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短歌30首「キッチン・リサイタル」


    つくねがいいと冒険して気付く冬 三日連続の鍋ピェンロー

    念入りに温め直す二日目の〆までやる意志たまごを添えて

    キッチンで右手に持つものマイクとす昨日はおたま今日は大さじ

    チャミスルの瓶もマイクに無観客リサイタルには終電のなく

    人間が一人の部屋で明確に電子レンジはわたしを呼んだ

    夜中でもわたしを生かすためなのだフレンチトースト焼こう分厚く

    吸い上げるフレンチトースト食べるよりふやけるあなた見たさに作る

    ゆでたまご上手く剥けないときに声かけないで番犬が吠えます

    今度こそ失敗しないと誓い湯に沈めてく卵三つのいのち

    上手く割ること諦めてもう殻が入ってないこと祈られる卵

    太巻きが好きだから鬼が不在でも張り切って作る張り切って食べる

    食べ終えた皿のパン屑の星空は散らかっているほうが愛しい

    掬い取るあんずのジャムのそのあんず狂わすほどの大きさで春

    ミートボールのたれだけ舐めてついてくる遠い記憶にレタスは香る

    キャラメルを買うか買わぬか迷いつつ夢の深層にある誘惑

    こそぎ取る意地汚くもはちみつの爪の間に挟まろうとも

    午後三時わたしのギター聴きながら抹茶パウンドケーキ焼かれり

    立ちこめる抹茶パウンドの匂いが今日のわたしを肯定している

    それとなくステップ踏んで夜食食う罪悪感を床に逃して

    キッチンに折りたたみ椅子をひらいてちょっと座ってみている夜明け

    あの夜にすすりたかったカップのは翌朝食べるとちょっと違った

    一人というフリーダムを享受して夕飯その一とその二があり

    生きるため洗ってるんだか洗うため生きてるんだか人生ってむり

    容器から食器になりてヨーグルト400gの最後の100は

    外界に解放されて数日をかけリバウンドしてゆくコルク

    目が覚めてあごが痛くて開かなくてきゅうりサンドのきゅうりがこぼれる

    期待して疲れた心搾り出すごと執拗に焼かれるベーコン

    珈琲の癒し一縷も逃さぬとう卑しさ湯気を顔にぶつける

    父のくれし高いコーヒーかすまでも香り続ける値段の分を

    初夏の候 お元気ですか(青のりの塩気に海を)愛しています



     
     
    いらっしゃいませ。短歌を詠んでおります。

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