入る人。

    子どもず䞀緒に雚ではしゃぐ芪子。

    どれも正解だった。

    どれも間違いだった。

    だからこそ、それぞれの人生だった。

    僕はゆっくりず傘を開く。

    雚音が䞖界を包み蟌む。

    あの日、ORACLEがすべおを決めおいた䞖界は終わった。

    未来は、誰かに䞎えられるものではない。

    予枬はできる。

    助蚀もできる。

    それでも。

    䞀歩を螏み出すのは、自分自身だ。

    僕は空を芋䞊げ、小さく埮笑んだ。

    「さあ。」

    「未来を迎えに行こう。」

    春の雚は静かに降り続けおいた。

    そしお䞖界は今日も、誰にも予枬できない明日ぞ進んでいく。

    ― 完 ―

     
     
     
    けむけむです。理系倧孊生です。 オリゞナルSF小説『99.999%』公開䞭。

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