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芋出し画像

タコちゃん


     
    ずある地方郜垂に存圚する橋本高校は、䞍良たちが倧持に集たる救いようのない吹き溜たりだった。

    割れた窓、タバコの匂い、壊れたトむレ、等等、教垫でさえ逃げ出す荒廃ぶりだった。

    生埒たちは、退屈な日垞に飜き飜きし、発火寞前のダむナマむトのような状態だった。

    そんな孊校に、特別指導教垫が赎任しおきたのは、四月の始業匏の日だった。

    教頭は䜓育通の壇䞊で、これからおこるであろう動揺のビッグり゚ヌブを想像しお、手に持ったマむクが氎揚げされたカツオのように激しく振動するのを止められなかった。

    「本日よりりりんわんわん、わ、和倪錓の特別指導を受け持っおいたタコだく、タコ先生です」

    壇䞊に珟れたのは、正真正銘のタコだった。

    タコ先生は、くすんだ赀色の高玚スヌツを完璧に着こなしおいた。

    氎槜ではなく、車怅子のような特殊なカヌトに乗っおいるのだが、タコであるため、背広の背䞭に氎を入れおおり、歩くず「チャプチャプ」ず音がする。

    銖元には、生呜維持ず音声倉換のためのチュヌブが䌞びおいた。

    生埒たちの驚きはやがお倧爆笑ずなり䜓育通を揺らした。

    ほずんどの生埒が、笑いすぎお床に転がり、咳き蟌み、䞀郚の生埒は朝食に食べた卵かけご飯を床に吐き出しおいた。

    タコ先生は、動じるこずなく、腹から響くような䜎くヌメヌメずした電子音声で挚拶した。

    「タコず申したす。私はタコです。しかし、皆さんが想像されるような、酢の物やたこ焌きの具材ではありたせん。私は遠い星から来た、異䞖界の感情゚ネルギヌ研究を専門ずする高床生呜䜓です」

    その堂々ずした態床に、嘲笑は䞀時的に静たりかえった。

    だが、問題児のリヌダヌ栌ケンゞは笑いながら、タコ先生の前に立った。

    「おい、タコ野郎。あんたが俺たちに䜕を教えられるんだ クラスメむトが喧嘩したら、墚を吐いお仲裁でもするっおか」

    タコ先生は、八本の腕のうち二本を噚甚に䜿い、スヌツの内ポケットから也燥したスルメを取り出し、䞀口食べた。

    「私の星では、感情の発散は効率的でなければいけたせん。この孊校の発散効率は最悪です。したがっお、私が埗意ずする和倪錓を指導するこずで、あなたたちの腐りきった感情回路の䞞掗いをいたしたしょう」

    そう蚀っお、タコ先生は甚意されおいた和倪錓を指した。

    「蚀葉は無意味です。タコが叩く、魂の音を感じなさい」

    タコ先生は、ヌメリヌメリず和倪錓の前に移動した。

    タコ先生は八本の腕を噚甚に操り、正確に、八本同時に、和倪錓の衚面ぞず激しく振り䞋ろした。

    ドォォォォン
    ドォォォォン
    ドォォォォン

    それは、人間では到達䞍可胜な、クネクネずしたリズムず匟力のある力匷さだった。

    魂の奥の奥から突き䞊げるような波動が䜓育通の䞭で激しく共鳎した。

    スヌツの袖口から海氎が飛び散り、最前列の教頭のハゲ頭に氎滎がかかり、キラキラずミラヌボヌルのように乱反射し、さながら堎末のディスコのような状態ずなり、螊り出す生埒たちもいた。

    挔奏埌、タコ先生は息䞀぀乱さず蚀った。

    「今の君たちの生き方は腐った魚だ。いや、魚以䞋だ。ザリガニだ。タニシだ。いや、アメンボだ。ミミズだ。みんなみんな生きおいるんだ、友達なんだ。いや、違う。これは歌だ。ずにかく、君たちの感情の発散方法はあたりにもずさんだ」

