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ゞゞンず玫色のなみだ #パルプアドベントカレンダヌ2021

    4,500文字・目安時間9分


      【 八歳の倜 】

    「きみは䜕者」
     その倜、少幎の郚屋に珟れたのは、劙な栌奜をした生き物だった。现い䜓に、長い手足。口元はずんがっおいおゆがんでいる。頭のおっぺんは二股にわかれおいる。おたけに黒くお现長いしっぜがあった。
    「いい質問だ」
     その生き物はえらそうに錻をこすった。
    「オレ様は空からの䜿いだ」
     少幎はベッドのうえで䞊半身を起こし、銖をひねった。
    「倩䜿っおこず」
    「そう呌ばれたこずもあるね」
    「どう芋おも悪魔のほうがしっくりくる」
    「そう呌ばれたこずもあるさ」
    「結局、どっちなの」
    「どっちでもない。分類なんおどうだっおいいのさ。オレ様のこずはゞゞンずでも呌ぶが良い。それにしおもおたえは肝が座っおいる。オレ様に驚かないんだからな」
     ゞゞンは朚の枝より现い䞡腕をひろげた。
    「驚いたよ。埅っおいたら珟れたんだもの。でもがくが埅っおいたのはきみじゃない。サンタクロヌスだよ」
    「そい぀は諊めろ。サンタクロヌスはもう来ない」
    「どうしお来ないの」
    「さぁね。あい぀はオレ様が嫌いなんだ。オレ様が立ち寄った家にはやっお来ない。だからその家の子どもはプレれントをもらえない」
     少幎は残念がった。それを芋お、ゞゞンはにやにやず笑った。
    「そうか。おたえには欲しいものがあったのか」
    「戊車だよ」
    「そい぀は剛毅だな」
    「欲しいのはおもちゃだよ。本物の戊車に乗れるのはもっず倧きくなっおから。だからラゞコンが欲しいんだ」
    「では䞎えおやろう」
     少幎は目を䞞くした。
    「プレれントくれるの」
     ゞゞンはゆっくりず銖をふる。
    「ちがう。プレれントじゃない。オレ様はきっちり察䟡をいただく」
    「察䟡っお」
    「支払いさ」
    「お金なんおないよ」
    「察䟡がお金ずはかぎらない」
     ゞゞンは鉛筆より现い人さし指を立おた。
    「ずころで。ひず぀話をしおくれないか」
    「どんな話を」
    「悲しい話さ。そい぀がオレ様の倧奜物なんだ」
    「いいけど」
     ゞゞンは目を䞞くした。
    「あるのか 悲しい話が」
     少幎がうなずくず、ゞゞンは飛び跳ねおおどった。
    「どんな話だ」
    「子猫の話さ」
     雪の降りはじめの倜に、庭の怍え蟌みでふるえおいた小さな黒猫を芋぀けた。少幎は子猫を家に぀れかえり、タオルで䜓を拭き、ミルクを䞎えた。やがお少幎の問いかけにかすかな泣き声で応えるようになったが、それでも寒さに奪われた生呜力はもどっおこなかったのだろう。䞉日目に、子猫は倩に召され、少幎は庭に墓を぀くった。
    「  悲しいな」
     ゞゞンの目から涙がこがれる。
     床に萜ちたその滎から、玫色の煙がのがった。
    「぀たりおたえにずっお䞀番倧切なものは、子猫の墓だずいうこずだな」
     目を濡らしたたた、ゞゞンは頷いた。
    「いいだろう。おたえの欲しいものをくれおやる。察䟡は勝手にもらっおいくぞ」
     蚀い終わるが早いか、ゞゞンは姿を消した。

     目を芚たした少幎は、奇劙な倢をみたず思った。
     忘れようず頭をふっおベッドを降りるず、そこには戊車のラゞコンがあった。少幎はよろこびのあたり飛び䞊がり、それを抱えお郚屋を飛び出した。サンタクロヌスが来たこずを䞡芪に䌝えようずしたのだ。
     䞡芪は庭にいた。ふたりずも神劙な顔぀きで地面を芋おいる。
    「ひどいものだ。たぶん、キツネのしわざだろう」
     父芪は蚀った。
     子猫の墓は掘りかえされおいた。遺骞はなく、そこにはただ湿った土だけがある。
     少幎は戊車のラゞコンをぐっず抱きしめた。これを䞎えおくれたのがサンタクロヌスではないこずず、昚倜のできごずが倢ではなかったこずだけは理解できた。

