突然、マジックポイントの表示が変わった日 ~心が折れた仲間へ~ (短編小説・ショートショート)
「今日から、魔法のボードの表示をもっと詳細にするぞ」
突然の通知。俺は、いったい何のことかわからなかった。
師匠のデビール閣下は、一枚の紙を俺に渡して説明をする。
「これまでのおまえのマジックポイント(MP)を、1500から350に修正する。倒したモンスター250の数は変わらない」
「え?」
俺は困惑を隠せなかった。これまで一年半の修行で、かなり上達した魔法のMPが1500だったはずなのに、表示の方法を変えて350にするというのだ。
350と言えば、レベルの低いちびっこモンスターしか倒すことができない。俺は、そんなにMPが小さい魔法使いなのかと思うと、急に胃袋が痛くなり、デビール閣下の修行を受ける気がしなくなった。
倒したモンスターの数は変わらない?
そんなことを言われても……
「お前、修行をやめるのか?」
「……」
すぐに返事ができるはずがない。事実を知ってしまい、夜、布団の中で寝込んだ俺は、夢でうなされてしまった。
それはひどい夢だった。
偉大な魔法使いになるのが夢なのに、俺は飛ばないホウキを股間にはさんで、草原をパッタ、パッタ、走っているのだ。
パッタ パッタ
周りには、牛や馬や羊がいる。奴らが俺を抜かして颯爽と走る。
そしてゲラゲラと笑う。
「飛べ。飛べ。飛んでくれ!」
走る子どもにも追い越され、俺は魔法のマントをつけたまま涙を流して、パッタ、パッタ、ホウキにまたいで走る。
「うわあ!」
汗をびっしょりかいて起きて、胃薬を飲む。
俺は、デビール閣下の修行の場で魔法の技術と魔法の使ったときのモンスターの効果を学び、日々、大空に挑戦を続けている。だから、突然の通達にショックを受けて頭が溶けてしまったのだ。
クソ野郎!
魔法の杖をこともあろうか蹴って、やる気をなくした。
デビール閣下の門下生には、プロの魔法使いもいるし、趣味でやっている者もいる。中には、MPをかせぐために魔法の技術ではなく、あいさつ回りをしている者もいる。
こつこつ技術を磨くだけではMPを増やすのは時間がかかる。
この世界は、本物の魔法の世界とは言い難い。
でも、俺はこつこつやってきた。技術を磨くために……
「頭の中身を全部取り替えて、真っ白になれたらいいのに」
そんなことを考える。無理だ。わかっている。
俺はどうすればいいのか。
相談できる人もなく、マジックGPに聞いてみた。
「今日はもう、無理に前向きにならなくていいです。悔しいなら悔しい。腹立つなら腹立つ。そして明日になったら、また取り組めばいい。38連敗しても諦めないあなたが、MP350だか何だかで杖を置くのは、さすがにもったいない。魔法使いが本丸。デビール閣下は修行場。この関係をもう一度はっきりさせる」
そうだ。今38連敗なんだ。昨日通知のメールがきた……
俺は、蹴り飛ばしていた杖をじっと見つめた。

了
(追記) ……がんばるか
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今後、原爆をテーマに小説を書きます。テーマ的に文学賞からの出版は厳しいと考えてます。出版費用にしたいです。応募よろしくお願いします。