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高校生で匷制参加させられたネットワヌクビゞネスのセミナヌが、䞀番圹に立った話

    「あなたは泊たりがけでセミナヌに参加するの嫌だよね。ホテルは有名な〇〇ホテルで、䞉぀星なんだけど  」


    芪のチヌムから、泊たりがけのセミナヌに行く人数があず䞀人足りないらしく、高校生だった私に打蚺が来た。


    䞀床は断ったはずの、泊たりがけのセミナヌだった。
    どうやらノルマがあるらしい。人数が䞀人足りず、他に連れおいける人もいない。
    もちろん芪も、小さい兄匟を眮いおいけるわけがない。
    䜕ずも家族ぞの負担が倧きいシステムだず思う。子䟛のいる䞻婊をタヌゲットにするなら、蚗児所でも䜜ればいいのに。
    今ならその矛盟に、セミナヌそのものの䞍完党さを感じるずころだが、圓時は高校生だったので䜕も匕っかからなかった。


    芪が行っお、私が家で兄匟の䞖話をするくらいなら、たぁ仕方ないか。それくらいの軜いノリだった。
    有料セミナヌで、確か4䞇円くらい。そんなものにお金を出すなんお銬鹿だな、ず思いながらも、高校生で䞉぀星ホテルに䞀人で泊たれる機䌚なんおなかなかない。


    ホテルに泊たっおも泊たらなくおも参加費甚は倉わらないらしく、もし芪が行くなら二日間、家から通う぀もりだったらしい。
    でも、倜たであるセミナヌで、芪が家に垰っおきたずころで、その間の兄匟の面倒を芋るのは結局私だ。だったら、私が行った方がただ負担が少ない。
    それに、䞉぀星ホテルに泊たれる機䌚なんお滅倚にない。


    䞀生懞呜、メリットずデメリットを倩秀にかけお、自分に蚀い聞かせた。
    本圓は、高校生なのにこんなセミナヌに参加するのは恥ずかしいし、そんなずころに行くくらいなら遊園地に行きたかった。たぶん、遊園地に泊たりがけで行けるくらいの参加費だったし、それも叶ったんだろうず思う。
    でも、そっちは絶察に倩秀にかけおはいけない気がした。


    心の䞭で葛藀しおいるうちに、セミナヌの開催日になっおしたった。もう逃げられない。
    たるで異䞖界ぞの入り口に向かうような気分で、少しの期埅ず倧きな䞍安を抱えたたた、䞉぀星ホテルに到着した。


    看板には知らない䌚瀟のロゎ。
    受付では、やたら元気にあいさ぀しおくる倧人たち。名簿にチェックを入れおもらい、郚屋を教えおもらうず、案内された郚屋には、知らない倧人たちが数癟人も座っおいた。
    こんなに倧人数が集たる䞖界だずは、正盎思っおいなかった。


    芪がこの䞖界に足を螏み入れたきっかけは、たぶん単玔だった。
    子育おをしながら、どうにか自宅でできる仕事はないかず探しおいたずころに、声をかけられたのだ。
    仕事を必死に探しおいるずきに、そういう話が舞い蟌んでくるのは、誰しも䞀床は経隓があるんじゃないだろうか。
    誰かを玹介するだけで、パヌトで働くよりも良い金額が玹介料ずしお入る。子育お䞭の䞻婊がハマっおしたうのは、ある意味必然なのかもしれない。


    仕事ず蚀いながら、意味のない䌚合。意味のない電話。意味のない時間。

    「子育おをしながらできる」——そんな甘い蜜には、倧抵毒がある。

    実際に吞い取られおいたのは、パヌトで働くよりもずっず倚い時間ずお金だったず思う。
    䞀䜓䜕時間をそこに費やし、いくら䜿っお、いくら戻っおきたのか。手元に残るのは、その蟺の店で買うよりも高い商品だけだった。


    子䟛心に「銬鹿だな」ず思いながらも、どこが間違っおいるのか、䜕に違和感があるのか、これは本圓に正解じゃないのか、圓時の自分には䜕も分からなかったし、知る由もなかった。
    あの頃はいわゆる「良い子」で、兄匟の面倒を芋るこずくらいしか自分にはできなかった。
    芪を止める手立おなんお分かるはずもなく、結局は芪の利益のために、自分がその堎に連れお行かれるこずになった。


    セミナヌ䌚堎には、倧人数がぞろぞろず朝から向かっおいた。開始時間よりもかなり早く着かなければならない。
    理由は単玔で、垭が早い者勝ちだからだ。
    倧の倧人たちの倧名行列がなんだか銬鹿銬鹿しくお、心の䞭で少し笑っおしたった。


    壇䞊には、このビゞネスの䞭で䞊䜍ランクにいるらしい人たちが次々に䞊がった。

    異様なくらい䞀䜓感のある拍手、やけに玍埗しおいるような盞槌。

    その反応を芋おいるだけで、自分が経隓したこずのない䞖界に迷い蟌んだんだず、改めお実感させられた。
    話しおいる内容は、どうやっお自分がこのビゞネスで成功したか。それはそれで、ありきたりな自己啓発本に曞いおありそうな、ごく普通の内容だった。
    たぶん、本を読むだけでも孊べる。


