
秘密の二人
秘密の二人
あるところに一人の男
あるところに一人の女
ふたりは偶然出会い
一目で惹かれ
その日のうちに結ばれた
男と女 ふたりで生活をはじめた
ふたりは幸せだったけど
他の人
大勢が集まる場所では他人のフリをした
男と女は
二人だけの秘密に心がおどり
二人だけの会話をし
二人だけの時間を持つ
誰も知らない二人の秘密を
心と身体が幾重にも重なり
ふたりの心と身体はらせん状に交わり
誰にも判らぬだろう秘密はほどけて見えた
あなたたちの心と身体、魂が
わたしたちは二人で一人だと言っている
なんでもない顔をして
あなた方が隠していることは、すべて見えているのよ
わたしがそう言い放つと
二人は、夜の帳へ消え、二度と、その姿見ることはなかった
あの男と女はどこへ行ったのか
彼らではない
男と女ならここにもいる
わたしのそばに、離れたくても尚離れがたい男が横たわって
わたしを見ている
大勢の人がいる場所にわたしを連れて行き
わたしと彼は他人ではいられない
安心と幸せが心と身体中に満ちる
こころと身体は幾重にも重なる
そして、約束する
あなたをわたしは愛する
わたしはあなたを愛する
言葉を唱えて、くすり指にまじないを施す
男は女を愛していた
女は男を愛している
君のこころの内がわたしにはわからない
あなたのこころの内がわたしはわからない
声にならない声
言葉にしてはいけない つぶやき
わたしたちは
男と女だ
男と女でなければ
あなたのことをもっと愛せただろうか
こころのないあなたを、今でも好きなのはわたしだけ
あの女は夜の帳に消えた
男の身体はここにあるけれど
こころは こころは どこにもない
横たわってわたしをみている
愛したあなたは
どうして、どうして、どうして、どうして
誓いもまじないも
わたし達を縛り、結びつきを強くするものではなかったの?
ある朝
男は女のためにコーヒーを淹れる
どうしたの?
どうもしない
君がコーヒーが好きだから
朝はこうしてふたりで過ごそう
そうね
そうしましょう
こころと身体は幾重にも重ならない
言葉にならない感情が身体中に満ちる
わたし
あなたが秘密にしていたこと
知っていたのよ
声にならない声
言葉にできない事実
言葉にしてくれないから
話してくれないと
わたしはこれからどうしたらいいの?
あなたの秘密はみんな知っているのよ
声と香りのあいだで、
静かな朝を綴っています。
啓恵