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茶番力養成講座 〜AIでは代替できない、現代社会人に必要不可欠なもの〜

    はじめに

    皆さんは、茶番と聞いて何を想像されるでしょうか。

    • ふざけたやり取り

    • 最初から筋道が決まっていること

    • 白々しい、わざとらしい

    あなたの頭に浮かんだものは、決してポジティブな印象のものでは無いと思います。それどころか、常に上から目線にて、厳しい評価をあたえられがちです。
    このように昨今、茶番は大変厳しい状況に晒されています。

    元々の茶番は、歌舞伎の支度部屋などで、お茶汲みの下働きが有り合わせの道具で見せた安価な笑劇と言われています。つまり茶番の本質とはその場の空気を読んだアドリブであり、その場の人々とのセッションであり、大変クリエイティブなものであったと推測されます。
    今は「お茶汲みの下働き」や「安価」の部分、つまりクオリティの低さだけに着目され、茶番の一面だけが強調されてしまっているのだ、と言っても過言ではありません。

    ところで、AIがドラスティックなゲームチェンジをもたらす昨今、我々人間が大事にすべきものとは何でしょうか?
    かつては知識を持つことが重要とされました。そして、インターネットという知の泉により、個人がデータベースをそれぞれ携える必要性は薄れ、今度は知識をどう活かすかという部分に焦点が当たりました。
    今は、組み合わせに関する部分もAIがフォローしてくれるようになり、我々の最も重要な能力は「決定・決断」だと言われるようになってきています。

    そんな流れの中、変わらず必要となっているものは何でしょうか? インターネットやAIは、いくら稼働してもメンタル的に疲れることはありません。 それでは人間自体は? こちらは、適度な運動や瞑想、ピラティスといったものが浸透し始めました。自律神経への働きかけにより、意識の高い方々の間では個人のケアも常識となりつつあります。 一方で「場」や「雰囲気」をケアすることへは、あまり言及されてきていません。

    ここで一つ思い出して欲しいものがあります。 そう。茶番です。 茶番により、集団の空気を読み、そして整える力。これはインターネットでも、ましてやAIでも代替することはできない、現代の社会人に必要不可欠なものと言えるのではないでしょうか。 この力を、本書では「茶番力」と読んでいきます。

    ここまで読んで、少しでも「一理あるな」と思ったそこのあなた。 既に茶番の世界へ、片足を突っ込んでしまったようです。 さあ、私と一緒に、これからの社会で生きるために必要不可欠な力「茶番力」を鍛えてみませんか?

    茶番とは

    茶番力を高めていく前に、まず茶番の効能について考えてみましょう。

    かつて、年功序列が当たり前であった社会は、今やすっかり成果主義がメインとなりました。成果を上げるには、個人よりもチームプレーが大切になってきます。つまり、縦よりも横の繋がりが重視されるようになってきました。
    とはいえ、縦のつながりがなくなった訳ではありません。そのため、行き過ぎない茶番はヨイショに繋がり、組織における円滑な人間関係構築に一役買うことができます。
    また、茶番がアイスブレイクの役割を果たし、場の空気を弛緩させることで、自由な発言を促すことが出来るようになります。
    つまり、茶番の効能とは「その場の空気をより良く出来るレアスキル」である、と言えるでしょう。

    また茶番については、時代劇であるとも言うことができます。
    時代劇、今回は広く浸透されている「水戸黄門」や「暴れん坊将軍」を例としますが、勧善懲悪が基本となっており、結末については誰もが想像したものになります。
    特に、悪代官・悪徳商人の類は、結構な確率で登場するものの、彼らの天下が続くといったことはあり得ません。
    とは言え、それらの物語を安心しつつも楽しめることが時代劇の醍醐味です。
    一方で、人々が思い描く分かりやすいストーリーを具現化、つまり万人受けする内容を描くこと。そして、分かっていても全力で乗っかり楽しむことこそが、茶番というものです。
    つまり、時代劇と茶番は、本質的に非常に似た傾向を持っています。

