
第1話:【発症編】「かめはめ波」で幻聴と戦った夜|統合失調症の私が、もう一度働き始めるまで①
福祉を学ぶ大学院生だった私が、なぜ統合失調症を発症し、幻聴に支配されるまでになったのか。最高血圧180、鳴り止まない教授の罵声。絶望の淵で私が縋りついたのは、ヒーローたちの「必殺技」だった――。凄絶な発症体験から恩師との再会までを綴る、真実の再生記録
どうも!kazuです
過去記事でも書いたのですが改めて私のことを知ってもらうために、私が統合失調症を発病してリハビリを経て、働き始めるまでのプロセスやその心の揺れを書いていきたいと思います。連載1回目の今回は日本での発病からの一連の流れを書いていきます。
昔の記事はざっくりとした書き方でしたが、今回は正直に詳細に書かせていただきます。
まえがき
あの日、私の世界は「音」を立てて崩れ去った。
福祉を志し、誰かを救うための学問に没頭していたはずの私が、気がつけば自分自身の心の深淵に飲み込まれようとしていたのです。
最高血圧180。鳴り止まない罵倒の幻聴。
そして、暗闇の中で私が縋りついたのは、かつて憧れたヒーローたちの「必殺技」でした。
これは、統合失調症という目に見えない嵐に翻弄されながらも、キーボードを叩き、叫び、のたうち回りながら「自分」を取り戻そうとした、ある男のあまりにリアルで、あまりに切実な再生の記録です。
あの日、私の部屋がなぜ「座敷牢」に見えたのか。
そして、絶望の淵にいた私を救い出した、恩師の意外な一言とは――。
正直に、すべてを書き記したいと思います。
発病から
【高鳴る志と、忍び寄る影】
当時、大学院で福祉を学んでいた私は学生として福祉の研究を行っていました。福祉の研究ができる。意気揚々と研究に励んでいた私。気がつくと指導教員の影響もあり24時間どんな時でも福祉の研究漬けの日々。
自分にとって楽ことをやっているはずなのに、いつしかお金を払いながらもブラック企業に勤めているようなそんな状況が続きました。
そしてその日常は確実に私を蝕んでいきました…
ある日、異変が起きました。パソコンに向かい作業をしていると、私の周りがぐるぐると回るのです。船の上に乗っているような不思議な感じでした。今思えばその時、私はすでに限界を超えていましたが、そのサインを無視しました。
周囲の期待、褒められたい、認められたい、世間に自分を認めさせてやる、誰よりもすごい論文を書いてやる。そんな気持ちが私をパソコンから離れられないようにしました。
世界はグルグルと回りました
この目眩はどんどんひどくなりました
めまいで立ってられない
【世界が回る。血圧180の衝撃】
ある日、部屋で目覚めると、周囲がぐるぐると周り立てなくなりました。常時、絶叫マシーンに乗ってる感覚、何度もまわる。
吐くことはなかったのですが動けないのです。
世界が回るグルグルグルグル
血圧を測ってみたら?
母の提案で簡易血圧計で血圧を測りました。
最高血圧180,,,
思わず声が出ました。ヤバい!
私は次の日、循環器科へ
医師に言われたのは
過剰のストレスによる血圧の上昇
医師に血圧降下剤をもらうと帰宅しました。
部屋で目がまわる
このままどうにかなってしまうのではないか??
このまま頭が破裂して死んでしまうのではないか?
そんなことを思いながら船に揺られる船室のような自分の部屋で、私はベッドで横になるのでした。
【指導教員の「声」が部屋に響く】
そして、異変は突然きました。
部屋で横になっていると不意に声が聞こえてきたのです。
死ね…
死ね、
死ね、
え?
