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第6話(今宵の一杯)My Funny Valentine─その曲に似合う一本「ザ・グレンリベット」─

この日はなぜか眠りにつくことができず、一杯グラスを傾けてから眠ることにした。 グレンフィデックが空いてしまっていたので、久しぶりに「ザ・グレンリベット」を開けることにした。 青りんごのようなフルーティでスムーズな香りが、ふわりと鼻をくすぐる。

「ザ・グレンリベット」といえば、決まって「My Funny Valentine」を思い出す。 さまざまなアーティストに歌われてきたスタンダードの名曲。 その中でも、思い出深いのは ChatBacker の「My Funny Valentine」だった。

静かな夜は、こうしてゆっくりと深まっていった。

1. きっかけとなった出逢い

『第1話(今宵の一杯)ウィスキーがお好きでしょう──その曲に似合う一本「グレンフィデック」』でも触れたが、 学生時代、歌舞伎町のバーでバーテンダーとして働いていた頃、常連のお客様から教わったウイスキーのひとつが「ザ・グレンリベット」だった。

以来「ザ・グレンリベット」と「グレンフィデック」を好んで飲むようになった。 その後学校を卒業し、夜の世界から昼の世界へと180度方向転換したあとも、その習慣は何故か変わることはなかった。

社会人になってから、東京の小京都と呼ばれる神楽坂のBAR「Mint」でいただいたのも、この「ザ・グレンリベット」だった。 毘沙門天裏のビルの一階にある、オーセンティックをベースにしたモダンでスタイリッシュな隠れ家といえるバー。 常連客が多いのも頷ける、そんあ落ち着いた佇まいを纏っていた。

飲み方はロックかストレート。 これも学生時代の常連のお客様に教わったスタイル。丸氷をゆっくり溶かしながら味わうのがいい。 この店もバーテンダーが削って造った最上の丸氷だった。

その夜、店内に流れていたのが ChatBacker の「My Funny Valentine」。

女性オーナーに「誰が歌っているの?」と尋ねると、 「ChatBackerよ」とくすっと笑いながらさらりと答えてくれた。 それがChatBacker の「My Funny Valentine」との出逢いだった。

今でも「ザ・グレンリベット」をいただきながらこの曲を聴くと、あの頃の空気がよみがえる。 歳を重ねると昔のことをよく思い出すというが、私も例外ではなさそうだ。

3. 「ザ・グレンリベット」とは

「ザ・グレンリベット」は、スコットランド・スペイサイド地方で造られる老舗のシングルモルト・スコッチ・ウイスキーである。

ひとつ素朴な疑問があった。 よく見ると「The Glenlivet」。なぜ “The” を冠しているのだろうか。

あるバーテンダーが教えてくれた。 「政府公認蒸留所第一号だからですよ」と。

当時は密造が当たり前だったそんな時代。 その中で正式に認められた蒸留所としての誇りが “The” に込められているのだと知り、 「なるほど」と頷いた。

BARは、酒だけでなく人生のことも、さらりと教えてくれる場所なのだと思うようになった。

4. おすすめの飲み方

・ストレート 香りの繊細さを最も感じられる。 夜の静けさをそのまま味わうには、これがいちばんだと思う。

・ロック 氷が溶けるにつれ、甘みがふわりと開く。 長い夜に寄り添う飲み方。

・トワイスアップ 水を加えると香りが一段と立ち上がり、青リンゴのニュアンスが際立つ。 ジャズを聴きながら、ゆっくり香りを楽しむのに最適。 本場イギリスでは、蒸留所の水で割る“ハーフ&ハーフ”という飲み方もある。

5. 終わりに

音楽とウイスキーは、どちらも人生の“余白”を楽しむものだと思う。 語りすぎず、主張しすぎず、ただそこにあるだけで夜を豊かにしてくれる。

「My Funny Valentine」と「ザ・グレンリベット」。 この組み合わせは、静かな夜にそっと寄り添う、控えめで上質なペアだと思う。

ChatBacker 以外では、Sting の「My Funny Valentine」も好きだ。 歌い手が変わると、何故か同じ曲でも雰囲気がガラリと変わる。 不思議なものだ。


6. 今日の所感

参考までに、今日の一杯にまつわるものをいくつかリンクとして置いておく。 静かな夜の時間を楽しむための、小さな手がかりとして。


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