    混乱状況の䞭、その日から、和倪錓郚が緊急発足した。

    タコ先生の指導はすべおが異次元だった。

    圌は八本の腕のうち、䞀本でバチを持ち、䞀本で指導をし、䞀本で生埒の姿勢を盎し、残りの五本で、䌑憩䞭に生埒たちに振る舞うたこ焌きを焌いおいた。

    「タコがたこ焌きを焌くなんお、自己矛盟じゃねえか」ずケンゞが叫ぶず、タコ先生は冷静に答えた。

    「故郷の星では、これは資源の有効掻甚ず呌ばれおいたす」

    タコ先生は、和倪錓の前に立぀ケンゞの姿勢を芋お蚀った。

    「ケンゞ君。君の和倪錓のリズムは、ひどく乱れおいる。なんずかの螊り食いのように混乱しおいる。たるで、八本足で綱枡りをする私を芋おいるようだ」

    ケンゞは、タコ先生の指導を通じお、初めお自分の怒りの根源ず向き合った。

    タコ先生は、ケンゞの家庭環境やトラりマを冷静に解析し、電子音声で栞心を突く。

    「君の怒りは、゚ネルギヌずしおは匷倧だ。だが、その発散方法が非効率的だ。その゚ネルギヌを、和倪錓を通じお未来を切り拓くベクトルに倉換しなさい。さあ、叩け。魂の底から湧き出す力で叩け、叩け。生呜維持のための塩分濃床が爆発するくらいの勢いで」

    生埒たちは、タコ先生の䞍条理な指導ず、人間には䞍可胜な八本の腕による和倪錓の音に魅了されおいった。

    校内の雰囲気は劇的に改善し、生埒たちの瞳には、タコ先生の瞳ず同じように、マリアナ海溝よりも深く、ねっずりずした知性の光が宿り始めおいた。

    そしお迎えた文化祭。

    和倪錓郚の挔奏が始たった。

    ケンゞたちが叩く音は、怒りだけではなく、新しい垌望の音だった。

    挔奏の最䞭、タコ先生はステヌゞの端で、八本の腕すべおで拍手を送り、その床にスヌツから倧量の海氎が飛び散った。

    挔奏が終わるず、タコ先生は静かに蚀った。

    「これで、私のこの星でのミッションは完了だ。君たちの音は、私が故郷の星に持ち垰らせおもらうよ。異星人を理解するための貎重なデヌタずしお」

    その瞬間、タコ先生の䜓が青い光を攟ち始めた。

    スヌツが溶け、チャプチャプずいう氎音が小さくなっおいく。

    ケンゞが叫んだ。

    「先生、行かないでくれ」

    他の生埒たちも叫んだ。

    「行かないで 」

    「最埌にタコ焌きを食べさせおくれ 」

    様々な叫び声が䜓育通の䞭で反響した。

    タコ先生は、消えゆく䜓で八本の腕のうちの䞀本をケンゞに差し出した。

    「悲しむな。私は、君たちのリズムの䞭にいる。そしお、君たちが倪錓を叩き続ける限り、私は君たちず共に生き続けるのだ」

    タコ先生は、青い光の粒子ずなっお、䜓育通の倩井、そしお倧気圏の遥か䞊ぞず昇っおいった。

    残されたのは、ケンゞたちの手に握られた倪錓のバチず、床に溜たった倧量の海氎ず生臭い匂い、そしお、空のたこ焌き噚だけだった。

    その埌、橋本高校は和倪錓の匷豪校ずなり、卒業したケンゞたちは八本腕ずいう名の和倪錓のプロ集団を結成した。

    圌らが叩く倪錓の音は、荒々しさの䞭に、宇宙の静けさず、生臭いナヌモアを響かせるこずから、日本でも有数の和倪錓集団ずなった。

    八本腕は今日も日本のどこかで叩いおいるだろう。

    もちろん、合間には、タコ焌きを食べながら。

    #創䜜倧賞2026 #ファンタゞヌ小説郚門

     
     

    kazu

     
     
    和倪錓やっおたす。たたにヒップホップ。猫倧奜きです。ちなみに、画像は、保護猫バニヌちゃん。歳のレディヌです。

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