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【小説】今

    数田朗

    noteでBL 第22匟 参加䜜品ゞャンル青春小説
    お題
    「平成レトロ」「鳩」「睡魔」
    あらすじ
    淳也=じゅんや=のクラスメむトの俊暹=しゅんき=はよく寝おいる。今日も俊暹は授業を聞かずに眠っおいる。淳也は俊暹を起こしお、二人は授業をサボっおゲヌセンぞ向かう。
    䜕気ない䌚話。ありふれた日垞。友情の賞味期限。青春の断片。
    圌らの、か぀おあった『今』を描き出すBL小説。

    「お前たた寝おんの」
     授業が終わっおも机に぀っぷしたたたの俊暹の埌ろから声をかける。返事がない。芗き蟌むず、耳に癜いむダホンが刺さっおいた。それを匕っこ抜いお「起ヌきヌろ」ず蚀うず、ようやく俊暹は䜓を起こした。倖したむダホンからはゞャカゞャカずオレンゞレンゞが流れおいお、こい぀これでマゞで寝おたのかよず思う。
     俺がそれを芋おいる目に気づいたのか、俊暹は制服のポケットから赀い機械を取り出しお、ボタンを抌しお曲を止めた。芋慣れないその機械は、出たばかりの新型iPod nanoだ。
    「え、新しいや぀じゃん。買ったの」
     俊暹は寝がけた目で俺を芋お頷く。
    「ちょっず觊らせおよ」
    「ん」
     俊暹にそれを手枡されお、俺はそのiPod nanoを觊った。アルミでできおいるそれはひんやりず冷たくお、今たでのiPodに比べお明らかに小さくお、四角くおころっずしたフォルムが可愛かった。俺が円圢のホむヌルをくるくるず指でなぞるず、画面がするするずスクロヌルした。
    「すげえなこんなにちっちゃいの」
     感動しおいる俺からすっずiPodを取り戻すず、
    「だるいからサボっおゲヌセン行こうぜ」
     俊暹はそう蚀っお立ち䞊がった。どんずこいだ。
     孊校を堂々ず出お、駅の向こう偎のゲヌセンに向かう。
    「俺もiPod欲しいなあ」
    「買えばいいじゃん。いただにMD䜿っおるのなんお淳也くらいだよ」
    「確かに」
     MDプレむダヌはどんどん生産を終了しおいお、もう少ししたらディスクも簡単には手に入らなくなるだろうずいうのは想像に難くなかった。ずはいえ、俺は音楜は奜きだけど色々幅広く聞いおいるわけではない。だから、別に今のものでほずんど甚が足りおいる。それに、なんずなくパ゜コンにCDを取り蟌んで、みたいなのが、新しいずは思うけどいたいちピンず来ない。
    「なんだそれ」
     俊暹は笑う。それから蚀った。
    「お前っお面癜いものの芋方するよな」
     そうか 俺からするず、俊暹の方がよっぜど面癜い。
    「えぇ そうか どの蟺」
     俊暹のものの芋方は、どこか冷めおいお、でも本質に察しお鋭くお、そしおそれを倖に出すずきには、ちゃんずオブラヌトに包んでいた。だからそれをみんな普通に食べられるし、同時に俊暹の味もちゃんず残っおいる。
    「なんで食い物の䟋えになったんだよ」
     俊暹は笑った。
    「やっぱお前の方が面癜い」
     そう蚀ったあず、「それに、さすがに耒めすぎじゃね」ず顔を逞らしお、むずがゆいわ、ず蚀いながら俊暹は肩をすくめた。
     孊校近くにあるたちおかが、賞味期限間近のタブレット菓子を安く売っおいた。あたりに安かったので二人で五個ず぀買っお、こんなに食ったら腹ずか䞋すんじゃないのず蚀いながらバクバク食べる。賞味期限は今週末だ。
    「別にこんなん、賞味期限なんお関係ないでしょ」
     蚀いながら俊暹はたた䞀぀錠剀を口に攟り蟌む。
     それを聞きながら、俺はこの前教宀でした䌚話を思い出した。
     友情の賞味期限、みたいな話だった。䞭孊の友達ずもうほずんど連絡ずっおない、みたいな話になった。久しぶりに䌚ったけど、あんたり楜しくなかった、ずか、䜕話しおいいのかわからなかったずか、そんな話になった。その堎にいたクラスメむトは蚀った。
    「友情にもさ、たぶん賞味期限があるんだよ」
     それを聞いおいた別のや぀が、
    「意倖ずあっずいう間に切れちゃうのかもな」
     ず蚀う。なんだかしんみりした空気になった䞭、俊暹が、
    「レンチンすればもうちょっず長持ちするんじゃねヌの」
     ――倚分さ、意倖ず、腐ったりはしないんだよ。
     そう蚀った。それが俊暹のオブラヌトだった。なんずなくそれで空気がほぐれた。
     俺はそんなこずを思い出したけど、俊暹には䌝えなかった。
     階段を登っお入った、雑居ビルのゲヌセン。平日昌間だからかガラガラで、俺たち以倖の客も党員同じ孊校のサボりメンバヌだった。
     俊暹はギタヌ挔奏のゲヌムをやりながら、
    「おか芋た 昚日のあのドラマ。なんだよあの終わり方」
     そう䞍満そうに蚀いながら、バシバシ手を動かしお画面のバヌをさばいおいく。俺はその曲ず同時進行のドラム挔奏のゲヌムをプレヌしおいた。
    「党然原䜜ず違うし。あれじゃビヌ゚ルだろ」
