
なぜWebtoonは巨大市場なのに儲からないのか
5年ほど前、ソーシャルゲーム界隈の人たちが、口をそろえて同じ話をしていた。
Webtoon、勢いが尋常じゃないらしい。
韓国は何千億市場、中国は物量で攻め、日本の出版社も次々と企画を立ち上げているらしい。
その噂は、いつの間にか業界全体の空気として漂っていた。多くの企業やクリエイターが、新しい波の正体を探ろうとしていた。スマホ特化の縦スクロール、フルカラー、週刊更新という形式は、日本の漫画の常識を大きく外れていたからだ。
当時私は、事業立ち上げと日常業務に追われながら、ただその変化を横目で眺めていた。新しい何かが始まりつつあることは感じていたが、具体的な形はまだ掴めない。ただ、業界の空気が確かに変わり始めていることだけはわかった。
調べるほどに、別の違和感も浮かび上がってきた。巨大市場、成長産業、世界へ。そんな言葉が並ぶ一方で、実際の決算を見ると赤字が続いている。
トップ企業ですら黒字化できていない現実は、どうしても説明がつかなかった。
儲からない巨大市場の正体:Webtoonの収益構造を解剖
「もしかして、儲からない市場なのでは?」
巨大市場と成長産業という言葉が並ぶ一方で、決算は赤字が続いている。
この矛盾に触れたとき、その違和感は、単なる流行や業界トレンドでは片付かないものだと感じた。
主要Webtoon企業の決算から読み解く「赤字の理由」
主要Webtoon企業の決算を並べる
決算が確認できた4社を、役割ごとに並べる。
【制作スタジオ】
・ソラジマ:2024年3月期の最終損失は5,100万円。2025年3月期は7,400万円に広がった。
【日本のプラットフォーム】
・LINE Digital Frontier(LINEマンガ):2024年12月期は最終損失8億2,500万円。2025年12月期は売上912億円、最終利益42億8,100万円で黒字に転じた。LINEマンガはWebtoon以外の電子コミックも含む数字だ。
・NHN comico(comico):2024年12月期は最終損失3億200万円。2025年12月期は最終利益1億6,400万円で、6期続いた赤字を抜けた。
【WEBTOON本体】
・WEBTOON Entertainment(米国上場):2026年4〜6月期の売上は3億3,850万ドルで、前年同期より2.8%減った。純損失は1,460万ドル。1〜6月の純損失は2,340万ドルになる。
日本のプラットフォームは黒字に転じた。赤字が続くのは、ソラジマとWEBTOON本体だ。
巨大市場と言われながら、作り手の側に利益が残りにくいのはなぜか。決算書には赤字の額は出ていても、理由は出ていない。そこで、制作の現場を見にいく。
そこで、Webtoonという産業そのものを改めて見つめ直すことにした。
制作費は雪だるま式に膨らみ、分業は極端に細分化され、離脱率との戦いは秒単位で行われる。一本のヒットに依存する構造は強まり、制作現場には、日本の漫画制作とはまったく異なる思想が走っている。
この記事は、その見えにくい構造を整理し、言語化するために書いた。
なぜWebtoonは儲からないのか。
そして、この産業に日本はどう向き合うべきなのか。
ここから先にあるのは、耳障りのよい話ではない。
しかし、避けては通れない“本当の話”だ。