
誰かとの会話から生まれた気づき(耳ビジnote部)
会話から生まれる気づきは、相手の言葉そのものよりも、その言葉に引っかかった自分の違和感のほうにある。
以前、仕事仲間と昼食をとっていてこう言われた。「尾藤さんは質問が多いですね」。褒め言葉だと思い「聞き上手を目指しているので」と返すと、相手は少し戸惑ったように笑った。「質問が多い人は、たいてい聞いていない人ですよ」。
説明はこうだ。質問とは、相手の話を自分の関心のある方向に引っ張る行為である。相手が話したいことではなく、自分が聞きたいことを聞く。
次の質問を考えている間、人は相手の話を聞いていない。本当に聞いている人は質問しない。黙って待つ。すると相手は、聞かれなくても勝手に大事なことを話し始める。
反論したかったが、心当たりがありすぎた。取材でも雑談でも、私は質問を用意して臨むことが多かった。相手が答えている最中に、次の質問を頭の中で並べ替えている。あれは聞いているのではない。進行しているのだ。
その日の午後、試しに黙ってみた。打ち合わせで相手が話し終えても、すぐには質問せず、2秒ほど待つ。すると相手は「あと、実はですね」と続けた。その「実は」の中身が、その日いちばん重要な話だった。
質問は会話の主導権を握る道具である。握った手を少し緩めたほうが、相手の側から話がやってくる。長く人の話を聞く仕事をしてきて、いまさら知った。あの昼食で言い返せなかった違和感がなければ、気づかないままだっただろう。黙るのは、案外むずかしい。
※9月8日から毎日お届けしてきたまとめ記事を、ここにひとまとめにしました。耳ビジnote部のみなさんの記事に、どの日からでも会いに行けます。
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