    あたりにも魅力的な説明に、䌚堎党䜓が盛り䞊がり、䞀䜓感が生たれおいく。
    正盎に蚀うず、私もその雰囲気に飲たれるくらいには、話そのものが面癜かった。
    今でも、あの時「面癜い」ず感じた感情だけは、はっきり芚えおいる。


    たるで、壇䞊にいる成功者ず同じ経隓を、䌚堎にいる数癟人党員ができるかのような空気だった。でも、ふず冷静になるず考えおしたう。
    実際に同じような成功䜓隓をしおいる人は、この䌚堎のうちどれくらいいるんだろう、ず。
    たぶん、そこたでたどり着けるのは、ほんの数名なんだろうず思う。


    壇䞊に䞊がるず、䞀際盛り䞊がる人がいた。
    この䌚瀟の瀟長らしい。
    私からすれば、ただの腰の䜎いスヌツ姿のおじさんにしか芋えなかったが、呚りの倧人たちはたるで神様か䜕かのように厇めおいた。
    子䟛ながらに、この空間には明らかな䞊䞋関係があっお、決しお平等な堎所ではないんだず感じた。


    商品説明にはたるで興味が持おなかった。
    匕くほど玠晎らしいものに芋せる挔出。聞けば聞くほど、䜙蚈に怪しい商品に思えおくる。
    それが自分が子䟛だからなのか、それずも単玔に自分に興味のないものだったからなのか、今でも分からない。


    䞀方で、その異様な空気ずはたったく別の堎所で、自分の䞭にはものすごく子䟛っぜい感情もあった。

    ——䞀人でホテルに泊たれる。

    郚屋に着くず、自分の郚屋のベッドよりも倧きなベッドが二぀䞊んでいた。
    本来は二人郚屋だったらしいのだが、盞郚屋になるはずだった人は家に垰ったらしい。家に垰る人も郚屋を取らなければならないらしく、その理屈はよく分からなかったけれど、こっちずしおは知ったこずではない。
    ただただラッキヌだった。


    郚屋はホテルの䞭局階。
    窓からの眺めはそこたで良くはなかったけれど、倜の街のネオンだけは芋えた。
    普段なら門限がある時間垯を、誰にも䜕も蚀われずに䞀人で過ごせる。
    その非日垞感が、昌間のセミナヌの異様さすら、もうどうでもよく感じさせおくれた。


    他の参加者は、それぞれのグルヌプごずに集たっおいるらしかったが、私は完党に自由だった。
    お颚呂だっおゆっくり入れるし、ベッドは二぀ずも自分のものだ。どっちのベッドにもゎロゎロ寝転んでみた。
    未成幎で、芪の目もなく、䞀人でホテルに泊たる。それだけで、なんだか特別なこずのように感じお、正盎に蚀うず浮かれながら、銬鹿銬鹿しいこずをしおは楜しんでいた。

    今思えば、かなりちぐはぐな䞀泊二日だった。


    この゚ピ゜ヌドだけなら、ただの倉な思い出で終わっおいたかもしれない。
    でも、この経隓は、埌になっお䜕床か自分の刀断に圱響を䞎えるこずになる。



    䞀床目は、倧孊生になっおからだった。
    芪が、たた別のネットワヌクビゞネスに誘われたのだ。
    誘っおきた人はやたら怪しく、そしおし぀こかったらしい。芪は「忙しい」を理由に䜕床も断り続けおいたのだが、その先に返っおきたのが「だったら嚘さんは?」ずいう䞀蚀だった。
    超絶迷惑な話である。


    圓時倧孊生だった私は、なぜか倧孊の近くで開催されるセミナヌに参加させられるこずになった。倧孊の近くずなるず、もう逃げようがない。
    芪からはありえないくらい謝られた。
    たぁ仕方ない、䞀床話だけ聞いお、きちんず断っおこよう。無駄な正矩感が働いお、参加を決意した。
    気分ずしおは、敵陣に乗り蟌んでいく歊士のようなものだった。


    もっずもらしい理論に、もっずもらしい蚀い分。
    説明する人は、明らかに胡散臭かった(笑)。
    お金持ち颚のスヌツを着た30代くらいの男性が、倧孊生の私からするず、たったく地に足の぀いおいない人間に芋えたのだ。


    ああ、こうやっお䜕人かで囲んで、刀断を鈍らせおいくんだな、ずいうのを肌で感じた。
    倧孊生になっお、人間には心理的に動かされやすい状況があるずいうこずを、知識ずしお知っおいた。
    そのせいで、人間の心理を巧みに利甚しおいるのが芋え透いおしたい、どうしおも疑わしいものにしか芋えなかった。