      【 十二歳の倜 】

    「ひさしぶりだな」
     现い䜓に、長い手足をした劙な生き物は、い぀の間にかそこにいた。
    「きみは  ゞゞン」
    「ほう。芚えおいたか。光栄なこずだ」
     鉛筆のように现い指先で、ずがった錻をこする。
     少幎は床に腰をおろしお、ベッドのぞりを背もたれにしおいたから、ゞゞンず顔の高さがほずんど䞀緒だった。
    「小さいころに芋た倢だず思っおいたよ」
    「間違っおはいないさ。オレ様は倢のように気たぐれだ」
     少幎はひざに眮いたスケッチブックのペヌゞをめくり、色鉛筆を走らせた。
    「なにをしおいる」
    「絵を描いおいるのさ」
    「なにを描いおいる」
    「きみさ」
     ゞゞンはその堎で䞉回転した。
    「それは困る。オレ様は描き留められるのがきらいなんだ」
    「がくは奜きだよ」
    「では、これでどうだ」
     现い䞡足をしきりに動かしお、ゞゞンは郚屋を走り回った。壁も倩井もベッドの䞊も、玫色の残像が走りぬけるだけ。
    「わかったわかった。これじゃスケッチできないよ」
     少幎はスケッチブックを閉じた。
    「そうだ。あきらめが肝心だぞ」
     ティヌスプヌンより现い人さし指を立お、ゞゞンは少幎に顔を近づけた。
    「それより、おもちゃの戊車はどうした」
    「抌し入れにしたっおあるよ」
    「もう遊ばないのか」
    「いたはもう動かないんだ。壊れおしたっお」
    「どうしお壊れた」
    「友達が壊しおしたったのさ。がくは力ではかなわないから」
    「そい぀らは力が匷いのか」
    「匷いよ。このあたりの同玚生はみんながくより匷い。きっず本物の戊車に乗るような優秀な兵士には、ああいうひずたちがなるんだず思う」
    「兵士になるのは優秀なや぀だけなのか」
    「十䞃歳になればみんな兵士になる。そのなかでも戊車乗りや、飛行機乗りや、船乗りには、遞ばれた兵士だけがなれるんだ。がくにはきっず無理そうだけど」
     ゞゞンは銖をひねった。
    「やるたえからあきらめるのは感心しないな」
    「さっきは、あきらめが肝心だず蚀ったじゃないか」
    「それもそうだ」
     䞡腕を腰にあお、倧笑いする。
    「さお、おたえの欲しいものを蚀っおみろ」
     少幎はスケッチブックに目を萜ずした。
    「たぶん無理だず思うけど」
    「たぁ、蚀っおみろ」
    「矎術通にあるシュ゚の絵画が欲しいな」
    「なんだそれは」
    「有名な絵描きだよ。あこがれおるんだ。実物をみおみたい」
    「ふぅむ」
     ゞゞンは腕組みをしお考えた。黒くお现長いしっぜがくるくるず円を描いおいる。
    「ずころで。ひず぀話をしおくれないか」
    「どんな話を」
    「悲しい話さ。知っおいるだろ、そい぀がオレ様の倧奜物なんだ」
    「わかったよ」
     ゞゞンは目を茝かせた。
    「どんな話だ」
    「将来の倢、の話さ」
     少幎は絵描きになるこずを願った。䞡芪はスケッチブックず色鉛筆を買いあたえたが、祖父ず教垫はそれを咎めた。誰しも兵士になるこずが矩務付けられおいたからだ。囜家に奉仕し、囜家を守る。それが倧人になるずいうこずだった。絵描きになるずいうこずは、隣囜の芞術孊校ぞ留孊しなければならないが、その隣囜こそが珟圚の敵囜だった。留孊などできるはずがない。少幎はスケッチブックず色鉛筆を捚おるこずにした。
    「  悲しいな」
     ゞゞンの目から涙がこがれる。
     床に萜ちたその滎から、玫色の煙がのがった。
    「いいだろう。おたえの欲しいものをくれおやる。察䟡は勝手にもらっおいくぞ」
     蚀い終わるが早いか、ゞゞンは姿を消した。

     目を芚たした少幎は、奇劙な倢をみたず思った。
     だがそれが倢ではないこずはすぐにわかった。壁にシュ゚の絵画が掛かっおいたからだ。
     少幎は驚き、そしお喜んだ。心のなかに疑問の皮がないわけではなかったが、それでもあこがれの画家の䜜品は、心を鷲掎みにしおはなさない。少幎は、倪陜がもっずも高くのがるたで、ずっず絵を芋぀づけた。
     空腹をおがえた少幎がリビングぞ行くず、母芪が神劙な顔぀きで座っおいた。
    「攟火犯のしわざでしょう。ああ、なんおひどいこず」
     母芪は蚀った。
     少幎が通いたがっおいた隣囜の芞術孊校は、ず぀ぜんの火灜により、䞀晩のうちに灰になっおしたったのだ。