    ここで視座を一段上げまして、茶番力として考えてみましょう。
    茶番を操る力となると、万人受けする落とし所を用意する力、あるいはそこへ導く力と言うことが出来そうです。
    それでは、茶番力を高めることによるメリットとデメリットを考えていきましょう。

    まずはメリットから。

    1. 会話の上手い人だと思われる

    2. ユーモアのある人だと思われる

    3. 話しかけられやすくなる

    4. 情報が集まりやすくなる

    5. みんなが知っているであろう知識や事実を茶番にすることで、たとえ知らなかった人でも流れに乗りやすくなる

    1ですが、茶番力を高めることで、その場への迎合が上手くなることにより、会話上手な人だと感じてもらえるようになります。
    2も同様で、茶番は笑劇由来でもあることから、喜怒哀楽で言えば喜や楽の印象を受けやすいため、ユーモアセンスのある人だと思ってもらえるようになります。
    3は先方が感じる「絡むための心理的負荷」が下がるため、話しかけられやすくなります。
    4も同様の理由ですね。また、例え全く知らない情報で困惑したとしても「もしかして茶番?」と相手が良い方向で解釈してくれることで、名声その他へのダメージが発生しないケースも多いです。
    5は、あなた個人と言うより、場にもたらすメリットですね。

    一方のデメリットです。

    1. 説得力がなくなる

    2. 軽んじられる・周囲からの扱いが雑になる

    3. 会話が知っている前提で始まりがち

    1は、茶番力が高まるにつれ、その発言の信ぴょう性が疑われることに繋がっていくことになります。特に致命的なのは恋愛関係で、いくら本気で想いを伝えたところで「また茶番?」といったあしらいをされてしまう危険性があります。
    2も「はいはい茶番茶番」といった具合に、全てを茶番として捉えられてしまい、結果的に扱いが雑になってしまう危険性があります。
    3は、特に途中や後から会話に参加した場合に、既に知っている前提で話が進んでしまい、今更大前提を聞きづらい…という空気が出来上がってしまうことが考えられます。

    それでは、いよいよ実例を交えて、どのように茶番を発揮すべきか学んでいきましょう。

    実例

    Case1. 会社の飲み会にて

    本日は部署のメンバー全員での飲み会です。 ある程度お酒も進み、場の雰囲気も相当砕けています。 さて、部署の結束をより固くしたいと考えている上長より、 「今日は無礼講だ! 思ってることを全部言いたまえ!」 との言葉がありました。 大きな不満は無いものの、こうした方がより良いのでは、といった考えをたくさん持っているあなた。 茶番力を発揮するには、どのように振る舞うのが正解でしょうか。

    【失敗例】
    普段考えている改善点などを全て詳細に伝える

    【成功例】
    ひたすら感謝を伝える。 「いつも上司のおかげで気持ち良く仕事が出来ています、ありがとうございます!」

    【解説】
    これは大いなるトラップで、うっかり本音を言おうものであれば、次の日からよろしくない空気が漂うことは目に見えています。 上司が求めているのは「懐の広い俺とそれを慕う部下」という構図になります。 必要なのは、忌憚なき意見ではなく、場の空気をより良い方向へ押し上げる一言です。 なお、あざといと思われても構いません。そう思われてしまうことも込みで、敢えて伝えることが茶番力の高さに繋がります。

    ちなみに、上司と目線を合わせた話題、例えば「共通認識の敵に対する苦情」などは、このタイミングで伝えるのはベターです。

    Case2. モテる異性との時間

    色々な人からモテモテのあの人と、二人で食事に行くことになりました。 考えに考え、口コミサイトやAIとの壁打ちを経て押さえたお店。 「すごい、こんなお店初めて!」 さらに、帰り道では 「今日はとっても楽しかった。二人だけの秘密ね」 気分も良くなり、すっかり有頂天のあなた。 しかし、茶番力を駆使した場合、どのように対応するのが正解でしょうか。

    【失敗例】
    これは間違いなく脈がある。即告白!

