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旅先の読書

    旅先で本を読むのが好きだ。好きというより、呼吸のような普段の生活の一部なので、時間がありそうでも無さそうでもとりあえず本を1、2冊鞄に忍ばせておく。移動時間、一人で入ったレストランの待ち時間、携帯をチェックしないで本を取り出すときは、たいてい心も落ち着いているときだ。

    この夏、用事もあり、旅行もありで日本のあちこちをうろうろしていた。アメリカから日本に行くときは、飛行機の間に携帯にダウンロードした本を何冊か読み、ここからはじまる本のボーナスタイムに心を踊らせる。

    なぜなら、日本国内なら日本語の書籍を売っている場所がそこら中にあるからである。着いてすぐはまずコンビニに興奮し、美容マスクと夕食を買い込んでお会計に愕然とするとしても、2日も経てばどこかの街で書店に立ち寄り、今回の旅行用に…と少し本を買い込む。今回は、盛岡の大垣書店で、棚から直感的に選んだ3冊が旅のお伴になった。

    1冊目。

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    くどうれいん『湯気を食べる』

    Threadsで話題になっていて、読みたいと思っていた。電子書籍で買ってもよかったのだけど、こういうのは出会いだから出会ったときに買うのがいい。

    この本では、盛岡という場所に根をはった著者が淡々と書く盛岡の食の、美味しそうなこと。たまに、筆者が大学時代を過ごしたという仙台の話もでてきて、どれも「ああ、それは美味しいよね」と相槌を打ってしまいそうな、親密な献立が並んでいる。

    あちこちを食べ歩く、とか、東京にいる著者が東京の美味しいものをあれこれ書くとか、あるいは自炊について書く、といった食べ物エッセイは多い。でも、その他の街は?日本は美味しいもので溢れているというのに、ローカル・うまいものエッセイが足りないと思う。小学生の頃、池波正太郎のエッセイを読んでいつか東京の蕎麦屋で昼からざる蕎麦と日本酒を一杯やりたい、と思っていたような人間なので、東京でない街からこうした食べ物エッセイが出て、しかも売れているというのはとても嬉しい。

    読み終わった後、すぐに友達に勧めて渡してきたので、手元にはないが後悔はない。いろんなひとに勧められる本。

    2冊目。

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    内田洋子『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語』


    ベネチアから車か電車でさらに数時間、海岸沿いの地方の険しい山奥の村が、かつて本の行商で鳴らしていた人々の故郷とは。筆者はベネチアに住むジャーナリスト。ひょんなことから顔なじみの書店主がモンテレッジォという北イタリアの山村の出で、しかもその村からは書店や出版社を経営している家族がいくつもでていて、今でも古本まつりが毎年行われていると知る。
    軽い気持ちで村を尋ねようとした筆者はそこから、村の歴史とイタリアの出版・書籍販売のみならず、情報の運び屋としてイタリア近代化を下支えした人々に出会うことになる。

    いまでは少し落ち目の(といったら失礼か)イタリアが、文化の発信地であった時代の一端に、思いもかけない視点から触れる本。本好きは胸が熱くなる記述がきっとあるはず。


    3冊目。

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    市川拓司『発達障害のぼくが世界に届くまで』


    はるか昔に『そのときは彼によろしく』が映画化されたときに見に行った、気がするくらいの、あまり縁のない著者だが、最近発達障害を公表している著者の本は手にとってみることが多いので、これも何気なく。

    結論からいうと、わたしとは違うタイプの発達障害(ASD+ADHDという診断は共通している)で、あまり共感も新たな発見もなかった。この著者と配偶者の生活というのは一風変わっていて、この本の表紙にも使われているように緑に囲まれた羨ましい家に住んでいるようで、このお二人の生活を題材にした『私生活』とそのドラマ化作品は少し見てみたい。

    移動が多いと、ものを書いたりデータを整理したりという作業は全然はかどらないものの、読みものはとてもはかどる。日常から切り離された移動の道中は、読書と相性がいいのかもしれない。


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