
過去から届く小遣い(耳ビジnote部)
本には賞味期限がある。私の実感では、およそ3年だ。書店の棚から姿を消し、話題にのぼらなくなる。最近は、その期限がさらに短くなったように感じる。
ところが、Kindleは少し事情が違う。賞味期限が比較的長いのだ。支払いのタームは長いが、数か月に1度、忘れたころに入金がある。
これが、結構うれしい。
原稿料のような「働いた対価」という手触りがない。何年も前の自分が、ふいに小遣いを渡してくれたような気分になる。23冊も出していると、それなりの額になる月もあって、少し頬がゆるむ。
さて、どう祝うか。今夜は奮発して美味い肉でも、と考える。頭の中では、ずいぶん豪勢な食卓が並ぶ。
ところが足が向くのは、結局いつもの店の焼きトンである。毎回こうなる。だが、これは妥協ではない。部屋も汚れないし、後片付けもいらない。祝いの席として、これ以上の場所を私は知らない。
しかも明日は仕事がない。ならば頼むものは決まっている。にんにくの爆弾揚げ(丸揚げ)だ。
翌日の匂いなど関係ねえ。人に会わない日の前夜にだけ許される、ささやかな無法である。それがまた、うれしい。
過去の自分がくれた小遣いで、明日の自分に匂いを残す。賞味期限が切れかけた本たちも、こういう使われ方なら本望だろう。
※9月8日から毎日お届けしてきたまとめ記事を、ここにひとまとめにしました。耳ビジnote部のみなさんの記事に、どの日からでも会いに行けます。
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