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CJ ENM徹底解剖:なぜスタジオドラゴンは世界的なヒット作を連発できるのか?韓国エンタメ帝国のビジネスモデルと成功の秘密

    朝日けけ。

    いやあ、驚かされる。最近、韓国のドラマや映画の勢いがとんでもないことになっていると感じないだろうか。
    NetflixやAmazon Primeを開けば、韓国ドラマはランキングの常連。『パラサイト 半地下の家族』がアカデミー賞を獲ったかと思えば、『愛の不時着』や『イカゲーム』が世界的な社会現象になる。その他にも『私の夫と結婚して』『涙の女王』『ヴィンチェンツォ』、『Sweet Home -俺と世界の絶望-』『暴君シェフ』など今や、世界レベルのヒット作が目白押しである。

    「なんでこんなに面白い作品が次々生まれるんだろう?」 「どうしてこんなに、多くの人に見られているんだろう?」こういう素朴な疑問が湧いてくる。調べてみると、一つの会社にたどり着く。それが、CJ ENM(シージェイ・エンターテイメント)。

    このCJ ENM、年間で 約1兆ウォン(1,100億円規模、決算等からの推計) をコンテンツ制作に投じている。今回の記事では、このCJ ENMという帝国の正体を、その歴史、経営者の哲学、そしてヒット作を「偶然」ではなく「必然」として生み出す仕組みまで解剖していく。

    CJ帝国の誕生 ― すべては「砂糖」と「映画への愛」から始まった

    さて、このCJグループ。もともと何をやっていた会社かご存知だろうか。

    驚くことに、その原点は砂糖である。1953年、かの有名なサムスングループの製造業第1号として「第一製糖」が誕生した。それがどうして、世界を席巻するエンタメ帝国にまで育ったのか。その歴史自体が一本の映画のようにドラマチックなのだ。

    転機は1993年。CJがサムスンから独立した。さらに1995年、歴史を変える決断を下す。

    それが、スティーブン・スピルバーグらが立ち上げたばかりの映画スタジオ「ドリームワークスSKG」への 約3億ドル(当時レートで約3,000億円、CJ売上の約2割に相当) の巨額出資だった。まだエンタメ実績もない“元砂糖会社”が、会社の命運を賭けてハリウッドの新興スタジオに資金を投じたわけである。常識で考えれば無謀、むしろ狂気に映るだろう。

    しかし、この一見無茶な投資こそ、CJの未来を決定づける「神の一手」だった。狙いは目先の利益ではない。ハリウッドの映画制作ノウハウ、配給システム、そして最高峰クリエイターとの人脈。すべてを学ぶための、いわば 「世界で最も高価な授業料」 だったのだ。

    さらに同時期、CJは国内でも布石を打つ。1995年に音楽専門チャンネル「Mnet」を買収、1998年には韓国初のシネマコンプレックス 「CGV」 をオープン。これがまた地味ながら革命的で、一つの建物で複数作品を上映する近代的な映画館は当時ほとんど存在していなかった。

    「Mnet(エムネット)」はCJグループの傘下にある韓国の企業、CJ ENMが運営する韓国のエンターテイメントチャンネルです。CJ ENMはK-POPや韓国ドラマ、バラエティなど、韓国のコンテンツをグローバルに展開しており、Mnetはそのメディア部門の主力として、韓国の音楽番組「M COUNTDOWN」の生放送やK-POPアーティストのカムバックステージ、話題のサバイバル番組、バラエティ番組などをCS放送や動画配信サービス「Mnet Smart+」で提供しています。

    CGV(シー・ジェイ・シー・ジー・ヴィー)とは、大韓民国の映画館チェーンであり、CJグループが運営しています。最新設備を使った没入型上映や限定グッズの販売が特徴で、韓国国内に多数の映画館を展開し、国際的にも事業を行っています。

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    このCGVの登場は韓国の映画体験を一変させ、観客動員を爆発的に拡大させた。そして「自社で映画を作り、自社の映画館で上映する」――つまり垂直統合モデルの原型がここで誕生したのである。