    【成功例】
    こちらからも同様に御礼と、また行きましょうと伝える。

    【解説】
    モテる人間というのは、無意識に他者を落とします。 悪気は無いかも知れませんが、初めてでは無いお店でも「初めて」と言ってしまうのが茶番力。 こちらもスマートに対応し、仮に気になるお相手なのであれば、距離を縮めるべくタッチポイントを増やす努力をしていくべきでしょう。

    Case3. 大事な話の進め方

    あなたにとって重要な話を伝える必要が出来てしまい、 「大事な相談があるので、お時間を頂けますか?」 と相手を呼び出したあなた。 忙しい相手にも関わらず、時間を空けてもらいました。 茶番力を発揮しつつ、スムーズに話を進めるにはどうすべきでしょうか。

    【失敗例】
    事前に「大事な相談」と伝えてあるので即本題。

    【成功例】
    まずは軽い相談を挟み、場の雰囲気が整ったタイミングで本題を切り出す。

    【解説】
    明らかに軽い相談を最初に入れることで、相手も「この相談が本命では無いな」と思いつつ、会話自体は進んでいくことで、本命の話を受け取る準備が出来ていきます。 また、ここで挟む内容如何により、本命の話を重たくも軽くも出来るので、分かりきったワンクッション、つまり茶番力によって、その後の展開をある程度コントロールしていくことも可能になります。 ちなみに、本当に相手が忙しい場合は、さっさと本題を進めてしまった方が良い場合もあります。 これは、先方の忙しさ度合いで適切な判断をしましょう。

    Case4. 事前情報の活かし方

    明日は、初めて会う方との打ち合わせです。 事前に先方の名前で検索すると、SNSでの情報が見つかりました。 どうやら、普段から専門性の高い情報発信をされているようです。 また、専門書に寄稿もされているようで、電子書籍を購入、拝読しました。

    さて、打合せ当日。 お互い少し緊張している状態で名乗り合い、打ち合わせが始まりました。 茶番力を発揮するには、どのように振る舞うのが正解でしょうか。

    【失敗例】
    押し付けがましくない程度に、相手の寄稿や専門分野の投稿を見てきたことを伝え、用意してきた質問をぶつけてみる。

    【成功例】
    相手の専門分野に近しいところから入り、相手の専門分野へと話を誘導してみる。

    【解説】
    茶番力ではなく社会人としての振る舞いであれば、失敗例の内容は立派な正解の一つになります。 あくまでも「知っているのに知らない体でいること」が茶番力の要です。また、知らなかったかのように話を振る際、わざとらしければわざとらしいほど、「本当は知っているのに、敢えて知らないように話を振ってくれたのか。それにしても演技の下手な人だな」と、先方の笑いも誘うことができます。この辺りは、先方が生真面目なタイプか、冗談を好むタイプかを観察しながら、振る舞い具合を調節すると良いでしょう。

    Case5. 長時間続いた会議

    昼過ぎから始まった会議でしたが、会社の中心となっている先輩方の議論が白熱し、気付けば辺りは暗くなってきました。 他の参加者には疲労が色濃く見えます。 先輩方の議論はまだまだ続きそうな中、あなたはどのように茶番力を発揮しますか?

