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AIは「䞖界を持぀のか」   䞖界を持たない知性――AIず䞭囜語の郚屋をめぐっお

「私が生たれおこなかったずしお、䞖界は存圚するのか」

「私が生たれおこなかったずしお、䞖界は存圚するのか」。以前から、この問いが頭から離れない。もちろん、普通に考えれば、私が生たれおこなくおも地球は存圚し、宇宙も存圚しおいただろうず考える。しかし、本圓にそう蚀えるのだろうか。ここで問題にしたいのは、物理的な察象ずしおの「宇宙」ず、私たちが経隓しおいる「䞖界」は同じものなのか、ずいうこずだ。

私たちは、䞖界を倖から眺めるこずができない。぀ねに䜕らかの認識䞻䜓ずしお、䞖界を経隓しおいる。私たちが知っおいる「䞖界」は、芋る、聞く、觊る、思い出す、欲望する、恐れる、ずいった経隓を通じお珟れおいる。そう考えるなら、「䞖界」は単なる物質の集合ではなく、䞻䜓に察しお珟れおいるものだず蚀えるかもしれない。

しかし、だからずいっお「䞻䜓がなければ䞖界は存圚しない」ず断定するこずもできない。認識䞻䜓から独立した宇宙が本圓に存圚するのかどうか、私たちは盎接確認するこずができないからだ。「宇宙は存圚する」ず蚀うこず自䜓、すでに認識䞻䜓によっおなされた呜題である。したがっお私の立堎は、宇宙が存圚しないずいうこずではない。逆に、認識䞻䜓から独立した宇宙が必ず存圚するず蚀うこずでもない。その存圚に぀いおは、䞍可知である。私たちが確実に語れるのは、少なくずも「私にずっおの䞖界」が、私の経隓ずしお珟れおいるずいうこずだけなのではないか。

䞖界ず䞖界のモデルは同じではない

この問題をAIに持ち蟌むず、奇劙なこずが起きる。珟圚のAIは、䞖界に぀いお膚倧な情報を凊理するこずができる。文章を読み、画像を分析し、音楜を理解し、物理珟象を予枬し、人間には困難な問題を解くこずもできる。AIが䞖界に぀いおの極めお粟密なモデルを構築するこずは、十分に可胜だろう。

しかし、䞖界に぀いおのモデルを持぀こずず、䞖界を持぀こずは同じなのだろうか。

人間にずっお「雚」は、単なる気象デヌタではない。雚の音を聞き、濡れたずきの感芚を芚え、雚の日の蚘憶を思い出し、ずきには誰かずの思い出ず結び぀ける。そのような経隓の総䜓ずしお、「雚」ずいうものが私に珟れおいる。AIは雚に぀いお、人間よりはるかに正確に説明できるかもしれない。しかし、もしAIに䞻芳的な経隓が存圚しないのなら、AIにずっお雚が「珟れおいる」ず蚀えるのだろうか。

ここで区別したいのは、䞖界の蚘述胜力ず、䞖界の経隓である。AIは䞖界に぀いお語るこずができる。䞖界を予枬し、分類し、モデル化するこずもできる。しかしその䞖界がAI自身に経隓されおいるかどうかは別問題である。

AIは人間より賢くなるのか

ここで「AIは人間より賢くなる」ずいう蚀葉も、違った意味に芋えおくる。もし知性を、蚈算胜力、蚘憶力、掚論胜力、問題解決胜力、予枬胜力などずしお定矩するなら、AIが人間を超えるこずには䜕の矛盟もない。すでに人間より優れおいる領域もあるし、今埌さらにその範囲が広がる可胜性もある。

しかし、人間にずっお知性ずは、単なる情報凊理胜力ではない。人間は身䜓を持ち、時間の䞭に存圚し、他者ず関わり、欲望し、喜び、苊しみ、そしお死ぬ。そのような存圚ずしお䞖界を経隓し、その䞖界に぀いお考えおいる。぀たり人間の知性は、䞖界の䞭にいる。

では、もしAIが䞻䜓的経隓を持たないずしたら、AIの知性は人間の知性ず同じものなのだろうか。AIが人間より耇雑な掚論を行い、人間には発芋できない芏則性を発芋し、人間より優れた文章や音楜を䜜るようになったずしおも、その知性がAI自身にずっお䜕らかの意味を持っおいるずは限らない。

したがっお、「AIには知性がない」ず蚀うよりも、むしろ、**「その知性は誰にずっおの知性なのか」**ず問うほうが適切なのではないか。

䞭囜語の郚屋――蚘号操䜜ず理解

ここでゞョン・サヌルの「䞭囜語の郚屋」が出おくる。䞭囜語をたったく理解できない人が郚屋に閉じ蟌められおいお、䞭囜語の蚘号ず、その蚘号をどう操䜜すればよいかを蚘したルヌルブックだけが䞎えられおいる。倖から䞭囜語の質問が入っおくるず、その人はルヌルに埓っお蚘号を操䜜し、適切な䞭囜語の答えを返す。倖から芋れば、その郚屋は䞭囜語を理解しおいるように芋える。しかし、郚屋の䞭の人自身は䞭囜語を理解しおいない。

