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49歳からの大逆転:崩壊した現場を「プロの仕組みと教え方」で再生させた品証課長のリアル実践知⑤(最終回)〜審査を武器にした他責破壊と、敵が相棒に変わる瞬間〜

    あえて自ら品証の不適合を買いにいき、手に入れた絶対的な大義名分。私は間髪入れずに、会社共通の公式ルールである「2次文書(規定)」の改定へと打って出た。
    設計に二度とサボらせないための新ルール。「サービス展開するにあたり、計画・実際の展開、その都度すべて品証のレビューを受けること」。この包囲網を組み込んだとき、私が仕掛けた「他責の破壊」は、現場の根深い病巣を容赦なく炙り出した。
    剥ぎ取られた「現場の嘘」
    この会社には、長年誰も治せなかった深刻な病気があった。
    設計から指示が下りてきたとき、生産現場は「設計に言われたから」という言い訳のために、できもしないことをその場しのぎで「できる」と嘘をつき、実際にはやってもいない。不具合が出れば「設計のせい」と盾にする。それが現場のリアルだった。
    私が課長として入り、耳にタコができるほど指導し続けたのは「できないことはできないと言え。やると言ったことは絶対にやれ」という至極真っ当なプロの規律だ。2次文書を改定し、品証の目が計画段階から光るようになった以上、もう「やったフリ」は通用しない。追い詰められた生産現場が、ついに白旗を上げた。「実際は(やってないし)できないわ」と。
    設計部長との「バチバチの喧嘩」と、その先の「悪巧み」
    これに激怒した設計部長に対し、私も真っ向から割って入った。「だったらどうするんだ!」と。オフィスに怒号が飛び交う喧嘩は、全員が嘘をつけなくなり、本気でものづくりに向き合わざるを得なくなった必然の衝突だった。
    しかし、ドラマはそこからだ。喧嘩の後、ある重大トラブルが起きた。営業が「環境のせい」と逃げようとした際、私は定例会を待たずに設計部長の元へ直談判に行った。「犯人探しじゃない。本当の原因を教えてくれ」と。
    あの喧嘩をくぐり抜けた部長は違った。定例会本番、彼は公の場で「unityさんと今まさに動いている」と私とスクラムを組んだ。さらに、わざわざ1階の品証現場へ下りてきた彼は、現物を前にニヤリと笑った。
    「根本的に直すならこうしよう。……とはいえ、設計変更完了までは、一旦こう説明して逃げとくか!(笑)」
    「いいですね、それでいきましょう!(笑)」
    かつての敵と、プロ同士の「大人の悪巧み」が始まった瞬間だった。彼が自ら立ち上げた重要グループには、現場のプロたちだけが集められた。そこに事なかれ主義のボスが入り込む隙間なんてない。そんな小さな連帯が、今、組織を確実に動かしている。
    「品証部」がないという、致命的な逆境の中で
    実は、この会社には独立した「品質保証部」が存在しない。品証は一階層下の「課」にすぎず、他部門のパワーバランスに押し潰される歪んだ構造だ。組織の力で守られないなら、仕組み(法制度)で守るしかない。
    私はISO審査をハックし、みずから泥を被って大義名分をもぎ取り、会社共通の「2次文書」を力づくで書き換えた。どれだけ上の人間が丸投げしようが、結果を出せばルールは実績として残る。だが、私が本当に守りたかったのは自分の手柄ではない。
    プロとして、若い子たちの未来を残す
    新参者の私を信じてついてきてくれた人たち、そして未来の若者たちが、独立した「部」すらない理不尽な環境で振り回されず、真っ直ぐものづくりに向き合える環境を残す。そのために、まずは私自身が退路を断ち、品質の中に生きるプロとして、命懸けで本物のルールを作っている。
    今、正直に言って怖い。設計部長を本気にさせ、全社を巻き込む騒ぎにした。私自身の逃げ道も完全に消え去った。だが、その「逃げ道のない背中」を、ずっと事なかれ主義に染まっていた部下たちが見ている。彼らの中にも、今、明らかな変化がある。
    理不尽な環境を恨むエネルギーがあるなら、すべてを巨大な変革のガソリンに変えていく。
    49歳からの大逆転劇。
    私の戦いは、この再建した現場のスクラムと共に、これからも続いていく。
    (第5話・完)

    #創作大賞2026 #ビジネス部門

     
     
    大手商用車メーカーの品質保証現場で30年海外工場の監査等を経験。49歳で電子機器メーカーの品質保証課長へ。 借金、貯金ゼロ、子供の受験……厳しい現実の中で、あえて「センチュリー」のオーナーになる夢を追っています。現場叩き上げの知恵と、再構築の記録を綴ります。

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