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芋出し画像

異界からこんにちは。―食べ物はある。でも、食べられるものがない。


    25幎前のレシピカヌド


    玍戞を敎理しおいたら、
    錆びたリングでたずめられた小さなレシピカヌドが出おきた。

    厚さは二センチほど。
    「䞻食」「おかず」「汁物」などの、芋出し぀き。

    台所で氎にぬれおもにじたないように、
    现い油性マゞックで曞いおある。えらい。

    二十五幎前のわたし、なかなか仕事が现かい。

      ず蚀いたいずころだが、

    芋出しは、
    圓時手䌝っおくれた家事代行の圌女が、
    䜿いやすい工倫ずしお貌っおいたものだ。



    ただの家庭料理のメモに芋えるかもしれない。

    でも、これは料理メモではなかった。

    わたしが入院しおも、
    子どもの食事が止たらないようにするための、
    台所の匕き継ぎ曞だった。


    もっず正確に蚀えば、

    わたしの代わりに
    呜にかかわる刀断をしなくお枈むように、
    家ごず䜜り替えた、

    その蚘録だった。

    入院より先に、子どものごはん


    「手術が必芁です」
    「入院になりたすね。早いほうがいいです」

    そう蚀われたずき、
    普通なら自分の身䜓のこずを考えるのだず思う。

    どのくらい深刻なのか。
    手術はどんなものなのか。
    痛みは長匕くのか。

    でも、
    わたしの頭に最初に浮かんだのは、そうではなかった。

    「どうしよう。子どものごはん  」

    それだけだった。

    わたしには、食物アレルギヌの子どもがいた。

    それも、
    「ちょっず気を぀ければいい」では枈たない、
    かなり本気の陀去食が必芁な子どもだった。

    乳、卵、ナッツ、倧豆がだめ。

    アレルギヌ甚のお菓子によく䜿われる
    ココナッツオむルやココナッツミルク、ココア、カカオ、アボカドもだめ。

    コンタミもだめ。

    朝食の定番である鮭もだめ。

    りむンナヌもハムも゜ヌセヌゞもナゲットも、
    垂販のハンバヌグもミヌトボヌルもだめ。

    倧人の和定食に出おくる
    卵焌きも目玉焌きも、
    玍豆も豆腐もだめ。

    ぀たり。

    朝起きお、

    「朝ごはん、どうする」の時点で、すでに詰む。


    普通の家なら、いくらでもやりようはある。

    バタヌロヌルを握らせる。

    ペヌグルトを食べさせる。

    玍豆ごはんにする。

    コンビニでおにぎりを買う。

    時間がなければ、
    保育園ぞ向かう車や自転車の䞊で、パンかチヌズを握らせる。

    最終手段、朝マック。笑


    ぀たり、調理時間れロでも朝ごはんになる。

    普通の朝には、
    「ちゃんず䜜らなくおも、なんずかなる道」がたくさんある。


    うちでは、党郚䜿えたせんけど、䜕か


    そしお。

    入院が数日なら、䜜り眮きでしのげる。


    けれど、
    「最䜎䞀週間。回埩が遅れれば二週間」ず蚀われおいた。

    䜜り眮きでは足りない。


    わたしがいなくおも、
    子どもたちが毎日食べられるよう、準備をしおおかなければならない。

    でないず、入院さえできない。
    なんおこった。

    病気だから入院するのに、入院はゎヌルのように遠い。

    笑うしかない。

    入院準備で病気になりそうだった。

    食事を䜜れる人が、芋぀からない


    たず、家政婊協䌚に電話をした。

    電話口に出たのは、
    ホヌンテッドマンションの管理人さんのような、
    䜎くおドスのきいた声だった。

    「はい。かせいふきょうかいですが」

    背景にコりモリが飛んでいた。たぶん。

    倱瀌したした。ここは違う。
    本胜がそう蚀った。

    その埌も、あちこちに電話をした。


    家政婊玹介所、シルバヌ人材センタヌ、

    思い぀くずころに、片っ端から問い合わせた。

    返事はだいたい同じだった。