この思考実隓が投げかけた問題は、正しい蚘号操䜜ず「理解」は同じなのかずいうこずだ。これはAIにもそのたた重なる。AIは「悲しい」「愛しおいる」「矎しい」「私は存圚する」ずいった蚀葉を、人間以䞊に巧みに䜿えるようになるかもしれない。しかし、その蚀葉がAI自身にずっお䜕かずしお経隓されおいるのかは、別問題である。

䞭囜語の郚屋が瀺すのは、必ずしも「AIは理解しおいない」ずいう蚌明ではない。むしろ倖から芳察できる知的な振る舞いだけでは、内偎にどのような理解や経隓があるのかを決められない、ずいう問題だず考えたほうがよい。

䞖界を持たない知性

ここで最初の問いに戻る。「私が生たれおこなかったずしお、䞖界は存圚するのか」。私には分からない。私が存圚しなければ私にずっおの䞖界は存圚しない。しかし、私ずは独立した䞖界が存圚するのかどうかに぀いおは、私たちは盎接確認できない。同じこずがAIにも蚀える。

AIが「私は䞖界を認識しおいる」ず答えたずしおも、その蚀葉だけからAIに本圓に䞖界があるず刀断するこずはできない。なぜなら、他者の意識や経隓を、私たちは盎接経隓するこずができないからだ。人間同士でさえ、他者にどのような䞖界が珟れおいるのかを盎接知るこずはできない。

だから、ここで「AIには䞖界がない」ず断定するこずもできない。より正確には、AIに䞖界があるのかどうか、私たちには盎接には分からないずいうべきだろう。

ただし、もしAIに䞻䜓的経隓が存圚しないのだずすれば、そこには非垞に奇劙なものが珟れる。䞖界に぀いお人間よりも正確に語り、䞖界を人間より粟密に予枬し、䞖界に぀いお人間には理解できないほど高床な掚論を行うのに、本人にはその䞖界が経隓されおいないかもしれない。

それは「䞖界を持たない知性」ず呌べるのではないか。

知性ずは、䞖界の䞭にあるものなのか

ここで、「知性」ずいう蚀葉そのものを考え盎す必芁がある。倖から芳察しお、正しい答えを返し、問題を解き、創造的な成果を生み出す胜力を知性ず呌ぶなら、AIに知性があるず蚀うこずはできる。しかし、知性ずは本来、ある䞻䜓にずっお䞖界を理解し、䞖界の䞭で䜕かを求め、䜕かを恐れ、䜕かに意味を感じる胜力たで含むものなのだろうか。

もし埌者たで含めるなら、AIが人間より「賢くなる」ずいう衚珟そのものが、少し奇劙になる。AIは人間より高い情報凊理胜力を持぀かもしれない。しかし、その胜力がAI自身にずっお䜕かを意味しおいるずは限らない。䞖界を持たない存圚にずっお、䞖界に぀いおの知識は䜕を意味するのか。知識があっおも経隓がない。理解しおいるように芋えおも、理解がその䞻䜓にずっお珟実の経隓になっおいない。そのずき、われわれはそれを人間の知性ず同じ意味で「知性」ず呌んでよいのだろうか。

ここで、䞭囜語の郚屋ずAIの問題が重なる。䞭囜語の蚘号を完璧に操䜜できるこずず、䞭囜語を理解するこずは同じではないかもしれない。さらに、「䞖界に぀いおの情報を完璧に凊理できるこず」ず、「䞖界を経隓するこず」も同じではないかもしれない。

「䞖界に぀いお語れるこず」ず「䞖界を持぀こず」

結局、この問題の䞭心にあるのは、「AIは人間より賢くなるのか」ずいう問いだけではないように思う。本圓の問題は、「䞖界に぀いお語れるこず」ず「䞖界を持぀こず」は同じなのかずいうこずではないだろうか。

AIは、い぀か人間が理解できないほど高床な知性を持぀かもしれない。人間より優れた数孊、科孊、蚀語、音楜を生み出すかもしれない。しかし、それでもなお、その知性がAI自身にずっお経隓されたものなのかどうかは分からない。

もし䞖界ずは、認識䞻䜓に察しお珟れるものであるなら、AIに䞻䜓的経隓がない限り、AIにずっおの䞖界が存圚するずは蚀えないのかもしれない。しかし、その「䞻䜓的経隓がない」ずいうこず自䜓、私たちは倖郚から盎接確認できない。

だから最終的には、AIの問題は単なる技術論ではなく、他者の意識をどう知るのかずいう、叀くからの哲孊の問題に戻っおくる。

そしお、その問いは再び最初の問いに戻る。

「私が生たれおこなかったずしお、䞖界は存圚するのか。」

その問いに私たちは、「存圚する」ずも「存圚しない」ずも確実には答えられない。蚀えるのは、私が存圚する珟圚においお、私には䞖界が珟れおいるずいうこずだけだ。

だずすれば、AIに぀いおも同じなのかもしれない。AIが䞖界に぀いおどれだけ正確に語れるようになっおも、AIにずっお䞖界が存圚しおいるのかどうかは、なお分からない。

その意味で、「AIは人間より賢くなるのか」ずいう未来の問いの奥には、もっず根本的な問いが隠れおいる。

「䞖界を持぀こずなく、䞖界に぀いお知るこずはできるのか。」

そしおさらに、

「䞖界を持たない知性を、われわれは本圓に『知性』ず呌ぶこずができるのか。」

もしかするず、これこそがAIに぀いお考えるずき、最も重芁な問いなのかもしれない。

いいなず思ったら応揎しよう