    【失敗例】
    恐る恐る「先輩、喉が渇きませんか? 何か買ってきますので、少し休憩を挟みませんか?」と小休止を提案する。

    【成功例】
    わざとらしく大きなくしゃみをし「冷房効き過ぎじゃないですか? ちょっと温度確認してきます。」と流れを切る形のカットイン。なし崩し的に休憩時間を挟ませる。

    【解説】
    これは、今までの茶番力とは異なります。自ら場の空気を壊す起点となる、言わば攻めの茶番ともいうべきもの。 一歩間違えれば「空気の読めない人間」というレッテルを貼られてしまう行動ですが、そこは茶番、丁度良い塩梅を見つつ、顰蹙を買わない程度に演技することで、休憩をもたらしましょう。 また、白熱している時には気づかないものですが、案外小休止を挟むことで、議論も落とし所が見つかったりするものです。 茶番によって場に余白を作り、落ち着きを取り戻させるのも、強力な茶番力だと言えます。

    Case6. 始まる前から始める会議

    今回の提案は、何としても成功したいと考えている提案です。 キーパーソンは予め予想がついていたので、事前に声を掛け、幸運にも賛同を得ることが出来ました。 いざ会議が始まり、あなたのプレゼンの番が来ました。場の空気としては、悪くはないものの、決定打に欠ける様子。何かしら打開策を打ちたい時、どのように振る舞うのが正解でしょうか。

    【失敗例】
    ここは攻めの茶番。「そう言えば、○○さんのご趣味は...」といったパーソナルデータと紐付ける形で、キーパーソンが味方であること強調しながらプレゼンを締めくくる

    【成功例】
    キーパーソンの賛同は得ているの、ここではいそがないことを徹底。最後の最後、キーパーソンに向けて「何か不明瞭な点があれば説明いたしますが」と話を振り、締めくくる。

    【解説】
    case5とは異なり、王道の茶番です。前に出る量、アピール量を最小限に抑え、あくまでもプレゼン前に既に勝負は決していた、という長い長いウィニングラン的なプレゼンに持ち込むことを目指しましょう。

    Case7. 場の空気を読み尽くす

    会話がすっかり盛り上がり、相手が専門外の領域にまで風呂敷を広げて話をしています。 最初は少しの誤差でしたが、話が長引けば長引くほど、実際の真理とは遠ざかっていく状況。 自分の専門領域として、あなたの取るべき振る舞いは?

    【失敗例】
    「それ、まさにうっかりハマってしまいがちなケース。でも本来は...」と、相手の会話を引き継ぎつつ、正しい方向に着地するように、会話のキャッチボールで誘導する。

    【成功例】
    「確かにその通りですね」と相槌を打ち続け、その場は相手が自ら着地するまで付き合い続けてみる。

    【解説】
    茶番力の行き着く先は、その場の空気をゴールさせること。そこに必要なのは、正しさではなく、終わった後の爽快感、読後感の良さなのです。

    ちなみに、相手が後日過ちに気づき、またあなたに対して「専門家なのに分からなかったか」といったケチを付けてくるケースも考えられます。その時は、いやあ、今まで勘違いしてしまっていました、と最後まで相手を肯定するスタンスを崩さないことが肝要です。

    おわりに

    ここまでお付き合い頂きありがとうございました。 きっと今、あなたの中には「茶番、試してみようかな」という気持ちが多かれ少なかれ生まれていることかと思っています。 その気持ちがあれば、あなたも今日から立派なチャバンジェリストです。 堂々と茶番をぶちかまし、世の中にちょこっとの笑いと適切な余白を用意していきましょう。

    ところで、冒頭にお伝えした内容は覚えていらっしゃるでしょうか? 私は、AI時代に人間に残るのは、人間関係なのではないかと考えています。 タイパ主義や成果主義では切り捨てられがちな、無駄と思われる寄り道や、敢えて正解に至らない道にこそ、人間関係を彩るヒントが隠されているのではないでしょうか。

    いやいや、そんな当たり前のことを言われても、と思ったら、本講座の名前をそっと思い出してみてください。

     
     
    輪郭付与師 / チャバンジェリスト / 妖怪博士(中級)- ぬことドット絵とLEGOと音楽と阪神タイガースとゲームとマンガとプロレスと(以下略)を愛する窓際Web屋。

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