その声は徐々に大きくなりました。
そしてその声は聞き覚えのある声に変わっていきました。
私の大学院での指導教員です。
死ね
死ね
死ね
死ね
お前は私のものだ
死ね
許さんぞ、
許さんぞ、
私の元を離れるのは許さんぞ
そんな声がたびたび聞こえてきました。
私は頭を抱えました。
死ね死ね
死ね死ね
死ね死ね
私は必死にどうにかしようとしてSNSを開きました。そして、投稿します。
「大学院の指導教員に罵られてる。あいつ俺を殺したいらしい」
そんな呟きを何度もしました
「死ね死ね死ね死ね、言い返してやった」
また投稿しました。呟くと落ち着きます。
その数は300以上、タイムラインが私の投稿で埋め尽くされていきます。
徐々に私のタイムラインは呪いの言葉のように、見えない教授とのやりとりをリアルタイムで投稿しし始めました。
「俺の方が強い.あの教授には負けない。」
「俺が逆に殺してやる」
そんな呟きを繰り返しました。
異変を感じた友人からラインで連絡が来ました。
「kazu呟いてることがおかしい!声が聞こえるのか??」
「俺はあいつと戦ってるんだ」
私は言いました。
「お前、それは統合失調症だぞ」
同じ福祉を志した友人は私に強めの口調で言いました。
「そんなことはない!」
私は電話を切りました。
その後、私は毎晩眠れなくなりました。教授の声が聞こえ続けたからです。大学院は幸い春休みです。
寝ても覚めても話が聞こえる。
私は教授と同化している、そんな妄想にも囚われました。こままではあの教授と同じになる。不安のあまり眠れない私は、夜の街を歩きます。
夜の街を歩き、話を聞いて貰えそうなお店へ。
話していると不思議と教授の声はおさまりました。
ガールズバーへ行ったりバーへ行ったりして夜をやり過ごしました。
教授に監視されている
教授にパワハラを受けている
24時間
ありえない話ですがそれが私にとっての現実でした。
おかしいな?と思いながらもお店の人は話を聞いてくれました。
そうやって数日、眠れるまで一晩中、お酒を飲んでいました。家族は急に私の行動パターンが変わり驚いているようでした。
そして、そのおかしな行動パターンではお金が続きません。
私は夜、お金が底をつき
眠れない時にお店に行けなくなりました。
もう話は聞いて貰えません。家族にも止められます。もう行くな、と。
それでも教授の幻聴とおかしな一体感は続きました。
許さんぞ
許さんぞ
許さんぞ
許さんぞ
声は続きました。不安で仕方ないし、声は止まらないし、どうしたらいいのか?
【キーボードで戦う夜:必殺技に込めた抗い】
私はパソコンに向かいました。
幻聴は言います。やめろ!と。
私パソコンに向き合いワードを開きました。
何が起こってるのかみんなに知ってもらうために記録を取ろう。何を思ったのか私は聞こえてくる声を全て文字にしてワードに打ち込み始めました。
夜中の父の書斎、家族はみんな寝ています。
一人カタカタとキーボードを打つ音が響きます。
死ね死ね死ね死ね
【死ね死ね死ね死ね】
文章にしました。さらりと言っていますが、幻聴に支配されそうな頭を一生懸命働かせながらです.
飲み込まれる。
私はワードで表を作成しました。
表の項目はこう
kazu の声 / 〇〇教授の声
二つの声を分けました。大学院で学んだ分類する技術です。
お前には負けない/ 死ね
頭から出ていけ/ 死ね 許さんぞ
俺は俺だ / お前は私のものだ
俺は… /死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
聞こえてくる声に飲み込まれそうになりました
なにか対抗しなければ。
【私はこの間の思考のプロセスを頭の中でやっています。つまり実際は書斎でパソコンの前で一人で座りキーボードを打ってるだけです。】
絶望に飲み込まれそうになりました
そんな時に頭の中に昔読んでいたヒーローたちが浮かびました。
これだ!
私は再び頭の中の思考を言葉にし文字にしました。
【かめはめ波!!!】
【スターダストストリーム】
【気円斬】
【ゴムゴムのガトリング】
【ゴムゴムのバズーカ!】
【螺旋ガン!!】
覚えている限りありったけのヒーローたちの必殺技を言葉にして文字にしました。今だから笑ってしまいますが、幻聴に対抗する術はその時私の中にはそれしかありませんでした。このままではどうにかなってしまう。
許さんぞ
許さんぞ
許さんぞ!
幻聴はそれでもおさまりません。
パソコンに限界を感じた私は今度はSNSに必殺技を打ち込みます。
【ゴムゴムのオノ!】
タイムラインに必殺技の名前の投稿が投下されます。
何個も何個も
たまに、いいね、がつきます。
幻聴と妄想の入り混じった私はそれが応援だと思いました。いや、応援であってほしい。
一晩中、私の呟きとパソコンへの打ち込みは続きました。
レイガン
滅びのバーストストリーム!
