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🌫️ 『時の輪のネコ勇者レオ』第2話・後編

「鏡の勇者、記憶の戦い」

驚くレオ そこには自分とそっくりな
「何者か」が映っていた

鏡から抜け出た“もうひとりのぼく”が、迫ってくる。

その剣は、ぼくのものとそっくりだった。
けれど、振り下ろされる一撃には、ためらいも迷いもなかった。

ガキン——!

ぼくは反射的に剣を構え、受け止めていた。
腕にしびれるような衝撃が走る。

「なぜ……戦わなきゃならないんだ!」

叫んでも、“ぼく”は答えなかった。

その顔には、感情がなかった。
ただ、使命を果たすように、機械のように剣を振るってくる。

疑問を抱きながら戦うレオ

二撃目、三撃目——
そのたびに、足元が揺らぎそうになる。

だけど、ぼくもまた、立っていた。

怖くても、逃げたくても、剣を下ろせなかった。

「ぼくは……知りたい。だから——負けない!」

戸惑いはずっと隠せない

激しい剣戟が、回廊の記憶の粒を震わせた。

ひとつひとつの記憶が、ぼくたちのまわりで弾け、きらめく。

ある記憶では、誰かが泣いていた。
ある記憶では、誰かが戦っていた。

そしてその中に、幼い“ぼく”の姿もあった。

小さな街。
笑っていた仲間たち。
誰かに、手を伸ばしていた“ぼく”。

そのすべてが、忘れてしまった“日常”だった。

「これは……ぼくの、過去?」

よそ見した一瞬、刃が肩をかすめた。

熱い痛みが走る。

でも、それ以上に、胸の奥が締めつけられていた。

なぜ、こんなに大切なものを忘れていたのか。
なぜ、こんな記憶を手放してしまったのか。

“鏡のぼく”は容赦なく、また剣を振るってくる。

様々な思いに揺れながら剣を振るう

もう、考える時間はない。

ぼくは息を整え、静かに剣を構え直した。

「わかってる。お前は……ぼくだ。
 でも、“今のぼく”は——負けない」

そう言ったとき、自分の剣がふっと光を放った。

それは、リィナが掲げる杖と、同じ色の光。

“記憶とつながる意志”。

その光が、ぼくを包んだ。

⸻

ふたたび、剣と剣がぶつかる。

音が、空間を裂く。

ふたりの“レオ”の影が、記憶の霧の中で交錯する。

けれど、その刹那——

ぼくは気づいた。

“あいつ”は、戦いながらも、ほんの少しだけ手加減していた。

剣の軌道。踏み込みの角度。目線の揺らぎ。

まるで、ぼくがぼくに“答え”を渡すために、戦っているような。

「……そうか。お前は、敵なんかじゃない」

気づいた瞬間、ぼくは剣を下ろした。

刃が、空を切る。

“もうひとりのぼく”が、静かに足を止めた。

そして——その瞳に、初めて“光”が宿った。

「ようやく……たどり着いたな」

声が、ぼくの中に響く。

「真実は、“倒す”ものじゃない。“向き合う”ものだ」

その言葉と共に、影のレオは、霧に溶けて消えていった。


残されたぼくは、剣を静かに下ろした。

手が震えていた。

でも、心の奥は、不思議なほどに静かだった。

リィナが、駆け寄ってくる。

「レオ……!」

彼女の顔には、安堵と涙が混じっていた。

「……見てたの?」

「ええ。最後まで」

ぼくは小さく笑ってみせた。

「勝ったわけじゃない。
 でも……少しだけ、自分を受け入れられた気がする」

リィナが、そっとぼくの肩に手を添えた。

「それで、いいの。
 “真実”にたどり着くって、きっとそういうことだから」

⸻

すると、空間の奥に、ふたたび光が現れた。

今度は、ぼくが初めて図書館に入ったときよりも、ずっと強い光。

「……扉が、開いた」

そう、リィナが呟いた。

目の前に現れたのは、“第三の扉”。

その中心には、紋章が刻まれていた。

時の輪——ではなかった。

それは、“重なり合う二つの時”。

「これは……?」

「“統合の扉”。未来と過去の交差点。
 ここから先は、世界そのものの記憶に触れる場所」

リィナの声が、かすかに震えていた。

「でも、今のあなたなら——きっと、進める」

「一緒に来てくれる?」

そう尋ねると、彼女は微笑んで頷いた。

「ええ。私は、あなたと共に歩くって、決めたから」

⸻

ぼくたちは、第三の扉の前に立った。

もう、怖くなかった。

むしろ、早く知りたかった。

自分が誰で、なぜ選ばれ、そして、何をすべきなのか。

——そして、何を守りたいのか。

扉が、静かに開く。

白い光が、ふたりを包んだ。

壁を乗り越え、その先へ

その先には、まだ名も知らぬ世界と、まだ見ぬ記憶が待っていた。

でも、ぼくは今、それを迎える準備ができている。

リィナが隣にいる限り、どんな記憶にも向き合える気がした。

⸻

こうして、“勇者レオ”の物語は、次なる扉へと進んだ。

だが、まだ気づいてはいなかった。

この“記憶の奥”に潜む真実が——

時の輪さえ欺く、深き偽りの歴史であることを。

⸻

《▶ 続く:第3話『灰の城と、時計仕掛けの王』》

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