今期トレンドNo.1
「じゃ、5200円ね」
「あ、はい」
金を渡し4本のペンを受け取る。ただのペンではない。パステルインクのミルキーな色彩に金銀のラメが輝く高級感あふれる仕様。これは学生(主に女子)がもっぱらやっきになって集めているラメ入りクリームペン、『キラクリ』である。俺はこの度、このトレンドの最高峰といえるアイテムを手に入れたのだ!
しかし、とはいえ、5200円の出費は痛かった。売り切れ続出のキラクリ、棚出しされたら即完売であるうえ、一部の情報筋が入荷予定日を独自ルートで入手し買い占めている。正規品を買うのは不可能に近い。そこで今回、先輩から紹介された裏店舗で取引をしたわけだが、これが価格10倍というヤクザな商法。一桁多い0を見た時さすがに躊躇ったが、俺には夢があった。女子達と仲良くなり、彼女を作るという夢が。このキラクリはそのための布石。教室で声高らかに「キラクリ買ったでぇ」と宣言し女子連中と仲良くなるための投資なのである。だから買った。だから買えた。今夏、俺は、絶対に彼女を作るのだから。
翌日。
学校へ登校し、叫んだ。
「キラクリ買ったでぇ」
一声。集まる視線。浴びる注目。
「え、マジィ?」
「見して見して」
「新しいやつ?」
かつてない光景。俺の前に女子達が集まって来ている。これがモテかと恍惚。生きててよかった。5200円を払ってよかったと心から思えた。あとは厳選して彼女候補に唾をつけるだけと内心でグフる。だが、事態は思いがけない展開となってしまったのだった。
「これ、パチモンじゃない?」
その一言から、潮目が変わる。
「あ、本当だ。ラメが燻んでるし、刻印に凹凸がない」
「ダサww」
「こんなんポイだよ、ポイ」
掌返し。女子達は即刻離れ俺の周りは隙間風。遠くから「パチモン太郎」と嘲笑されているのが聞こえた。
俺は騙されたのだ。悪徳な店舗と、紹介してきた先輩に! いや、それよりも女。女だ。あぁ、女。女がいない。なんとも間抜けで、なんとも哀れ。寂しさと惨めさに悶える。しかし、ただで転ばない。なぜなら俺は彼女がほしいのだから。
差し当たっては資金調達。失われた5200円を取り戻すため、パチモンキラクリで何か始めようと画策。すぐに名案が思い付く。
「……本物であるように見せかけ、フリマアプリに出すか」
自分が引っかかった手口を真似て被害者を増やす方針。不幸の連鎖の一部となり、被った泥を擦り付ける覚悟を俺は持った。
「価格設定は……4本セットで……1万だ!」
もう止まらない、止められない。売れたらこの金で、今度こそ本物を買う。そんな執念で俺は偽物のキラクリを出品した。絶対に彼女を作るという、想いのままに。