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台風の日の記憶(耳ビジnote部)

小学生の頃、私は台風が好きだった。こう書くと不謹慎に聞こえるだろう。だが正確に言えば、好きだったのは台風そのものではない。台風が去ったあとに残される「おまけ」のほうだ。

台風のさなかは、家の中で過ぎ去るのを待つしかない。子どもにとって、それは楽しみでも何でもない。楽しみは、その先にある。

ひとつは水だ。台風が通り過ぎると、道路が冠水していることがあった。いつもは車が走り、大人が行き交う場所が、一時的に子どもの領分になる。そこへボードを持ち出して遊んだ。見慣れた道が、まるで別の顔を見せる。その非日常がたまらなかった。

もうひとつは時間だ。台風で授業がなくなれば、その日はそのまま放課後になる。時間割に縛られていた1日が、自由に使える1日に変わる。これほどうれしい知らせはなかった。台風一過の青空の下なら、なおさらである。

要するに、子どもは現金なのだ。台風がどれほどの被害をもたらすか、誰が後片付けに追われるか、そんなことは考えもしない。目の前に差し出された得だけを、ためらいなく受け取る。

大人になった今、台風の予報を見て浮かぶのは、交通の乱れや家への影響といった心配ごとである。好きか嫌いかで台風を語ることは、もうない。

ただ、あの頃の現金さを否定する気にはなれない。起きてしまったことの中から、自分の楽しみを見つけ出す。それは、大人になるにつれて失いがちな力である。台風の日の記憶が、今も不思議な色をしているのは、そのせいだろう。こんな記憶のある人はいないだろうか?


※9月8日から毎日お届けしてきたまとめ記事を、ここにひとまとめにしました。耳ビジnote部のみなさんの記事に、どの日からでも会いに行けます。

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https://note.com/kbito/n/n58e8ef551abd


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尾藤克之(コラムニスト・作家/日本初のClaude実用書出版) 記事が「役に立った」「面白かった」と思っていただけたら、チップで応援いただけると嬉しいです。いただいた応援が、次の記事を書くエネルギーになります。これからも読んでよかったと思える記事をお届けします。