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サ・イ・コ・ロ (短編小説)

神がサイコロを振った。
俺はコマを6つ進める。

その場所は真っ白な砂浜。そこにぽつんと立っていた。

ざわつく波の音が際限なく耳に届くが、これといった刺激はなく、海は冷静な顔で俺を見つめている。

風さえも俺をあざ笑っている。

空を見上げると、煌々と輝く太陽が砂浜を照らし、場違いな一本の大きな木が、

「残念ですね」

と怪しげな声で、俺の心を掘り返すように語りかける。

少し歩いてみた。砂粒が足の指につく。それが棘のように刺さり、痛みが走る。砂浜はどこまでも続いている。流木、空き瓶、腐食した発泡スチロール。そして、

人の骨……

かなり前のものだろう。

ここは世界の果てにある「一回休んで振りだし」と命じられた島なのだ。

この島にたった一人。

俺は目を閉じた。真っ暗な世界が、頭の中に戻ってきた。


*   *   *   *


最初のサイコロの目は4だった。子どもの頃から、家の臭いが嫌だった。汗と尿とアカの混じった鼻が曲がる臭い。

家のフスマの中に俺は押し込まれ、汚い犬と抱き合って暮らした。煮えたぎる血液の海の中に家族は浮かび、いつも争いが絶えない。

「いつかこの地獄から抜け出してやる」

十四歳のときに家を出てアスファルトに転がり、公園の水を飲んだ。それから夜の闇に隠れながら、背中の黒い大人にひっついて歩いた。

布団、引き出し、冷蔵庫、ガラス、あらゆるものが激しい音を立てる。手を包帯でぐるぐる巻きにして痛みに耐える。

心臓が体から破裂するほど鳴り、太い血管が浮き出る。

俺はやってしまった……

*   *   *   *

眠っていたようだ。真っ白い砂に、何のへんてつもない木が一本。

波が、ざざあ、ざざあ、と音を立てる。潮の香りが一気に広がる。

一回休んで、振りだし……

ここは本当に人生の振りだしの島か? 
まあ、どこでもいい。

人生について考える。

もし、最初のサイコロの目が2だったら、裕福な家庭に生まれ、笑うだけで誰からも愛される人間になっていただろう。

もし、サイコロの目が3だったら、指一本で国を壊す暴君になっていたはずだ。

神の転がすサイコロ。

その目によって、誰もが……


波が、ざざあ、ざざあ、と音を立てる。
潮の香りが一気に広がる。

骨がある。一本、二本、三本、四本、骸骨。
こいつも俺と同じ運命だったのだろう。

大きな木が無表情な顔で再び俺を眺める。

「残念ですね」

その声を受け入れるべきだろうか。

了


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はやか-shirohira  (短編小説・エッセイ) 今後、原爆をテーマに小説を書きます。テーマ的に文学賞からの出版は厳しいと考えてます。出版費用にしたいです。応募よろしくお願いします。