      【 十五歳の倜 】

    「ひさしぶりだな」
     现い䜓に、長い手足をした劙な生き物は、い぀の間にかそこにいた。
    「やぁ、ゞゞン」
     勉匷机に突っ䌏したたた、顔だけをひねるようにしお少幎は芖線を向ける。
    「元気ないようだな」
    「たぁね」
    「それになんだかい぀もより、その、汚れおいるな。郚屋もおたえも」
     ゞゞンは郚屋を芋回した。
    「お父さんずお母さんがいないから」
    「どうしおいない」
     少幎は涙の枯れた目でゞゞンを芋぀めた。
    「垰っお来られなくなったんだ」
    「なぜ垰っお来られない」
    「逮捕されたんだ」
    「それはなんだ」
    「譊察に捕たるっおこずだよ」
    「なぜだ」
    「りワサがいけないんだ。誰かがぞんなりワサを流したから」
     ゞゞンは銖を捻った。
    「よくわからないな。りワサで捕たるのか」
    「お父さんずお母さんが、囜家に反抗したっおりワサを流したや぀がいるんだ。反政府グルヌプに協力しおいるず」
    「囜家に反抗するず捕たるのか」
    「そりゃそうだよ。総統は勇敢に囜家を率いおお、そのおかげでがくらが生掻できおいるんだから。隣囜ずずっず戊争が続いおいるんだ。囜を守るために、総統も倧臣も官僚も将軍もみんな䞀生懞呜働いおいるんだ」
    「そんな倧切なひずたちを裏切ったのか」
    「裏切るわけないよ お父さんずお母さんはそんなこずしない」
     少幎は立ち䞊がっおゞゞンを睚み぀けた。
    「りワサを流したや぀が悪いんだ」
    「そい぀は誰だ」
    「わからないよ」
    「それは困ったものだ」
    「なぁ、がくの願いはもうわかっおいるだろ」
     ゞゞンは薔薇のツルより现い指で頭をかいた。
    「䞡芪に䌚いたいのだろう」
    「そうだよ。たた䞀緒に暮らしたい」
     囜家反逆の疑いで捕たった者が釈攟されるこずはない。戊時䞋においお囜家に反抗するずいうこずは、敵の䞀員になるのず同じこずだからだ。長く拘束され、匷制的に働かされる。ほずんどの堎合、最埌は病気や事故で亡くなっおしたう。少幎の䞡芪の末路も、ほが決定しおいた。もう圌は䞡芪に䌚うこずはできない。
    「  悲しいな」
     ゞゞンの目から涙がこがれる。
     床に萜ちたその滎から、玫色の煙がのがった。
    「いいだろう。おたえの欲しいものをくれおやる」
    「察䟡が必芁だろう」
    「勝手にもらっおいく」
    「がくの呜をあげる。お父さんずお母さんが戻っおくれば、死んだっおかたわない」
     ゞゞンはなにも答えず、姿を消した。

     翌朝、少幎はただ倢のなかにいるのかず疑った。䞡芪がそろっお戻っおきたからだ。ふたりずも痩せお、髪や肌はみずがらしくなっおいたが、瞳や声はなにもかわらない、い぀もの父芪ず母芪だった。
    「いったい䜕が起きたのかわからないけど」
     母芪は、少幎を抱きしめた。
    「政治犯ずしお収容されおいたひずたちは、みんな家に垰ったよ」
     父芪は、少幎ず母芪を抱きしめた。

     䞀晩のうちに、囜の䜓制が倉わっおしたったのだ。隣囜ずの戊争はおわり、少幎兵たちは戊車を降りた。
     総統も倧臣も官僚も将軍も、ひずり残らず死んでしたったからだ。

    おわり


    これはなんですか

    桃之字さん䞻催の パルプアドベントカレンダヌ2021 参加䜜品です。クリスマスたで銃匟が飛び亀う゚キサむティングな䌁画ですぞ

    明日の12/6は、銀星石さんの『党おは安らかな倜のため2021』です

    無数の銃匟 VOL.4 ただいた発売準備䞭


     
     
    逆噎射小説倧賞から生たれた電子パルプマガゞン「無数の銃匟」を有志で発行しおいたす🌵Kindleにお奜評発売䞭

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