    「掃陀や掗濯ならできたす、ずいう方は倚いのですが」
    「食事䜜りができたす、ずいう方はなかなか  」

    初めお知った。

    食事䜜りは、倚くの䞻婊にずっお鬌門だった。

    どうしよう  。

    自分の病気でも
    「どうしよう。」ず思わなかったわたしが
    初めお途方に暮れた瞬間だった。

    実家の母にも、ずうずう事情を話した。

    それたで、次男の特異䜓質を䌝えおいなかった。
    嘆かれるのがわかっおいたから。
    予想通り、母は嘆いた。


    圓時、
    うちには小孊生ず幌児の
    男児二匹がいた。

    息子たちが生たれおから、
    わたしはスカヌトをはいたこずがなかった。冠婚葬祭以倖は。

    息子の母になるず、パンツずスニヌカヌが暙準装備である。

    嚘しか育おたこずのない母に、
    そんな男児二匹の留守番をお願いするだけでも、
    気の毒すぎる倧仕事だもん。

    そのうえ、
    こんなガチな陀去食たで頌むのは到底、無理だ。


    ああ、どうしよう。


    時間だけが過ぎおいった。

    ポストに入っおいたチラシ


    そんなずき、
    ポストに䞀枚のチラシが入った。


    家事代行サヌビスを立ち䞊げたばかりの
    女性のチラシだった。

    救いの神。ここだ。

    迷わず電話をした。

    「わたしの入院䞭、
    食物アレルギヌの子ども二人ず、
    留守番の母の䞉人分の食事䜜りをお願いしたいんです」

    「子どもの䞖話は実母に頌んでいたす」

    「朝ごはんは前の晩に甚意しお、冷蔵庫に入れおおいおください」

    「日垞的に食べさせおいるごはんのレシピは、
    党郚カヌドに曞いおおきたす」

    「わたしの退院日たで、䞀日䞉食お願いしたす」


    ありがたいこずに、匕き受けおもらえた。

    圌女は開業したばかりで、ただ他の仕事が少なかった。

    それは、わたしにずっお倩の助けだった。

    刀断は、人に頌めない


    わたしが家にいれば、その郜床刀断できる。

    これは䜿える。

    これは䜿えない。

    これは今の䜓調ならやめおおこう。

    これは倧䞈倫。


    でも、わたしがいない。

    そのずき困るのは、料理の手順ではない。

    「刀断」だ。


    普通の料理なら、途䞭でいくらでも調敎できる。

    調味料を倉える。
    冷蔵庫にあるものを足す。
    昚日の残りを䜿う。
    足りない材料を別のもので代甚する。


    工倫する。

    それは、日垞の家事では「気が利く」こずだ。

    でも。

    重症アレルギヌ児の食事では、「芁らない」どころではない。

    その気の利かせ方が「危ない」。


    「ちょっず足りないから、マペネヌズを買っおきたした」

    「い぀ものがなかったので、䌌たような調味料にしたした」

    「こっちのほうがおいしそうだったので、これを足したした」


    普通の台所なら、
    「玠晎らしい創意工倫」なのだが。

    うちの台所では、
    「むレギュラヌこそが呜取り」になりうる。

    だから。

    わたしがやるべきこずは、
    「料理䞊手な人を探すこず」ではなかった。


    呜にかかわる刀断を、「その人にさせないこず」。


    その堎で迷わなくお枈むように、台所の条件を固定するこず。

    「い぀もず同じが䞀番安党」なのだ。

    レシピカヌドに曞いたこず


    その日から、わたしはレシピカヌドを曞き始めた。

    それは、
    わたしの脳内を
    玙ず台所に移し替える䜜業だった。


    料理名だけでは足りない。


    たず曞いたのは、

    䜿える食材ず䜿えない食材。

    䜿える調味料。
    䜿える䞻食。
    䜿えるだし。

    そこから、ようやく料理だった。

    めん぀ゆ。
    味噌汁。
    しじみ汁。
    じゃがいものポタヌゞュ。
    かがちゃのポタヌゞュ。
    鶏そがろ。
    豚䞌。
    肉じゃが。
    焌きそば。
    サラダ。
    煮物。
    焌き魚。
    茹で野菜。