    その土台の上に、韓国映画史を変える作品が生まれる。1999年、CJが配給した『シュリ』が『タイタニック』を抜いて国内歴代1位を記録。2000年には『JSA(共同警備区域)』がさらに記録を更新した。まさに、CJが韓国映画の歴史を作ってきたと言っていい。

    食品会社から始まった企業が、わずか数年で国内映画のトップランナーへ。ドラマのような転身を知るだけでも、CJという企業が持つ「普通じゃないDNA」を感じ取れるだろう。

    だがこれはまだ序章に過ぎない。なぜ彼らはここまで大胆な決断を下せたのか。その背景には、一人のキーパーソンの存在があった。

    帝国の設計者 ― イ・ミギョンという「情熱」

    なぜCJは、あれほど大胆な決断を下し、長期視点で文化に投資し続けられたのか。

    その答えは、一人の女性を抜きに語れない。彼女こそCJグループ副会長、イ・ミギョン(Miky Lee) 氏である。2020年、映画『パラサイト』がアカデミー作品賞を受賞した際、壇上で感動的なスピーチをした女性を覚えているだろうか。あの人物こそ、歴史的快挙の最大の功労者であり、CJのエンタメ事業をゼロから育て上げた「設計者」だった。

    彼女の経歴は華麗だ。サムスングループ創業者の孫娘として生まれ、ソウル大学を卒業後、ハーバード大学大学院で東アジア地域学を専攻、さらに中国・復旦大学で博士号まで取得。だが本質的な原動力は、学歴ではない。

    転機はハーバード在学中。1980年代後半、大学では日本語や中国語は人気科目なのに、韓国語を学ぶ学生はほとんどいないという現実に直面した。「韓国という国が世界で全く知られていない」その衝撃と悔しさが、彼女の胸に火を灯した。「韓国文化を世界に広める」という生涯の使命が芽生えた瞬間だったという。

    この情熱が、あのドリームワークスへの巨額出資という「常識外れ」の決断を後押しした。単なる投資ではなく、韓国文化の未来を賭けた“聖戦”の始まりだったのだ。

    さらに、彼女の強みはクリエイターへの向き合い方にある。スピルバーグから直接学んだ 「It’s a people business(結局は『人』のビジネスだ)」 という言葉を、誰よりも忠実に実践した。

    その最も象徴的な例が、ポン・ジュノ監督との関係だ。 今でこそ世界的巨匠だが、CJが彼と組み始めたのは2000年代初頭、まだ30代の駆け出しの頃。2003年の『殺人の追憶』以降、CJは彼のすべての作品に投資を続けてきた。商業的に成功するか分からない、作家性の強い作品であってもだ。

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    https://fansvoice.jp/2019/11/08/parasite-ja-sc-report/

    普通なら、一度でも興行的に失敗すれば次のチャンスはない。しかしCJは違った。イ・ミギョンは彼の才能を信じ、20年近くもの間「やりたい作品を撮れる環境」を提供し続けた。これは、才能を家族のように扱うという彼女の哲学そのものだった。

    そして、その信頼が結実したのが『パラサイト』である。アカデミー賞の受賞スピーチで、彼女が涙ながらに弟であるイ・ジェヒョン会長へ感謝を述べた後、最後にこう付け加えた。

    「そして何より、私たちの映画の監督でいてくれてありがとう、ポン・ジュノ」

    監督への最大限のリスペクトと愛情。この一言こそ、CJの創造性の源泉を示している。こんな経営者がいれば、クリエイターは命を懸けてでも応えたいと思うだろう。

    ヒット製造工場「スタジオドラゴン」の解剖

    イ・ミギョン副会長の熱い「情熱」が帝国の魂だとすれば、そのヒット作を「必然」として生み出す心臓部が、スタジオドラゴン(Studio Dragon) の存在である。

    「なぜCJは、あんなに次から次へとヒットドラマを生み出せるのか?」

    この疑問の直接的な答えを見ていこう。

    2016年、CJ ENMのドラマ事業部を分社化して設立されたスタジオドラゴンは、もはや単なる制作会社ではない。“ヒット製造工場” と呼ぶにふさわしいシステムを築き上げている。