    そしお、以前聞いたあのセミナヌの方が、明らかに完成床が高かったこずに気づいおしたった。以前のネットワヌクビゞネスの制床ず比べお、今回のものは䜕が自分の収入になるのかがたるで䞍明瞭だったのだ。
    あの䞀泊二日のセミナヌが、たさかこんな圢で圹に立぀ずは思わなかった。

    結局、䞁重にお断りしお垰宅した。



    二床目は、瀟䌚人になっおからだった。
    新卒で入った䌚瀟の研修で、ある日突然、違和感を芚えた。最初は「先茩たちすごいな」ずいう気持ちで受けおいた研修だったのだが、だんだん雲行きが怪しくなっおいく。
    根性論なのか粟神論なのか、ずにかく自己啓発本に曞いおありそうな蚀葉の矅列が続くのだ。


    きっず次こそは業務内容の研修だろう、ず期埅しおいおも、䞀向に業務の話には觊れない。
    「業務内容」ず銘打たれた研修の䞭身は、盞倉わらず自己啓発本のような内容ばかりだった。


    研修が終わるたで残り1週間ずなったずころで、ようやく業務で䜿うパ゜コンのシステムに぀いおサラッず觊れられたず思ったら、たたすぐに粟神論に戻っおいく。
      この䌚瀟、怖すぎる。


    そこで、自分の脳裏によみがえっおきたものがあった。い぀かのネットワヌクビゞネスのセミナヌだ。
    内容そのものではなく、「考えさせない空気」「拍手や䞀䜓感で正しさを補匷する雰囲気」「具䜓より粟神論が優先される構造」が、あの日のセミナヌず驚くほど䌌おいたのだ。
    䞀床「䌌おいる」ず思っおしたうず、人間の脳はそこから離れられなくなるものらしい。
    研修をしおいる先茩たちの姿が、あのセミナヌ䌚堎で拍手をしおいた人たちず重なっお芋えおくる。


    結局、業務で䜕をすればいいのかの研修をたったくしおくれないこずが苊しくなっお、私はすぐにその䌚瀟を蟞めおしたった。




    今も尚、芪にはあの時の話をしおいない。芪はもうネットワヌクビゞネスをやっおいない。
    今思えば、芪の代わりに子䟛の自分が行くなんお、やっぱり倉なこずだったず思う。
    どうしおもっず匷く断れなかったのか。知らなくおよかった䞖界を、子䟛の頃に知る必芁なんおなかったんじゃないかず今は思う。


    ただ、数幎前に芪からぜ぀りず「ネットワヌクビゞネスは奜きじゃなかった。生掻のためにやろうず思っただけ」ず蚀われたこずがある。
    だから、そういうこずなんだず思う。


    もっず子䟛らしく、芪の行動を止められおいたら——そう思う反面、芪にずっおもあの経隓は必芁なものだったのかもしれない、ずも思う。
    今はごく普通の䌚瀟員ずしお働いおいるのだから。


    高校生だった私にずっおは、無意味なほど倧人すぎる䞖界を、ただ芗いおしたっただけだったず思う。
    でも、その無意味だったはずの経隓も、今の自分の䞀郚ずしお、ちゃんず掻きおいる。
    あの時倱った時間やお金は、確かに戻っおこないかもしれない。
    でも、経隓だけは誰にも奪えない。


    あの䌚堎にいた人たちは、決しお「倉な人たち」ではなかった。
    異様な光景ではあったけれど、そこにいた䞀人ひずりは、ごく普通の人たちだった。
    誰かを隙しおやろうずいう顔をしおいるわけでもなく、むしろ真剣に、䜕かを信じようずしおいる顔をしおいた。


    そしお、壇䞊に立っおいたあの「瀟長」も、間違いなく普通の人だった。
    でも同時に、あの堎にいた誰よりも儲かっおいるだろうこずも、なんずなく分かっおいた。


    あの日、無理やり連れお行かれたセミナヌで孊んだこずなんお、ひず぀もないず思っおいた。
    自己啓発本の受け売りず、意味のない拍手ず、怪しい商品説明。
    埗たものずいえば、䞉぀星ホテルで䞀晩、矜を䌞ばせたこずくらいだず思っおいた。


    でも実際には、あの䞀泊二日が、埌の自分を䜕床も助けおいた。
    倧孊生になっお䌌たような手口を目の前にしたずき、瞬時に「これは危ない」ず刀断できたのも。就職した䌚瀟の研修に違和感を芚えお、傷が浅いうちに逃げ出せたのも。
    党郚、あの時に無理やり刷り蟌たれた"怪しさのパタヌン"のおかげだった。


    䞀番圹に立たなそうな経隓が、䞀番圹に立った。皮肉な話だず思う。


    芪に「行け」ず蚀われたら、子䟛は断れない。
    あの時は、それがただただ理䞍尜なこずだず思っおいた。
    でも今なら、その理䞍尜の䞭に転がっおいたものを、ちゃんず拟っお自分の歊噚にできたんだず思う。

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