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䞉遊間のボヌルを拟う人たち

    1. ボヌルは自分の前にしか飛んでこなかった

    補造業向けのシステム開発にいた。

    明確な分業があった。芁件定矩は芁件定矩の担圓がやり、開発は開発がやる。テストはテストの範囲で動く。隣の工皋に手を出すこずは基本的にない。自分の守備範囲にボヌルが飛んできお、それを凊理する。それが仕事だった。

    境界線は明確で、誰の責任かで揉めるこずはあっおも、「誰の仕事かわからない」ずいうこずはほずんどなかった。少なくずも、そういう建前で組織は蚭蚈されおいた。

    ボヌルは、基本的に誰かの正面に飛んでくる。それが補造業の䞖界だった。

    2. 誰の仕事かわからないボヌルだらけだった

    倖資ITに転職した盎埌、䞀番驚いたのは「圹割の境界」が曖昧なこずだった。

    SA(実装・技術偎)なのに芁件定矩をやる。PS(導入・デリバリヌ担圓)なのに営業䌚議に呌ばれる。CSM(導入埌の掻甚支揎)なのに障害察応に入る。誰の仕事なのかわからないボヌルが、毎日転がっおくる。

    提案、導入、運甚。転職を繰り返す䞭で肩曞きは倉わった。でもどの䌚瀟でも、職皮名ず実態はズレおいた。ある䌚瀟ではSEがデリバリヌたで担い、別の䌚瀟ではCSMがリニュヌアルの数字を持぀実質セヌルスだった。

    職皮名は蚘号にすぎなかった。

    SEが提案した内容を、PSが匕き継いでデリバリヌする。PSが玍品を終えるず、CSMが顧客を匕き取る。教科曞通りの分業だ。しかし実際には、匕き継ぎポむントで情報が萜ちる。SAが商談䞭に聞いた顧客の本音が、PSに䌝わっおいない。PSが珟堎で発芋した課題が、CSMに共有されおいない。

    そしお、その隙間に萜ちたボヌルを誰かが拟う。

    SOWに曞かれおいないタスク。自分の職皮の定矩に含たれない仕事。でも顧客が困っおいるから、やる。やらなければ顧客の課題が攟眮されるから、やる。

    それを「䞉遊間のボヌル」ず呌んでいた。ショヌトの守備範囲でもなく、サヌドの守備範囲でもない。でも誰かが捕らなければ、ヒットになる。

    3. 䞀番感謝されるのは、䞉遊間を拟う人だった

    面癜いこずに、䞉遊間のボヌルを拟い続ける人は、どの䌚瀟でも顧客からの信頌が最も厚かった。

    「あの人に聞けばなんずかなる」。顧客がそう思う盞手は、肩曞きで遞ばれおいるのではなかった。職皮の境界線を越えお動ける人、぀たり䞉遊間に飛んできたボヌルを黙っお拟い続ける人が、顧客にずっおの「䞀番頌れる人」になっおいた。

    しかし同時に、瀟内での評䟡が最も難しい人でもあった。なぜなら、拟ったボヌルは誰のKPIにも玐づかないからだ。

    PSずしお顧客プロゞェクトを無事に完了させた埌、「で、それは売䞊にどう貢献したの」ず聞かれお蚀葉に詰たった経隓がある。プロゞェクトは成功した。顧客も満足しおいる。でも、問題が起きなかったこずの䟡倀は、数字にはほずんど残らなかった。

    䞉遊間のボヌルを拟う人は、顧客から最も必芁ずされ、瀟内で最も報われにくい。この矛盟に、ずっず違和感を持っおいた。

    深倜のTeams通知。顧客の本番環境で障害が起きおいる。サポヌトに連絡したが、「それはPSのスコヌプでは」ず返っおくる。営業に報告したら、「なんずかならない」ずだけ蚀われる。誰もオヌナヌを持たない。でも顧客は困っおいる。結局、自分が察応した。翌朝、「助かった、ありがずう」ず蚀われた。顧客からも、瀟内からも。でも、それが評䟡に反映されるこずはなかった。そしお、その倜のこずは、半幎埌には誰も芚えおいなかった。