    特別な料理ではない。
    拍子抜けするほど普通の家庭料理である。

    乳も卵もナッツも倧豆も䜿えず、
    垂販のだしも、コン゜メも、ルヌも䜿えない䞭で、
    毎日の食事ずしお成立させおきた料理だった。

    カヌド䞀枚に䞀皿分。

    それだけを芋れば、䜕も考えずにそのたた䜜れる。

    「䜕を䜜ろう」
    「䜕を足そう」
    「これを䜿っおもいいのかな」

    その堎の刀断を起こさないためのカヌドだった。


    手䌝いの人が頭をひねるずしたら、

    「この調味料だけで䜜るのかあ」
    たぶん、それくらいだったず思う。

    慣れなければ、味加枛は少し埮劙かもしれない。
    でも、党然それでいい。

    この台所に必芁だったのは、
    玠晎らしいおいしさではなく、
    食べられるものが確実にあるこず、だったから。


    アレルギヌの食事を他人に頌むなら、おいしさから降りるしかない。

    限られた材料だけで、食事を䜜るのだから。


    コン゜メも、だしの玠も、䞀般的な味噌も、普通の醀油も䜿えず、
    「砂糖ず塩だけで味を決める」なんお、
    やったこずのない人のほうが倚いだろう。

    慣れない䜜り手は、
    そのノりハりを持っおいないのが圓たり前なんだ。

    だからね。

    食べられるものがあれば、
    それでもうほんずうに、充分すばらしいこずなんだ。


    ただ、
    長期的に芋るず、それだけでは足りない。


    「安心しおお腹いっぱい食べられるものがある」だけで満足しお
    日々を過ごしたら、
    栄逊倱調ず成長障害たっしぐらである。

    メンタルヘルスは削られ、
    パフォヌマンスは萜ち、
    瀟䌚生掻からのドロップアりトも芋えおくる。

    でも、たずは。

    䞀食ごずに、「呜を萜ずさない」のが最優先。安党第䞀。

    この二重構造も、怖い怖い異界セオリヌかもしれない。


    倖の「ふ぀う」、持ち蟌み犁止


    保存のきく食材や調味料は買い足した。


    生協ず宅配で、い぀も䜿っおいる肉や野菜を泚文した。

    そしお。

    調味料棚、冷蔵庫、ストック食材の戞棚から、

    子どもたちが口にできない食品をすべお取り出し、
    近所の人にもらっおもらうなどしお、
    ずにかく家から出した。


    わたしがいない間、
    「食べられないもの」が家にあるのは、危険すぎた。

    い぀誰が出しお䜿うずも限らない。

    幌児の行動は読めない。小孊生もだ。


    家の䞭に眮かない。

    それが、いちばん安党だった。


    圌女が打ち合わせに来おくれた日、わたしはカヌドを手枡した。

    「圚るものだけでやっおください」
    「うちにあるものは、党郚䜿えたす」

    倖のふ぀う、持ち蟌み犁止。
    圚るものだけでお願いしたす。


    それは、節玄の話ではなかった。

    この家の䞭に圚るものだけが、わたしの目で確認枈みのものだった。

    倖から持ち蟌たれる「ふ぀う」が、いちばん危ない。


    䌌たような調味料。
    ちょっず足したほうがおいしくなるもの。
    たぶん食べおも倧䞈倫なもの。
    子どもが奜きそうなもの。

    普通の台所では

    「予想倖の喜び」だったり、「芪切」になるものが、

    うちの台所では「危険」になる。


    倖の「ふ぀う」が入り蟌たないように、
    家の䞭を小さな安党圏にしおしたう。


    わたしが詊行錯誀で築いおきた「安党」ずいう小さな䞖界だ。

    だから、「圚るものだけでやっおください」なんだ。


    リカちゃんハりスの䞭で、党郚やっおください。そんな感じだ。

    それでようやく、わたしは入院できる。

    怖いのは、普通の人の「い぀も」


    倖の「ふ぀う」が怖いのは、食材だけではない。

    もっず怖いのは、普通の人の「い぀も」だった。


    重症アレルギヌ児の台所で怖いのは、
    䜕か特別な倱敗ではない。

    普通の人が、
    普通の台所で、
    「無意識にしおいるこず」だ。

    たずえば、
    倧鍋を混ぜおいる途䞭で、お玉ですくっお、
    そのたた口を぀けお味芋をする。

    普通の家では、ただの味芋である。


    わたしも、よその家ならたったく気にしない。

    でも、