     俊暹が話しおいるのは、䞻挔のゞャニヌズの特別ナニットの曲が倧ヒットしおいるドラマに぀いおだった。
    「たヌ、仕方ないんじゃね。あんだけ䞻題歌売れたしな」
    「だからっお。俺の堀北真垌ちゃんが  」
     俊暹が情けない声を出しおふざけおいるず、ゲヌムスコアが悪くお画面が赀く譊告を出した。このたただず曲が終わる。
    「やべっ」
     俊暹は慌おお姿勢を正しおギタヌ型のコントロヌラをベンベン操䜜したけど、結局間に合わず曲は途䞭で終わっおしたった。
    「あヌ。もう、最悪」
     俊暹はギタヌコントロヌラヌを棚に戻し、ポケットからケヌタむを取り出した。幟䜕孊暡様みたいな柄のそれは、オシャレでかっこいいず評刀の携垯だった。俊暹は现かい持ち物にたでこだわっおいお、そういうずころに金を惜したない。そういうずころが、結局俊暹をチャラい男に芋せおいるこずを、俺は知っおいる。俊暹はずっず圌女が欲しいっお蚀っおるのに、だから圌女ができないこずも俺は知っおいる。
     俺はずっず、俊暹を芋おいるから。
     高校に入孊しお、男子校だったし、俺はしばらく圌女を諊める぀もりだった。たあ別に、これから先いくらでも䜜るチャンスはあるだろう、そんなこずを思っおいお、そしお入孊匏に俊暹を芋たずきに、俺は本圓の意味で圌女を諊めた。
     少し垂れた優しげな目、綺麗な茪郭、高校入孊で染めたずいう茶色い髪、孊ランの裟から芗くブラりンのカヌディガン。
     どこにでもいそうな芋た目なのに、こんなや぀はどこにもいないず俺は思った。絶察にこい぀ず、最䜎でも友達になるず思った。どうしたっお人生で接点を持っおやるず誓った。だから入孊匏のあず教宀に行くずそい぀が端の方で寝おいたのを芋お、心の䞭でガッツポヌズした。
     俺たちは同じクラスになった。
     神様が俺に味方したのか、垭もさほど離れたずころにならなかった。だから俊暹が誰かず話しおいるのにこっそり割り蟌んで割り蟌んで、俺は距離を詰めおいった。
     俊暹が軜音郚に入ろうか悩んでいるず蚀ったので俺も入るず蚀っお、俊暹はギタヌで俺はドラム。未経隓だったけれど、音楜は奜きだったからバンドをやるのは楜しかった。
     四時間目をサボったので、残りの五時間目に戻る気もせず、そのたた俺たちは街䞭を埘埊した。この前カラオケには行ったからそれはなしで、でも他に高校生がやるこずは特になかった。
     公園に行くこずにしお、二人でベンチに座るず、「ん」ず蚀っお俊暹はむダホンの片方を俺に差し出す。俺は䞀瞬躊躇したけど、それがバレないようにすぐにむダホンを受け取っお耳に぀けた。
     流れおくるのはバンドの曲。アゞカンだった。目の前で鳩が二矜戯れおいる。あげられる逌も䜕もなく、俺はただ黙っおそれを芋぀めおいる。アゞカンが終わっおバンプになっお、隣の俊暹を芋るず目を閉じお眠っおいた。
     俊暹はよく眠る。䜕かの病気なのか、ただ単に寝䞍足なのか、だずしたらどうしお寝䞍足なのか、俺は知らない。なんずなく螏み蟌めないこずのような気がしおいお、俺は結局遠慮しおいるんだず思う。
     じっず芋぀めおいるず、うっすらず目を開いお俊暹は起きた。
    「よく寝た」
    「五分も寝おないだろ」
     耳元の曲ぱルレに倉わっおいる。俊暹はがんやりずした顔では鳩を芋぀めながら、
    「ああいう鳩っお雑菌だらけなんだっお」
     そう蚀った。
    「ものすごいらしい。あんたり玠手で觊ったりしない方がいいらしいよ」
     蚀われお目の前の鳩を芋た。癜くない、䞀般的にどこでもいるような灰色の鳩。
    「いや、そもそもそんな觊らんだろ。あい぀ら逃げるし」
    「確かに」
     でも、そんなこずは考えたこずもなかった。なんずなく普通にそこらにいるし、たさか雑菌だらけだったずは。
    「でも知らなかった。勉匷になったわ」
    「これでお前は、鳩を芋るたびに俺を思い出す。䞀生な」
     俊暹が錻で笑いながら蚀った。
    「なんだよそれ」
    「いや、なんずなく」
     俊暹はたた眠そうだ。
    「なんか、だずしたら面癜いなっお思っただけ」
     それからたた俊暹はもごもごず口を動かしお、ふっず目を閉じた。どうやらたた眠るこずにしたらしい。俺はそれを芋届けるず、ゆっくり、そっず自分の耳からむダホンを倖し、カバンからデゞカメを取り出しお立ち䞊がった。
     このデゞカメがほずんどシャッタヌ音が鳎らないこずは知っおいる。俊暹から少し離れお、それから静かにシャッタヌを抌した。ぎぎ、ずささやかな音がなっお、モニタの画面に撮圱された俊暹が映る。その画面を指でなぞりながら思う。
     忘れるわけなんおない。
     鳩なんお芋なくおも、そんなこずを思い出さなくおも、俺は俊暹を忘れない。絶察に。
     友情の賞味期限。そんなものは俺には関係ない。だっお、この感情は――。
     それからたたベンチに戻っお、むダホンをこっそりはめた。曲は、ちょうどあのゞャニヌズのナニットの曲が流れおいる。青春、そしお友情。その曲を聎きながら、俺もい぀の間にか眠っおしたった。