    気づくず、自分だけが党郚知っおいた。顧客が本圓に困っおいるこず。営業が玄束したこず。開発が間に合っおいないこず。珟堎が運甚できおいないこず。

    党郚芋えおいた。党郚拟っおいた。

    でも、党郚知っおいる人間は、組織の䞭では「責任者」ではなく、「䜕をやっおいるかわからない人」に芋えた。その䞍思議な孀独は、䌚瀟を倉わっおも消えなかった。

    4. 「䟿利屋」は本圓に䟡倀が䜎いのか

    䞉遊間のボヌルを拟い続けおいるず、い぀のたにか「䟿利屋」ず呌ばれるようになる。

    「あの人に頌めばなんずかしおくれる」。これは顧客からの信頌の蚌だが、瀟内では必ずしもポゞティブな意味ではない。「専門性がない」「䜕でも屋」「キャリアの軞がぶれおいる」。そう芋られるこずもある。

    でも本圓にそうだろうか。

    倖資ITで耇数の䌚瀟を経隓する䞭で気づいたのは、䞉遊間のボヌルを拟える人には共通するスキルがあるずいうこずだ。

    顧客の曖昧な課題を構造化できる。技術チヌムずビゞネスチヌムの間を翻蚳できる。郚門暪断のチヌムの䞭で、誰に䜕を䌝えれば物事が動くかを理解しおいる。

    これは「䟿利屋」のスキルではない。むしろ最も属人的で、最も再珟が難しいスキルだ。

    補造業にいた頃、品質問題が起きたずき、蚭蚈・補造・品質管理の3郚門を暪断しお動ける人がいた。その人は「䟿利屋」ず呌ばれおいたが、その人がいないず問題は解決しなかった。倖資ITでも同じ光景を䜕床も芋おきた。

    「䟿利屋」ずいう蚀葉は、本人の䟡倀を正確に衚しおいない。正確に蚀えば、「職皮の境界線が想定しおいない䟡倀を生んでいる人」だ。

    ただ、その䟡倀を枬る指暙を、䌚瀟の評䟡制床がただ持っおいないだけだった。そしお、持っおいないものは、存圚しないものずしお扱われる。

    5. 「FDE」ずいう新しい名前に違和感を芚えた

    瀟䌚人になっおからずっず、職皮名は蚘号にすぎないず思っおきた。その頃、LinkedInのフィヌドに芋慣れない蚀葉が䞊び始めた。

    Forward Deployed Engineer。略しおFDE。

    求人祚を開いおみた。「顧客に深く入り蟌み、プロダクトを実装し、䟡倀を出す」「プロダクトチヌムにフィヌドバックを還元する」「セヌルスず連携しおディヌルを前に進める」。

      埅っおくれ。それ、SAがやっおたこずじゃないか。PSがやっおたこずじゃないか。SEの日垞じゃないか。

    求人祚を読みながら、ずっず「芋たこずがある」ず感じおいた。同じ「FDE」ずいう職皮名なのに、䞭身がかなり違う。ある䌚瀟では顧客環境でコヌドを曞くこずが䞭栞で、別の䌚瀟ではステヌクホルダヌマネゞメントが䞭心だった。

    たた同じだ。同じ職皮名で䞭身が党く違う。SA、SE、CSMで䜕床も芋おきた光景ず倉わらない。

    だから私は、FDEずいう名前そのものには興味がなかった。興味があったのは、なぜ今この名前が急増しおいるのか、だった。

    6. 違ったのは仕事内容ではなかった

    FDEずいう蚀葉を远いかけおいくず、必ずPalantirにたどり着く。

    Palantirのプロダクトは、導入しただけでは䟡倀が出ない。顧客のデヌタを入れ、業務フロヌに合わせお構成し、珟堎が䜿える画面を䜜っお、初めお䟡倀が出る。぀たり、䟡倀の倧半が実装フェヌズで生たれる。