出す必殺技が出尽くして厨二病のような必殺技が文字として出切った頃に
新聞配達のバイクの音
長い長い夜が明け始めました
気がついたら朝日が…朝か
文字にしたワードの言葉の山を印刷してました。
なぜか本能的に印刷するべきだ、と思いました。
ボロボロになりながら私は、父の書斎をでて自分の部屋に戻りました。全て頭の中で起こってたことなのですが。
そして私は何かをやり遂げた後のように部屋で眠りにつくのでした。
……
そして、お昼過ぎ、私は目を覚まします。
気持ちは晴れやかでした。何かをやり遂げた後のような…
これで闘病記は終わりです
そう私も書きたいのですが、
ここで話は終わりません…
【座敷牢の幻影と、一筋の光】
リビングで朝ごはんを食べました。母は心配そうに私をみます。何せ毎日飲み屋さんに入り浸り帰ってこなかった時期があったわけですから
部屋に戻りました。外は快晴
部屋でほっとしてました。波は去った。
私は病気ではない。そんな達成感に浸りました。
しかし、再び世界が回り始めました。
グルグルグルグル…
血圧を測ると200…
ジェットコースターに乗ってる
そう思いました
そして、
おさまったはずの幻聴が聞こえ始めます。
許さんぞ!
お前は私のものだ!
死ね死ね死ね死ね
教授の声がします。今度は昨夜の言葉の数は日にならないほどの、死ね、が聞こえます。
ジェットコースターのようや回転に「死ね」という幻聴の声
私は部屋でのたうちまわりました
やばい頭が破裂しそうだ
私は混乱する頭を抱えながら
急いで血圧降下剤を口に放り込みました。
部屋で絶叫マシーンに乗っている状況が徐々におさまりました
呼吸が落ち着いてきました
しかし…
おかしな違和感を覚えます。
一難さってまた一難とはこのことです。
世界がグラグラ周り幻聴に追い詰められた状態で私はこの部屋が精神科病院の座敷牢ではないか?
おかしな思考になります.
大学で学んだ福祉の知識が妄想に浸食されていました。
ここは閉鎖病棟の一室、座敷牢、俺は閉じ込められている。
おかしな妄想に囚われます。
思い込みです
グルグル世界が回る、部屋は座敷牢、教授の幻聴
やばい、おかしくなりそうだ.
こわい
こわい
誰か助けてくれ!おかしくなりそうだ
私は、誰かに助けを求めなれけば
もはや本能でそう思いました
私はそう考えると、あるメッセージアプリを開き
ある先生にメッセージを飛ばしました
「助けてください。今やばい状況なんです」
専門学生時代のお世話になった担任のZ先生です。
心理学の先生なのですが不思議と頼りになる、助けてくれる、そんな雰囲気の漂う先生です。お世話になってた時からそうでした。頭の片隅にあったZ先生にメッセージをしました。
今日は先生は授業。メッセージを見てくれるかどうか?
すぐに既読がつきました。
「緊急事態のようですね。どうしましたか?」
はじめから私がこのメッセージを送るのがわかってるかのようなレスポンスの速さでした。
藁にもすがる思いで今の状況を文字にしました。
「自分の部屋が座敷牢になってて、頭がグルグルまわり、大学院の教授が話しかけてくるんです。」
私はグルグルと回る世界の中で、言葉を文字を絞り出しました。涙と共に汗が出てきました。
「困っているようですね。すぐに研究室に来てください。」
Z先生のメッセージは淡々としていました。
私はすぐに服を着替えるとよろよろと歩きながら、昔、通っていた専門学校を目指しました。
歩くと自然と眩暈がなくなりました。
ここで不思議なことが起こります。
教授恐ろしい幻聴の中に先ほどメッセージを送ったZ先生の声が混ざります。しばらくお会いしてなかったのですが声がはっきりと聞こえます。
大丈夫
うまく行く
教授の死ね、というメッセージに反発するかのように聞こえてきます。
その声は言うのです。
『良いの声には、はい、悪い声には、はいはい、と唱えなさい』
幻聴がなせる技なのでしょうか??