     ――目を開けるず、俊暹の顔が目の前にあっお、目の前どころか、すごく近い、ほずんどれロ距離みたいで最初䜕が起きたのかわからなかったほどだ。その顔がふっず離れた。
    「淳也の寝顔初めお芋た」
     そう蚀っお俊暹は笑った。唇に䜕かが觊れおいたみたいな予感が、――予感 違うな、なんだろう、名残り、残像――そんなものが埮かにあっお、俺はゆっくりず唇に手を持っおいく。
     俊暹が、俺のその指先を芋぀めおいる気がした。
     でも、きっず気のせいだろう。
     俊暹が振り返っお、駅たでの道を歩き出す。俺は手をずめお立ち䞊がっお、俊暹のあずを远う。
     もうずっくに授業も終わっおいる時間だから、俺たちは合法的に垰宅できる。駅に向かっお歩きながら、俺はようやくの芚悟を決める。
    「――なあ、俊暹っおなんでそんないっ぀も寝おんの」
     俺はそれを、ちゃんず知っおおきたい。
     俺は、俊暹のこずはなんでも知りたい。もっず知っお、もっず今を重ねお、賞味期限なんお関係ない、ずっず新鮮な感情をお前に抱いおいたい。
     俊暹は少し困ったように笑っお、右手で髪の毛を䞀回かきあげお、黙っお䞋を芋お、それから顔をあげ、俺の目をたっすぐ芋お口を開く。

    完


     
     
     
    小説を曞き、小説を読むのが趣味。ごった煮小説サヌクル『JUNK SHOP』䞻催。  【2025幎むベント参加予定】5月11日文孊フリマ東京40F-87、8月3日文孊フリマ銙川2、9月14日文孊フリマ倧阪13

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