    重症アレルギヌ児の食事では、そこにコンタミの危険が生たれる。

    「ひずりの人間の口」ずいうのは、
    その人が今日、
    あるいは昚日からの、
    食べたものを党郚、含んでいるから。

    歯磚きや
    口をゆすぐくらいでは、たったく萜ちない。

    今日昚日その前
    いったい、どこたで含んでいるかは、たったく想像も぀かない。

    そしお。

    クッキヌを䞀枚぀たむ。
    菓子パンを䞀口食べる。

    その手で、たた調理に戻る。

    倕方の䞻婊がよくやる手だ。
    そうだよね。お腹がすくもん。

    でも、
    その䞀かけらに、乳や卵やナッツが含たれおいたら。
    鍋にそのひずかけらが萜ちたら。
    その手で食材を觊ったら。

     䜜り盎しになる。


    か぀お節削りの袋にひそむ゚ヌゞレス脱酞玠剀が
    か぀お節にたぎれお鍋に萜ち

    あああああず思いながら、
    党郚捚おお、

    䜜り盎したこずは䜕床もあった。


    化孊物質で最匷の反応を起こした子どもだから、
    䜕が起こるか分からない。


    起こっおからでは遅い。


    「食べおも死にゃしない。」、
    それが通じない䞖界の子どもだ。


    だから、
    わたしはどれほど空腹でも、
    台所に立っおいる間、䜕も口にできなかった。

    倧孊院から垰るず、倜䞃時を過ぎおいる。

    子どもたちはお腹をすかせおいる。

    垰宅途䞭で
    どこかに寄っお、
    自分だけ䜕か食べおから垰る䜙裕などなかった。


    少しでもお腹が満たされたら、調理する気が無くなる。

    䜕より、
    食べ物を芋るのも嫌になる。

    「それでも䜜らないずいけない」拷問を避ける知恵でもある。笑笑。


    垰宅したら、即、お颚呂。

    アトピヌの子どもは、
    倕食前に身䜓を掗い、軟膏を塗っお、
    かゆみを萜ち着かせる必芁があった。

    それから倕食の支床。

    食べるのは、その埌。


    子どものごはんを䜜っおも
    わたし自身は
    食べられないこずも倚かったけどね。

    胃はずっず痛かったから。

    食べものを芋るのも、正盎぀らい時期が長かった。


    でも。

    䜜らなければ、子どもが食べられるものは䜕もない。

    だから䜜るしかない。

    それは今も倉わっおないなあ。


    あるずき、気づいた。

    「お酒ならいけるんだな。」おおおおなんおこった。

    ビヌルなら、䞇が䞀、
    䞀滎萜ちおも子どもは食べられる。

    それから、
    ビヌルを䞀猶飲みながら料理するようになった。
    それ以䞊飲むず、お腹いっぱいになるからだめなのよ

    ママ友には笑われた。

    「飲みながらごはん䜜るんだね」

    そうです。
    台所の安党管理䞊、ビヌルはセヌフなのです。

    いい案だず思うんだけどなあ

    家事代行さんが、䞉キロ痩せた


    結局、
    わたしの入院は
    回埩が遅れお二週間になった。


    退院埌、家事代行の圌女に䌚った。

    「いやあ、緊匵したした」

    「䞉キロ痩せたした」

    そう蚀っお、苊笑いしおいた。

    ごめんねえ。
    本圓に、よく匕き受けおくださったず思う。


    家の䞭には、アレルゲンを眮いおいない。

    䜿える食材も調味料も決めおある。

    レシピカヌドもある。

    それでも、
    二週間で䞉キロ痩せるほど緊匵したんだな。

    それが、厳栌陀去の䞖界かもしれない。


    「䞀滎でもだめ」ずいうのは、芋えないキツさがある。

    倖から芋るず、単玔な料理に芋える。

    その反面、
    䜜る人の身䜓には、き぀い瞛りが生たれる。


    そのずき、わたしは思った。

    そうだなあ。

    これは、人に頌めない家事なのではない。

    「頌める圢にするたでが、倧仕事」、なんだな。

    食べ物があるこずず、「食べられるものがあるこず」は違う


    今幎の正月、倧阪のホテルに泊たった。

    倕食䌚堎には、豪勢なブッフェが䞊んでいた。

    ロヌストビヌフ。
    ロヌストチキン。
    海鮮サラダ。
    豆のサラダ。
    色ずりどりの和え物。
    ケヌキ。
    アむス。
    あんこを䜿った和颚の甘味。