    普通の゜フトりェア䌁業なら、ここはPSやSIパヌトナヌに任せる。しかしPalantirは、自瀟゚ンゞニアを顧客に送り蟌んだ。しかも1人のスヌパヌマンではなく、FDSE技術実装ずDeployment Strategist戊略・顧客察応がチヌムを組むPod構造で。

    埓来のSAやPSからCSMぞ匕き継ぐ分業リレヌではなく、最初から党機胜を内包した小チヌムが顧客に入る。匕き継ぎポむントがないから、情報が萜ちない。

    この構造を知ったずき、自分が長い間芋おきた景色の意味がわかった気がした。䞉遊間のボヌルが生たれるのは、分業の隙間があるからだ。Palantirは隙間そのものをなくした。「最埌に党郚拟う人」ではなく、「党郚拟わなくおいいチヌム」を䜜った。

    そしおもう䞀぀、決定的な違いに気づいた。

    PSは「売った埌に入る」。䌚蚈䞊はコストセンタヌ。むンセンティブは「玍品完了」だ。FDEは「入るこずで売る」。セヌルスモヌションの䞀郚ずしお機胜する。むンセンティブは「プロダクトの採甚率」だ。

    やっおいるこずが䌌おいおも、「䜕のためにやっおいるか」が違う。仕事内容の違いではなく、䌚瀟の䞭での䜍眮づけの違いだった。

    ベンダヌ偎にいた頃を思い出す。SIパヌトナヌの担圓者が顧客の圹員ず盎接話しおいるのに、自分はその䌚議に呌ばれなかった。あの瞬間の居心地の悪さは、同じ立堎にいた人ならわかるず思う。Palantirはそれを防ぐために、顧客接点を自瀟Podで抌さえ続けた。

    FDEは、新しい仕事ではなかった。ずっず珟堎に存圚しおいた仕事に、埌から名前が付いただけだった。その構造を知ったずき、自分がずっず感じおいた違和感の正䜓が、少しだけ芋えた気がした。

    7. 職皮名が溶ける時代に

    AI時代の゚ンタヌプラむズIT職皮は、SA、PS、SE、CSM、FDEの境界が溶けお再線される過枡期にある。

    AIプロダクトは、導入しただけでは動かない。珟堎に深く入り蟌たないず、䟡倀にならない。だから実装ず戊略を同時に担う人材が求められる。FDEずいう名前が急増しおいるのは、AIが職皮の境界線を溶かしおいるからだ。

    このずき、最も䟡倀が䞊がるのは誰か。

    コヌドだけ曞ける人ではない。戊略だけ語れる人でもない。顧客の曖昧な課題を構造化し、技術ず業務を繋ぎ、最埌たで䟡倀を届け切れる人だ。

    ぀たり、䞉遊間のボヌルを拟っおきた人たちだ。

    8. 䞉遊間は、“頑匵り”で埋めるものではない

    問題は、その人たちが報われるかどうかだった。

    䞉遊間を拟う人は、組織にずっお必芁䞍可欠だった。でも倚くの堎合、その䟡倀は「誰かの頑匵り」ずしお凊理される。仕組みではなく、矎談ずしお。

    でも、矎談では人は持たない。

    もしこの蚘事を読んでいるあなたが、境界線の間で疲匊しおいるなら、それは珍しいこずではない。

    私自身、䜕床かその矛盟の䞭にいた。顧客からは感謝される。でも瀟内の評䟡面談では、「それはあなたのKPIですか」ず聞かれる。拟ったボヌルが倚いほど、自分の守備範囲の打球を受ける時間が枛る。そしお、評䟡制床は守備範囲の打球しか数えない。

    埌になっお気づいたのは、䞉遊間を拟う人ほど、「自分が䜕を拟ったのか」を説明しなければならないずいうこずだった。攟っおおくず、越境した仕事は「ただの芪切」で終わる。顧客の障害察応をしたなら、「障害を盎した」ではなく、「契玄継続リスクを防いだ」ず翻蚳する。郚門間の調敎をしたなら、「䌚議を回した」ではなく、「導入遅延を防いだ」ず説明する。仕事をするだけでは足りなかった。その䟡倀を、組織の蚀葉に翻蚳しなければ、存圚しなかったこずにされる。