移動中の電車の中、私は、教授の恐ろしい声には、はいはい、Z先生の声には、はい、と頭の中で唱え続けました。
死ね死ね死ね/はいはい
君は大丈夫だ/はい
それを続けていると乱れていた呼吸が徐々に整います。
呼吸が荒くなったり落ち着いたり昼下がりの電車の中では異様な光景だったことでしょう。
電車は学校の最寄駅に到着しました。
ふらふらになりながら、スクールバスに乗り込みます。
ぐったりとしながらかろうじで外の風景をみます。
はい、
はいはい、
はい、
はいはい
「先生、つきました。学校の敷地に入ります。」
メッセージを送りました。
すぐに既読。
「すこし待ちたまえ、エントランスで待機していなさい」
私はよろよろと学校のエントランスに向かいました。立ち止まると眩暈と幻聴が押し寄せてきます。
とにかく歩きました。
恐ろしい幻聴が聞こえます。飲み込まれそう。頭が割れそう。
授業を終えた学生たちが私の横を通り過ぎていきます。
私の異変にはだれも気が付きません
徐々に、はいはい、の返事が悪い幻聴に効かなくなってきました。
学校の自動ドアをくぐるとZ先生がそこに立っていました。
私は眩暈と幻聴に飲み込まれる寸前でした
【教授は黙ってて」――恩師が授けてくれた魔法】
Z先生が落ち着いた様子でそこに立っていました。
スーツにネクタイをしゅっと着こなします。
メガネをかけていて、冷静な眼差し
あの頃と変わらない眼差し
「こちらにまずは座りなさい」
私はエントランスに通されると椅子に座らされました。
冷静な表情で私をみるとZ先生は言いました。
「さて、話しなさい」
私は今の自分の状況を話しました。
眩暈が止まらないこと、
大学教授の声後聞こえること、
部屋が座敷牢に見えて部屋に居られなくなったこと
話している間、教授の声が大きくなります
全て話すと、私は、昨夜文字にした声を言葉にし印刷したものを先生に見せました。
Z先生はそれを読むと顎の辺りを手で触りながら考えているようでした。
「薬は?」
「飲んでます。漢方」
「ほかは?」
私は答えようとしました。
「大学院の教授の声が聞こえてて…日に日にそれが大きくなるんです。」
すると教授の声がさらに大きくなり私の言葉を遮るように聞こえてきます。
私は…
もちろんZ先生には声は聞こえていません.
言葉が出ない
Z先生は困ったような表情をしました。当たり前です。目の前の人間がおかしなことを口走っている。
「こちらの方が早い!」
何を思ったか私はそう叫ぶと再び言葉を紡ごうとしました。
Z先生は何かを察したような顔をした後、言いました。
「kazu、右手でその声を払うような仕草をしながら
〇〇教授は黙ってて、と言ってごらん」(〇〇のなかは教授の苗字です)
私は言われた通りにしました。
手を挙げてその手を払います。
「〇〇教授は黙ってて!〇〇教授は黙ってて!」
「繰り返しなさい」
Z先生の言われるままに繰り返しました。
「〇〇教授は黙ってて!〇〇教授は黙ってて!」
「そうだ。繰り返しなさい」
先生はいいました。
しばらくすると頭の中の教授の声が消えていました。確かにまた頭の中はモヤモヤするけど声がしない。自分しかいない。不思議な感じでした。
しばし沈黙
Z先生は落ち着いた様子で言いました。
「よし。そのプリントアウトした声の記録を破りなさい」
「はい」
私は呆然として言いました。
その様子を眺めながらZ先生は言いました。
「電話をかしなさい」
私は言われるままに先生にスマホのロックを外し渡しました。
「君の両親には今の君の状態を含めて私から連絡しておく。いいね?私がご両親に連絡してる間にそのプリントアウトは捨てるんだ」
颯爽と先生は私のスマホを持っていなくなりました。
私は言われるがままに、プリントアウトした恐ろしい声の紙を細かく破りました。ビリビリビリ
誰もいないエントランスに紙を破く音だけが響きます。
そういえば、今日は快晴だ、その時私ははじめて今日が快晴なのをエントランスの窓から感じました。
電話を終えたZ先生がエントランスに戻ってきます。
「ご両親に事細かに伝えておいた。あとは家に帰りゆっくり休むんだ。君は疲労が溜まり過ぎている」
先生はスマホを私に返しました
呆気に取られている私を尻目に、踵を返して先生去っていきました。
そんな先生の背中に私は不安そうに投げかけました。
「この破った紙はどうすればいいですか?」
「捨てなさい」
そういうと先生はこちらを向かずに手を振り、颯爽とした足取りで去っていきました。
先生、立ち姿の姿勢が良いな、私は思いました。
そして私はこの後、ある理由から海外留学を決意します。
また次回お会いしましょう。
今日の記事は以上です。