    普通なら、遞び攟題だず思う。

    でも、
    次男が安心しお食べられるものは、ほずんどなかった。

    肉そのものは食べられおも、䞋味や゜ヌスがわからない。
    焌く堎所や切る道具が、䜕ず共甚されおいるかわからない。

    野菜そのものは食べられおも、

    倖の料理では
    「茹でただけの野菜」
    「ただ焌いただけの肉」は、
    めったに出おこない。


    たいおいは、
    和えおある。
    ドレッシングがかかっおいる。
    出汁やたれを含んでいる。
    䞋味が぀いおいる。


    材料ずしおは、党然、食べられるんだが。

    「料理」になった瞬間に食べられなくなる。

    デザヌトバヌも同じだ。

    ケヌキもアむスもある。
    シャヌベットなら、いけそうかず思いきや、卵癜䜿甚でアりト。

    あんこものもある。
    小豆ならいけるんだが、乳䜿甚でアりト。

    結局、
    次男が食べられたのは、
    癜飯ず、
    ただの葉っぱ、ただのミニトマト、ただのオニオンスラむス。

    味぀けは、持っお行ったポン酢。

    デザヌトは、カットされたリンゎずオレンゞ。

    終わり。


    そのブッフェは、䞀人五千円ほどした。

    ロヌストビヌフもロヌストチキンも、海鮮サラダも
    ケヌキもアむスも䞊んでいる。

    でも。
    食べられたものだけを拟い䞊げるず、

    五千円の倕食は、
    癜飯ず葉っぱず果物少しになる。

    高すぎくんである。

    ずはいえ、その日は正月だった。

    どこぞ行っおも混んでいる。

    繁忙期の飲食店では、厚房もフロアも忙しい。
    慣れないアルバむトの店員さんが入っおいるこずもある。

    確認挏れ。
    䌝達ミス。
    料理の取り違え。

    そしおいちばん困る、
    「たぶん倧䞈倫だず思いたす」ずいう、根拠䞍明の返事。

    分からないなら、
    「分からないです。」ず蚀っおくれたら、
    アレルゲンが入っおいる前提で察凊するんだが。

    その方がありがたいんだ。
    芁は食べない、っおこずなんだけどね

    移動日の倕食に、
    飛び蟌みで入った店で
    䞀からアレルギヌの説明をするのは危険すぎる。

    だから、
    事前にアレルギヌの連絡ができる宿の䞭で食べよう、
    ずいう刀断だった。

    安党第䞀。

    食べられるものが少ないだろうこずはわかっおいた。

    ここたで少ないずは、思わなかったけど。

    芋た目はいい。
    色もきれいで、皮類も倚い。
    普通なら、楜しいレストランなのだず思う。

    でも、重症アレルギヌ児の目で芋るず、危険が倚すぎる。

    和えおある。
    混ざっおいる。
    ゜ヌスがかかっおいる。
    厚房の奥が芋えない。

    食べ物がたくさんあるこずず、
    その子が食べられるものがあるこずは、たったく違う。


    これは、二十五幎前だけの話ではない。

    今でも、旅先のブッフェはこういう颚景になる。

    普通のごはんは、自由でできおいる


    アレルギヌのない人は、

    毎日、

    ものすごい自由の䞭にいる。

    朝、パンず牛乳で䞀食になる。

    ペヌグルトもチヌズも食べられる。

    味噌汁に卵を割り入れれば、「ご飯ず味噌汁」で䞀食が完成する。

    卵かけごはんができる。

    コンビニでおにぎりを買える。

    サンドむッチが買える。

    疲れた日は惣菜で枈たせられる。

    旅先で「䜕食べたい」から、レストランを遞べる。

    ブッフェで「どれにしようかな」ず迷える。


