“**一緒にいこーやー**”から始まった夏 ── 音楽がつないだ母と息子とPONGEE
うちの長男は、自閉症がある。
初めての人や、人混みが苦手で、なかなか自分からは話しかけられない。
でも、音楽は大好きだ。特に“生の音”。
知ってる場所なら、ひとりで電車に乗って出かけていいことにしている。
大阪駅のフリーライブは、彼にとって“安心して行ける冒険”の場所になっている。
ある日、ライブから帰った息子がぽつりと話した。
「今日、めっちゃよかった人おってん」
そう言って教えてくれたのが、吹田在住の男性デュオ・PONGEEさん。
それまでは私が好きなアーティストに連れられていたけど、
彼が初めて、自分の耳と心で“好き”を見つけてきた相手だった。
それから何度か足を運び、
ライブ後の物販の列を少し離れて見守る姿も、私は知っていた。
ある日、物販の列がはけた頃、息子が私の袖を引いた。
「……いや、一緒にいこーやー」
その言葉が、どれだけの勇気から生まれたか、私はよく知っている。
私が声をかけて、こう伝えた。
「いつもフリーライブ、見せてもろてる息子の母です」
PONGEEさんは、驚いたように、でもすぐにあたたかく笑ってくれた。
「えっ、あの子のお母さん!
いつも来てくれるんですけど、すーっと帰っちゃうから…
話しかけたいなーって思ってたんです」
その言葉に、胸がじんわりした。
ちゃんと見ていてくれてたんやなぁ。
息子の静かな“好き”が、届いていたことが、何よりうれしかった。
帰りの電車では、息子がニコニコと今日の話をたくさんしてくれた。
「列の人、結構おってんで」
「CD持ってた人もおった」
「声かけれてよかったなぁ」
私も、うんうんと頷きながら、あることを思い出していた。
そういえば、小さい頃からこの子には
私が好きな Skoop On Somebody の曲をよく聴かせていた。
車でも家でも流れていたSkoopの音楽。
PONGEEさんの歌には、その空気感がどこかにあって、
「この子が惹かれた理由は、そこにもあるのかもな」って、ふと思った。
だから伝えてみた。
「実は私、Skoop On Somebody、ずっと好きなんです」
すると、PONGEEさんはにこっと笑って、
「僕たちも、めちゃくちゃ好きなんです!」
…もう、言葉にならんくらい、うれしかった。
私の“推し”が、次の世代のアーティストたちの“お手本”になっていた。
音楽って、ちゃんとつながっていくんやなぁ。
そのあと駅前の自転車置き場で、私の自転車がまさかのパンク。
でも、そんなこと、もうどうでもよかった。
歩いて帰りながら、息子と何度も今日の話を繰り返した。
心が満たされてたから、足取りは軽かった。
ほんま、ええ日やったなぁ。