    䞉遊間を埋めた仕事は、数倀化できない。䜕回拟ったか、䜕時間かけたか。それをいくら蚘録しおも、最終的には䜕もなかったかのように過ぎおいく。問題が起きなかったこずの䟡倀は、数字には残りにくい。火を消した人より、火を぀けた人の方が目立぀。

    これは倖資ITだけの話ではない。日本の組織は分業が现かいぶん、郚門ず郚門の間に䞉遊間が生たれやすい。工皋の䞭は綺麗に蚭蚈されおいる。でも工皋ず工皋の境界にはKPIが存圚しない。「越境」は評䟡されにくく、倱敗の責任だけが個人化される。だから、䞉遊間を拟う人が燃え尜きやすい。

    そしお、燃え尜きた人が蟞めおいくずき、組織は初めお気づく。あの人が拟っおいたボヌルが、党郚地面に萜ち始める。でもその頃には、もう遅い。

    そしおAI時代は、この問題を解決するどころか、悪化させる可胜性がある。AIが専門家の仕事を代替するより先に、「翻蚳コスト」を爆発させおいる。゚ンゞニア、ビゞネス、業務、法務、セキュリティ、珟堎。AIプロダクトを導入するたびに、暪断しなければならない境界線が増える。䞉遊間は、狭くなるどころか、むしろ広がっおいる。

    誰の蚀葉もわかるのに、自分の職皮だけは説明できなかった。

    重芁だったのは、「優秀な䟿利屋」を増やすこずではなかった。境界線を越える仕事を、個人技ではなく「構造」にしたこずだ。FDSEずDeployment StrategistをPodずしお組たせる。顧客接点ず実装を分断しない。匕き継ぎポむントを枛らす。珟堎の知芋をプロダクトに戻す。「䞉遊間を拟う」を、偶然発生する属人技ではなく、組織蚭蚈ずしお内包した。

    その構造を芋たずき、少し救われた気がした。

    自分が苊しかったのは、胜力が足りなかったからだず、長い間思っおいた。

    でも、そうではなかったのかもしれない。

    そしお、境界線が溶ける時代に、䞍安を感じおいる人がいるなら、䌝えたいこずがある。「自分は䜕の専門家なのか」ずいう問いに苊しむ必芁はない。䞉遊間を拟う人がやっおいるこずは、優先順䜍を刀断し、利害を調敎し、曖昧さを構造化し、意思決定を前に進めるこずだ。評䟡制床が远い぀いおいないだけで、䟡倀が䜎いわけではない。

    9. 時代の方が、ようやく远い぀いおきた

    AIが倉えたのは、仕事そのものではなかった。

    今たで芋過ごされおいた仕事を、芋えるようにしたのだ。

    䞉遊間のボヌルを拟うこず。境界線を越えお翻蚳するこず。曖昧な課題を前に進めるこず。

    「䟿利屋」ず呌ばれおきた人たちは、実はその蚓緎を、ずっず珟堎でやっおきた。

    時代が倉わったのではない。時代の方が、ようやく远い぀いおきたのだ。

    ただ、䞉遊間のボヌルは、たぶんこれからもなくならない。

    でも少なくずも、「䜕をやっおいるかわからない人」ず呌ばれおいた仕事に、ようやく名前が付き始めた。

    たぶん、それだけでも十分だった。

    #創䜜倧賞2026 #ビゞネス郚門

     
     
    補造業10幎。幎収700䞇円台から倖資ITぞ転身し、初回転職で1000䞇円台ぞ。キャリア环蚈1000䞇円以䞊UPRSU陀く。SA・CSM・PM・SE党郚やった21幎。採甚面接官・HM経隓あり。補造業→倖資ITの転職ノりハり、AI掻甚術、倖資で生き残るリアルを発信䞭

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