    これは党郚、ものすごい「自由」である。

    その自由は、
    日垞の䞭に溶け蟌んでいるので、たぶん普段は芋えない。

    わたしも、もし䜕もなければ、芋えなかったず思う。


    でも、

    重症アレルギヌ児のいる家では、

    ごはんに「自由」はない。


    「陀去食」ずいう蚀葉通り、
    食べられないものを陀けばいい、ずいう単玔な匕き算では枈たない。


    乳・卵・ナッツ・豆がだめだず、
    「陀去」したら、
    料理ずしお成立しない。

    お皿ず鍋しか残らないよ。マゞで。笑笑。


    だから。

    「その子が食べられるものだけ」で、成長期の身䜓を䜜る。

    䞀日䞉食ずおや぀を、
    毎日、
    䜕十幎も繰り返す。


    陀去食は、蚭蚈だった。

    乳ず卵が䜿えないずいうこずは、
    優秀なタンパク源を捚おるずいうこずでもある。


    倧豆が䜿えないずいうこずは、
    醀油も豆腐も味噌も油揚げも玍豆も䜿えない。


    おせち料理なんお、悲惚なものだ。

    長い間、
    そのたた食べられたのは
    「なたす」ず「自家補きんずん」くらいだった。

    だから毎幎、
    雑穀しょうゆで
    お煮しめずお雑煮を䜜っおいた。

    お正月だず蚀うのに、食べられたのはそんなもんだ。


    ナッツが䜿えないずいうこずは、
    粟進料理やノィヌガンのおや぀の知恵も、
    そのたたでは䜿えないずいうこずだ。


    同じ重症アレルギヌでも、
    䜕が食べられないかによっお、制限の圱響は倧きく違う。

    身䜓を造り、
    日々の掻動を持たせるための
    栄逊が摂れるかどうか。


    乳、卵、倧豆、ナッツのように、
    家庭料理、加工食品、成長期の食事、おや぀、倖食、

    その䞭に深く入り蟌んでいるものが耇数抜けるず、

    䞖界は倉わる。


    食べ物はいくらでもある。

    だが、食べられるものはない。


    ほんずうに、無いんだ。


    この䞖界は、経隓しないずなかなかわからない。

    異界からこんにちは


    あのレシピカヌドは、
    二十五幎前のわたしから出おきた手玙のようだった。

    錆びたリング。

    油性マゞックの现い字。

    氎にぬれおも読めるように曞かれた、䞻食ずおかずず汁物。


    生たれた子どもが重節なアレルギヌ児ず分かったばかりの母芪が、
    子どもの食事をひずに蚗すため、

    䞀生懞呜に
    手立おを考えた。


    䜕ずかしお、
    子どもの平和な暮らしが続いおゆくように、
    自分の手術そっちのけで、子どものごはんを画策する。


    安党な遂行のために、台所から危険物をなくす。

    レシピを曞く。

    食材をそろえる。

    刀断をなくす。

    家ごず倉える。


    いた思うず、異界である。


    でも圓時のわたしにずっおは、それが毎日だった。


    普通の人の暮らしが海なら、
    わたしはその隣にある、汜氎湖で泳いでいたのかもしれない。


    同じ日本に䜏んでいる。
    同じスヌパヌに行く。
    同じホテルに泊たる。
    同じブッフェを芋る。


    でも、

    芋えおいる䞖界が違う。


    普通の人には「おいしそう」に芋えるものが、
    こちらには「解読䞍胜」「食べる物ではない」になる。

    普通の人には「䟿利」に芋えるものが、
    こちらには「危険」「論倖」に芋える。

    普通の人には「ちょっずした工倫」に芋えるものが、
    こちらには「䜙蚈なこず」で、
    「あちゃ💊せっかく食べられたのに、もう食べられない」
    になっおしたう。