    まず、その規模が桁違いだ。スタジオドラゴンは傘下に8つの専門制作スタジオを抱え、約260名規模のA級クリエイター(脚本家や監督)と契約している。日本のテレビ局全体を合わせても、これほど多くのトップクリエイターを抱えてはいないだろう。

    この圧倒的な「人材プール」があるからこそ、年間で25〜30本もの高品質なドラマを、まるで工場のライン生産のように量産し続けることができる。

    そして、彼らのビジネスモデルがまた革新的である。従来のテレビ局主導のドラマ制作は、放送枠やスポンサーの意向に縛られ、制作費も限られていた。だがスタジオドラゴンは違う。

    彼らは自ら企画を立ち上げ、潤沢な資金を投じて制作し、完成した作品をテレビ局やNetflixのようなOTTプラットフォームに「販売」する。つまり、制作の主導権を完全に自分たちで握っているのだ。これにより、クリエイターは目先の視聴率や制約に振り回されず、本当に作りたい作品に集中できる。その結果、クオリティは格段に上がる。

    OTT(オーティーティー)とは「**Over The Top(オーバー・ザ・トップ)」の略で、通信事業者のインフラを介さず、インターネット経由で直接ユーザーにコンテンツを配信するサービス全般を指します。NetflixやYouTubeなどの動画配信、Spotifyなどの音楽配信、さらにはSNSやメッセンジャーサービスもこれに含まれます。従来のテレビ放送やケーブルテレビに代わり、スマートデバイスやコネクテッドTVで利用され、コンテンツの視聴・配信方法や広告のあり方を大きく変えたサービスです。

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    このモデルを支えているのが、CJグループの圧倒的な資金力とグローバルな資金調達能力である。特に大きな転換点となったのが、2019年のNetflixとの戦略的パートナーシップだ。

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    https://www.cjenm.com/en/news/cj-enmstudio-dragon-announces-strategic-partnership-with-netflix/

    これは、3年間にわたりスタジオドラゴンが制作するオリジナルコンテンツをNetflixが独占的に世界配信する契約であり、Netflixがスタジオドラゴン株の約5%を取得する内容まで含まれていた。つまりスタジオドラゴンは、制作前から世界190カ国への配信網と安定的な制作資金を確保することができたわけである。この契約によって、より大胆で大規模な企画に挑戦できる環境が整った。

    『愛の不時着』や『ヴィンチェンツォ』、『Sweet Home -俺と世界の絶望-』といった世界的ヒット作は、このパートナーシップがあったからこそ実現したといっていい。

    さらに、彼らはAIの活用にも積極的だ。脚本開発システム「AI Script(社内ツール)」は、過去の膨大な脚本データや市場トレンドを分析し、「どういう物語がヒットしやすいか」を提案する。もちろんAIがストーリーを丸ごと生むわけではない。だが、人間のクリエイターが持つ「感性」と、AIが示す「データ」を組み合わせることで、ヒットの確率を科学的に高めているのだ。

    この徹底ぶりは少し怖いくらいだ。才能あるクリエイターを業界最高水準の待遇で集め、潤沢な資金と時間を与え、グローバル配信網を確保し、さらにはAIでヒット確率を高める。

    これがスタジオドラゴンという「ヒット製造工場」の正体である。もはやヒットは偶然ではなく、必然として設計されているのだ。

    CJコンテンツはなぜ「面白い」のか?

    さて、帝国の設計者と製造工場について見てきたが、やはり一番知りたいのは、「で、結局なぜCJの作るコンテンツはこんなに面白いのか?」という点だろう。

    その秘密は、

     
     
     
    エンタメをつくって、お金にするのが得意です。業界16年、漫画・ゲーム・キャラなどの事業を立ち上げ2025年に独立。自由になった今、じぶんの強みを「選ばれる商品と資産に育てる」構造と示唆をさらしています。雇わず受託なし。応援したい作家や会社と会い、世界を旅しながら暮らしています。

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