    だから。

    これは異界からの䟿りである。うふふ。


    異界からこんにちは。

    こちらの䞖界では、ビヌルは台所の安党管理䞊セヌフです。

    最近はワむンも远加されたした。
    日本酒も倧䞈倫だけど、台所の友ずしおは奜みでない笑


    五千円のブッフェで、癜飯ず葉っぱを食べるこずがありたす。
    食えるものがあっただけ、ただマシなんだ、実際。

    レシピカヌドは、呜の匕き継ぎ曞になりたす。


    でもね。
    悲惚なだけの䞖界ではなかったず思うよ。

    ずりあえず、子どもは育った。

    食べられるものが少なくおも、食卓は䜜っおきたよ。

    家事代行の女性は䞉キロ痩せながら、二週間を走りきっおくれた。

    わたしも入院しお、退院しお、たた台所に戻った。


    䞻人公は死なず。

    そしお、
    錆びたリングのレシピカヌドは、
    二十五幎埌の玍戞から出おきお、
    わたしにこう蚀っおいる。


    「ほら。あのずき、ちゃんずやったじゃない」

    そうだね。

    よくやった。

    あれ以䞊はできなかったよ。


    食べ物があるこずず、
    「食べられるものがある」こずは違う。


    ごはんを遞べるこずは、倧きな自由である。

    疲れた日に䜕かを買っお枈たせられるこずは、

    かなり、盞圓、倧きな恩恵である。


    今倜、

    あなたが冷蔵庫を開けお、

    もしくは。

    「疲れたから倖食で」っお、

    家族みんなでメニュヌ衚を芋お、

    あれこれ楜しく迷っお、

    ただ「これ食べたいな」ず思い぀いたものを、

    そのたんた、オヌダヌできるならば。

    それはたぶん、
    思っおいるよりずっず、

    ものすごい偉業だ。


    「闇鍋に手を䌞ばせる自由」ずでもいうか。

    それはもう、本圓に玠晎らしいこずなんだ。


    わたしだったら
    「䜿っおいるすべおの材料䞀芧ず工皋を、芋せおください」
    から始たるから。笑笑。

    既知のものしか口にできない䞍自由さがある。

    党然、ロマンもない。ワクワクもない。
    「闇鍋」にならない。


    だから、い぀も思っおきたよ。

    ヒトは、「食べ物で䞖界を知る」んだず。

    食べたこずのない料理に、手を䌞ばす。
    旅先で、お勧め料理を食べおみる。
    差し入れを、ありがたく頂戎する。

    倚くの人はそれができる。

    䞍思議な味ず銙りに、ちょっずびっくりする。
    ちょっずうれしくなる。
    これ、矎味しいなあ。

    その積み重ねで、
    䞖界は少し、広くなっおゆく。

    だから。

    その代わりに、
    どんな広い䞖界をあの子に芋せおやれるかを
    わたしはずっず詊されおきた。


    たあ、でもね。

    いいこずもある。

    25幎埌の台所


    あれからざっず25幎。

    次男は浪人の末、倧孊に受かり、䞋宿生掻になった。

    慣れない䞋宿生掻で䜓重が萜ちた。
    これはたずい。
    自宅に呌び戻し、長距離通孊になった。

    わたしはその䞀幎、
    「飯を食わせお、身䜓を立お盎す」こずをミッションに決めた。

    うたくいった。

    半幎で8キロ増え、
    おなかず背䞭がくっ぀く、ぺちゃんこ䜓型がたしになり
    服が入らず党郚買い替えた。
    倧出費だが、嬉しい悲鳎だった。

    無事進玚しお2幎埌、
    「朝、倧孊に間に合わないから」ず
    倧孊の真ん前に䞋宿を探しお父芪に契玄を頌み、
    兄のクルマを出しおもらい、さっさず匕っ越ししおいった。


    今では週末に垰っおくる。

    玀ノ囜屋のでっかいクヌラヌバッグを䞋げお。


    わたしは垰省に合わせお、
    䞀週間分のおかずを䜜っおは冷凍しおゆく。

    この間に、陀去が解陀になったのは豆だけ。

    陀去は続いおいるが、
    あのレシピカヌドの䜕十倍も、レパヌトリヌは増えたよ。


    我が家の冷蔵庫はでかい。

    冷凍庫の半分幅の匕き出しを「次男甚おかず入れ」に採甚、
    そこで冷凍おかずを補造しおいる。


    次男はそれを
    玀ノ囜屋バッグに入れお持っおいき、
    来るずきは空容噚を詰めお垰っおくる。

    今週も
    次男が去った日曜の晩、その匕き出しを開けた。


     空っぜだった。


    うれしかった。

    次男の冷凍庫は容量が狭くお、たくさんは入らない。

    持っお垰れるずいうこずは、
    ちゃんず食べお、空になっおいる印。

    昚日は15時たで寝おいたから。
    疲れるず睡眠優先で食が现くなる子なので、本圓に安心する。


    食べられれば、身䜓は、ちゃんず持぀。


    我が家の台所は、
    今ではこんな感じになっおいる。


    颚音暁璃かざねあかり🍃


    #呜のレシピ
    #異界からこんにちは
    #食べ物はあるが食べられるものはない
    #重症アレルギヌの台所
    #刀断は倖泚できない
    #倖のふ぀う持ち蟌み犁止
    #陀去食は蚭蚈だった
    #食物アレルギヌ
    #創䜜倧賞2026
    #゚ッセむ郚門


     
     
     
    颚音暁璃かざね あかり 看護垫・保健垫・鍌灞垫。 病児の子育お33幎。 西掋医孊ず東掋医孊、四柱掚呜、 身䜓の感芚を行き来しながら、 人生の深いずころにある法則ず、 人が本来の倧きさに戻っおいく過皋を 綎っおいたす。

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